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処分性(法的効果の直接性・具体性)

建築基準法42条2項所定のいわゆる二項道路の一括指定 最一小判平成14年1月17日

概要
個別的な方法でなく一括指定の方法によるみなし道路の指定であっても、個別の土地に具体的な私権の制限が生ずるため、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
判例
事案:建築基準法42条2項に基づく告示による一括指定の方法によるみなし道路の指定の無効等確認訴訟において、この指定が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるかが問題となった。

判旨:「法42条2項は、同条1項各号の道路に該当しない道であっても、法第3章の規定が適用されるに至った時点において、現に建築物が立ち並んでいる幅員4m未満の道で、特定行政庁の指定したものは、同項の道路とみなし、その中心線から水平距離2mの線を道路の境界とみなすものとしている。 同条2項の特定行政庁の指定は、同項の要件を満たしている道について、個別具体的に対象となる道を2項道路に指定するいわゆる個別指定の方法でされることがある一方で、本件告示のように、一定の条件に合致する道について一律に2項道路に指定するいわゆる一括指定の方法でされることがある。同項の文言のみからは、一括指定の方法をも予定しているか否かは必ずしも明らかではないが、法の前身というべき市街地建築物法の建築線制度における行政官庁による指定建築線については行政官庁の制定する細則による一括指定もされていたこと、同項の規定は法の適用時点において多数存在していた幅員4m未満の道に面する敷地上の既存建築物を救済する目的を有すること、現に法施行直後から多数の特定行政庁において一括指定の方法による2項道路の指定がされたが、このような指定方法自体が法の運用上問題とされることもなかったことなどを勘案すれば、同項はこのような一括指定の方法による特定行政庁の指定も許容しているものと解することができる。 本件告示は、幅員4m未満1.8m以上の道を一括して2項道路として指定するものであるが、これによって、法第3章の規定が適用されるに至った時点において現に建築物が立ち並んでいる幅員4m未満の道のうち、本件告示の定める幅員1.8m以上の条件に合致するものすべてについて2項道路としての指定がされたこととなり、当該道につき指定の効果が生じるものと解される。原判決は、特定の土地について個別具体的に2項道路の指定をするものではない本件告示自体によって直ちに私権制限が生じるものではない旨をいう。しかしながら、それが、本件告示がされた時点では2項道路の指定の効果が生じていないとする趣旨であれば、結局、本件告示の定める条件に合致する道であっても、個別指定の方法による指定がない限り、特定行政庁による2項道路の指定がないことに帰することとなり、そのような見解は相当とはいえない。 そして、本件告示によって2項道路の指定の効果が生じるものと解する以上、このような指定の効果が及ぶ個々の道は2項道路とされ、その敷地所有者は当該道路につき道路内の建築等が制限され(法44条)、私道の変更又は廃止が制限される(法45条)等の具体的な私権の制限を受けることになるのである。そうすると、特定行政庁による2項道路の指定は、それが一括指定の方法でされた場合であっても、個別の土地についてその本来的な効果として具体的な私権制限を発生させるものであり、個人の権利義務に対して直接影響を与えるものということができる。 したがって、本件告示のような一括指定の方法による2項道路の指定も、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると解すべきである。 そして、本件訴えは、本件通路部分について、本件告示による2項道路の指定の不存在確認を求めるもので、行政事件訴訟法3条4項にいう処分の存否の確認を求める抗告訴訟であり、同法36条の要件を満たすものということができる。」
過去問・解説
(H29 予備 第19問 イ)
森林法に基づく保安林の指定など、人ではなく物を対象とする行政庁の決定は、特定の者を名宛人とするものではないから、取消訴訟の対象となる処分に当たることはない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭57.9.9)は、森林法に基づく保安林指定解除処分という対物処分について、処分性が認められることを前提として、原告適格及び訴えの利益について判断している。また、別の判例(最判平14.1.17)は、2項道路一括指定という対物処分について、「本件告示のような一括指定の方法による2項道路の指定も、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる…。」としている。
したがって、森林法に基づく保安林の指定など、人ではなく物を対象とする行政庁の決定は、特定の者を名宛人とするものではないが、取消訴訟の対象となる処分に当たることがある。

(H30 予備 第20問 ア)
告示により一定の条件に合致する道を一括して道路に指定する方法でされた建築基準法第42条第2項所定のいわゆるみなし道路の指定は、特定の土地について個別具体的にこれを指定するものではなく、不特定多数の者に対して一般的抽象的な基準を定立するものにすぎないのであって、これによって直ちに建築制限等の私権制限が生じるものでないから、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。

