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訴えの利益

免職された公務員が免職処分の取消訴訟係属中に公職の候補者として届出をした場合 最大判昭和40年4月28日

概要
免職された公務員が、免職処分の取消訴訟係属中に公職の候補者として届出をしたため、法律上その職を辞したしたものとみなされ、免職処分が取り消されても公務員たる地位が回復されない場合においても、行政事件訴訟法第9条のもとでは、当該訴えの利益を認めるのが相当である。
判例
事案:免職された公務員が免職処分の取消訴訟係属中に公職の候補者として届出をした場合において、免職処分が取り消されても公務員たる地位が回復することはないのであるから、訴えの利益が失われないかが問題となった。

判旨:「しかるに、本件が当上告審に係属しているうちに、昭和37年10月1日から行政事件訴訟法が施行されるにいたったが、右新法9条は、『処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴えは、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなった後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。』と規定し、同法附則は、その2条で行政事件訴訟特例法を廃止するとともに、3条で『この法律は、この附則に特別の定めがある場合を除き、この法律施行前に生じた事項にも適用する。ただし、旧法によって生じた効力を妨げない。』と規定している。 ところで、新法には訴の利益に関する特別の経過規定はなく、また、右附則3条但書にいう『旧法によって生じた効力』とは、旧法を適用してすでに確定した個々の法律上の効力を指すものと解するのが相当である。しかも、訴の利益の有無は職権調査事項であり、かつ、その存在は訴維持の要件であるから、本件訴の利益については、当上告審において、右附則3条本文の規定により、新法を適用してこれが存否を判断すべきものと解する。  しかして、原判決(その引用する第1審判決)の認定にかかる前示事実に照らせば、本件免職処分が取り消されたとしても、上告人は市議会議員に立候補したことにより郵政省の職員たる地位を回復するに由ないこと、まさに、原判決(および第1審判決)説示のとおりである。しかし、公務職免職の行政処分は、それが取り消されない限り、免職処分の効力を保有し、当該公務員は、違法な免職処分さえなければ公務員として有するはずであった給料請求権その他の権利、利益につき裁判所に救済を求めることができなくなるのであるから、本件免職処分の効力を排除する判決を求めることは、右の権利、利益を回復するための必要な手段であると認められる。そして、新法9条が、たとえ注意的にもしろ、括孤内において前記のような規定を設けたことに思いを致せば、同法の下においては、広く訴の利益を認めるべきであって、上告人が郵政省の職員たる地位を回復するに由なくなった現在においても、特段の事情の認められない本件において、上告人の叙上のごとき権利、利益が害されたままになっているという不利益状態の存在する余地がある以上、上告人は、なおかつ、本件訴訟を追行する利益を有するものと認めるのが相当である。」
過去問・解説
(H20 司法 第34問 イ)
免職処分を受けた公務員が、その後公職の選挙に立候補した場合には、公職選挙法第90条によりその届出の日に公務員の職を辞したものとみなされ、当該免職処分が取り消されたとしても同人が公務員たる地位を回復することはないから、その取消しを求める訴えの利益は失われる。

【参照条文】公職選挙法
第90条 (前略)公務員が、(中略)届出により公職の候補者となったときは、当該公務員の退職に関する法令の規定にかかわらず、その届出の日に当該公務員たることを辞したものとみなす。

(正答)

(解説)
判例(最判昭40.4.28)は、「上告人が郵政省の職員たる地位を回復するに由なくなった現在においても、特段の事情の認められない本件において、上告人の叙上のごとき権利、利益が害されたままになっているという不利益状態の存在する余地がある以上、上告人は、なおかつ、本件訴訟を追行する利益を有するものと認めるのが相当である。」としている。
したがって、免職処分が取り消されても公務員たる地位が回復することはないとしても、その取消しを求める訴えの利益は失われない。

(R1 予備 第19問 エ)
公務員が届出により公職の候補者となったときは、届出の日から公務員たることを辞したものとみなすとの公職選挙法の規定があるため、免職処分取消訴訟を提起して争っている公務員が、公職の候補者となった場合には、当該免職処分の取消しを求める訴えの利益は失われるのかが問題となる。
仮に免職処分が取り消されても、当該公務員は、公務員たる地位を回復することはできないが、免職処分は、それが取り消されない限り効力を有し、違法な免職処分さえなければ公務員として有するはずであった給料請求権その他の権利、利益につき裁判所に救済を求めることができなくなるから、当該免職処分の効力を排除する判決を求めることは、これらの権利、利益を回復するための必要な手段と考えられ、当該免職処分の取消しを求める訴えの利益は失われない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭40.4.28)は、「本件免職処分が取り消されたとしても、上告人は市議会議員に立候補したことにより郵政省の職員たる地位を回復するに由ないこと、まさに、原判決(および第1審判決)説示のとおりである。しかし、公務職免職の行政処分は、それが取り消されない限り、免職処分の効力を保有し、当該公務員は、違法な免職処分さえなければ公務員として有するはずであった給料請求権その他の権利、利益につき裁判所に救済を求めることができなくなるのであるから、本件免職処分の効力を排除する判決を求めることは、右の権利、利益を回復するための必要な手段であると認められる。…上告人が郵政省の職員たる地位を回復するに由なくなった現在においても、特段の事情の認められない本件において、上告人の叙上のごとき権利、利益が害されたままになっているという不利益状態の存在する余地がある以上、上告人は、なおかつ、本件訴訟を追行する利益を有するものと認めるのが相当である。」としている。
総合メモ

在留外国人が再入国許可を受けずに出国した場合 最二小判平成10年4月10日

概要
再入国不許可処分を受けた者が本邦から出国した場合には、右不許可処分の取消しを求める訴えの利益は失われる。
判例
事案:再入国不許可処分の取消訴訟において、当該処分を受けた者が本邦から出国した場合に、再入国ができなくなることから、不許可処分の取消しを求める訴えの利益が失われるかが問題となった。

判旨:「再入国の許可申請に対する不許可処分を受けた者が再入国の許可を受けないまま本邦から出国した場合には、右不許可処分の取消しを求める訴えの利益は失われるものと解するのが相当である。その理由は、次のとおりである。本邦に在留する外国人が再入国の許可を受けないまま本邦から出国した場合には、同人がそれまで有していた在留資格は消滅するところ、出入国管理及び難民認定法26条1項に基づく再入国の許可は、本邦に在留する外国人に対し、新たな在留資格を付与するものではなく、同人が有していた在留資格を出国にもかかわらず存続させ、右在留資格のままで本邦に再び入国することを認める処分であると解される。そうすると、再入国の許可申請に対する不許可処分を受けた者が再入国の許可を受けないまま本邦から出国した場合には、同人がそれまで有していた在留資格が消滅することにより、右不許可処分が取り消されても、同人に対して右在留資格のままで再入国することを認める余地はなくなるから、同人は、右不許可処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を失うに至るものと解すべきである。そして、右の理は、右不許可処分を受けた者が日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法(以下『出入国管理特別法』という。)1条の許可を受けて本邦に永住していた場合であっても、異なるところがないというべきである。」
過去問・解説
(R3 予備 第19問 エ)
本邦に在留する外国人が再入国許可申請に対する不許可処分を受けて、再入国許可を受けないまま出国した場合には、当該不許可処分が取り消されても当該外国人が従前の在留資格のままで再入国することを認める余地はないから、当該不許可処分の取消しを求める法律上の利益は消滅する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭10.4.10)は、「再入国の許可申請に対する不許可処分を受けた者が再入国の許可を受けないまま本邦から出国した場合には、同人がそれまで有していた在留資格が消滅することにより、右不許可処分が取り消されても、同人に対して右在留資格のままで再入国することを認める余地はなくなるから、同人は、右不許可処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を失うに至るものと解すべきである。」としている。
総合メモ

退去強制令書発付処分を受けた者が、退去強制令書の執行により本邦外に送還された場合 最二小判平成8年7月12日

概要
退去強制令書発付処分を受けた者が退去強制令書の執行により本邦外に送還された後1年が経過し、かつ、日本への上陸拒否期間が経過した場合には、当該処分の取消しを求める訴えの利益は失われる。
判例
事案:退去強制令書発付処分を受けた者が提起した、当該処分の取消訴訟において、退去強制令書の執行により本邦外に送還された後1年が経過し、日本への上陸拒否期間が経過した場合に訴えの利益が失われるかが問題となった。

判旨:「上告人は出入国管理及び難民認定法24条1号に該当して発付された退去強制令書の執行により本邦外に送還されてから既に1年が経過したというのであり、同法5条1項9号の規定により本邦への上陸を拒否されることもなくなったのであるから、もはや右退去強制令書発付処分の取消しにより回復すべき法律上の利益は何ら存在せず、右処分の取消しを求める訴えの利益は失われ…る。」
過去問・解説
(H23 共通 第30問 イ)
退去強制令書の送還部分が執行され、被処分者が強制送還されてしまえば、処分はその目的を達成し、被処分者の退去義務は消滅するが、退去を強制された者の本邦への上陸拒否期間が経過するまでは、退去強制令書発付処分の取消しを求める訴えの利益は消滅しない。

(正答)

(解説)
判例(最判平8.7.12)は、本肢と同種の事案において、「上告人は出入国管理及び難民認定法24条1号に該当して発付された退去強制令書の執行により本邦外に送還されてから既に1年が経過したというのであり、同法5条1項9号の規定により本邦への上陸を拒否されることもなくなったのであるから、もはや右退去強制令書発付処分の取消しにより回復すべき法律上の利益は何ら存在せず、右処分の取消しを求める訴えの利益は失われ…る。」としている。
したがって、退去を強制された者の本邦への上陸拒否期間が経過するまでは訴えの利益は消滅しないといえる。
総合メモ

市立学校教諭が同一市内の他の中学校教諭に補する旨の転任処分を受けた場合において、当該処分がその身分、俸給等に異動を生ぜしめず、客観的、実際的見地からみて勤務場所、勤務内容等に不利益を伴うものでないとき 最一小判昭和61年10月23日

概要
市立学校教諭が同一市内の他の中学校教諭に補する旨の転任処分を受けた場合において、当該処分がその身分、俸給等に異動を生ぜしめず、客観的、実際的見地からみて勤務場所、勤務内容等に不利益を伴うものでないときは、他に特段の事情がない限り、右教諭は転任処分の取消を求める訴えの利益を有しない。
判例
事案:市立中学校教諭に対する同一市内中学校間における転任処分を対象とした取消訴訟において、訴えの利益が認められるかが問題となった。

