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憲法 麴町中学校内申書事件 最二小判昭和63年7月15日

概要
学校教育法施行規則54条の3に規定する調査書に学生Xの思想・信条と関連を有するXの外部的行動を記載し、高等学校の入学者選抜の資料に供したことは、憲法19条にも憲法21条1項にも違反しない。
判例
事案:Xは、東京都千代田区立麹町中学校を卒業するにあたり、受験した複数の高等学校すべてに不合格となったところ、受験に際して麹町中学校から各高校に提出された内申書には、《備考》欄に「校内において、麹町中全共闘を名乗り、機関紙『砦』を発行した。学校文化祭の際、文化祭粉砕を叫んで他校生徒とともに校内に乱入しビラまきを行った。大学ML派の集会に参加している。学校側の指導説得をきかないでビラを配ったり、落書きをした」と記載され、《出欠の記録》欄の《欠席の主な理由》欄には「風邪、発熱、集会又はデモに参加して疲労のため」との趣旨が記載されていた。
Xは、不合格の原因は上記内申書の記載にある等の理由から、千代田区及び東京都に対して国家賠償請求訴訟を提起した。

判旨:①「原判決が憲法19条によりその自由の保障される思想、信条を「具体的内容をもつた一定の考え方」として限定的に極めて狭く解し、また、原判決が思想、信条が行動として外部に現われた場合には同条による保障が及ばないとしたのは、いずれも同条の解釈を誤つたものとする点については、原判決を正解しない独自の見解であつて、前提を欠き、採用できない。
 ……本件調査書の備考欄及び特記事項欄にはおおむね『校内において麹町中全共闘を名乗り、機関紙『砦』を発行した。学校文化祭の際、文化祭粉砕を叫んで他校生徒と共に校内に乱入し、ビラまきを行つた。大学生ML派の集会に参加している。学校側の指導説得をきかないで、ビラを配つたり、落書をした。』との記載が、欠席の主な理由欄には『風邪、発熱、集会又はデモに参加して疲労のため』という趣旨の記載がされていたというのであるが、…いずれの記載も、Xの思想、信条そのものを記載したものでないことは明らかであり、右の記載に係る外部的行為によつてはXの思想、信条を了知し得るものではないし、また、Xの思想、信条自体を高等学校の入学者選抜の資料に供したものとは到底解することができないから、所論違憲の主張は、その前提を欠き、採用できない。」
 ②「原判決の適法に認定したところによると、本件中学校においては、学校当局の許可を受けないで校内においてビラ等の文書を配付すること等を禁止する旨を規定した生徒会規則が存在し、本件調査書の備考欄等の記載事項中、上告人が麹町中全共闘を名乗つて機関紙「砦」を発行したこと、学校文化祭の際ビラまきを行つたこと、ビラを配付したり落書をしたことの行為がいずれも学校当局の許可なくしてされたものであることは、本件調査書に記載されたところから明らかである。
 表現の自由といえども公共の福祉によつて制約を受けるものであるが(最高裁昭和年(行ツ)第156号同59年12月12日大法廷判決・民集38巻12号1308頁参照)、前記の上告人の行為は、原審の適法に確定したところによれば、いずれも中学校における学習とは全く関係のないものというのであり、かかるビラ等の文書の配付及び落書を自由とすることは、中学校における教育環境に悪影響を及ぼし、学習効果の減殺等学習効果をあげる上において放置できない弊害を発生させる相当の蓋然性があるものということができるのであるから、かかる弊害を未然に防止するため、右のような行為をしないよう指導説得することはもちろん、前記生徒会規則において生徒の校内における文書の配付を学校当局の許可にかからしめ、その許可のない文書の配付を禁止することは、必要かつ合理的な範囲の制約であつて、憲法二一条に違反するものでないことは、当裁判所昭和52年(オ)第927号同58年6月22日大法廷判決(民集37巻5号793頁)の趣旨に徴して明らかである。したがつて、仮に、義務教育課程にある中学生について一般人と同様の表現の自由があるものとしても、前記…において説示したとおり、調査書には、入学者の選抜の資料の一とされる目的に適合するよう生徒の性格、行動に関しても、これを把握し得る客観的事実を公正に記載すべきものである以上、上告人の右生徒会規則に違反する前記行為及び大学生ML派の集会の参加行為をいずれも上告人の性格、行動を把握し得る客観的事実としてこれらを本件調査書に記載し、入学者選抜の資料に供したからといつて、上告人の表現の自由を侵し又は違法に制約するものとすることはできず、所論は採用できない。」
過去問・解説
(H26 司法 第4問 ウ)
中学校の内申書にその学校の全共闘を名乗って機関紙を発行したなどと記載した場合、それ自体は客観的な事実であっても、その記載に係る外部的行為から一定の思想信条を了知し得る。

(正答)  

(解説)
麹町中学校内申書事件判決(最判昭63.7.15)が、「本件調査書の備考欄及び特記事項欄にはおおむね『校内において麹町中全共闘を名乗り、機関紙『砦』を発行した。学校文化祭の際、文化祭粉砕を叫んで他校生徒と共に校内に乱入し、ビラまきを行った。大学生ML派の集会に参加している。学校側の指導説得をきかないで、ビラを配ったり、落書をした。』との記載が、欠席の主な理由欄には「風邪、発熱、集会又はデモに参加して疲労のため」という趣旨の記載がされていたというのであるが、右のいずれの記載も、上告人の思想、信条そのものを記載したものでないことは明らかであり、右の記載に係る外部的行為によっては上告人の思想、信条を了知し得るものではない」としている。

(R3 司法 第4問 イ)
公立中学校の校長が、同校の生徒について、大学生の政治集会に参加しているなどと記載した内申書を作成提出することは、同記載が生徒の思想、信条そのものを記載したものでなく、同記載に係る外部的行為によっては生徒の思想、信条を了知し得るものではないし、また、生徒の思想、信条自体を高等学校の入学者選抜の資料に供したものと解することはできないから、憲法第19条に違反しない。

(正答)  

(解説)
麹町中学校内申書事件判決(最判昭63.7.15)が、「本件調査書の備考欄及び特記事項欄にはおおむね『校内において麹町中全共闘を名乗り、機関紙『砦』を発行した。学校文化祭の際、文化祭粉砕を叫んで他校生徒と共に校内に乱入し、ビラまきを行った。大学生ML派の集会に参加している。学校側の指導説得をきかないで、ビラを配ったり、落書をした。』との記載が、欠席の主な理由欄には「風邪、発熱、集会又はデモに参加して疲労のため」という趣旨の記載がされていたというのであるが、右のいずれの記載も、上告人の思想、信条そのものを記載したものでないことは明らかであり、右の記載に係る外部的行為によっては上告人の思想、信条を了知し得るものではないし、また、上告人の思想、信条自体を高等学校の入学者選抜の資料に供したものとは到底解することができないから、所論違憲の主張は、その前提を欠き、採用できない。」としている。
総合メモ
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