【参照条文】建築基準法
(道路の定義)
第42条 (略)
2 この章の規定が適用されるに至つた際現に建築物が立ち並んでいる幅員4メートル未満の道で、特定行政庁の指定したものは、前項の規定にかかわらず、同項の道路とみなし、その中心線からの水平距離2メートル(中略)の線をその道路の境界線とみなす。(以下略)
3~6 (略)

(正答)

(解説)
判例(最判平14.1.1)は、「特定行政庁による2項道路の指定は、それが一括指定の方法でされた場合であっても、個別の土地についてその本来的な効果として具体的な私権制限を発生させるものであり、個人の権利義務に対して直接影響を与えるものということができる。したがって、本件告示のような一括指定の方法による2項道路の指定も、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる…。」としている。
したがって、不特定多数の者に対して一般的抽象的な基準を定立するものにすぎないとはいえない。また、みなし道路の指定によって直ちに建築制限等の私権制限が生じるものであるから、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当する。
総合メモ

土地区画整理事業の事業計画の決定 最大判平成20年9月10日

概要
土地区画整理法に基づく土地区画整理事業計画の決定の後には、換地処分という後続処分が予定されているが、施行地区内の宅地所有者等は、事業計画の決定の時点でその法的地位に直接的な影響が生ずる。また、換地処分の段階で取消訴訟を提起しても宅地所有者等の被る権利侵害に対する救済が十分に果たされるとはいい難いから、市町村の施行に係る土地区画整理事業の事業計画の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
判例
事案:土地区画整理法に基づく土地区画整理事業計画の決定そのものには、決定を受けた者の権利を制約する効果が伴わず、後に換地処分があって初めて権利制約が生じるところ、土地区画整理事業計画の決定そのものが抗告訴訟の対象としての行政処分に当たるかが問題となった。

