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憲法 総評サラリーマン税金訴訟 最三小判平成元年2月7日

概要
給与所得の金額の計算につき必要経費の実額控除を認めない旧所得税法9条1項5号は、憲法25条に違反しない。
判例
事案:旧所得税法が事業所得者について必要経費の実額控除を認めながら、給与所得者にはこれを認めていないことについて、憲法14条1項違反の他に、憲法25条違反も問題となった。
 なお、憲法14条1項違反については、平等権のカテゴリで取り上げている(https://law-lib.jp/subjects/1/precedents/52)。

判旨:「憲法25条にいう「健康で文化的な最低限度の生活」なるものは、きわめて抽象的・相対的な概念であつて、その具体的内容は、その時々における文化の発達の程度、経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとともに、右規定を現実の立法として具体化するに当たつては、国の財政事情を無視することができず、また、多方面にわたる複 雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである。したがつて、憲法25条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのよう な立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるをえないような場合を除き、裁判所が審査判断するのに適しない事柄であるといわなければならない(最高裁昭和51年(行ツ)第30号同57年7月7日大法廷判決・民集36巻7号1235頁)。
 …本件の場合、上告人らは、もつぱら、そのいうところの昭和46年の課税最低限がいわゆる総評理論生計費を下まわることを主張するにすぎないが、右総評理論生計費は日本労働組合総評議会(総評)にとつての望ましい生活水準ないしは将来の達成目標にほかならず、これをもつて「健康で文化的な最低限度の生活」 を維持するための生計費の基準とすることができないことは原判決の判示するところであり、他に上告人らは前記諸規定が立法府の裁量の逸脱・濫用と見ざるをえないゆえんを何ら具体的に主張していないから、上告人らの憲法25条、81条違反の主張は失当といわなければならない。」
過去問・解説
(R5 司法 第7問 ウ)
総評サラリーマン税金訴訟判決(最三小判平成元年2月7日)は、国家は、国民各自が自らの手で健康で文化的な最低限度の生活を維持することを阻害してはならないのであって、これを阻害する立法は憲法25条に違反するとしつつ、所得税法中の給与所得に係る課税関係規定について、憲法25条の規定の趣旨を踏まえて具体的にどのような立法措置を講ずるかは、立法府の広い裁量に委ねられるとした。

(正答)  

(解説)
総評サラリーマン税金訴訟判決(最判平元.2.7)は、「国家は、国民各自が自らの手で健康で文化的な最低限度の生活を維持することを阻害してはならないのであって、これを阻害する立法は憲法25条に違反する」(本肢)といった趣旨のことは述べていない。
総合メモ
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