現在お使いのブラウザのバージョンでは、本サービスの機能をご利用いただけない可能性があります
バージョンアップを試すか、Google ChromeやMozilla Firefoxなどの最新ブラウザをお試しください

引き続き問題が発生する場合は、 お問い合わせ までご連絡ください。

憲法 政見放送の削除 最三小判平成2年4月17日

概要
NHKの政見放送において身体障害者に対する差別用語を使用した発言部分が公職選挙法150条の2に違反する場合に、NHKが当該部分の音声を削除して放送したとしても、不法行為法上、法的利益の侵害があったとはいえない。
判例
事案:NHKが、録音・録画した公職選挙法150条1項に基づく政見放送のうち、身体障害者に対する差別的発言がある部分を削除したことについて損害賠償請求事件(原告:立候補者及び同人の所属政党、被告:NHK)として争われた。

判旨:「本件削除部分は、多くの視聴者が注目するテレビジョン放送において、その使用が社会的に許容されないことが広く認識されていた身体障害者に対する卑俗かつ侮蔑的表現であるいわゆる差別用語を使用した点で、他人の名誉を傷つけ善良な風俗を害する等政見放送としての品位を損なう言動を禁止した公職選挙法150条の2の規定に違反するものである。そして、右規定は、テレビジョン放送による政見放送が直接かつ即時に全国の視聴者に到達して強い影響力を有していることにかんがみ、そのような言動が放送されることによる弊害を防止する目的で政見放送の品位を損なう言動を禁止したものであるから、右規定に違反する言動がそのまま放送される利益は、法的に保護された利益とはいえず、したがって、右言動がそのまま放送されなかったとしても、不法行為法上、法的利益の侵害があったとはいえないと解すべきである。以上のとおりであるから、NHKが右規定に違反する本件削除部分の音声を削除して放送した行為は、…不法行為に当たらないものというべきであ…る。」
過去問・解説
(H29 共通 第13問 イ)
選挙運動の一つの手段である政見放送において、政見放送の品位を損なう言動を禁止した公職選挙法第150条の2の規定に違反する言動がそのまま放送される利益は、法的に保護された利益とはいえず、したがって、上記言動がそのまま放送されなかったとしても、法的利益の侵害があったとはいえない。

(正答)  

(解説)
判例(最判平2.4.17)において、「公職選挙法150条の2…に違反する言動がそのまま放送される利益は、法的に保護された利益とはいえず、したがって、右言動がそのまま放送されなかったとしても、不法行為法上、法的利益の侵害があったとはいえないと解すべきである。」としている。

(R2 司法 第13問 ウ)
判例は、政見放送が民主政治の根幹をなす政治上の表現の自由に基づくものであり、選挙運動の一つの重要な手段である一方、公職選挙法の規定によって禁じられた政見放送としての品位を損なう言動をした場合の責任は、事後的に候補者自身に負わせれば足りることを根拠として、放送事業者が政見放送において用いられた差別的用語を削除した行為を憲法第21条第1項に違反すると解している。

(正答)  

(解説)
判例(最判平2.4.17)は、「公職選挙法150条の2…に違反する言動がそのまま放送される利益は、法的に保護された利益とはいえず、したがって、右言動がそのまま放送されなかったとしても、不法行為法上、法的利益の侵害があったとはいえないと解すべきである。」とするにとどまり、放送事業者が政見放送において用いられた差別的用語を削除した行為を憲法第21条第1項に違反するとは解していない。
総合メモ
前の判例 次の判例