判旨:「本件転任処分は、吹田二中教諭として勤務していた被上告人らを同一市内の他の中学校教諭に補する旨配置換えを命じたものにすぎず、被上告人らの身分、俸給等に異動を生ぜしめるものでないことはもとより、客観的また実際的見地からみても、被上告人らの勤務場所、勤務内容等においてなんらの不利益を伴うものでないことは、原判決の判示するとおりであると認められる。したがって、他に特段の事情の認められない本件においては、被上告人らについて本件転任処分の取消しを求める法律上の利益を肯認することはできないものといわなければならない(原判決のいう名誉の侵害は、事実上の不利益であって、本件転任処分の直接の法的効果ということはできない。)。 …してみると、本件転任処分の取消しを求める被上告人らの本件訴えは、いずれも不適法というべく、もし被上告人ら主張のごとき理由により本件転任処分が違法であり、これにより被上告人らの名誉・信用等がき損されたとするのであれが、国家賠償法に基づく損害賠償請求によってその救済を求めるべきものである。」
過去問・解説
(H25 共通 第30問 ウ)
市立中学校の教諭に対する同一市内の中学校間の転任処分が、教諭の身分、俸給等に異動を生ぜしめず、客観的、実際的見地からみて勤務場所、勤務内容等に何らの不利益を伴わない場合には、他に特段の事情のない限り、教諭に当該転任処分の取消しを求める利益はない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭61.10.23)は、本肢と同種の事案において、「本件転任処分は、吹田二中教諭として勤務していた被上告人らを同一市内の他の中学校教諭に補する旨配置換えを命じたものにすぎず、被上告人らの身分、俸給等に異動を生ぜしめるものでないことはもとより、客観的また実際的見地からみても、被上告人らの勤務場所、勤務内容等においてなんらの不利益を伴うものでない…。したがって、他に特段の事情の認められない本件においては、被上告人らについて本件転任処分の取消しを求める法律上の利益を肯認することはできないものといわなければならない…。」としている。
総合メモ

自動車等運転免許証の有効期間の経過 最二小判昭和40年8月2日

概要
道路交通法105条が、免許証の有効期間の更新を受けなかったときは免許は効力を失うものとしたのは、現に免許証を行使しつつある者に対し、定期検査を強行し、不適格者には適宜の処置をとる目的に出でたものであることにかんがみれば、免許が現在取り消されており、その取消しの適否が訴訟によって争われている場合についてまで適用を予定したものとは解しがたい。取消処分の係争中の免許については、その取消処分の取消しが確定して免許証を行使しうる状態に復帰した際に、その適性検査の時期に至ったものとして取り扱うのが相当であり、道交法上もそのような取扱いを許されないとする根拠は認められない。したがって、自動車等運転免許の取消処分の取消を求める訴訟の継続中、当該運転免許証の有効期間が経過した場合でも、その訴えは利益を失われない。
判例
事案:自動車等運転免許の取消処分の取消訴訟の係属中に、当該運転免許証の有効期間が経過した場合、当該取消訴訟の訴えの利益は失われるかが問題となった。

判旨:「被上告人が道路交通法(以下道交法と称する。)101条の規定に従い、免許証の有効期間の更新を受けるために、その期間の満了する日の1月前から当該期間の満了の日までの間に上告人に対して適性検査を求めなかったのは、取消判決が確定しない以上、本件免許取消処分はなお効力を有し、右更新の手続をとりがたかったためと認められる。したがって、その免許取消処分が違法で取り消されるべきものであるかぎり、右更新のできなかったのは、これを上告人の違法処分に基づくものということができる。そして右道交法101条が、免許証有効期間満了にあたり適性検査を行ない、その結果自動車等の運転に支障がないと認められる者については免許証の有効期間を更新して免許を存続させることにし、同法105条が、免許証の有効期間の更新を受けなかったときは免許は効力を失うものとしたのは、現に免許証を行使しつつある者に対し、その運転適性を維持しているかどうかについての定期検査を強行し、不適格者には適宜の処置をとる目的に出でたものであることにかんがみれば、これら規定は、本件のように免許が現在取り消されており、その取消しの適否が訴訟によって争われている場合についてまで適用を予定したものとは解しがたい。むしろかような取消処分の係争中の免許については、その取消処分の取消しが確定して免許証を行使しうる状態に復帰した際に、その適性検査の時期に至ったものとして取り扱うのが相当であり、道交法上もそのような取扱いを許されないとする根拠は認められない。してみれば、本件被上告人の免許証の有効期間の経過は、なんら本件訴の利益の存続に影響するところはないと解するのを相当とする。」
過去問・解説
(H19 司法 第34問 イ)
運転免許取消処分の取消訴訟の係属中に運転免許証の有効期間が経過したときは、もはや運転免許証の更新を受けることができないから、処分の取消しを求める訴えの利益は失われる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭40.8.2)は、本肢と同種の事案において、「取消処分の係争中の免許については、その取消処分の取消しが確定して免許証を行使しうる状態に復帰した際に、その適性検査の時期に至ったものとして取り扱うのが相当であり、道交法上もそのような取扱いを許されないとする根拠は認められない。してみれば、本件被上告人の免許証の有効期間の経過は、なんら本件訴の利益の存続に影響するところはないと解するのを相当とする。」としている。
したがって、有効期間の経過によっても、処分の取消しを求める訴えの利益は失われない。
総合メモ

自動車運転免許効力停止処分後、無違反・無処分で1年を経過した場合 最三小判昭和55年11月25日

概要
自動車運転免許の効力停止処分を受けた者は、免許の効力停止期間を経過し、かつ、右処分の日から無違反・無処分で1年を経過したときは、右処分の取消によって回復すべき法律上の利益を有しない。
判例
事案:自動車運転免許効力停止処分の取消訴訟において、当該処分の後、無違反・無処分で1年を経過した場合に、処分による不利益を受けるおそれが消滅したとして、かかる処分の取消しを求める訴えの利益は消滅するかが問題となった。

判旨:「原審が適法に確定したところによれば、福井県警察本部長は、昭和48年12月17日被上告人に対し自動車運転免許の効力を30日間停止する旨の処分(以下『本件原処分』という。)をしたが、同日免許の効力停止期間を29日短縮した、被上告人は、本件原処分の日から満1年間、無違反・無処分で経過した、というのである。右事実によると本件原処分の効果は右処分の日1日の期間の経過によりなくなったものであり、また、本件原処分の日から1年を経過した日の翌日以降、被上告人が本件原処分を理由に道路交通法上不利益を受ける虞がなくなったことはもとより、他に本件原処分を理由に被上告人を不利益に取り扱いうることを認めた法令の規定はないから、行政事件訴訟法9条の規定の適用上、被上告人は、本件原処分及び本件裁決の取消によって回復すべき法律上の利益を有しないというべきである。この点に関して、原審は、被上告人には、本件原処分の記載のある免許証を所持することにより警察官に本件原処分の存した事実を覚知され、名誉、感情、信用等を損なう可能性が常時継続して存在するとし、その排除は法の保護に値する被上告人の利益であると解して本件裁決取消の訴を適法とした。しかしながら、このような可能性の存在が認められるとしても、それは本件原処分がもたらす事実上の効果にすぎないものであり、これをもって被上告人が本件裁決取消の訴によって回復すべき法律上の利益を有することの根拠とするのは相当でない。」
過去問・解説
(H19 司法 第34問 ア)
運転免許効力停止処分についてその効力停止期間が経過したときは、当該処分が前歴となって道路交通法上不利益を受けるおそれがあるとしても、処分の取消しを求める訴えの利益は失われる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭55.11.25)は、「本件原処分の日から1年を経過した日の翌日以降、被上告人が本件原処分を理由に道路交通法上不利益を受ける虞がなくなったことはもとより、他に本件原処分を理由に被上告人を不利益に取り扱いうることを認めた法令の規定はないから、行政事件訴訟法9条の規定の適用上、被上告人は、本件原処分及び本件裁決の取消によって回復すべき法律上の利益を有しないというべきである。」として、不利益を受けるおそれが消滅したことを根拠として訴えの利益を否定している。

(H19 司法 第34問 ウ)
運転免許効力停止処分の前歴があることにより、名誉、感情、信用等を損なう可能性が継して存在するとしても、それは処分がもたらす事実上の効果にすぎないものであるから、処分の取消しを求める訴えの利益があることの根拠とするのは相当でない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭55.11.25)は、「原審は、被上告人には、本件原処分の記載のある免許証を所持することにより警察官に本件原処分の存した事実を覚知され、名誉、感情、信用等を損なう可能性が常時継続して存在するとし、その排除は法の保護に値する被上告人の利益であると解して本件裁決取消の訴を適法とした。しかしながら、このような可能性の存在が認められるとしても、それは本件原処分がもたらす事実上の効果にすぎないものであり、これをもって被上告人が本件裁決取消の訴によって回復すべき法律上の利益を有することの根拠とするのは相当でない。」としている。

(H28 予備 第19問 ア)
道路交通法に基づき、自動車運転免許の効力停止処分を受けた者は、無違反、無処分で法定の期間を経過し、以後、前歴のない者として取り扱われるに至ったとしても、当該処分の記載のある免許証を所持することにより、名誉、信用等を損なう可能性が継続して存在し、その程度は重大なものであって、それを排除することは法の保護に値する利益であるといえるから、当該処分の取消しにつき、訴えの利益を有する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭55.11.25)は、「原審は、被上告人には、本件原処分の記載のある免許証を所持することにより警察官に本件原処分の存した事実を覚知され、名誉、感情、信用等を損なう可能性が常時継続して存在するとし、その排除は法の保護に値する被上告人の利益であると解して本件裁決取消の訴を適法とした。しかしながら、このような可能性の存在が認められるとしても、それは本件原処分がもたらす事実上の効果にすぎないものであり、これをもって被上告人が本件裁決取消の訴によって回復すべき法律上の利益を有することの根拠とするのは相当でない。」としている。
したがって、処分の記載のある免許証を所持することにより、名誉、信用等を損なう可能性が継続して存在するとしても、それを排除することは法の保護に値する利益とはいえず、当該処分の取消しにつき、訴えの利益を有しない。

(R3 予備 第19問 イ)
自動車運転免許の効力停止処分を受けた者について、その効力停止期間が経過しても、当該処分を理由に道路交通法上不利益を受けるおそれがある期間が経過していないときは、当該処分の取消しを求める法律上の利益は消滅しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭55.11.25)は、「本件原処分の効果は右処分の日1日の期間の経過によりなくなったものであり、また、本件原処分の日から1年を経過した日の翌日以降、被上告人が本件原処分を理由に道路交通法上不利益を受ける虞がなくなったことはもとより、他に本件原処分を理由に被上告人を不利益に取り扱いうることを認めた法令の規定はないから、行政事件訴訟法9条の規定の適用上、被上告人は、本件原処分及び本件裁決の取消によって回復すべき法律上の利益を有しないというべきである。」としている。
したがって、当該処分を理由に道路交通法上不利益を受けるおそれがある期間が経過していないときは、当該処分の取消しを求める法律上の利益は消滅しないといえる。
総合メモ

