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訴えの利益(法的地位の回復不能・喪失)

免職された公務員が免職処分の取消訴訟係属中に公職の候補者として届出をした場合 最大判昭和40年4月28日

概要
免職された公務員が、免職処分の取消訴訟係属中に公職の候補者として届出をしたため、法律上その職を辞したしたものとみなされ、免職処分が取り消されても公務員たる地位が回復されない場合においても、行政事件訴訟法第9条のもとでは、当該訴えの利益を認めるのが相当である。
判例
事案:免職された公務員が免職処分の取消訴訟係属中に公職の候補者として届出をした場合において、免職処分が取り消されても公務員たる地位が回復することはないのであるから、訴えの利益が失われないかが問題となった。

判旨:「しかるに、本件が当上告審に係属しているうちに、昭和37年10月1日から行政事件訴訟法が施行されるにいたったが、右新法9条は、『処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴えは、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなった後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。』と規定し、同法附則は、その2条で行政事件訴訟特例法を廃止するとともに、3条で『この法律は、この附則に特別の定めがある場合を除き、この法律施行前に生じた事項にも適用する。ただし、旧法によって生じた効力を妨げない。』と規定している。 ところで、新法には訴の利益に関する特別の経過規定はなく、また、右附則3条但書にいう『旧法によって生じた効力』とは、旧法を適用してすでに確定した個々の法律上の効力を指すものと解するのが相当である。しかも、訴の利益の有無は職権調査事項であり、かつ、その存在は訴維持の要件であるから、本件訴の利益については、当上告審において、右附則3条本文の規定により、新法を適用してこれが存否を判断すべきものと解する。  しかして、原判決(その引用する第1審判決)の認定にかかる前示事実に照らせば、本件免職処分が取り消されたとしても、上告人は市議会議員に立候補したことにより郵政省の職員たる地位を回復するに由ないこと、まさに、原判決(および第1審判決)説示のとおりである。しかし、公務職免職の行政処分は、それが取り消されない限り、免職処分の効力を保有し、当該公務員は、違法な免職処分さえなければ公務員として有するはずであった給料請求権その他の権利、利益につき裁判所に救済を求めることができなくなるのであるから、本件免職処分の効力を排除する判決を求めることは、右の権利、利益を回復するための必要な手段であると認められる。そして、新法9条が、たとえ注意的にもしろ、括孤内において前記のような規定を設けたことに思いを致せば、同法の下においては、広く訴の利益を認めるべきであって、上告人が郵政省の職員たる地位を回復するに由なくなった現在においても、特段の事情の認められない本件において、上告人の叙上のごとき権利、利益が害されたままになっているという不利益状態の存在する余地がある以上、上告人は、なおかつ、本件訴訟を追行する利益を有するものと認めるのが相当である。」
過去問・解説
(H20 司法 第34問 イ)
免職処分を受けた公務員が、その後公職の選挙に立候補した場合には、公職選挙法第90条によりその届出の日に公務員の職を辞したものとみなされ、当該免職処分が取り消されたとしても同人が公務員たる地位を回復することはないから、その取消しを求める訴えの利益は失われる。

【参照条文】公職選挙法
第90条 (前略)公務員が、(中略)届出により公職の候補者となったときは、当該公務員の退職に関する法令の規定にかかわらず、その届出の日に当該公務員たることを辞したものとみなす。

(正答)

(解説)
判例(最判昭40.4.28)は、「上告人が郵政省の職員たる地位を回復するに由なくなった現在においても、特段の事情の認められない本件において、上告人の叙上のごとき権利、利益が害されたままになっているという不利益状態の存在する余地がある以上、上告人は、なおかつ、本件訴訟を追行する利益を有するものと認めるのが相当である。」としている。
したがって、免職処分が取り消されても公務員たる地位が回復することはないとしても、その取消しを求める訴えの利益は失われない。