判旨:「市町村は、土地区画整理事業を施行しようとする場合においては、施行規程及び事業計画を定めなければならず(法52条1項)、事業計画が定められた場合においては、市町村長は、遅滞なく、施行者の名称、事業施行期間、施行地区その他国土交通省令で定める事項を公告しなければならない(法55条9項)。そして、この公告がされると、換地処分の公告がある日まで、施行地区内において、土地区画整理事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更若しくは建築物その他の工作物の新築、改築若しくは増築を行い、又は政令で定める移動の容易でない物件の設置若しくはたい積を行おうとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならず(法76条1項)、これに違反した者がある場合には、都道府県知事は、当該違反者又はその承継者に対し、当該土地の原状回復等を命ずることができ(同条4項)、この命令に違反した者に対しては刑罰が科される(法140条)。このほか、施行地区内の宅地についての所有権以外の権利で登記のないものを有し又は有することとなった者は、書面をもってその権利の種類及び内容を施行者に申告しなければならず(法85条1項)、施行者は、その申告がない限り、これを存しないものとみなして、仮換地の指定や換地処分等をすることができることとされている(同条5項)。 また、土地区画整理事業の事業計画は、施行地区(施行地区を工区に分ける場合には施行地区及び工区)、設計の概要、事業施行期間及び資金計画という当該土地区画整理事業の基礎的事項を一般的に定めるものであるが(法54条、6条1項)、事業計画において定める設計の概要については、設計説明書及び設計図を作成して定めなければならず、このうち、設計説明書には、事業施行後における施行地区内の宅地の地積(保留地の予定地積を除く。)の合計の事業施行前における施行地区内の宅地の地積の合計に対する割合が記載され(これにより、施行地区全体でどの程度の減歩がされるのかが分かる。)、設計図(縮尺1200分の1以上のもの)には、事業施行後における施行地区内の公共施設等の位置及び形状が、事業施行により新設され又は変更される部分と既設のもので変更されない部分とに区別して表示されることから(平成17年国土交通省令第102号による改正前の土地区画整理法施行規則6条)、事業計画が決定されると、当該土地区画整理事業の施行によって施行地区内の宅地所有者等の権利にいかなる影響が及ぶかについて、一定の限度で具体的に予測することが可能になるのである。そして、土地区画整理事業の事業計画については、いったんその決定がされると、特段の事情のない限り、その事業計画に定められたところに従って具体的な事業がそのまま進められ、その後の手続として、施行地区内の宅地について換地処分が当然に行われることになる。前記の建築行為等の制限は、このような事業計画の決定に基づく具体的な事業の施行の障害となるおそれのある事態が生ずることを防ぐために法的強制力を伴って設けられているのであり、しかも、施行地区内の宅地所有者等は、換地処分の公告がある日まで、その制限を継続的に課され続けるのである。 そうすると、施行地区内の宅地所有者等は、事業計画の決定がされることによって、前記のような規制を伴う土地区画整理事業の手続に従って換地処分を受けるべき地位に立たされるものということができ、その意味で、その法的地位に直接的な影響が生ずるものというべきであり、事業計画の決定に伴う法的効果が一般的、抽象的なものにすぎないということはできない。 もとより、換地処分を受けた宅地所有者等やその前に仮換地の指定を受けた宅地所有者等は、当該換地処分等を対象として取消訴訟を提起することができるが、換地処分等がされた段階では、実際上、既に工事等も進ちょくし、換地計画も具体的に定められるなどしており、その時点で事業計画の違法を理由として当該換地処分等を取り消した場合には、事業全体に著しい混乱をもたらすことになりかねない。それゆえ、換地処分等の取消訴訟において、宅地所有者等が事業計画の違法を主張し、その主張が認められたとしても、当該換地処分等を取り消すことは公共の福祉に適合しないとして事情判決(行政事件訴訟法31条1項)がされる可能性が相当程度あるのであり、換地処分等がされた段階でこれを対象として取消訴訟を提起することができるとしても、宅地所有者等の被る権利侵害に対する救済が十分に果たされるとはいい難い。そうすると、事業計画の適否が争われる場合、実効的な権利救済を図るためには、事業計画の決定がされた段階で、これを対象とした取消訴訟の提起を認めることに合理性があるというべきである。 以上によれば、市町村の施行に係る土地区画整理事業の事業計画の決定は、施行地区内の宅地所有者等の法的地位に変動をもたらすものであって、抗告訴訟の対象とするに足りる法的効果を有するものということができ、実効的な権利救済を図るという観点から見ても、これを対象とした抗告訴訟の提起を認めるのが合理的である。したがって、上記事業計画の決定は、行政事件訴訟法3条2項にいう『行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為』に当たると解するのが相当である。」
過去問・解説
(H21 司法 第30問 ア)
最高裁判所の従来の判例は、言わば事業の青写真たるにすぎない一般的抽象的な単なる計画にとどまるなどとして土地区画整理事業計画の決定の処分性を否定していたが、本判決は、事業計画の決定に伴う法的効果が一般的抽象的なものにすぎなくとも抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとして判例を変更した。

(正答)

(解説)
従来の判例(最大判平41.2.23)は、「事業計画そのものとしては、…特定個人に向けられた具体的な処分ではなく、いわば当該土地区画整理事業の青写真たるにすぎない一般的・抽象的な単なる計画にとどまるものであって、…争訟の成熟性ないし具体的事件性を欠くものといわなければならない。」として、土地区画整理事業計画の決定の処分性を否定していた。
他方、判例(最大判平20.9.10)は、「施行地区内の宅地所有者等は、事業計画の決定がされることによって、…土地区画整理事業の手続に従って換地処分を受けるべき地位に立たされるものということができ、その意味で、その法的地位に直接的な影響が生ずるものというべきであり、事業計画の決定に伴う法的効果が一般的、抽象的なものにすぎないということはできない。」として、土地区画整理事業計画の決定の処分性を肯定している。
したがって、本判決は、事業計画の決定に伴う法的効果について、一般的抽象的なものにすぎないと捉えていない。

(H21 司法 第30問 イ)
都市計画法に基づき都市計画決定の一つとしてされる工業地域指定の決定の処分性を否定した最高裁判所の判例があるが、本判決の理由に従えば、同指定の決定についても、当該地域内において建築物の建築が制約されるという法的効果が発生するから、処分性が肯定されることになる。

(正答)