建築基準法6条1項による建築確認を受けた建築物の建築等の工事が完了した場合 最二小判昭和59年10月26日

概要
建築基準法6条1項による確認を受けた建築物の建築等の工事が完了したときは、右確認の取消を求める訴えの利益は失われる。
判例
事案:建築を許可する旨の確認処分の取消訴訟において、工事が完了した場合にはその処分の取消しを求める訴えの利益が失われるかが問題となった。

判旨:「建築基準法によれば、建築主は、同法6条1項の建築物の建築等の工事をしようとする場合においては、右工事に着手する前に、その計画が当該建築物の敷地、構造及び建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下『建築関係規定』という。)に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受けなければならず(6条1項。以下この確認を『建築確認』という。)、建築確認を受けない右建築物の建築等の工事は、することができないものとされ(6条5項)、また、建築主は、右工事を完了した場合においては、その旨を建築主事に届け出なければならず(7条1項)、建築主事が右届出を受理した場合においては、建築主事又はその委任を受けた当該市町村若しくは都道府県の吏員は、届出に係る建築物及びその敷地が建築関係規定に適合しているかどうかを検査し(7条2項)、適合していることを認めたときは、建築主に対し検査済証を交付しなければならないものとされている(7条3項)。そして、特定行政庁は、建築基準法又はこれに基づく命令若しくは条例の規定に違反した建築物又は建築物の敷地については、建築主等に対し、当該建築物の除却その他これらの規定に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる(9条1項。以下この命令を『違反是正命令』という。)、とされている。これらの一連の規定に照らせば、建築確認は、建築基準法6条1項の建築物の建築等の工事が着手される前に、当該建築物の計画が建築関係規定に適合していることを公権的に判断する行為であって、それを受けなければ右工事をすることができないという法的効果が付与されており、建築関係規定に違反する建築物の出現を未然に防止することを目的としたものということができる。しかしながら、右工事が完了した後における建築主事等の検査は、当該建築物及びその敷地が建築関係規定に適合しているかどうかを基準とし、同じく特定行政庁の違反是正命令は、当該建築物及びその敷地が建築基準法並びにこれに基づく命令及び条例の規定に適合しているかどうかを基準とし、いずれも当該建築物及びその敷地が建築確認に係る計画どおりのものであるかどうかを基準とするものでない上、違反是正命令を発するかどうかは、特定行政庁の裁量にゆだねられているから、建築確認の存在は、検査済証の交付を拒否し又は違反是正命令を発する上において法的障害となるものではなく、また、たとえ建築確認が違法であるとして判決で取り消されたとしても、検査済証の交付を拒否し又は違反是正命令を発すべき法的拘束力が生ずるものではない。したがって、建築確認は、それを受けなければ右工事をすることができないという法的効果を付与されているにすぎないものというべきであるから、当該工事が完了した場合においては、建築確認の取消しを求める訴えの利益は失われるものといわざるを得ない。」
過去問・解説
(H20 司法 第35問 エ)
建築確認の取消訴訟の係属中に、問題のマンションの建築工事が完了した場合であっても、建築確認が違法であるとして判決でそれが取り消されれば、その判決の拘束力によって、行政庁は、建築物に関する完了検査についての検査済証の交付を拒否することや違反是正命令を発することを義務付けられるから、建築確認の取消しを求める訴えの利益は失われない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭59.10.26)は、「たとえ建築確認が違法であるとして判決で取り消されたとしても、検査済証の交付を拒否し又は違反是正命令を発すべき法的拘束力が生ずるものではない。したがって、建築確認は、それを受けなければ右工事をすることができないという法的効果を付与されているにすぎないものというべきであるから、当該工事が完了した場合においては、建築確認の取消しを求める訴えの利益は失われるものといわざるを得ない。」としている。

(H28 予備 第19問 ウ)
建築基準法に基づく建築確認は、それを受けなければ工事をすることができないという法的効果が付与されているものにすぎないが、建築確認が違法であるとして判決で取り消されれば、相当程度の確実さをもって、工事完了後、建築主事等において検査済証の交付を拒否することになるか、又は特定行政庁において違反是正命令を発すべきことになるのであるから、当該工事が完了した場合においても、その取消しを求める訴えの利益は失われない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭59.10.26)は、建築基準法6条1項に基づく建築確認に係る工事が完了した場合、建築確認の取消訴訟の訴えの利益が失われないかが問題となった事案において、「建築確認は、建築基準法6条1項の建築物の建築等の工事が着手される前に、当該建築物の計画が建築関係規定に適合していることを公権的に判断する行為であって、それを受けなければ右工事をすることができないという法的効果が付与されており、建築関係規定に違反する建築物の出現を未然に防止することを目的としたものということができる。」としている。
他方、本判決は続けて、「たとえ建築確認が違法であるとして判決で取り消されたとしても、検査済証の交付を拒否し又は違反是正命令を発すべき法的拘束力が生ずるものではない。したがって、建築確認は、それを受けなければ右工事をすることができないという法的効果を付与されているにすぎないものというべきであるから、当該工事が完了した場合においては、建築確認の取消しを求める訴えの利益は失われるものといわざるを得ない。」としている。
したがって、工事が完了した場合には、建築確認の取消しを求める訴えの利益は失われる。

(R1 予備 第19問 ウ)
教員:建築基準法に基づく建築確認は、それがなければ適法に建築工事をすることができないという法的効果が付与されているところ、建築工事が完了して建築物が完成すると、建築確認が違法であるとして取り消されたとしても、社会的、経済的損失の観点からみて、社会通念上、当該建築物を除却することは不可能であると考えられるが、そのような事情は、事情判決に関する規定の適用に際して考慮されるべき事柄であって、建築確認の取消しを求める訴えの利益を消滅させるものではない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭59.10.26)は、「たとえ建築確認が違法であるとして判決で取り消されたとしても、検査済証の交付を拒否し又は違反是正命令を発すべき法的拘束力が生ずるものではない。したがって、建築確認は、それを受けなければ右工事をすることができないという法的効果を付与されているにすぎないものというべきであるから、当該工事が完了した場合においては、建築確認の取消しを求める訴えの利益は失われるものといわざるを得ない。」としている。
したがって、建物が完成した場合の事情は、事情判決に関する規定の適用に際して考慮されるべき事柄ではなく、訴えの利益の判断で考慮される事柄であり、建築確認の取消しを求める訴えの利益を消滅させるものである。
総合メモ

都市計画法29条による許可を受けた開発行為に関する工事が完了し、当該工事の検査済証の交付がされた場合 最二小判平成5年9月10日

概要
都市計画法29条による許可を受けた開発行為に関する工事が完了し、当該工事の検査済証の交付がされた後においては、右許可の取消しを求める訴えの利益は失われる。
判例
事案:都市計画法29条に基づく 開発許可処分の取消しを求めて提起した取消訴訟において、工事が完了し検査済証が交付された後においては訴えの利益が失われるかが問題となった。

判旨:「都市計画法29条ないし31条及び33条の規定するところによれば、同法29条に基づく許可(以下、この許可を『開発許可』という。)は、あらかじめ申請に係る開発行為が同法33条所定の要件に適合しているかどうかを公権的に判断する行為であって、これを受けなければ適法に開発行為を行うことができないという法的効果を有するものであるが、許可に係る開発行為に関する工事が完了したときは、開発許可の有する右の法的効果は消滅するものというべきである。そこで、このような場合にも、なお開発許可の取消しを求める法律上の利益があるか否かについて検討するのに、同法81条1項1号は、建設大臣又は都道府県知事は、この法律若しくはこの法律に基づく命令の規定又はこれらの規定に基づく処分に違反した者に対して、違反を是正するため必要な措置を採ることを命ずることができる(以下、この命令を『違反是正命令』という。)としているが、同法29条ないし31条及び33条の各規定に基づく開発行為に関する規制の趣旨、目的にかんがみると、同法は、33条所定の要件に適合する場合に限って開発行為を許容しているものと解するのが相当であるから、客観的にみて同法33条所定の要件に適合しない開発行為について過って開発許可がされ、右行為に関する工事がされたときは、右工事を行った者は、同法81条1項1号所定の『この法律に違反した者』に該当するものというべきである。したがって、建設大臣又は都道府県知事は、右のような工事を行った者に対して、同法81条1項1号の規定に基づき違反是正命令を発することができるから、開発許可の存在は、違反是正命令を発する上において法的障害となるものではなく、また、たとえ開発許可が違法であるとして判決で取り消されたとしても、違反是正命令を発すべき法的拘束力を生ずるものでもないというべきである。そうすると、開発行為に関する工事が完了し、検査済証の交付もされた後においては、開発許可が有する前記のようなその本来の効果は既に消滅しており、他にその取消しを求める法律上の利益を基礎付ける理由も存しないことになるから、開発許可の取消しを求める訴えは、その利益を欠くに至るものといわざるを得ない。」
過去問・解説
(H23 共通 第30問 ウ)
都市計画法第29条に基づく開発許可の取消しを求める訴訟の係属中に、許可を受けた開発行為に関する工事が完了し、検査済証が交付されたとしても、当該開発許可が判決で取り消された場合には、違法な開発行為であることが公権的に確定され、その拘束力により都道府県知事等は同法第81条に基づく違反是正命令を発すべき義務を負うことになるから、開発許可の取消しを求める訴えの利益は消滅しない。

(正答)

(解説)
判例(最判平5.9.10)は、「たとえ開発許可が違法であるとして判決で取り消されたとしても、違反是正命令を発すべき法的拘束力を生ずるものでもないというべきである。そうすると、開発行為に関する工事が完了し、検査済証の交付もされた後においては、開発許可が有する前記のようなその本来の効果は既に消滅しており、他にその取消しを求める法律上の利益を基礎付ける理由も存しないことになるから、開発許可の取消しを求める訴えは、その利益を欠くに至るものといわざるを得ない。」としている。

(H28 予備 第21問 ウ)
都市計画法では、客観的にみて許可基準の要件に適合しない開発行為に関する工事がされたときは、都道府県知事は、当該工事を行った者に対して、違反是正命令を発することができるから、開発許可が判決で取り消されたときは、当該取消判決に違反是正命令を発すべき法的拘束力が生ずることになる。

(正答)

(解説)
判例(最判平5.9.10)は、「建設大臣又は都道府県知事は、右のような工事を行った者に対して、同法81条1項1号の規定に基づき違反是正命令を発することができるから、開発許可の存在は、違反是正命令を発する上において法的障害となるものではなく、また、たとえ開発許可が違法であるとして判決で取り消されたとしても、違反是正命令を発すべき法的拘束力を生ずるものでもないというべきである。」としている。
したがって、開発許可が判決で取り消されたとしても、当該取消判決に違反是正命令を発すべき法的拘束力が生ずることにはならない。
総合メモ

土地改良法による認可を受けた土地改良事業の工事等が完了して原状回復が社会通念上不可能となった場合 最二小判平成4年1月24日

概要
町営の土地改良事業の工事等が完了して原状回復が社会通念上不可能となった場合であっても、右事業の施行の認可の取消しを求める訴えの利益は消滅しない。
判例
事案:土地改良事業施工認可後、土地改良工事が完了し、換地計画の認可がなされ、換地処分が行われ、換地処分の登記の完了にまで至った。このような場合に、同認可の取消訴訟において、訴えの利益が失われるかが問題となった。

