現在お使いのブラウザのバージョンでは、本サービスの機能をご利用いただけない可能性があります
バージョンアップを試すか、Google ChromeやMozilla Firefoxなどの最新ブラウザをお試しください

引き続き問題が発生する場合は、 お問い合わせ までご連絡ください。

国家賠償制度(国家賠償法2条)

国家賠償法2条1項に基づく損害賠償責任における過失の要否 最一小判昭和45年8月20日

概要
国家賠償法2条1項による営造物の設置または管理の瑕疵に基づく国及び公共団体の損害賠償責任については、過失の存在を必要としない。
判例
事案:事故の被害者の両親であるXらが、被害者が本件道路を通過中に、突然道路上方から転落した岩石の直撃を受けて死亡したのは、国の営造物の設置管理にかかる瑕疵であるとして、国及び県に対して、国家賠償法2条及び3条に基づいて、損害賠償を請求した事案において、国家賠償法2条1項に基づく損害賠償責任について過失が必要か問題となった。

判旨:「国家賠償法2条1項の営造物の設置または管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、これに基づく国および公共団体の賠償責任については、その過失の存在を必要としないと解するを相当とする。
 ところで、原審の確定するところによれば、本件道路(原判決の説示する安和より海岸線に沿い長佐古トンネルに至る約2000メートルの区間)を含む国道56号線は、1級国道として高知市方面と中村市方面とを結ぶ陸上交通の上で極めて重要な道路であるところ、本件道路には従来山側から屡々落石があり、さらに崩土さえも何回かあったのであるから、いつなんどき落石や崩土が起こるかも知れず、本件道路を通行する人および車はたえずその危険におびやかされていたにもかかわらず、道路管理者においては、『落石注意』等の標識を立て、あるいは竹竿の先に赤の布切をつけて立て、これによって通行車に対し注意を促す等の処置を講じたにすぎず、本件道路の右のような危険性に対して防護柵または防護覆を設置し、あるいは山側に金網を張るとか、常時山地斜面部分を調査して、落下しそうな岩石があるときは、これを除去し、崩土の起こるおそれのあるときは、事前に通行止めをする等の措置をとったことはない、というのである。そして、右の原審の認定は、挙示の証拠関係に照らして、是認することができる。かかる事実関係のもとにおいては、本件道路は、その通行の安全性の確保において欠け、その管理に瑕疵があったものというべきである旨、本件道路における落石、崩土の発生する原因は道路の山側の地層に原因があったので、本件における道路管理の瑕疵の有無は、本件事故発生地点だけに局限せず、前記2000メートルの本件道路全般についての危険状況および管理状況等を考慮にいれて決するのが相当である旨、そして、本件道路における防護柵を設置するとした場合、その費用の額が相当の多額にのぼり、上告人県としてその予算措置に困却するであろうことは推察できるが、それにより直ちに道路の管理の瑕疵によって生じた損害に対する賠償責任を免れうるものと考えることはできないのであり、その他、本件事故が不可抗力ないし回避可能性のない場合であることを認めることができない旨の原審の判断は、いずれも正当として是認することができる。してみれば、その余の点について判断するまでもなく、本件事故は道路管理に瑕疵があったため生じたものであり、上告人国は国家賠償法2条1項により、上告人県は管理費用負担者として同法3条1項により損害賠償の責に任ずべきことは明らかである。」
過去問・解説
(H19 司法 第21問 イ)
国家賠償法第2条第1項の責任は無過失責任であるから、被告である国又は公共団体において、損害の発生が不可抗力によるものであることを立証しても、同項の責任を免れることはできない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭45.8.20)は、「国家賠償法2条1項の営造物の設置または管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、これに基づく国および公共団体の賠償責任については、その過失の存在を必要としないと解するを相当とする。」としている。
他方、その後の判例(最判昭50.6.26)は、「本件事故発生当時、被上告人において設置した工事標識板、バリケード及び赤色灯標柱が道路上に倒れたまま放置されていたのであるから、道路の安全性に欠如があったといわざるをえないが、それは夜間、しかも事故発生の直前に先行した他車によって惹起されたものであり、時間的に被上告人において遅滞なくこれを原状に復し道路を安全良好な状態に保つことは不可能であったというべく、このような状況のもとにおいては、被上告人の道路管理に瑕疵がなかったと認めるのが相当である。」として、損害の発生が不可抗力によるものであることを理由に、国家賠償法2条1項における責任を否定している。

