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行政代執行法
国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟の適否 最三小判平成14年7月9日
概要
国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、不適法である。
判例
事案:地方自治法上の普通地方公共団体であるXが、パチンコ店を建築しようとするYに対し、パチンコ店等の建築等の規制に関する条例に基づき、同工事を続行してはならない旨の裁判を求めた事案において、国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟の適否が問題となった。
判旨:「行政事件を含む民事事件において裁判所がその固有の権限に基づいて審判することのできる対象は、裁判所法3条1項にいう『法律上の争訟』、すなわち当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ、それが法令の適用により終局的に解決することができるものに限られる(最高裁昭和51年(オ)第749号同56年4月7日第三小法廷判決・民集35巻3号443頁参照)。国又は地方公共団体が提起した訴訟であって、財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合には、法律上の争訟に当たるというべきであるが、国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許されるものと解される。そして、行政代執行法は、行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、同法の定めるところによるものと規定して(1条)、同法が行政上の義務の履行に関する一般法であることを明らかにした上で、その具体的な方法としては、同法2条の規定による代執行のみを認めている。また、行政事件訴訟法その他の法律にも、一般に国又は地方公共団体が国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟を提起することを認める特別の規定は存在しない。したがって、国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、裁判所法3条1項にいう法律上の争訟に当たらず、これを認める特別の規定もないから、不適法というべきである。」
判旨:「行政事件を含む民事事件において裁判所がその固有の権限に基づいて審判することのできる対象は、裁判所法3条1項にいう『法律上の争訟』、すなわち当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ、それが法令の適用により終局的に解決することができるものに限られる(最高裁昭和51年(オ)第749号同56年4月7日第三小法廷判決・民集35巻3号443頁参照)。国又は地方公共団体が提起した訴訟であって、財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合には、法律上の争訟に当たるというべきであるが、国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許されるものと解される。そして、行政代執行法は、行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、同法の定めるところによるものと規定して(1条)、同法が行政上の義務の履行に関する一般法であることを明らかにした上で、その具体的な方法としては、同法2条の規定による代執行のみを認めている。また、行政事件訴訟法その他の法律にも、一般に国又は地方公共団体が国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟を提起することを認める特別の規定は存在しない。したがって、国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、裁判所法3条1項にいう法律上の争訟に当たらず、これを認める特別の規定もないから、不適法というべきである。」
過去問・解説
(H20 司法 第30問 ウ)
Aは、国有地である河川区域内の土地について行政庁Bから河川法第24条の占用許可を受けていたが、同法第26条第1項の許可を受けることなく当該土地上に工作物を設置した。以下の記述について、それぞれ正しい場合には〇を、誤っている場合には×を選びなさい。
【参照条文】河川法
第24条 河川区域内の土地(中略)を占用しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。
第26条 河川区域内の土地において工作物を新築し、改築し、又は除却しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。(以下略)
2~5 (略)