判旨:「本件認可処分は、本件事業の施行者である八鹿町に対し、本件事業施行地域内の土地につき土地改良事業を施行することを認可するもの、すなわち、土地改良事業施行権を付与するものであり、本件事業において、本件認可処分後に行われる換地処分等の一連の手続及び処分は、本件認可処分が有効に存在することを前提とするものであるから、本件訴訟において本件認可処分が取り消されるとすれば、これにより右換地処分等の法的効力が影響を受けることは明らかである。そして、本件訴訟において、本件認可処分が取り消された場合に、本件事業施行地域を本件事業施行以前の原状に回復することが、本件訴訟係属中に本件事業計画に係る工事及び換地処分がすべて完了したため、社会的、経済的損失の観点からみて、社会通念上、不可能であるとしても、右のような事情は、行政事件訴訟法31条の適用に関して考慮されるべき事柄であって、本件認可処分の取消しを求める上告人の法律上の利益を消滅させるものではないと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H18 司法 第36問 ア)
本判決は、社会的、経済的損失の観点からみて、社会通念上、原状回復が不可能であるとの事情は、行政事件訴訟法第31条の事情判決の適用に関して考慮されるべき事柄であって、土地改良事業の施行認可処分の取消訴訟の訴えの利益を消滅させるものではないとしている。

(正答)

(解説)
判例(最判平4.1.24)は、「本件訴訟において、本件認可処分が取り消された場合に、本件事業施行地域を本件事業施行以前の原状に回復することが、本件訴訟係属中に本件事業計画に係る工事及び換地処分がすべて完了したため、社会的、経済的損失の観点からみて、社会通念上、不可能であるとしても、右のような事情は、行政事件訴訟法31条の適用に関して考慮されるべき事柄であって、本件認可処分の取消しを求める上告人の法律上の利益を消滅させるものではないと解するのが相当である。」としている。

(H18 司法 第36問 イ)
本判決は、土地改良事業の施行認可処分が取り消されれば、同処分後に行われる換地処分等の一連の手続及び処分の法的効力が影響を受けることを、訴えの利益を根拠付ける理由としている。

(正答)

(解説)
判例(最判平4.1.24)は、「本件事業施行地域内の土地につき土地改良事業を施行することを認可するもの、すなわち、土地改良事業施行権を付与するものであり、本件事業において、本件認可処分後に行われる換地処分等の一連の手続及び処分は、本件認可処分が有効に存在することを前提とするものであるから、本件訴訟において本件認可処分が取り消されるとすれば、これにより右換地処分等の法的効力が影響を受けることは明らかである。」として、訴えの利益を認めている。

(H18 司法 第36問 ウ)
本判決は、社会通念上、原状回復が法的に不可能となった場合において、原告が採り得る手段は損害賠償請求のみであり、同請求の前提として、土地改良事業の施行認可処分の取消訴訟を提起しておかなければならないことを、訴えの利益を根拠付ける理由としている。

(正答)

(解説)
判例(最判平4.1.24)は、「本件訴訟において、本件認可処分が取り消された場合に、本件事業施行地域を本件事業施行以前の原状に回復することが、本件訴訟係属中に本件事業計画に係る工事及び換地処分がすべて完了したため、社会的、経済的損失の観点からみて、社会通念上、不可能であるとしても、右のような事情は、行政事件訴訟法31条の適用に関して考慮されるべき事柄であって、本件認可処分の取消しを求める上告人の法律上の利益を消滅させるものではないと解するのが相当である。」としており、社会通念上、原状回復が不可能となった場合に備えて土地改良事業の施行認可処分の取消訴訟を提起しておかなければならないことには言及していない。
したがって、本判決は、土地改良事業の施行認可処分の取消訴訟を提起しておかなければならないことを、訴えの利益を根拠付ける理由としていない。

(H23 共通 第30問 ア)
町営土地改良事業の施行認可処分の取消しを求める訴訟の係属中に、事業計画に係る工事及び換地処分がすべて完了したため、社会通念上事業施行以前の原状に回復することが不可能になったとしても、認可処分の取消しを求める訴えの利益は消滅しない。

(正答)

(解説)
判例(最判平4.1.24)は、「本件訴訟において、本件認可処分が取り消された場合に、本件事業施行地域を本件事業施行以前の原状に回復することが、本件訴訟係属中に本件事業計画に係る工事及び換地処分がすべて完了したため、社会的、経済的損失の観点からみて、社会通念上、不可能であるとしても、右のような事情は、行政事件訴訟法31条の適用に関して考慮されるべき事柄であって、本件認可処分の取消しを求める上告人の法律上の利益を消滅させるものではないと解するのが相当である。」としている。

(R3 予備 第19問 ア)
土地改良事業施行認可処分の取消訴訟の係属中にその事業計画に係る工事及び換地処分が完了したときは、事業施行地域を原状に回復することは社会通念上不可能であり、当該処分の取消しを求める法律上の利益は消滅する。

(正答)

(解説)
判例(最判平4.1.24)は、「本件訴訟において、本件認可処分が取り消された場合に、本件事業施行地域を本件事業施行以前の原状に回復することが、本件訴訟係属中に本件事業計画に係る工事及び換地処分がすべて完了したため、社会的、経済的損失の観点からみて、社会通念上、不可能であるとしても、右のような事情は、行政事件訴訟法31条の適用に関して考慮されるべき事柄であって、本件認可処分の取消しを求める上告人の法律上の利益を消滅させるものではないと解するのが相当である。」としている。
したがって、原状回復が不可能であるとしても、当該処分の取消しを求める法律上の利益は消滅しない。
総合メモ

市街化区域内にある土地を開発区域として改正前都市計画法29条による許可を受けた開発行為に関する工事が完了し、当該工事の検査済証の交付がされた場合 最三小判平成11年10月26日

概要
市街化区域内にある土地を開発区域として改正前都市計画法29条による許可を受けた開発行為に関する工事が完了し、当該工事の検査済証の交付がされた後においては、開発区域内において予定された建築物についていまだ建築基準法6条に基づく建築確認がされていないとしても、開発許可の取消しを求める訴えの利益は失われる。
判例
事案:土地の開発行為についての許可処分がなされ、当該開発工事が完了し検査済証が交付された後になされた、当該処分の取消訴訟において、予定建築物につき建築確認がされていないとしても、開発許可の取消を求める訴えの利益が失われるかが問題となった。

判旨:「原審の適法に確定したところによれば、(1)被上告人株式会社パスコ(以下『パスコ』という。)は、昭和63年10月19日、被上告人福岡市長(以下『市長』という。)に対し、市街化区域内にある土地を開発区域として、都市計画法(平成4年法律第82号による改正前のもの)29条に基づく許可を申請し、被上告人市長は、同月25日付けでこれを許可(以下『本件許可』という。)した、(2)被上告人パスコは、本件許可に係る開発行為に関する工事を完了し、被上告人市長は、被上告人パスコに対し、同法36条2項に基づき、平成3年6月24日付けで検査済証を交付した、というのである。 右事実関係の下においては、本件許可に係る開発区域内において予定された建築物について、いまだ建築基準法6条に基づく確認がされていないとしても、本件許可の取消しを求める訴えの利益は失われたというべきである…。」
過去問・解説
(R6 予備 第19問 ア)
市街化区域内にある土地を開発区域として都市計画法第29条による開発許可を受けた開発行為に関する工事が完了し、当該工事の検査済証の交付がされた後においても、予定建築物についていまだ建築確認がされていないときは、当該許可の取消しを求める訴えの利益は失われない。

(正答)

(解説)
判例(最判平11.10.26)は、本肢と同種の事案において、「本件許可に係る開発区域内において予定された建築物について、いまだ建築基準法6条に基づく確認がされていないとしても、本件許可の取消しを求める訴えの利益は失われたというべきである…。」としている。
総合メモ

建築基準法9条1項に基づき除却命令を受けた建築物に対する代執行が完了した場合 最三小判昭和48年3月6日

概要
建築基準法9条1項の規定により除却命令を受けた建築物について代執行による除却工事が完了したときは、右除却命令および代執行令書発付処分の取消を求める訴えの利益は失われる。
判例
事案:建築基準法9条1項に基づき除却命令を受けた建築物に対する代執行の完了後における右除却命令および代執行令書発付処分の取消訴訟において、代執行による除却工事が完了した場合に訴えの利益が失われるのかが問題となった。

判旨:「建築基準法9条1項の規定により除却命令を受けた違反建築物について代執行による除却工事が完了した以上、右除却命令および代執行令書発付処分の取消しを求める訴は、その利益を有しないものと解すべきであ…る。」
過去問・解説
(H19 司法 第32問 イ)
Aは、自己所有建物の増築について建築基準法による確認を受けたが、その内容と異なり建築基準法令の規定に違反する工事を行ったとして、B県知事から工事停止命令を受け、その後、更に違反建築部分についての除却命令を受けた。しかし、Aは、これらの命令に従わないで建築を続行している。隣地の自宅に居住するCは、上記工事により、自宅とその敷地への日照がほとんど遮断され、通風も悪くなり、生活条件が著しく悪化する被害を受けるに至ったと主張している。
Aが代執行の違法を主張してその実施を阻止するための取消訴訟を提起していた場合において、B県知事が代執行を実施してそれが終了し、原状回復が不可能となったときでも、代執行により被った損害について金銭的な賠償を求める必要があるから、その取消訴訟に係る訴えの利益は失われない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭48.3.6)は、本肢と同種の事案において、「建築基準法9条1項の規定により除却命令を受けた違反建築物について代執行による除却工事が完了した以上、右除却命令および代執行令書発付処分の取消しを求める訴は、その利益を有しないものと解すべきであ…る。」としている。
したがって、Aが代執行の違法を主張してその取消訴訟を提起していても、Bによる代執行が終了した場合には、代執行により被った損害について金銭的な賠償を求める必要があるとしても、その取消訴訟に係る訴えの利益は失われる。
総合メモ

行政手続法12条1項により定められ公にされている処分基準に先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の定めがある場合における先行の処分の取消しを求める訴えの利益 最三小判平成27年3月3日

概要
行政手続法12条1項により定められ公にされている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合には、上記先行の処分を受けた者は、将来において上記後行の処分の対象となり得るときは、上記先行の処分の効果が期間の経過によりなくなった後においても、当該処分基準の定めにより上記の不利益な取扱いを受けるべき期間内はなお当該処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有する。
判例
事案:先行処分の取消訴訟において、先行処分自体の効力は期間経過によりなくなっているものの、行政手続法12条1項により定められ公にされている処分基準に先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の定めがある場合に、先行の処分の取消しを求める訴えの利益が認められるかが問題となった。