(解説)
従来の判例(最判昭57.4.22)は、「都市計画区域内において工業地域を指定する決定…が、当該地域内の土地所有者等に建築基準法上新たな制約を課し、その限度で一定の法状態の変動を生ぜしめるものであることは否定できないが、かかる効果は、あたかも新たに右のような制約を課する法令が制定された場合におけると同様の当該地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なそれにすぎず、このような効果を生ずるということだけから直ちに右地域内の個人に対する具体的な権利侵害を伴う処分があったものとして、これに対する抗告訴訟を肯定することはできない。…なお、右地域内の土地上に現実に前記のような建築の制限を超える建物の建築をしようとしてそれが妨げられている者が存する場合には、…右建築の実現を阻止する行政庁の具体的処分をとらえ、前記の地域指定が違法であることを主張して右処分の取消を求めることにより権利救済の目的を達する途が残されていると解されるから、前記のような解釈をとっても格別の不都合は生じないというべきである。」として、工業地域指定の決定の処分性を否定している。
他方、判例(最大判平20.9.10)は、「施行地区内の宅地所有者等は、事業計画の決定がされることによって、前記のような規制を伴う土地区画整理事業の手続に従って換地処分を受けるべき地位に立たされるものということができ、その意味で、その法的地位に直接的な影響が生ずるものというべきであり、事業計画の決定に伴う法的効果が一般的、抽象的なものにすぎないということはできない。」という理由に加え、「換地処分等の取消訴訟において、宅地所有者等が事業計画の違法を主張し、その主張が認められたとしても、当該換地処分等を取り消すことは公共の福祉に適合しないとして事情判決(行政事件訴訟法31条1項)がされる可能性が相当程度あるのであり、換地処分等がされた段階でこれを対象として取消訴訟を提起することができるとしても、宅地所有者等の被る権利侵害に対する救済が十分に果たされるとはいい難い。」という理由で、土地区画整理事業の事業計画の決定の処分性を肯定している。
したがって、後者の判例に従えば、工業地域指定の決定についても、当該地域内において建築物の建築が制約されるという法的効果に加え、その後の処分がなされた段階でこれを対象として取消訴訟を提起することができるとしても、宅地所有者等の被る権利侵害に対する救済が十分に果たされるとはいい難いといえて初めて、処分性が肯定されうる。

(H21 司法 第30問 ウ)
土地改良法に基づく国営又は都道府県営の土地改良事業の事業計画の決定について行政上の不服申立てが認められていることを根拠の一つとして、市町村営の土地改良事業に関し都道府県知事が行う事業施行の認可の処分性を認めた最高裁判所の判例があるが、本判決も、土地区画整理事業計画の決定に行政上の不服申立てが認められていることを理由に処分性を認めた。

(正答)

(解説)
判例(最大判平20.9.10)は、「施行地区内の宅地所有者等は、事業計画の決定がされることによって、前記のような規制を伴う土地区画整理事業の手続に従って換地処分を受けるべき地位に立たされるものということができ、その意味で、その法的地位に直接的な影響が生ずるものというべきであり、事業計画の決定に伴う法的効果が一般的、抽象的なものにすぎないということはできない。」とした上で、「換地処分等がされた段階でこれを対象として取消訴訟を提起することができるとしても、宅地所有者等の被る権利侵害に対する救済が十分に果たされるとはいい難い。そうすると、事業計画の適否が争われる場合、実効的な権利救済を図るためには、事業計画の決定がされた段階で、これを対象とした取消訴訟の提起を認めることに合理性があるというべきである。」としており、この2つを根拠として土地区画整理事業計画の決定の処分性を肯定している。

(H21 司法 第30問 エ)
都市再開発法に基づく第二種市街地再開発事業の施行地区内の土地の所有者等は、特段の事情のない限り、自己の所有地等が収用されるべき地位に立たされるなど、その法的地位に直接的な影響を受けるとして、当該事業に係る事業計画の決定の処分性を認めた最高裁判所の判例があるが、本判決も、土地区画整理事業の事業計画の施行地区内の宅地所有者等の法的地位に直接的な影響を及ぼすとの理由で同事業計画の決定の処分性を認めた。

(正答)

(解説)
判例(最判平4.11.26)は、「再開発事業計画の決定は、その公告の日から、土地収用法上の事業の認定と同一の法律効果を生ずるものであるから(同法26条4項)、市町村は、右決定の公告により、同法に基づく収用権限を取得するとともに、その結果として、施行地区内の土地の所有者等は、特段の事情のない限り、自己の所有地等が収用されるべき地位に立たされることとなる。…そうであるとすると、公告された再開発事業計画の決定は、施行地区内の土地の所有者等の法的地位に直接的な影響を及ぼすものであって、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると解するのが相当である。」として、都市再開発法に基づく第二種市街地再開発事業に係る事業計画の決定の処分性を肯定している。
そして、その後の判例(最大判平20.9.10)も、「市町村の施行に係る土地区画整理事業の事業計画の決定は、施行地区内の宅地所有者等の法的地位に変動をもたらすものであって、抗告訴訟の対象とするに足りる法的効果を有するものということができ…る。」として、土地区画整理事業の事業計画の処分性を肯定している。