第75条 河川管理者は、次の各号のいずれかに該当する者に対して、この法律若しくはこの法律に基づく政令若しくは都道府県の条例の規定によって与えた許可若しくは承認を取り消し、(中略)、又は工事その他の行為の中止、工作物の改築若しくは除却(中略)その他の措置をとること若しくは河川を原状に回復することを命ずることができる。
一 この法律若しくはこの法律に基づく政令若しくは都道府県の条例の規定若しくはこれらの規定に基づく処分に違反した者、(以下略)
二、三 (略)
2~10 (略)
【記述】
Bが、行政代執行法に基づく代執行により当該工作物を除却することができる場合であっても、国は、当該土地の所有権に基づいて工作物収去土地明渡しを求める民事訴訟を提起し、確定判決を得て民事執行により当該工作物を撤去することができる。
Aは、国有地である河川区域内の土地について行政庁Bから河川法第24条の占用許可を受けていたが、同法第26条第1項の許可を受けることなく当該土地上に工作物を設置した。以下の記述について、それぞれ正しい場合には〇を、誤っている場合には×を選びなさい。
【参照条文】河川法
第24条 河川区域内の土地(中略)を占用しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。
第26条 河川区域内の土地において工作物を新築し、改築し、又は除却しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。(以下略)
2~5 (略)
第75条 河川管理者は、次の各号のいずれかに該当する者に対して、この法律若しくはこの法律に基づく政令若しくは都道府県の条例の規定によって与えた許可若しくは承認を取り消し、(中略)、又は工事その他の行為の中止、工作物の改築若しくは除却(中略)その他の措置をとること若しくは河川を原状に回復することを命ずることができる。
一 この法律若しくはこの法律に基づく政令若しくは都道府県の条例の規定若しくはこれらの規定に基づく処分に違反した者、(以下略)
二、三 (略)
2~10 (略)
【記述】
Bが、行政代執行法に基づく代執行により当該工作物を除却することができる場合であっても、国は、当該土地の所有権に基づいて工作物収去土地明渡しを求める民事訴訟を提起し、確定判決を得て民事執行により当該工作物を撤去することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平14.7.9)は、「国又は地方公共団体が提起した訴訟であって、財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合には、法律上の争訟に当たる…。」としている。
そして、国が当該土地の所有権に基づいて工作物収去土地明渡しを求める民事訴訟は、「財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合」に当たる。
したがって、本肢のような場合であっても、国は、当該土地の所有権に基づいて工作物収去土地明渡しを求める民事訴訟を提起し、確定判決を得て民事執行により当該工作物を撤去することができる。
判例(最判平14.7.9)は、「国又は地方公共団体が提起した訴訟であって、財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合には、法律上の争訟に当たる…。」としている。
そして、国が当該土地の所有権に基づいて工作物収去土地明渡しを求める民事訴訟は、「財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合」に当たる。
したがって、本肢のような場合であっても、国は、当該土地の所有権に基づいて工作物収去土地明渡しを求める民事訴訟を提起し、確定判決を得て民事執行により当該工作物を撤去することができる。
(H26 共通 第27問 エ)
本件訴えは、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものではないから、法律上の争訟に当たらない。
本件訴えは、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものではないから、法律上の争訟に当たらない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平14.7.9)は、「国又は地方公共団体が提起した訴訟であって、財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合には、法律上の争訟に当たるというべきであるが、国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許される…。」としている。
判例(最判平14.7.9)は、「国又は地方公共団体が提起した訴訟であって、財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合には、法律上の争訟に当たるというべきであるが、国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許される…。」としている。