判旨:「行政手続法は、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することをその目的とし(1条1項)、行政庁は、不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準である処分基準(2条8号ハ)を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならないものと規定している(12条1項)。上記のような行政手続法の規定の文言や趣旨等に照らすと、同法12条1項に基づいて定められ公にされている処分基準は、単に行政庁の行政運営上の便宜のためにとどまらず、不利益処分に係る判断過程の公正と透明性を確保し、その相手方の権利利益の保護に資するために定められ公にされるものというべきである。したがって、行政庁が同項の規定により定めて公にしている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合に、当該行政庁が後行の処分につき当該処分基準の定めと異なる取扱いをするならば、裁量権の行使における公正かつ平等な取扱いの要請や基準の内容に係る相手方の信頼の保護等の観点から、当該処分基準の定めと異なる取扱いをすることを相当と認めるべき特段の事情がない限り、そのような取扱いは裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たることとなるものと解され、この意味において、当該行政庁の後行の処分における裁量権は当該処分基準に従って行使されるべきことがき束されており、先行の処分を受けた者が後行の処分の対象となるときは、上記特段の事情がない限り当該処分基準の定めにより所定の量定の加重がされることになるものということができる。以上に鑑みると、行政手続法12条1項の規定により定められ公にされている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合には、上記先行の処分に当たる処分を受けた者は、将来において上記後行の処分に当たる処分の対象となり得るときは、上記先行の処分に当たる処分の効果が期間の経過によりなくなった後においても、当該処分基準の定めにより上記の不利益な取扱いを受けるべき期間内はなお当該処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有するものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H29 予備 第15問 ウ)
行政手続法の規定により定められ公にされている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合であっても、処分基準は行政機関の内部的な指針を定めた内規の性質を有するにとどまるものであるから、当該行政庁が処分基準に定めのない事項に係る事情を考慮して後行の処分につき当該処分基準の定めと異なる取扱いをすることは、当該処分基準の定めに拘束されるべき特段の事情のない限り、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用として違法となるものではない。

(正答)

(解説)
判例(最判平27.3.3)は、「行政庁が同項の規定により定めて公にしている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合に、当該行政庁が後行の処分につき当該処分基準の定めと異なる取扱いをするならば、裁量権の行使における公正かつ平等な取扱いの要請や基準の内容に係る相手方の信頼の保護等の観点から、当該処分基準の定めと異なる取扱いをすることを相当と認めるべき特段の事情がない限り、そのような取扱いは裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たることとなるものと解され…る。」としている。

(R1 予備 第19問 イ)
行政手続法に基づいて公にされている処分基準が、先行する処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重するとの不利益な取扱いを定めている場合、通常は、当該処分基準の定めと異なる取扱いをすることを相当と認めるべき特段の事情がない限り、当該処分基準に基づく不利益な取扱いがされると考えられるが、当該処分基準は法令には当たらず、事実上不利益な取扱いがされるにすぎないため、先行する営業停止命令の停止期間が経過すれば、当該営業停止命令の取消しを求める訴えの利益は失われる。

(正答)

(解説)
判例(最判平27.3.3)は、本肢と同種の事案において、「行政庁が同項の規定により定めて公にしている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合に、当該行政庁が後行の処分につき当該処分基準の定めと異なる取扱いをするならば、裁量権の行使における公正かつ平等な取扱いの要請や基準の内容に係る相手方の信頼の保護等の観点から、当該処分基準の定めと異なる取扱いをすることを相当と認めるべき特段の事情がない限り、そのような取扱いは裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たることとなるものと解され…る。以上に鑑みると、行政手続法12条1項の規定により定められ公にされている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合には、上記先行の処分に当たる処分を受けた者は、将来において上記後行の処分に当たる処分の対象となり得るときは、上記先行の処分に当たる処分の効果が期間の経過によりなくなった後においても、当該処分基準の定めにより上記の不利益な取扱いを受けるべき期間内はなお当該処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有するものと解するのが相当である。」として、先行する営業停止命令の停止期間が経過しても、当該営業停止命令の取消しを求める訴えの利益は失われないと解している。

(R3 予備 第16問 イ)
行政庁が行政手続法第12条第1項に従い処分基準を定めて公にしたが、後に、特段の事情がないにもかかわらず、当該処分基準の定めと異なる内容の処分をしたときは、当該処分は、同項に違反するものとして取り消されるのであり、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用の問題は生じない。

(正答)

(解説)
判例(最判平27.3.3)は、「行政庁が同項の規定により定めて公にしている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合に、当該行政庁が後行の処分につき当該処分基準の定めと異なる取扱いをするならば、裁量権の行使における公正かつ平等な取扱いの要請や基準の内容に係る相手方の信頼の保護等の観点から、当該処分基準の定めと異なる取扱いをすることを相当と認めるべき特段の事情がない限り、そのような取扱いは裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たることとなるものと解され…る。」としている。

(R3 予備 第19問 ウ)
行政手続法により定められ公にされている処分基準において、先行処分を受けたことを理由として後行処分に係る量定を加重する定めがあっても、そのような量定の加重は先行処分の法的効果によるものとはいえないから、先行処分に当たる処分の効果が期間の経過によりなくなった後は、当該処分の取消しを求める法律上の利益は消滅する。

(正答)

(解説)
判例(最判平27.3.3)は、本肢と同種の事案において、「行政庁が同項の規定により定めて公にしている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合に、当該行政庁が後行の処分につき当該処分基準の定めと異なる取扱いをするならば、裁量権の行使における公正かつ平等な取扱いの要請や基準の内容に係る相手方の信頼の保護等の観点から、当該処分基準の定めと異なる取扱いをすることを相当と認めるべき特段の事情がない限り、そのような取扱いは裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たることとなるものと解され…る。以上に鑑みると、行政手続法12条1項の規定により定められ公にされている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合には、上記先行の処分に当たる処分を受けた者は、将来において上記後行の処分に当たる処分の対象となり得るときは、上記先行の処分に当たる処分の効果が期間の経過によりなくなった後においても、当該処分基準の定めにより上記の不利益な取扱いを受けるべき期間内はなお当該処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有するものと解するのが相当である。」として、先行処分に当たる処分の効果が期間の経過によりなくなった後も、当該処分の取消しを求める法律上の利益は消滅しないと解している。
総合メモ

森林法に基づく保安林指定解除処分 最一小判昭和57年9月9日

概要
①農業用水の確保を目的とし、洪水予防、飲料水の確保の効果をも配慮して指定された保安林の指定解除により洪水緩和、渇水予防上直接の影響を被る一定範囲の地域に居住する住民は、森林法27条1項にいう「直接の利害関係を有する者」として、右解除処分取消訴訟の原告適格を有する。
②代替施設の設置によって洪水、渇水の危険が解消され、その防止上からは保安林の存続の必要性がなくなったと認められるに至ったときは、右防止上の利益侵害を基礎として保安林指定解除処分取消訴訟の原告適格を認められた者の訴えの利益は失われる。
判例
事案:ある森林について保安林指定解除処分がなされたところ、当該森林が存在する場所の住民であるXらが、当該処分の取消を求めて提起した取消訴訟において、①森林法27条1項にいう「直接の利害関係を有する者」として保安林指定解除処分取消訴訟の原告適格が認められるか、②保安林指定解除処分後に、代替施設の設置により、渋水・湯水の危険性が解消された。これにより、保安林指定解除処分の取消訴訟の訴えの利益が失われるかなどが問題となった。

判旨:①「法27条1項にいう『直接の利害関係を有する者』の意義ないし範囲について考えるのに、法25条1項各号に掲げる目的に含まれる不特定多数者の生活利益は極めて多種多様であるから、結局、そのそれぞれの生活利益の具体的内容と性質、その重要性、森林の存続との具体的な関連の内容及び程度等に照らし、『直接の利害関係を有する者』として前記のような法的地位を付与するのが相当であるかどうかによって、これを決するほかはないと考えられる。原審は、特定の保安林の指定に際して、具体的な地形、地質、気象条件、受益主体との関連等から、処分に伴う直接的影響が及ぶものとして配慮されたものと認めうる個々人の生活利益をもって、当該処分による個別的・具体的な法的利益と認めるべきものとし、本件保安林は、a町一円の農業用水確保目的を動機として、水源かん養保安林として指定されたものであり、その指定に当たっては、右農業用水の確保のほか、洪水予防、飲料水の確保という効果も配慮され、右処分によるその実現が期待されていたものと認め、これらの利益を右の個別的・具体的な法的利益とし、進んで右の見地から、本件保安林の有する理水機能が直接重要に作用する一定範囲の地域、すなわち保安林の伐採による理水機能の低下により洪水緩和、渇水予防の点において直接に影響を被る一定範囲の地域に居住する住民についてのみ原告適格を認めるべきものとしているのであるが、原審の右見解は、おおむね前記『直接の利害関係を有する者』に相当するものを限定指示しているものということができるのであって、その限りにおいて原審の右見解は、結論において正当というべきである。ところで、原審の認定によれば、本件保安林のうち原判決添付図面一表示の(イ)斜線部分(以下『本件保安林部分』という。)の伐採により農業用水及び飲料水の不足の影響を受ける範囲はそれぞれ右図面表示の(ロ)斜線部分及び破線内の範囲に限られるものと認められ、また、b川の本支流から東四線排水路、零号排水路を経由してc運河に至る流域は、本件保安林部分からの流水による直接的水害のおそれが認められ、その水害対策が講ぜられるべき地帯であるが、c運河排水機場は、右水害防止対策として流水排出のために設置された設備であるところ、c運河排水機場流域(右図面における実線表示の範囲。以下『排水機場流域』という。)はその機械排水能力の及ぶ範囲として地形上予定されているものであると認められ、本件保安林の指定に際し、本件保安林部分に関しては、排水機場流域が水害防止必要地域として直接の影響の及ぶ範囲として考慮されたものと解するのが相当である、というのであり、原審は、これらの認定に基づいて排水機場流域(農業用水及び飲料水の不足の影響を受ける地域はこの中に含まれている。)内に居住する者のみが本件保安林部分の伐採による理水機能の低下によって直接の影響を受ける者に当たるとしている。所論は、排水機場流域は本件保安林部分の伐採によって洪水の危険が生ずる地域に含まれるといいうるとしても、後者の範囲は当然には前者の範囲に限られるとはいえない旨主張するが、原審の上記認定判断は原判決挙示の証拠関係に照らして是認することができないではなく、その過程に右所論の違法があるということはできない。そうすると、上告人らのうち本件記録上排水機場流域内に居住する者でないことが明らかな原判決添付別紙当事者目録中に甲と表示のある者は、いずれも前記『直接の利害関係を有する者』に当たらないものというべく、したがって、右上告人らの本件訴えは原告適格を欠く不適法のものであるとした原審の判断は、結局、正当として是認することができる。」
 ②「原告適格を有するとされた排水機場流域内に居住する者(原判決添付別紙当事者目録中に乙と表示のある者。以下『乙と表示のある上告人ら』という。)についても、本件保安林指定解除処分後の事情の変化により、右原告適格の基礎とされている右処分による個別的・具体的な個人的利益の侵害状態が解消するに至った場合には、もはや右被侵害利益の回復を目的とする訴えの利益は失われるに至ったものとせざるをえない。換言すれば、乙と表示のある上告人らの原告適格の基礎は、本件保安林指定解除処分に基づく立木竹の伐採に伴う理水機能の低下の影響を直接受ける点において右保安林の存在による洪水や渇水の防止上の利益を侵害されているところにあるのであるから、本件におけるいわゆる代替施設の設置によって右の洪水や渇水の危険が解消され、その防止上からは本件保安林の存続の必要性がなくなったと認められるに至ったときは、もはや乙と表示のある上告人らにおいて右指定解除処分の取消しを求める訴えの利益は失われるに至ったものといわざるをえないのである。」
過去問・解説
(R1 予備 第19問 ア)
保安林指定解除処分に基づく立木竹の伐採により、保安林の存在による洪水や渇水の防止上の利益を侵害される者には、保安林指定解除処分取消訴訟の原告適格が認められるが、代替施設の設置によって洪水や渇水の危険が解消され、その防止上からは保安林の存続の必要性がなくなったと認められるに至ったときは、保安林指定解除処分の取消しを求める訴えの利益は失われる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭57.9.9)は、本肢と同種の事案において、原告適格を認めた上で、「代替施設の設置によって右の洪水や渇水の危険が解消され、その防止上からは本件保安林の存続の必要性がなくなったと認められるに至ったときは、もはや乙と表示のある上告人らにおいて右指定解除処分の取消しを求める訴えの利益は失われるに至った…。」としている。