(R1 予備 第19問 エ)
公務員が届出により公職の候補者となったときは、届出の日から公務員たることを辞したものとみなすとの公職選挙法の規定があるため、免職処分取消訴訟を提起して争っている公務員が、公職の候補者となった場合には、当該免職処分の取消しを求める訴えの利益は失われるのかが問題となる。
仮に免職処分が取り消されても、当該公務員は、公務員たる地位を回復することはできないが、免職処分は、それが取り消されない限り効力を有し、違法な免職処分さえなければ公務員として有するはずであった給料請求権その他の権利、利益につき裁判所に救済を求めることができなくなるから、当該免職処分の効力を排除する判決を求めることは、これらの権利、利益を回復するための必要な手段と考えられ、当該免職処分の取消しを求める訴えの利益は失われない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭40.4.28)は、「本件免職処分が取り消されたとしても、上告人は市議会議員に立候補したことにより郵政省の職員たる地位を回復するに由ないこと、まさに、原判決(および第1審判決)説示のとおりである。しかし、公務職免職の行政処分は、それが取り消されない限り、免職処分の効力を保有し、当該公務員は、違法な免職処分さえなければ公務員として有するはずであった給料請求権その他の権利、利益につき裁判所に救済を求めることができなくなるのであるから、本件免職処分の効力を排除する判決を求めることは、右の権利、利益を回復するための必要な手段であると認められる。…上告人が郵政省の職員たる地位を回復するに由なくなった現在においても、特段の事情の認められない本件において、上告人の叙上のごとき権利、利益が害されたままになっているという不利益状態の存在する余地がある以上、上告人は、なおかつ、本件訴訟を追行する利益を有するものと認めるのが相当である。」としている。
総合メモ

在留外国人が再入国許可を受けずに出国した場合 最二小判平成10年4月10日

概要
再入国不許可処分を受けた者が本邦から出国した場合には、右不許可処分の取消しを求める訴えの利益は失われる。
判例
事案:再入国不許可処分の取消訴訟において、当該処分を受けた者が本邦から出国した場合に、再入国ができなくなることから、不許可処分の取消しを求める訴えの利益が失われるかが問題となった。

判旨:「再入国の許可申請に対する不許可処分を受けた者が再入国の許可を受けないまま本邦から出国した場合には、右不許可処分の取消しを求める訴えの利益は失われるものと解するのが相当である。その理由は、次のとおりである。本邦に在留する外国人が再入国の許可を受けないまま本邦から出国した場合には、同人がそれまで有していた在留資格は消滅するところ、出入国管理及び難民認定法26条1項に基づく再入国の許可は、本邦に在留する外国人に対し、新たな在留資格を付与するものではなく、同人が有していた在留資格を出国にもかかわらず存続させ、右在留資格のままで本邦に再び入国することを認める処分であると解される。そうすると、再入国の許可申請に対する不許可処分を受けた者が再入国の許可を受けないまま本邦から出国した場合には、同人がそれまで有していた在留資格が消滅することにより、右不許可処分が取り消されても、同人に対して右在留資格のままで再入国することを認める余地はなくなるから、同人は、右不許可処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を失うに至るものと解すべきである。そして、右の理は、右不許可処分を受けた者が日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法(以下『出入国管理特別法』という。)1条の許可を受けて本邦に永住していた場合であっても、異なるところがないというべきである。」
過去問・解説
(R3 予備 第19問 エ)
本邦に在留する外国人が再入国許可申請に対する不許可処分を受けて、再入国許可を受けないまま出国した場合には、当該不許可処分が取り消されても当該外国人が従前の在留資格のままで再入国することを認める余地はないから、当該不許可処分の取消しを求める法律上の利益は消滅する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭10.4.10)は、「再入国の許可申請に対する不許可処分を受けた者が再入国の許可を受けないまま本邦から出国した場合には、同人がそれまで有していた在留資格が消滅することにより、右不許可処分が取り消されても、同人に対して右在留資格のままで再入国することを認める余地はなくなるから、同人は、右不許可処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を失うに至るものと解すべきである。」としている。
総合メモ

退去強制令書発付処分を受けた者が、退去強制令書の執行により本邦外に送還された場合 最二小判平成8年7月12日

概要
退去強制令書発付処分を受けた者が退去強制令書の執行により本邦外に送還された後1年が経過し、かつ、日本への上陸拒否期間が経過した場合には、当該処分の取消しを求める訴えの利益は失われる。
判例
事案:退去強制令書発付処分を受けた者が提起した、当該処分の取消訴訟において、退去強制令書の執行により本邦外に送還された後1年が経過し、日本への上陸拒否期間が経過した場合に訴えの利益が失われるかが問題となった。

