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憲法 地方議会議員の発言方法に関する地方議会の決定と司法審査 名古屋高判平成24年5月11日

概要
発声障害のある市議会議員の質問の代読方式を許さなかったことが議員の発言の権利・自由を侵害するとして市に対して国家賠償を求める訴えは、地方議会議員の議会における発言方法の制約が議会における発言を一般的に阻害し、その機会そのものを奪うに等しい事態を惹起する場合には、「法律上の争訟」(裁判所法3条1項)に当たる。
判例
事案:発声障害のある市議会議員の質問の代読方式を許さなかったことが議員の発言の権利・自由を侵害するとして市に対して国家賠償請求訴訟が提起された事案において、「法律上の争訟」(裁判所法3条1項)に当たるかが問題となった。
 
判旨:「一審被告らは、議員の発言の手段、方法はもちろんのこと、委員会及び本会議における議事進行について、広く市議会の自主性、自律性に委ねられているところ、被控訴人議員らは、一審原告の議会における発言の機会を奪ったわけではなく、会話補助装置による発言方法を保障したのに、一審原告が自分の要求する発言方法と違うという理由で試行さえしなかったのであるから、司法審査の対象にならないと主張する。
 前記のように、市議会における委員会及び本会議の議事進行等について、広く市議会の自主性、自律性が認められていることは否定しえないところである。しかし、このような市議会の自主性、自律性は、市議会議員各自に議会において発言する権利、自由が認められることを前提として、各議員の発言方法や発言時期、場所等を調整し、地方議会としての統一的な意思を適正・円滑に形成するためのものであるから、その前提となる各議員の発言の自由や権利そのものを一般的に阻害し、その機会を奪うに等しい状態を惹起することは、市議会の自主性、自律性の範囲を超えるものといわなければならない。
 一審原告は、一審被告らによる一連の加害行為により、一市民として、障害者が代替手段を自ら選ぶ権利、すなわち、自らのあり方を決める権利(自己決定権)を侵害され、かつ、一審原告個人の表現の自由及び地方議会議員としての表現の自由、参政権、平等権を侵害されたと主張しているが、地方議会議員の議会における発言方法の制約如何によっては、議会における発言を一般的に阻害し、その機会そのものを奪うに等しい事態も生じうるところであり、特に、一審原告のような発声障害者の場合、健常者と異なり、その発言し得る方法が限定されることから、議会における発言方法の制約により、議会での発言の機会そのものを奪われる結果となるおそれが大きいといえる。
 したがって、地方議会における議員の発言方法の制約も、上記のような状態を惹起する場合には、一般市民法秩序に関わり、一審原告の一審被告らに対する訴えは、裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」にあたるというべきである。」
過去問・解説
(H30 司法 第17問 イ)
判例の考え方からすると、発声障害により自ら発声することができない地方議会議員が、第三者による代読等、自らの発声以外の方法による発言を希望したのに対し、これを認めないという地方議会の決定は、純然たる内部規律の問題であるから、司法審査の対象にはならないことになる。

(正答)  

(解説)
裁判例(名古屋高判平24.5.11)は、「地方議会議員の議会における発言方法の制約如何によっては、議会における発言を一般的に阻害し、その機会そのものを奪うに等しい事態も生じうるところであり、特に、一審原告のような発声障害者の場合、健常者と異なり、その発言し得る方法が限定されることから、議会における発言方法の制約により、議会での発言の機会そのものを奪われる結果となるおそれが大きいといえる。したがって、地方議会における議員の発言方法の制約も、上記のような状態を惹起する場合には、一般市民法秩序に関わり、一審原告の一審被告らに対する訴えは、裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」にあたるというべきである。」としている。
総合メモ
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