(R6 予備 第19問 イ)
保安林指定解除処分の取消訴訟係属中に代替施設の設置によって洪水や渇水の危険が解消され、その防止上からは保安林の存続の必要性がなくなったとしても、そのような事情は、事情判決に関する規定の適用に際して考慮されるべき事柄であって、当該解除処分の取消しを求める訴えの利益を消滅させるものではない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭57.9.9)は、本肢と同種の事案において、「代替施設の設置によって右の洪水や渇水の危険が解消され、その防止上からは本件保安林の存続の必要性がなくなったと認められるに至ったときは、もはや乙と表示のある上告人らにおいて右指定解除処分の取消しを求める訴えの利益は失われるに至った…。」としている。
したがって、保安林の存続の必要性がなくなったという事情は、当該解除処分の取消しを求める訴えの利益を消滅させるものである。
総合メモ

公文書公開条例に基づき公開請求された公文書の非公開決定の取消訴訟において当該公文書が書証として提出された場合 最一小判平成14年2月28日

概要
愛知県公文書公開条例(昭和61年愛知県条例第2号)に基づき公開請求された公文書の非公開決定の取消訴訟において、当該公文書が書証として提出された場合であっても、上記決定の取消しを求める訴えの利益は消滅しない。
判例
事案:愛知県公文書公開条例(昭和61年愛知県条例第2号)に基づき公開請求された公文書の非公開決定処分の取消訴訟において当該公文書が書証として提出された場合における訴えの利益が失われるかが問題となった。

判旨:「本件条例は、県民の公文書の公開を請求する権利を明らかにするとともに、公文書の公開に関し必要な事項を定めている(1条)。本件条例における公文書の公開とは、実施機関が本件条例の定めるところにより公文書を閲覧に供し、又は公文書の写しを交付することをいい(2条3項)、実施機関は、本件条例に基づき公文書の公開を求める請求書を受理したときは、請求に係る公文書の公開をするかどうかの決定をしなければならないものとされている(8条1項)。そして、県内に住所を有する者や県内に事務所又は事業所を有する個人及び法人その他の団体等、5条各号のいずれかに該当する者は、実施機関に対して公文書の公開を請求することができるのであり(5条)、本件条例には、請求者が請求に係る公文書の内容を知り、又はその写しを取得している場合に当該公文書の公開を制限する趣旨の規定は存在しない。これらの規定に照らすと、本件条例5条所定の公開請求権者は、本件条例に基づき公文書の公開を請求して、所定の手続により請求に係る公文書を閲覧し、又は写しの交付を受けることを求める法律上の利益を有するというべきであるから、請求に係る公文書の非公開決定の取消訴訟において当該公文書が書証として提出されたとしても、当該公文書の非公開決定の取消しを求める訴えの利益は消滅するものではないと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H20 司法 第34問 ウ)
ある県の公文書公開条例に基づく公文書の公開請求について非公開決定を受けた者が同決定の取消しを求める訴訟において、当該公文書が書証として提出された場合であっても、同人には、同条例に基づき公文書の公開を請求して、所定の手続により請求に係る公文書を閲覧し、又は写しの交付を受けることを求める法律上の利益があるから、上記非公開決定の取消しを求める訴えの利益は失われない。

(正答)

(解説)
判例(最判平14.2.28)は、「本件条例5条所定の公開請求権者は、本件条例に基づき公文書の公開を請求して、所定の手続により請求に係る公文書を閲覧し、又は写しの交付を受けることを求める法律上の利益を有するというべきであるから、請求に係る公文書の非公開決定の取消訴訟において当該公文書が書証として提出されたとしても、当該公文書の非公開決定の取消しを求める訴えの利益は消滅するものではない…。」としている。

(R4 予備 第18問 ア)
AのB県公文書公開条例に基づく公文書の公開請求についてB県知事が非公開決定をしたことに対し、Aが当該非公開決定の取消訴訟を提起したところ、その係属中に、被告であるB県から当該公開請求に係る公文書が書証として提出された場合であっても、当該取消訴訟については、訴えの利益は失われない。

(正答)

(解説)
判例(最判平14.2.28)は、「本件条例には、請求書が請求に係る公文書の内容を知り、又はその写しを取得している場合に当該公文書の公開を制限する趣旨の規定は存在しない。これらの規定に照らすと、本件条例5条所定の公開請求権者は、本件条例に基づき公文書の公開を請求して、所定の手続により請求に係る公文書を閲覧し、又は写しの交付を受けることを求める法律上の利益を有するというべきであるから、請求に係る公文書の非公開決定の取消訴訟において当該公文書が書証として提出されたとしても、当該公文書の非公開決定の取消しを求める訴えの利益は消滅するものではない…。」としている。
したがって、B県から当該公開請求に係る公文書が書証として提出された場合であっても、当該取消訴訟については、訴えの利益は失われない。
総合メモ

競願関係にある者の1人に免許が付与され他にこれが拒否された場合 最三小判昭和43年12月24日

概要
①甲および乙が競願関係にある場合において、甲の免許申請が拒否され、乙に免許が付与されたときは、甲は、乙に対する免許処分の取消訴訟を提起することができるほか、自己に対する拒否処分のみの取消訴訟を提起することができる。
②甲が、乙に対する免許処分の取消を訴求する場合および自己に対する拒否処分の取消を訴求する場合において、当該免許期間が満了しても、乙が再免許を受けて免許事業を継続しているときは、甲の提起した訴訟の利益は失われない。
判例
事案:科学技術教育を主とする教育専門局に該当する無線局開設の免許申請をした甲が、その申請を拒否されたため、これに対する異議の申立てをなしたところ、右異議の申立を棄却する旨の決定がなされたことから、甲が、その取消しを求めた事案において、①甲および乙が競願関係にある場合において、甲の免許申請が拒否され、乙に免許が付与されたときは、甲は、自己に対する拒否処分のみの取消訴訟を提起することができるか、②甲が、乙に対する免許処分の取消を訴求する場合および自己に対する拒否処分の取消を訴求する場合において、当該免許期間が満了しても、乙が再免許を受けて免許事業を継続しているときは、甲の提起した訴訟の利益は失われるかが問題となった。

判旨:①「訴外財団と被上告人とは、係争の同一周波をめぐって競願関係にあり、上告人は、被上告人よりも訴外財団を優位にあるものと認めて、これに予備免許を与え、被上告人にはこれを拒んだもので、被上告人に対する拒否処分と訴外財団に対する免許付与とは、表裏の関係にあるものである。そして、被上告人が右拒否処分に対して異議申立てをしたのに対し、上告人は、電波監理審議会の議決した決定案に基づいて、これを棄却する決定をしたものであるが、これが後述のごとき理由により違法たるを免れないとして取り消された場合には、上告人は、右決定前の白紙の状態に立ち返り、あらためて審議会に対し、被上告人の申請と訴外財団の申請とを比較して、はたしていずれを可とすべきか、その優劣についての判定(決定案についての議決)を求め、これに基づいて異議申立てに対する決定をなすべきである。すなわち、本件のごとき場合においては、被上告人は、自己に対する拒否処分の取消しを請求しうるほか、競願者(訴外財団)に対する免許処分の取消しをも訴求しうる(ただし、いずれも裁決主義がとられているので、取消しの対象は異議申立てに対する棄却決定となる。)が、いずれの訴えも、自己の申請が優れていることを理由とする場合には、申請の優劣に関し再審査を求める点においてその目的を同一にするものであるから、免許処分の取消しを訴求する場合はもとより、拒否処分のみの取消しを訴求する場合にも、上告人による再審査の結果によっては、訴外財団に対する免許を取り消し、被上告人に対し免許を付与するということもありうるのである。 したがって、論旨が、本件棄却決定の取消しが当然に訴外財団に対する免許の取消しを招来するものでないことを理由に、本件訴えの利益を否定するのは早計であって、採用できない。」 ②「また、…免許期間の満了に関する所論について考えるに、訴外財団に付与された予備免許は、昭和39年4月3日本免許となったのち、翌40年5月31日をもって免許期間を満了したが、同年6月1日および同43年6月1日の2回にわたり、これが更新されていることが明らかである。もとより、いずれも再免許であって、形式上たんなる期間の更新にすぎないものとは異なるが、右に『再免許』と称するものも、なお、本件の予備免許および本免許を前提とするものであって、当初の免許期間の満了とともに免許の効力が完全に喪失され、再免許において、従前とはまったく別個無関係に、新たな免許が発効し、まったく新たな免許期間が開始するものと解するのは相当でない。そして、前記の競願者に対する免許処分(異議申立て棄却決定)の取消訴訟において、所論免許期間の満了という点が問題となるのであるが、期間満了後再免許が付与されず、免許が完全に失効した場合は格別として、期間満了後ただちに再免許が与えられ、継続して事業が維持されている場合に、これを前記の免許失効の場合と同視して、訴えの利益を否定することは相当でない。けだし、訴えの利益の有無という観点からすれば、競願者に対する免許処分の取消しを訴求する場合はもちろん、自己に対する拒否処分の取消しを訴求する場合においても、当初の免許期間の満了と再免許は、たんなる形式にすぎず、免許期間の更新とその実質において異なるところはないと認められるからである。また、免許申請者たる原告(被上告人)自身に対する拒否処分(異議申立て棄却決定)の取消訴訟において、右棄却決定が取り消されて被上告人に予備免許が付与された場合には、以後法定の期間(昭和25年6月1日から起算して3年ごとの期間)内において免許人たる地位を保有し、免許期間満了にあたっては再免許を申請しうるのであって、本件において被上告人が申請し、訴外財団に付与された免許期間が、たまたま前記法定期間の定めにより昭和40年5月31日に満了するからといって、所論のように、本件免許申請を右同日までの免許人の地位の取得のみを目的とするものとして捉え、その申請の対象となるべき免許の有効期間が満了した以上、本件異議申立て棄却決定の取消しを求める訴えの利益が失われるとする見解は、原免許者に再免許の申請が許されることを無視した形式論にすぎない。」
過去問・解説
(H28 予備 第21問 イ)
AとBが同一周波の無線局の開設に係る免許をめぐって競願関係にある場合は、免許付与と免許申請拒否処分は表裏の関係にあるので、Bに与えられた免許が、Aの提起した免許取消訴訟に係る判決で取り消されると、免許申請拒否処分を受けたAには、取消判決の拘束力による再審査の結果、免許を与えられる可能性がある。