(R2 予備 第18問 ウ)
行政計画に基づき将来具体的な事業が施行されることが予定されている、いわゆる非完結型の計画につき、土地区画整理事業の事業計画の決定は、後続の仮換地指定や換地処分の取消訴訟によって権利救済の目的が十分達成でき、事件の成熟性が欠けることから、処分性は認められない。

(正答)

(解説)
非完結型の計画(計画決定後に特定の事業を施行することを予定している計画)について、判例(最判平20.9.10)は、「事業計画決定によって、建築制限を伴う土地区画整理事業の手続に従って、換地処分を受けるべき地位に立たされるという意味で、法的地位に直接具体的な影響が生じる。」とした上で、「換地処分等の取消訴訟において、宅地所有者等が事業計画の違法を主張し、その主張が認められたとしても、当該換地処分等を取り消すことは公共の福祉に適合しないとして事情判決(行政事件訴訟法31条1項)がされる可能性が相当程度あるのであり、換地処分等がされた段階でこれを対象として取消訴訟を提起することができるとしても、宅地所有者等の被る権利侵害に対する救済が十分に果たされるとはいい難い。」として、土地区画整理事業の事業計画の決定の処分性を肯定している。
したがって、後続の仮換地指定や換地処分の取消訴訟によって権利救済の目的が十分達成でき、事件の成熟性が欠けるとはいえず、土地区画整理事業の事業計画の決定にも処分性が認められる。
総合メモ

都市計画法8条1項1号に基づく工業地域指定(用途地域指定)の決定 最一小判昭和57年4月22日

概要
都市計画法8条1項1号に基づく工業地域指定の決定は、抗告訴訟の対象とならない。
判例
事案:都市計画法8条1項1号に基づく工業地域指定の決定の取消訴訟において、当該決定が抗告訴訟の対象となる「行政庁の処分」に当たるかが問題となった。

判旨:「都市計画区域内において工業地域を指定する決定は、都市計画法8条1項1号に基づき都市計画決定の1つとしてされるものであり、右決定が告示されて効力を生ずると、当該地域内においては、建築物の用途、容積率、建ぺい率等につき従前と異なる基準が適用され(建築基準法48条7項、52条1項3号、53条1項2号等)、これらの基準に適合しない建築物については、建築確認を受けることができず、ひいてその建築等をすることができないこととなるから(同法6条4項、5項)、右決定が、当該地域内の土地所有者等に建築基準法上新たな制約を課し、その限度で一定の法状態の変動を生ぜしめるものであることは否定できないが、かかる効果は、あたかも新たに右のような制約を課する法令が制定された場合におけると同様の当該地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なそれにすぎず、このような効果を生ずるということだけから直ちに右地域内の個人に対する具体的な権利侵害を伴う処分があったものとして、これに対する抗告訴訟を肯定することはできない。もっとも、右のような法状態の変動に伴い将来における土地の利用計画が事実上制約されたり、地価や土地環境に影響が生ずる等の事態の発生も予想されるが、これらの事由は未だ右の結論を左右するに足りるものではない。なお、右地区内の上地上に現実に前記のような建築の制限を超える建物の建築をしようとしてそれが妨げられている者が存する場合には、その者は現実に自己の土地利用上の権利を侵害されているということができるが、この場合右の者は右建築の実現を阻止する行政庁の具体的処分をとらえ、前記の地区指定が違法であることを主張して右処分の取消を求めることにより権利救済の目的を達する途が残されていると解されるから、前記のような解釈をとっても格別の不都合は生じないというべきである。
 右の次第で、本件高度地区指定の決定は、抗告訴訟の対象となる処分にはあたらないと解するのが相当であり、これと同旨の原審の判断は正当であって、原判決に所論の違法はない。」
過去問・解説
(R1 予備 第17問 ア)
都市計画決定としての用途地域の指定は抗告訴訟の対象となる処分には当たらないため、用途地域指定を前提とする建築確認拒否処分に対して建築主が取消訴訟を提起した場合、建築主は当該取消訴訟において当該用途地域指定が違法であることを主張することはできない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭57.4.22)は、「右地区内の上地上に現実に前記のような建築の制限を超える建物の建築をしようとしてそれが妨げられている者が存する場合には、その者は現実に自己の土地利用上の権利を侵害されているということができるが、この場合右の者は右建築の実現を阻止する行政庁の具体的処分をとらえ、前記の地区指定が違法であることを主張して右処分の取消を求めることにより権利救済の目的を達する途が残されている…。」としている。
したがって、用途地域指定を前提とする建築確認拒否処分に対して建築主が取消訴訟を提起した場合、建築主は当該取消訴訟において当該用途地域指定が違法であることを主張しうる。