(H26 共通 第28問 エ)
Aは、海岸保全区域に当たる海岸で、海岸管理者であるB県知事の許可を受けずに、レジャー施設(以下「本件施設」という。)を設置しており、更に本件施設を拡張しようとしている。これに対し、B県知事は、海岸法(以下「法」という。)第12条により本件施設の除却を求める処分(以下「本件監督処分」という。)、及びAが本件監督処分に従わない場合の代執行(以下「本件代執行」という。)を含めて、様々な措置を執ることを検討している。Aに対し執ることが想定される措置に関する以下の記述について、それぞれ正しい場合には〇を、誤っている場合には×を選びなさい。
【参照条文】海岸法
第7条 海岸管理者以外の者が海岸保全区域(中略)内において、海岸保全施設以外の施設又は工作物(以下(中略)第12条において「他の施設等」という。)を設けて当該海岸保全区域を占用しようとするときは、(中略)海岸管理者の許可を受けなければならない。
2 (略)
第11条 海岸管理者は、(中略)第7条第1項(中略)の規定による許可を受けた者から占用料(中略)を徴収することができる。(以下略)
第12条 海岸管理者は、次の各号の一に該当する者に対して(中略)他の施設等の(中略)除却(中略)を命ずることができる。
一 第7条第1項(中略)の規定に違反した者
二・三 (略)
2~10 (略)
第41条 次の各号の一に該当する者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
一 第7条第1項の規定に違反して海岸保全区域を占用した者
二・三 (略)
【記述】
最高裁判所の判例によれば、B県が、占有保全の訴えを提起して、Aによる本件施設の拡張を予防することはできない。
Aは、海岸保全区域に当たる海岸で、海岸管理者であるB県知事の許可を受けずに、レジャー施設(以下「本件施設」という。)を設置しており、更に本件施設を拡張しようとしている。これに対し、B県知事は、海岸法(以下「法」という。)第12条により本件施設の除却を求める処分(以下「本件監督処分」という。)、及びAが本件監督処分に従わない場合の代執行(以下「本件代執行」という。)を含めて、様々な措置を執ることを検討している。Aに対し執ることが想定される措置に関する以下の記述について、それぞれ正しい場合には〇を、誤っている場合には×を選びなさい。
【参照条文】海岸法
第7条 海岸管理者以外の者が海岸保全区域(中略)内において、海岸保全施設以外の施設又は工作物(以下(中略)第12条において「他の施設等」という。)を設けて当該海岸保全区域を占用しようとするときは、(中略)海岸管理者の許可を受けなければならない。
2 (略)
第11条 海岸管理者は、(中略)第7条第1項(中略)の規定による許可を受けた者から占用料(中略)を徴収することができる。(以下略)
第12条 海岸管理者は、次の各号の一に該当する者に対して(中略)他の施設等の(中略)除却(中略)を命ずることができる。
一 第7条第1項(中略)の規定に違反した者
二・三 (略)
2~10 (略)
第41条 次の各号の一に該当する者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
一 第7条第1項の規定に違反して海岸保全区域を占用した者
二・三 (略)
【記述】
最高裁判所の判例によれば、B県が、占有保全の訴えを提起して、Aによる本件施設の拡張を予防することはできない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平14.7.9)は、「国又は地方公共団体が提起した訴訟であって、財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合には、法律上の争訟に当たるというべきであるが、国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許される…。」としている。
そして、B県が、占有保全の訴えを提起して、Aによる本件施設の拡張を予防することは、財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるものに当たる。
したがって、B県は、占有保全の訴えを提起して、Aによる本件施設の拡張を予防することができる。
判例(最判平14.7.9)は、「国又は地方公共団体が提起した訴訟であって、財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合には、法律上の争訟に当たるというべきであるが、国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許される…。」としている。
そして、B県が、占有保全の訴えを提起して、Aによる本件施設の拡張を予防することは、財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるものに当たる。
したがって、B県は、占有保全の訴えを提起して、Aによる本件施設の拡張を予防することができる。
(H29 予備 第17問 イ)