(正答)

(解説)
判例(最判昭43.12.24)は、本肢と同種の事案において、「訴外財団と被上告人とは、係争の同一周波をめぐって競願関係にあり、上告人は、被上告人よりも訴外財団を優位にあるものと認めて、これに予備免許を与え、被上告人にはこれを拒んだもので、被上告人に対する拒否処分と訴外財団に対する免許付与とは、表裏の関係にあるものである。」とした上で、「違法たるを免れないとして取り消された場合には、上告人は、右決定前の白紙の状態に立ち返り、…上告人による再審査の結果によっては、訴外財団に対する免許を取り消し、被上告人に対し免許を付与するということもありうるのである。」としている。
したがって、Bに与えられた免許が、Aの提起した免許取消訴訟に係る判決で取り消されると、免許申請拒否処分を受けたAには、取消判決の拘束力による再審査の結果、免許を与えられる可能性があるといえる。

(R3 予備 第18問 ア)
免許の申請が競願関係にある場合において、申請拒否処分を受けた申請者は、自己に対する拒否処分の取消訴訟を提起することができるほか、競願者に対する免許処分の取消訴訟を提起することもできる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭43.12.24)は、本肢と同種の事案において、「被上告人は、自己に対する拒否処分の取消しを請求しうるほか、競願者(訴外財団)に対する免許処分の取消しをも訴求しうる…。」としている。

(R4 予備 第18問 ウ)
テレビジョン放送局の開設の免許申請をしたEが、旧郵政大臣から免許拒否処分を受けるとともに競願者であるFに対して免許処分がされたことに対し、Fに対する免許処分の取消訴訟及びE自身に対する免許拒否処分の取消訴訟を提起したところ、その係属中に、Fに対する当初の免許期間が満了したとしても、その後直ちにFに対して再免許が与えられ事業が継続して維持されている場合には、Eが提起したFに対する免許処分の取消訴訟のみならず、E自身に対する免許拒否処分の取消訴訟についても、訴えの利益は失われない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭43.12.24)は、本肢と同種の事案において、「期間満了後再免許が付与されず、免許が完全に失効した場合は格別として、期間満了後ただちに再免許が与えられ、継続して事業が維持されている場合に、これを前記の免許失効の場合と同視して、訴えの利益を否定することは相当でない。」としている。
したがって、Fに対する当初の免許期間が満了したとしても、その後直ちにFに対して再免許が与えられ事業が継続して維持されている場合には、Eが提起したFに対する免許処分の取消訴訟のみならず、E自身に対する免許拒否処分の取消訴訟についても、訴えの利益は失われないといえる。
総合メモ

減額再更正 最二小判昭和56年4月24日

概要
減額再更正処分につき、税額の一部取消という納税者に有利な効果をもたらす処分であるから、納税者は、その取消を求める訴えの利益を有しないとされた。
判例
事案:弁護士であるXが、その所得税につきYがした減額更正処分(納税者自身の申告等により確定させた税額を原処分庁が減額する処分)と、当該処分の取消処分には所得の種類を誤って認定した違法があるとして提起した、それらの処分の取消訴訟において、減額再更正処分の取消を求める訴えの利益の有無が問題となった。

判旨:「申告に係る税額につき更正処分がされたのち、いわゆる減額再更正がされた場合、右再更正処分は、それにより減少した税額に係る部分についてのみ法的効果を及ぼすものであり(国税通則法29条2項)、それ自体は、再更正処分の理由のいかんにかかわらず、当初の更正処分とは別個独立の課税処分ではなく、その実質は、当初の更正処分の変更であり、それによって、税額の一部取消という納税者に有利な効果をもたらす処分と解するのを相当とする。そうすると、納税者は、右の再更正処分に対してその救済を求める訴の利益はなく、専ら減額された当初の更正処分の取消を訴求することをもって足りるというべきである。」
過去問・解説
(H25 司法 第30問 ア)
当初の更正処分による税額を減額する再更正処分は、納税者に有利な効果をもたらすものであるから、納税者にその取消しを求める利益はない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭56.4.24)は、本肢と同種の事案において、「再更正処分…の実質は、当初の更正処分の変更であり、それによって、税額の一部取消という納税者に有利な効果をもたらす処分と解するのを相当とする。そうすると、納税者は、右の再更正処分に対してその救済を求める訴の利益はなく、専ら減額された当初の更正処分の取消を訴求することをもって足りるというべきである。」としている。
総合メモ

自動車等運転免許証の有効期間の更新にあたり、一般運転者として扱われ、優良運転者である旨の記載のない免許証を交付されて更新処分を受けた者は、当該更新処分の取消しを求める訴えの利益を有するか 最二小判平成21年2月27日

概要
自動車等運転免許証の有効期間の更新に当たり、一般運転者として扱われ、優良運転者である旨の記載のない免許証を交付されて更新処分を受けた者は、上記記載のある免許証を交付して行う更新処分を受ける法律上の地位を否定されたことを理由として、これを回復するため、当該更新処分の取消しを求める訴えの利益を有する。
判例
事案:自動車等運転免許証の有効期間の更新に当たり、一般運転者として扱われ、優良運転者である旨の記載のない免許証を交付されて更新処分を受けた者が提起した当該処分の取消訴訟において、当該更新処分の取消しを求める訴えの利益を有するかが問題となった。

判旨:「道路交通法は、優良運転者の実績を賞揚し、優良な運転へと免許証保有者を誘導して交通事故の防止を図る目的で、優良運転者であることを免許証に記載して公に明らかにすることとするとともに、優良運転者に対し更新手続上の優遇措置を講じているのである。このことに、優良運転者の制度の上記沿革等を併せて考慮すれば、同法は、客観的に優良運転者の要件を満たす者に対しては優良運転者である旨の記載のある免許証を交付して更新処分を行うということを、単なる事実上の措置にとどめず、その者の法律上の地位として保障するとの立法政策を、交通事故の防止を図るという制度の目的を全うするため、特に採用したものと解するのが相当である。 確かに、免許証の更新処分において交付される免許証が優良運転者である旨の記載のある免許証であるかそれのないものであるかによって、当該免許証の有効期間等が左右されるものではない。また、上記記載のある免許証を交付して更新処分を行うことは、免許証の更新の申請の内容を成す事項ではない。しかしながら、上記のとおり、客観的に優良運転者の要件を満たす者であれば優良運転者である旨の記載のある免許証を交付して行う更新処分を受ける法律上の地位を有することが肯定される以上、一般運転者として扱われ上記記載のない免許証を交付されて免許証の更新処分を受けた者は、上記の法律上の地位を否定されたことを理由として、これを回復するため、同更新処分の取消しを求める訴えの利益を有するというべきものである。 本件更新処分は、被上告人に対し優良運転者である旨の記載のない免許証を交付してされた免許証の更新処分であるから、被上告人は、上記記載のある免許証を交付して行う免許証の更新処分を受ける法律上の地位を回復するため、本件更新処分の取消しを求める訴えの利益を有するということができ、本件更新処分取消しの訴えは適法であることとなる。」
過去問・解説
(H23 司法 第29問 ア)
運転免許証(以下「免許証」という。)の有効期間の更新に当たり、一般運転者(優良運転者又は違反運転者等以外の者)として扱われ、優良運転者である旨の記載のない免許証を交付されて更新処分を受けた者が、当該更新処分中の同人を一般運転者とする部分の取消し等を求めた事案において、訴えの利益の有無について判断を示した最高裁判所平成21年2月27日第二小法廷判決(民集63巻2号299頁)の次の判示を読み、以下の記述について、正しい場合には〇を、誤っている場合には×を選びなさい。

【判示】
 「確かに、免許証の更新処分において交付される免許証が優良運転者である旨の記載のある免許証であるかそれのないものであるかによって、当該免許証の有効期間等が左右されるものではない。また、上記記載のある免許証を交付して更新処分を行うことは、免許証の更新の申請の内容を成す事項ではない。しかしながら、上記のとおり、客観的に優良運転者の要件を満たす者であれば優良運転者である旨の記載のある免許証を交付して行う更新処分を受ける法律上の地位を有することが肯定される以上、一般運転者として扱われ上記記載のない免許証を交付されて免許証の更新処分を受けた者は、上記の法律上の地位を否定されたことを理由として、これを回復するため、同更新処分の取消しを求める訴えの利益を有するというべきものである。」

(注)道路交通法第101条の2の2第1項及び第108条の2第1項第11号並びに道路交通法施行規則(平成18年内閣府令第4号による改正前のもの)第38条第12項によれば、免許証の更新の申請等に関する優良運転者の特例として、①免許証の更新を受けようとする者のうち当該更新を受ける日において優良運転者に該当するものは、更新申請書の提出を、住所地を管轄する公安委員会以外の公安委員会を経由して行うことができ、また、②更新時講習は、優良運転者、一般運転者又は違反運転者等の区分に応じて行うものとされているところ、優良運転者に対する講習は、「道路交通の現状及び交通事故の実態」等の講習事項につき教材を用いた講習方法により30分行うこととされているのに対し、一般運転者に対する講習は、「自動車等の運転について必要な適性」の講習事項が加わり、筆記検査に基づく指導を含む講習方法によって1時間行うこととされている。

【記述】
本判決は、優良運転者による更新処分の申請の内容について、優良運転者である旨の記載のある免許証を交付して更新処分を行うことを求めるものであると解している。

(正答)

(解説)
判例(最判平21.2.27)は、「優良運転者である旨の記載…のある免許証を交付して更新処分を行うことは、免許証の更新の申請の内容を成す事項ではない。」としている。
したがって、本判決は、優良運転者による更新処分の申請の内容について、優良運転者である旨の記載のある免許証を交付して更新処分を行うことを求めるものであると解していない。