(R2 予備 第18問 エ)
当該計画に基づき将来具体的な事業が施行されることが予定されていない、いわゆる完結型の計画につき、都市計画法に基づく用途地域の指定は、当該地域内の土地所有者等に建築制限等の制約を課し、その法的地位に変動をもたらすものであることから、処分性が認められる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭57.4.22)は、「都市計画区域内において工業地域を指定する決定…が、当該地域内の土地所有者等に建築基準法上新たな制約を課し、その限度で一定の法状態の変動を生ぜしめるものであることは否定できないが、かかる効果は、あたかも新たに右のような制約を課する法令が制定された場合におけると同様の当該地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なそれにすぎず、このような効果を生ずるということだけから直ちに右地域内の個人に対する具体的な権利侵害を伴う処分があったものとして、これに対する抗告訴訟を肯定することはできない。」として、処分性を否定している。
したがって、同指定は、その法的地位に変動をもたらすものではなく、処分性が認められない。
総合メモ

市の設置する特定の保育所を廃止する条例の制定行為 最一小判平成21年11月26日

概要
市の設置する特定の保育所を廃止する条例の制定行為は、当該保育所の利用関係が保護者の選択に基づき保育所及び保育の実施期間を定めて設定されるものであり、現に保育を受けている児童及びその保護者は当該保育所において保育の実施期間が満了するまでの間保育を受けることを期待し得る法的地位を有すること、同条例が、他に行政庁の処分を待つことなくその施行により当該保育所廃止の効果を発生させ、入所中の児童及びその保護者という限られた特定の者らに対して、直接、上記法的地位を奪う結果を生じさせるものであることなどの事情の下では、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
判例
事案:Yがその設置する保育所を廃止する条例を制定したことについて、当該保育所で保育を受けていた児童又はその保護者であるXらが、上記条例の制定行為はXらが選択した保育所において保育を受ける権利を違法に侵害するものであるなどと主張して、その取消し等を求めた事案において、市の設置する特定の保育所を廃止する条例の制定行為が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるかが問題となった。

判旨:「市町村は、保護者の労働又は疾病等の事由により、児童の保育に欠けるところがある場合において、その児童の保護者から入所を希望する保育所等を記載した申込書を提出しての申込みがあったときは、希望児童のすべてが入所すると適切な保育の実施が困難になるなどのやむを得ない事由がある場合に入所児童を選考することができること等を除けば、その児童を当該保育所において保育しなければならないとされている(児童福祉法24条1項~3項)。平成9年法律第74号による児童福祉法の改正がこうした仕組みを採用したのは、女性の社会進出や就労形態の多様化に伴って、乳児保育や保育時間の延長を始めとする多様なサービスの提供が必要となった状況を踏まえ、その保育所の受入れ能力がある限り、希望どおりの入所を図らなければならないこととして、保護者の選択を制度上保障したものと解される。そして、前記のとおり、被上告人においては、保育所への入所承諾の際に、保育の実施期間が指定されることになっている。このように、被上告人における保育所の利用関係は、保護者の選択に基づき、保育所及び保育の実施期間を定めて設定されるものであり、保育の実施の解除がされない限り(同法33条の4参照)、保育の実施期間が満了するまで継続するものである。そうすると、特定の保育所で現に保育を受けている児童及びその保護者は、保育の実施期間が満了するまでの間は当該保育所における保育を受けることを期待し得る法的地位を有するものということができる。 ところで、公の施設である保育所を廃止するのは、市町村長の担任事務であるが(地方自治法149条7号)、これについては条例をもって定めることが必要とされている(同法244条の2)。条例の制定は、普通地方公共団体の議会が行う立法作用に属するから、一般的には、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものでないことはいうまでもないが、本件改正条例は、本件各保育所の廃止のみを内容とするものであって、他に行政庁の処分を待つことなく、その施行により各保育所廃止の効果を発生させ、当該保育所に現に入所中の児童及びその保護者という限られた特定の者らに対して、直接、当該保育所において保育を受けることを期待し得る上記の法的地位を奪う結果を生じさせるものであるから、その制定行為は、行政庁の処分と実質的に同視し得るものということができる。 また、市町村の設置する保育所で保育を受けている児童又はその保護者が、当該保育所を廃止する条例の効力を争って、当該市町村を相手に当事者訴訟ないし民事訴訟を提起し、勝訴判決や保全命令を得たとしても、これらは訴訟の当事者である当該児童又はその保護者と当該市町村との間でのみ効力を生ずるにすぎないから、これらを受けた市町村としては当該保育所を存続させるかどうかについての実際の対応に困難を来すことにもなり、処分の取消判決や執行停止の決定に第三者効(行政事件訴訟法32条)が認められている取消訴訟において当該条例の制定行為の適法性を争い得るとすることには合理性がある。  以上によれば、本件改正条例の制定行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると解するのが相当である。」
過去問・解説
(H24 司法 第28問 イ)
最高裁判所の判例によれば、C市が特定の市立保育所を廃止する条例(以下「条例」という。)を制定した場合において、廃止される保育所で保育を受けている児童及びその保護者は、保育の実施期間満了まで当該保育所で保育を受けることを期待し得る法的地位を条例により違法に侵害されたと主張して、条例制定行為に対する取消訴訟を適法に提起することができる。