国が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許される。
国が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許される。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平14.7.9)は、「国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許される…。」としている。
判例(最判平14.7.9)は、「国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許される…。」としている。
(R5 予備 第17問 イ)
建築工事の中止命令の不履行があったときにこれを強制的に履行させるための手段が当該条例に定められていない場合であれば、地方公共団体は、条例に基づく建築工事の中止命令に従わない者に対し、当該工事の続行禁止を求める民事訴訟を提起することができる。
建築工事の中止命令の不履行があったときにこれを強制的に履行させるための手段が当該条例に定められていない場合であれば、地方公共団体は、条例に基づく建築工事の中止命令に従わない者に対し、当該工事の続行禁止を求める民事訴訟を提起することができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平14.7.9)は、「国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許される…。」としている。
地方公共団体が、条例に基づく建築工事の中止命令に従わない者に対し、当該工事の続行禁止を求める民事訴訟は、「地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟」に当たる。
したがって、強制的に履行させるための手段が当該条例に定められていない場合には、当該工事の続行禁止を求める民事訴訟を提起することは許されない。
判例(最判平14.7.9)は、「国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許される…。」としている。
地方公共団体が、条例に基づく建築工事の中止命令に従わない者に対し、当該工事の続行禁止を求める民事訴訟は、「地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟」に当たる。
したがって、強制的に履行させるための手段が当該条例に定められていない場合には、当該工事の続行禁止を求める民事訴訟を提起することは許されない。
総合メモ
滞納処分の例による強制徴収の手段を与えられている債権と民事訴訟法上の強制執行 最大判昭和41年2月23日
概要
農業共済組合の農作物共済掛金、賦課金および拠出金の徴収については、農業災害補償法第87条の2所定の手続によるべきものであって、民事訴訟法による強制執行は許されず、その履行を裁判所に請求することもできない。
判例
事案: 農業共済組合連合会であるXが、構成組合員である訴外組合に対し、保険関係の成立に伴う農業共済保険料等の債権を有し、訴外組合が訴外組合の組合員であるYに対し、建物共済掛金債権等を有しているところ、Xが、訴外組合に対する前記債権保全のため、訴外組合に代位し、Yに対し農業共済掛金等を請求した事案において、農業共済組合の農作物共済掛金、賦課金および拠出金の徴収と民事訴訟法上の手続の関係が問題となった。
判旨:「農業災害補償法87条の2によれば、農業共済組合は、農作物共済もしくは蚕繭共済にかかる共済掛金又は賦課金を滞納する者がある場合には、督促状により期限を指定してこれを督促することを要し、その督促を受けた者が指定期限までにこれを完納しないときは、市町村に対し、その徴収を請求することができ、市町村は、右請求に応じて地方税の滞納処分の例によりこれを処分すべく、若し市町村が右請求を受けた日から30日以内にその処分に着手せず、又は90日以内にこれを終了しないときは、農業共済組合は、都道府県知事の認可を受けて、自ら地方税の滞納処分の例により処分することができることになっており、右徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとされる等、その債権の実現について、特別の便宜が与えられている。また、きよ出金の滞納についても、農業共済基金法46条により、前示農業災害補償法87条の2の規定が準用され、右と同じ取扱いが認められている。かように、農業共済組合が組合員に対して有するこれら債権について、法が一般私法上の債権にみられない特別の取扱いを認めているのは、農業災害に関する共済事業の公共性に鑑み、その事業遂行上必要な財源を確保するためには、農業共済組合が強制加入制のもとにこれに加入する多数の組合員から収納するこれらの金円につき、租税に準ずる簡易迅速な行政上の強制徴収の手段によらしめることが、もっとも適切かつ妥当であるとしたからにほかならない。 論旨は、農業災害補償法87条の2がこれら債権に行政上の強制徴収の手段を認めていることは、これら債権について、一般私法上の債権とひとしく、民訴法上の強制執行の手段をとることを排除する趣旨でないと主張する。 