(H23 司法 第29問 イ)
運転免許証(以下「免許証」という。)の有効期間の更新に当たり、一般運転者(優良運転者又は違反運転者等以外の者)として扱われ、優良運転者である旨の記載のない免許証を交付されて更新処分を受けた者が、当該更新処分中の同人を一般運転者とする部分の取消し等を求めた事案において、訴えの利益の有無について判断を示した最高裁判所平成21年2月27日第二小法廷判決(民集63巻2号299頁)の次の判示を読み、以下の記述について、正しい場合には〇を、誤っている場合には×を選びなさい。

*【判示】は、(H23 司法 第29問 ア)を参照。

【記述】
本判決は、更新処分において一般運転者として扱われ優良運転者である旨の記載のない免許証を交付されることが、優良運転者である旨の記載のある免許証を交付して行う更新処分を受ける法律上の地位を損なう不利益に当たり得ることを認めたものである。

(正答)

(解説)
判例(最判平21.2.27)は、「客観的に優良運転者の要件を満たす者であれば優良運転者である旨の記載のある免許証を交付して行う更新処分を受ける法律上の地位を有することが肯定される以上、一般運転者として扱われ上記記載のない免許証を交付されて免許証の更新処分を受けた者は、上記の法律上の地位を否定されたことを理由として、これを回復するため、同更新処分の取消しを求める訴えの利益を有するというべきものである。」とした上で、「被上告人は、上記記載のある免許証を交付して行う免許証の更新処分を受ける法律上の地位を回復するため、本件更新処分の取消しを求める訴えの利益を有するということができ、本件更新処分取消しの訴えは適法であることとなる。」としている。

(H23 司法 第29問 ウ)
運転免許証(以下「免許証」という。)の有効期間の更新に当たり、一般運転者(優良運転者又は違反運転者等以外の者)として扱われ、優良運転者である旨の記載のない免許証を交付されて更新処分を受けた者が、当該更新処分中の同人を一般運転者とする部分の取消し等を求めた事案において、訴えの利益の有無について判断を示した最高裁判所平成21年2月27日第二小法廷判決(民集63巻2号299頁)の次の判示を読み、以下の記述について、それぞれ正しい場合には〇を、誤っている場合には×を選びなさい。

*【判示】は、(H23 司法 第29問 ア)を参照。

【記述】
本判決によれば、優良運転者に区分されるべき者に対して優良運転者である旨の記載のない免許証を交付して更新処分を行うことは、その者の名誉、信用等を損なうものであるから、訴えの利益を根拠付ける不利益に当たることになる。

(正答)

(解説)
判例(最判平21.2.27)は、「客観的に優良運転者の要件を満たす者であれば優良運転者である旨の記載のある免許証を交付して行う更新処分を受ける法律上の地位を有することが肯定される以上、一般運転者として扱われ上記記載のない免許証を交付されて免許証の更新処分を受けた者は、上記の法律上の地位を否定されたことを理由として、これを回復するため、同更新処分の取消しを求める訴えの利益を有するというべきものである。」として、客観的な利益として、優良運転者である旨の記載のある免許証の交付を受けるという法律上の地位を認めている。
もっとも、これは、その者の名誉や信用を根拠としたものではなく、更新手続上の優遇措置等を根拠として法律上の地位を認めたものであると解されている。

(H23 司法 第29問 エ)
運転免許証(以下「免許証」という。)の有効期間の更新に当たり、一般運転者(優良運転者又は違反運転者等以外の者)として扱われ、優良運転者である旨の記載のない免許証を交付されて更新処分を受けた者が、当該更新処分中の同人を一般運転者とする部分の取消し等を求めた事案において、訴えの利益の有無について判断を示した最高裁判所平成21年2月27日第二小法廷判決(民集63巻2号299頁)の次の判示を読み、以下の記述について、正しい場合には〇を、誤っている場合には×を選びなさい。

*【判示】は、(H23 司法 第29問 ア)を参照。

【記述】
本判決によっても、申請の段階で一般運転者に区分されたことを知った上で優良運転者である旨の記載のない免許証を交付されて更新処分を受けた者は、同更新処分の取消しを求めることはできず、当該免許証に優良運転者である旨の記載をすることの義務付けを求める訴えを提起すべきことになる。

(正答)

(解説)
判例(最判平21.2.27)は、「被上告人は、上記記載のある免許証を交付して行う免許証の更新処分を受ける法律上の地位を回復するため、本件更新処分の取消しを求める訴えの利益を有するということができ、本件更新処分取消しの訴えは適法であることとなる。」としている。

(H25 司法 第30問 エ)
自動車運転免許証の有効期間の更新処分は、申請を認容して利益を付する処分であり、更新によって交付される免許証が優良運転者である旨の記載のあるものか一般運転者である旨の記載のあるものかによって当該免許証の有効期間等に差異はないから、一般運転者として扱われ、優良運転者である旨の記載のない免許証を交付されて更新処分を受けた者が、自分は優良運転者に当たるとして当該更新処分の取消しを求める利益はない。

(正答)

(解説)
判例(最判平21.2.27)は、「確かに、免許証の更新処分において交付される免許証が優良運転者である旨の記載のある免許証であるかそれのないものであるかによって、当該免許証の有効期間等が左右されるものではない。」とした上で、「一般運転者として扱われ上記記載のない免許証を交付されて免許証の更新処分を受けた者は、上記の法律上の地位を否定されたことを理由として、これを回復するため、同更新処分の取消しを求める訴えの利益を有するというべきものである。」としている。

(H28 予備 第19問 イ)
道路交通法は、優良運転者の実績を賞揚し、優良な運転をするように自動車運転免許証の保有者を誘導して交通事故の防止を図る目的で、優良運転者であることを免許証に記載して公に明らかにするとともに、優良運転者に対し更新手続上の優遇措置を講じていることなどに照らせば、免許証の有効期間の更新に当たり、一般運転者として扱われ、優良運転者である旨の記載のない免許証を交付されて更新処分を受けた者は、上記記載のある免許証を交付して行う更新処分を受ける法律上の地位を否定されたことを理由として、これを回復するため、当該更新処分の取消しを求める訴えの利益を有する。

(正答)

(解説)
判例(最判平21.2.27)は、「道路交通法は、優良運転者の実績を賞揚し、優良な運転へと免許証保有者を誘導して交通事故の防止を図る目的で、優良運転者であることを免許証に記載して公に明らかにすることとするとともに、優良運転者に対し更新手続上の優遇措置を講じているのである。このことに、優良運転者の制度の上記沿革等を併せて考慮すれば、同法は、客観的に優良運転者の要件を満たす者に対しては優良運転者である旨の記載のある免許証を交付して更新処分を行うということを、単なる事実上の措置にとどめず、その者の法律上の地位として保障するとの立法政策を、交通事故の防止を図るという制度の目的を全うするため、特に採用したものと解するのが相当である。」とした上で、「一般運転者として扱われ上記記載のない免許証を交付されて免許証の更新処分を受けた者は、上記の法律上の地位を否定されたことを理由として、これを回復するため、同更新処分の取消しを求める訴えの利益を有するというべきものである。」としている。

(R6 予備 第19問 ウ)
自動車等運転免許証の有効期間の更新に当たり、一般運転者として扱われ、優良運転者である旨の記載のない免許証を交付されて更新処分を受けた者は、上記記載の有無により免許証の有効期間に差異がないことから、自己が優良運転者に当たる旨主張して当該更新処分の取消しを求める訴えの利益を有しない。

(正答)

(解説)
判例(最判平21.2.27)は、「免許証の更新処分において交付される免許証が優良運転者である旨の記載のある免許証であるかそれのないものであるかによって、当該免許証の有効期間等が左右されるものではない。」とした上で、「しかしながら、上記のとおり、客観的に優良運転者の要件を満たす者であれば優良運転者である旨の記載のある免許証を交付して行う更新処分を受ける法律上の地位を有することが肯定される以上、一般運転者として扱われ上記記載のない免許証を交付されて免許証の更新処分を受けた者は、上記の法律上の地位を否定されたことを理由として、これを回復するため、同更新処分の取消しを求める訴えの利益を有するというべきものである。」としている。
総合メモ

取消訴訟の出訴期間経過後に国家賠償請求訴訟を提起した処分の違法性を主張することの可否 最二小判昭和36年4月21日

概要
①行政処分無効確認訴訟は国家賠償請求の目的で提起されたものであるからといって、処分庁が右処分を取り消した後においても、なおその法律上の利益があるということはできない。
②あらかじめ処分の取消訴訟を提起していなくても、取消訴訟の出訴期間経過後の国家賠償請求訴訟において、当該処分の違法性を主張することができる。
判例
事案: 行政処分無効確認訴訟において、①その対象となっている処分が取り消された場合に、訴えの利益が失われるか、②取消訴訟の出訴期間経過後の国家賠償請求訴訟において、当該処分の違法性を主張することができるかが問題となった。

判旨:①「本件買収計画は、買収申請の取下により瑕疵を帯びるに至り、右瑕疵を理由とする取消により、初めに遡りその存在を失うに至ったものと解すべきであるから、上告人は、右計画の無効確認を求めるにつき法律上の利益を欠くに至ったものと解すべきである。」
 ②「行政処分が違法であることを理由として国家賠償の請求をするについては、あらかじめ右行政処分につき取消又は無効確認の判決を得なければならないものではないから、本訴が被上告人委員会の不法行為による国家賠償を求める目的に出たものであるということだけでは、本件買収計画の取消後においても、なおその無効確認を求めるにつき法律上の利益を有するということの理由とするに足りない。」
過去問・解説
(H29 予備 第20問 ウ)
処分があったことを知った日から6か月を経過したとき又は処分の日から1年を経過したときは、正当な理由がない限り、処分の取消しの訴えを提起して当該処分の効力を争うことができなくなるとともに、国家賠償請求訴訟を提起して当該処分の違法性を主張することもできなくなる。

(正答)

(解説)
行訴法14条は、1項本文において、「取消訴訟は、処分又は裁決があったことを知った日から6箇月を経過したときは、提起することができない。」と規定し、2項本文において、「取消訴訟は、処分又は裁決の日から1年を経過したときは、提起することができない。」と規定している。
これについて、判例(最判昭36.4.21)は、「行政処分が違法であることを理由として国家賠償の請求をするについては、あらかじめ右行政処分につき取消又は無効確認の判決を得なければならないものではないから、本訴が被上告人委員会の不法行為による国家賠償を求める目的に出たものであるということだけでは、本件買収計画の取消後においても、なおその無効確認を求めるにつき法律上の利益を有するということの理由とするに足りない。」として、取消訴訟の出訴期間経過後であっても、当該処分の違法性を主張して国家賠償請求訴訟を提起することも可能であることを示している。
したがって、取消訴訟の出訴期間経過後であっても、国家賠償請求訴訟において当該処分の違法性を主張することができる。
総合メモ