判旨:「上告人は出入国管理及び難民認定法24条1号に該当して発付された退去強制令書の執行により本邦外に送還されてから既に1年が経過したというのであり、同法5条1項9号の規定により本邦への上陸を拒否されることもなくなったのであるから、もはや右退去強制令書発付処分の取消しにより回復すべき法律上の利益は何ら存在せず、右処分の取消しを求める訴えの利益は失われ…る。」
過去問・解説
(H23 共通 第30問 イ)
退去強制令書の送還部分が執行され、被処分者が強制送還されてしまえば、処分はその目的を達成し、被処分者の退去義務は消滅するが、退去を強制された者の本邦への上陸拒否期間が経過するまでは、退去強制令書発付処分の取消しを求める訴えの利益は消滅しない。

(正答)

(解説)
判例(最判平8.7.12)は、本肢と同種の事案において、「上告人は出入国管理及び難民認定法24条1号に該当して発付された退去強制令書の執行により本邦外に送還されてから既に1年が経過したというのであり、同法5条1項9号の規定により本邦への上陸を拒否されることもなくなったのであるから、もはや右退去強制令書発付処分の取消しにより回復すべき法律上の利益は何ら存在せず、右処分の取消しを求める訴えの利益は失われ…る。」としている。
したがって、退去を強制された者の本邦への上陸拒否期間が経過するまでは訴えの利益は消滅しないといえる。
総合メモ

市立学校教諭が同一市内の他の中学校教諭に補する旨の転任処分を受けた場合において、当該処分がその身分、俸給等に異動を生ぜしめず、客観的、実際的見地からみて勤務場所、勤務内容等に不利益を伴うものでないとき 最一小判昭和61年10月23日

概要
市立学校教諭が同一市内の他の中学校教諭に補する旨の転任処分を受けた場合において、当該処分がその身分、俸給等に異動を生ぜしめず、客観的、実際的見地からみて勤務場所、勤務内容等に不利益を伴うものでないときは、他に特段の事情がない限り、右教諭は転任処分の取消を求める訴えの利益を有しない。
判例
事案:市立中学校教諭に対する同一市内中学校間における転任処分を対象とした取消訴訟において、訴えの利益が認められるかが問題となった。

判旨:「本件転任処分は、吹田二中教諭として勤務していた被上告人らを同一市内の他の中学校教諭に補する旨配置換えを命じたものにすぎず、被上告人らの身分、俸給等に異動を生ぜしめるものでないことはもとより、客観的また実際的見地からみても、被上告人らの勤務場所、勤務内容等においてなんらの不利益を伴うものでないことは、原判決の判示するとおりであると認められる。したがって、他に特段の事情の認められない本件においては、被上告人らについて本件転任処分の取消しを求める法律上の利益を肯認することはできないものといわなければならない(原判決のいう名誉の侵害は、事実上の不利益であって、本件転任処分の直接の法的効果ということはできない。)。 …してみると、本件転任処分の取消しを求める被上告人らの本件訴えは、いずれも不適法というべく、もし被上告人ら主張のごとき理由により本件転任処分が違法であり、これにより被上告人らの名誉・信用等がき損されたとするのであれが、国家賠償法に基づく損害賠償請求によってその救済を求めるべきものである。」
過去問・解説
(H25 共通 第30問 ウ)
市立中学校の教諭に対する同一市内の中学校間の転任処分が、教諭の身分、俸給等に異動を生ぜしめず、客観的、実際的見地からみて勤務場所、勤務内容等に何らの不利益を伴わない場合には、他に特段の事情のない限り、教諭に当該転任処分の取消しを求める利益はない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭61.10.23)は、本肢と同種の事案において、「本件転任処分は、吹田二中教諭として勤務していた被上告人らを同一市内の他の中学校教諭に補する旨配置換えを命じたものにすぎず、被上告人らの身分、俸給等に異動を生ぜしめるものでないことはもとより、客観的また実際的見地からみても、被上告人らの勤務場所、勤務内容等においてなんらの不利益を伴うものでない…。したがって、他に特段の事情の認められない本件においては、被上告人らについて本件転任処分の取消しを求める法律上の利益を肯認することはできないものといわなければならない…。」としている。
総合メモ