しかし、農業共済組合が、法律上特にかような独自の強制徴収の手段を与えられながら、この手段によることなく、一般私法上の債権と同様、訴えを提起し、民訴法上の強制執行の手段によってこれら債権の実現を図ることは、前示立法の趣旨に反し、公共性の強い農業共済組合の権能行使の適正を欠くものとして、許されないところといわなければならない。 論旨は、また、農業共済組合連合会がその会員たる各農業共済組合に対して有する保険料債権に関しては、法は何ら特別の徴収方法を認めておらず、したがってその徴収は、民訴法に基づく以外方法がないものとし、第1審判決を引用する原判決が公法上の金銭債権である共済掛金等の実現は民訴法に基づく強制執行によることは許されない旨判示したのは矛盾であるというが、この点につき原判決の引用する第1審判決は、法が特に行政上の強制徴収を認めた債権について、右の判示をしたものであることその判文上明らかであるから、所論の非難は当らない。 ちなみに、本件は、農業共済組合連合会が、その会員たる農業共済組合に代位して、農業共済組合の組合員に対し、右各債権を訴求したものであるが、元来、農業共済組合自体が有しない権能を農業共済組合連合会が代位行使することは許されないと解すべきである。」
判旨:「農業災害補償法87条の2によれば、農業共済組合は、農作物共済もしくは蚕繭共済にかかる共済掛金又は賦課金を滞納する者がある場合には、督促状により期限を指定してこれを督促することを要し、その督促を受けた者が指定期限までにこれを完納しないときは、市町村に対し、その徴収を請求することができ、市町村は、右請求に応じて地方税の滞納処分の例によりこれを処分すべく、若し市町村が右請求を受けた日から30日以内にその処分に着手せず、又は90日以内にこれを終了しないときは、農業共済組合は、都道府県知事の認可を受けて、自ら地方税の滞納処分の例により処分することができることになっており、右徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとされる等、その債権の実現について、特別の便宜が与えられている。また、きよ出金の滞納についても、農業共済基金法46条により、前示農業災害補償法87条の2の規定が準用され、右と同じ取扱いが認められている。かように、農業共済組合が組合員に対して有するこれら債権について、法が一般私法上の債権にみられない特別の取扱いを認めているのは、農業災害に関する共済事業の公共性に鑑み、その事業遂行上必要な財源を確保するためには、農業共済組合が強制加入制のもとにこれに加入する多数の組合員から収納するこれらの金円につき、租税に準ずる簡易迅速な行政上の強制徴収の手段によらしめることが、もっとも適切かつ妥当であるとしたからにほかならない。 論旨は、農業災害補償法87条の2がこれら債権に行政上の強制徴収の手段を認めていることは、これら債権について、一般私法上の債権とひとしく、民訴法上の強制執行の手段をとることを排除する趣旨でないと主張する。 しかし、農業共済組合が、法律上特にかような独自の強制徴収の手段を与えられながら、この手段によることなく、一般私法上の債権と同様、訴えを提起し、民訴法上の強制執行の手段によってこれら債権の実現を図ることは、前示立法の趣旨に反し、公共性の強い農業共済組合の権能行使の適正を欠くものとして、許されないところといわなければならない。 論旨は、また、農業共済組合連合会がその会員たる各農業共済組合に対して有する保険料債権に関しては、法は何ら特別の徴収方法を認めておらず、したがってその徴収は、民訴法に基づく以外方法がないものとし、第1審判決を引用する原判決が公法上の金銭債権である共済掛金等の実現は民訴法に基づく強制執行によることは許されない旨判示したのは矛盾であるというが、この点につき原判決の引用する第1審判決は、法が特に行政上の強制徴収を認めた債権について、右の判示をしたものであることその判文上明らかであるから、所論の非難は当らない。 ちなみに、本件は、農業共済組合連合会が、その会員たる農業共済組合に代位して、農業共済組合の組合員に対し、右各債権を訴求したものであるが、元来、農業共済組合自体が有しない権能を農業共済組合連合会が代位行使することは許されないと解すべきである。」
過去問・解説
(H29 予備 第17問 ア)
行政上の強制徴収が認められている金銭債権については、その履行を求める民事訴訟を提起することはできず、民事執行法による強制執行をすることも許されない。
行政上の強制徴収が認められている金銭債権については、その履行を求める民事訴訟を提起することはできず、民事執行法による強制執行をすることも許されない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭41.2.23)は、「農業共済組合が、法律上特にかような独自の強制徴収の手段を与えられながら、この手段によることなく、一般私法上の債権と同様、訴えを提起し、民訴法上の強制執行の手段によってこれら債権の実現を図ることは、前示立法の趣旨に反し、公共性の強い農業共済組合の権能行使の適正を欠くものとして、許されない…。」としている。