(正答)

(解説)
判例(最判平21.11.26)は、「特定の保育所で現に保育を受けている児童及びその保護者は、保育の実施期間が満了するまでの間は当該保育所における保育を受けることを期待し得る法的地位を有するものということができる。」とした上で、「本件改正条例は、本件各保育所の廃止のみを内容とするものであって、他に行政庁の処分を待つことなく、その施行により各保育所廃止の効果を発生させ、当該保育所に現に入所中の児童及びその保護者という限られた特定の者らに対して、直接、当該保育所において保育を受けることを期待し得る上記の法的地位を奪う結果を生じさせるものであるから、その制定行為は、行政庁の処分と実質的に同視し得る…。」として、条例制定行為の処分性を肯定している。

(H28 予備 第21問 エ)
最高裁判所は、市の設置する特定の保育所を廃止する条例の制定行為が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると判断した根拠の一つとして、取消判決には第三者効が認められていることを挙げている。

(正答)

(解説)
判例(最判平21.11.26)は、「処分の取消判決や執行停止の決定に第三者効(行政事件訴訟法32条)が認められている取消訴訟において当該条例の制定行為の適法性を争い得るとすることには合理性がある。」とした上で、「本件改正条例の制定行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる…。」としている。

(H29 予備 第19問 ア)
条例の制定は、普通地方公共団体の議会が行う立法作用に属するが、条例の内容によっては、その制定行為が行政庁の処分と実質的に同視し得るものとして取消訴訟の対象となる。

(正答)

(解説)
判例(最判平21.11.26)は、「条例の制定は、普通地方公共団体の議会が行う立法作用に属するから、一般的には、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものでないことはいうまでもないが、本件改正条例は、本件各保育所の廃止のみを内容とするものであって、他に行政庁の処分を待つことなく、その施行により各保育所廃止の効果を発生させ、当該保育所に現に入所中の児童及びその保護者という限られた特定の者らに対して、直接、当該保育所において保育を受けることを期待し得る上記の法的地位を奪う結果を生じさせるものであるから、その制定行為は、行政庁の処分と実質的に同視し得る…。」として、条例制定行為の処分性を肯定している。

(R4 予備 第18問 イ)
C市がその設置している特定の保育所を廃止する旨の条例を制定したことに対し、当該保育所で現に保育を受けている児童及びその保護者であるDらが当該条例制定行為について取消訴訟を提起したところ、その係属中に、Dらに係る保育の実施期間が満了した場合であっても、当該取消訴訟については、訴えの利益は失われない。

(正答)

(解説)
判例(最判平21.11.26)は、本肢と同種の事案において、「現時点においては、上告人らに係る保育の実施期間がすべて満了していることが明らかであるから、本件改正条例の制定行為の取消しを求める訴えの利益は失われた…。」としている。
したがって、本判例によれば、Dらに係る保育の実施期間が満了した場合、Dらの訴えの利益は消滅する。
総合メモ