判例(最判昭41.2.23)は、「農業共済組合が、法律上特にかような独自の強制徴収の手段を与えられながら、この手段によることなく、一般私法上の債権と同様、訴えを提起し、民訴法上の強制執行の手段によってこれら債権の実現を図ることは、前示立法の趣旨に反し、公共性の強い農業共済組合の権能行使の適正を欠くものとして、許されない…。」としている。
(R5 予備 第17問 ア)
行政主体が有する金銭債権に行政上の強制徴収の手段が法律で認められている場合、当該行政主体が、その手段によることなく、当該金銭債権に係る債務の履行を求める民事訴訟を提起することは許されない。
行政主体が有する金銭債権に行政上の強制徴収の手段が法律で認められている場合、当該行政主体が、その手段によることなく、当該金銭債権に係る債務の履行を求める民事訴訟を提起することは許されない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭41.2.23)は、「農業共済組合が、法律上特にかような独自の強制徴収の手段を与えられながら、この手段によることなく、一般私法上の債権と同様、訴えを提起し、民訴法上の強制執行の手段によってこれら債権の実現を図ることは、前示立法の趣旨に反し、公共性の強い農業共済組合の権能行使の適正を欠くものとして、許されない…。」としている。
判例(最判昭41.2.23)は、「農業共済組合が、法律上特にかような独自の強制徴収の手段を与えられながら、この手段によることなく、一般私法上の債権と同様、訴えを提起し、民訴法上の強制執行の手段によってこれら債権の実現を図ることは、前示立法の趣旨に反し、公共性の強い農業共済組合の権能行使の適正を欠くものとして、許されない…。」としている。
総合メモ
鉄道営業法42条1項により鉄道係員が旅客公衆を車外または鉄道地外に退去させるにあたり必要最少限度の強制力を用いることの可否 最大判昭和48年4月25日
概要
鉄道営業法42条1項により鉄道係員が当該の旅客、公衆を車外または鉄道地外に退去させるにあたつて、旅客、公衆が自発的な退去に応じない場合、または危険が切迫する等やむをえない場合には、鉄道係員において当該具体的事情に応じて必要最少限度の強制力を用いることができ、このように解しても、憲法31条に違反しない。
判例
事案:国鉄労働組合の組合員である被告人3名が、年度末手当の増額支給等の要求のための争議に際し、ピケに参加し、本件てこ扱所に立入り、国鉄労組員数名と共謀し、数十回にわたり鉄道公安職員に水を浴びせかけたとして起訴された事案において、鉄道営業法42条1項により鉄道係員が旅客公衆を車外または鉄道地外に退去させるにあたり必要最少限度の強制力を用いることの可否とそれをすることが憲法31条に違反しないか問題となった。
判旨:「鉄道営業法42条1項は、旅客、公衆が停車場その他鉄道地内にみだりに立ち入ったとき等同項各号に定める所為に及んだ場合、鉄道係員は、当該旅客、公衆を車外または鉄道地外に退去させうる旨を規定している。けだし、鉄道施設は、不特定多数の旅客および公衆が利用するものであり、また、性質上特別の危険性を蔵するものであるから、車内または鉄道地内における法規ないし秩序違反の行動は、これをすみやかに排除する必要があるためにほかならない。すなわち、同条項は、鉄道事業の公共性にかんがみ、事業の安全かつ確実な運営を可能ならしめるため、とくにかかる運営につき責任を負う鉄道事業者に直接にこの排除の権限を付与したものである(同様の趣旨の根拠に基づく規定として、航空法73条の3第1項は、航空機の機長に、航空機の安全に危害を及ぼす行為をする者等に対し必要な限度で拘束その他抑止の措置をとり、またはその者等を降機させる権限を認め、また、同法86条の2第1項は、航空運送事業者に危険物件を航空機内から取り卸す権限を認めている。)。そして、鉄道営業法42条1項の規定により、鉄道係員が当該旅客、公衆を車外または鉄道地外に退去させるにあたっては、まず退去を促して自発的に退去させるのが相当であり、また、この方法をもって足りるのが通常であるが、自発的な退去に応じない場合、または危険が切迫する等やむをえない事情がある場合には、警察官の出動を要請するまでもなく、鉄道係員において当該具体的事情に応じて必要最少限度の強制力を用いうるものであり、また、このように解しても前述のような鉄道事業の公共性に基づく合理的な規定として、憲法31条に違反するものではないと解すべきである。なお、警察官職務執行法所定の警察官の職務執行は、一般社会においてひろく個人の生命、身体、財産の保護、犯罪の予防、公安の維持、法令の執行等のために、執行の場所、理由、相手方、方法等が予定されることなく、随時必要な場合になされるべき性質のものであるのに対し、鉄道営業法42条1項所定の鉄道係員による退去強制は、右のように鉄道事業の公共性に基づいて鉄道事業者にとくに認められたものであり、その権限の行使も、現に車内または鉄道地内において所定の法規に違反し、ないしは秩序を乱す者をとりあえず車外または鉄道地外に退去させるにとどまり、それ以上には出ないものであって、両者は、人身に対する強制という点では相似たところがあるにしても、明らかにその性格を異にするものである。」
判旨:「鉄道営業法42条1項は、旅客、公衆が停車場その他鉄道地内にみだりに立ち入ったとき等同項各号に定める所為に及んだ場合、鉄道係員は、当該旅客、公衆を車外または鉄道地外に退去させうる旨を規定している。けだし、鉄道施設は、不特定多数の旅客および公衆が利用するものであり、また、性質上特別の危険性を蔵するものであるから、車内または鉄道地内における法規ないし秩序違反の行動は、これをすみやかに排除する必要があるためにほかならない。すなわち、同条項は、鉄道事業の公共性にかんがみ、事業の安全かつ確実な運営を可能ならしめるため、とくにかかる運営につき責任を負う鉄道事業者に直接にこの排除の権限を付与したものである(同様の趣旨の根拠に基づく規定として、航空法73条の3第1項は、航空機の機長に、航空機の安全に危害を及ぼす行為をする者等に対し必要な限度で拘束その他抑止の措置をとり、またはその者等を降機させる権限を認め、また、同法86条の2第1項は、航空運送事業者に危険物件を航空機内から取り卸す権限を認めている。)。そして、鉄道営業法42条1項の規定により、鉄道係員が当該旅客、公衆を車外または鉄道地外に退去させるにあたっては、まず退去を促して自発的に退去させるのが相当であり、また、この方法をもって足りるのが通常であるが、自発的な退去に応じない場合、または危険が切迫する等やむをえない事情がある場合には、警察官の出動を要請するまでもなく、鉄道係員において当該具体的事情に応じて必要最少限度の強制力を用いうるものであり、また、このように解しても前述のような鉄道事業の公共性に基づく合理的な規定として、憲法31条に違反するものではないと解すべきである。なお、警察官職務執行法所定の警察官の職務執行は、一般社会においてひろく個人の生命、身体、財産の保護、犯罪の予防、公安の維持、法令の執行等のために、執行の場所、理由、相手方、方法等が予定されることなく、随時必要な場合になされるべき性質のものであるのに対し、鉄道営業法42条1項所定の鉄道係員による退去強制は、右のように鉄道事業の公共性に基づいて鉄道事業者にとくに認められたものであり、その権限の行使も、現に車内または鉄道地内において所定の法規に違反し、ないしは秩序を乱す者をとりあえず車外または鉄道地外に退去させるにとどまり、それ以上には出ないものであって、両者は、人身に対する強制という点では相似たところがあるにしても、明らかにその性格を異にするものである。」
過去問・解説
(R3 予備 第17問 ウ)
公務員である鉄道公安職員が、鉄道施設に立ち入り、座り込むなどした労働組合員を実力で退去させた事案に関する最高裁判所大法廷判決の多数意見は、鉄道公安職員による強制的な退去行為について、危険が切迫する等やむを得ない事情が認められる場合には、法律による明文の根拠がなくても、具体的事情に応じて必要最小限度の強制力を用いることができるとして適法性を肯定した。
公務員である鉄道公安職員が、鉄道施設に立ち入り、座り込むなどした労働組合員を実力で退去させた事案に関する最高裁判所大法廷判決の多数意見は、鉄道公安職員による強制的な退去行為について、危険が切迫する等やむを得ない事情が認められる場合には、法律による明文の根拠がなくても、具体的事情に応じて必要最小限度の強制力を用いることができるとして適法性を肯定した。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭48.4.25)は、「鉄道営業法42条1項の規定により、鉄道係員が当該旅客、公衆を車外または鉄道地外に退去させるにあたっては、まず退去を促して自発的に退去させるのが相当であり、また、この方法をもって足りるのが通常であるが、自発的な退去に応じない場合、または危険が切迫する等やむをえない事情がある場合には、警察官の出動を要請するまでもなく、鉄道係員において当該具体的事情に応じて必要最少限度の強制力を用いうるものであり、また、このように解しても前述のような鉄道事業の公共性に基づく合理的な規定として、憲法31条に違反するものではない…。」として、鉄道営業法42条1項を根拠として、強制的な退去行為を適法としている。
したがって、法律による明文の根拠がない場合、具体的事情に応じて必要最小限度の強制力を用いることができるとはいえない。
判例(最判昭48.4.25)は、「鉄道営業法42条1項の規定により、鉄道係員が当該旅客、公衆を車外または鉄道地外に退去させるにあたっては、まず退去を促して自発的に退去させるのが相当であり、また、この方法をもって足りるのが通常であるが、自発的な退去に応じない場合、または危険が切迫する等やむをえない事情がある場合には、警察官の出動を要請するまでもなく、鉄道係員において当該具体的事情に応じて必要最少限度の強制力を用いうるものであり、また、このように解しても前述のような鉄道事業の公共性に基づく合理的な規定として、憲法31条に違反するものではない…。」として、鉄道営業法42条1項を根拠として、強制的な退去行為を適法としている。
したがって、法律による明文の根拠がない場合、具体的事情に応じて必要最小限度の強制力を用いることができるとはいえない。