(H25 司法 第37問 ア)
国家賠償法第2条第1項の営造物の設置又は管理の瑕疵に基づく損害賠償責任は無過失責任であるから、結果発生の回避可能性がなかったとしても、国又は公共団体の責任は否定されない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭45.8.20)は、「国家賠償法2条1項の営造物の設置または管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、これに基づく国および公共団体の賠償責任については、その過失の存在を必要としないと解するを相当とする。」としている。
他方、その後の判例(最判昭50.6.26)は、「本件事故発生当時、被上告人において設置した工事標識板、バリケード及び赤色灯標柱が道路上に倒れたまま放置されていたのであるから、道路の安全性に欠如があったといわざるをえないが、それは夜間、しかも事故発生の直前に先行した他車によって惹起されたものであり、時間的に被上告人において遅滞なくこれを原状に復し道路を安全良好な状態に保つことは不可能であったというべく、このような状況のもとにおいては、被上告人の道路管理に瑕疵がなかったと認めるのが相当である。」として、結果回避の可能性がなかったことを理由に、国及び公共団体の責任を否定している。

(H29 予備 第22問 ウ)
道路の設置又は管理の瑕疵に基づく国又は公共団体の賠償責任については、過失の存在を必要としないから、道路の安全性が欠如していたために事故が発生した場合、道路管理者が道路を安全な状態に保つことが可能であったか否かにかかわらず、賠償責任を免れない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭45.8.20)は、「国家賠償法2条1項の営造物の設置または管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、これに基づく国および公共団体の賠償責任については、その過失の存在を必要としないと解するを相当とする。」としている。
他方、その後の判例(最判昭50.6.26)は、「本件事故発生当時、被上告人において設置した工事標識板、バリケード及び赤色灯標柱が道路上に倒れたまま放置されていたのであるから、道路の安全性に欠如があったといわざるをえないが、それは夜間、しかも事故発生の直前に先行した他車によって惹起されたものであり、時間的に被上告人において遅滞なくこれを原状に復し道路を安全良好な状態に保つことは不可能であったというべく、このような状況のもとにおいては、被上告人の道路管理に瑕疵がなかったと認めるのが相当である。」として、道路管理者が道路を安全な状態に保つことが不可能であったことを理由として、道路管理者の賠償責任を否定している。
総合メモ

営造物の通常の用法に即しない行動の結果生じた事故と営造物の設置管理の瑕疵 最三小判昭和53年7月4日

概要
営造物の通常の用法に即しない行動の結果事故が生じた場合において、その営造物として本来具有すべき安全性に欠けるところがなく、右行動が設置管理者において通常予測することのできないものであるときは、右事故が営造物の設置又は管理の瑕疵によるものであるということはできない。
判例
事案:Xが、Y市に対して、Xが6歳時にYの設置管理する道路南端の防護柵を超えて転落した事故は、危険な防護柵を放置して、本件道路の管理者として付近の住民の転落事故等が起こらぬように本件道路を安全な状態に管理する義務を怠ったものであるとして、国賠法2条1項に基づいて提起した国家賠償請求訴訟において、営造物の通常の用法に即しない行動の結果生じた事故が営造物の設置管理の瑕疵によるものといえるかが問題となった。

判旨:「国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理に瑕疵があったとみられるかどうかは、当該営造物の構造、用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべきものであるところ、前記事実関係に照らすと、本件防護柵は、本件道路を通行する人や車が誤って転落するのを防止するために被上告人によって設置されたものであり、その材質、高さその他その構造に徴し、通行時における転落防止の目的からみればその安全性に欠けるところがないものというべく、上告人の転落事故は、同人が当時危険性の判断能力に乏しい6歳の幼児であったとしても、本件道路及び防護柵の設置管理者である被上告人において通常予測することのできない行動に起因するものであったということができる。したがって、右営造物につき本来それが具有すべき安全性に欠けるところがあったとはいえず、上告人のしたような通常の用法に即しない行動の結果生じた事故につき、被上告人はその設置管理者としての責任を負うべき理由はないものというべきである。」
過去問・解説
(H21 司法 第37問 ア)
市が管理する道路に設置された防護柵から幼児が転落した事故において、当該防護柵は、その材質、高さその他その構造に徴し、通行時における転落防止の目的からみてその安全性に欠けるところがなく、当該事故が通常予測することのできない被害者の行動に起因するものであったといえる場合には、当該事故につき、市が営造物の設置管理者としての責任を負うことはない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.4)は、「国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理に瑕疵があったとみられるかどうかは、当該営造物の構造、用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべきものであるところ、前記事実関係に照らすと、本件防護柵は、本件道路を通行する人や車が誤って転落するのを防止するために被上告人によって設置されたものであり、その材質、高さその他その構造に徴し、通行時における転落防止の目的からみればその安全性に欠けるところがないものというべく、上告人の転落事故は、同人が当時危険性の判断能力に乏しい6歳の幼児であったとしても、本件道路及び防護柵の設置管理者である被上告人において通常予測することのできない行動に起因するものであったということができる。したがって、右営造物につき本来それが具有すべき安全性に欠けるところがあったとはいえず、上告人のしたような通常の用法に即しない行動の結果生じた事故につき、被上告人はその設置管理者としての責任を負うべき理由はないものというべきである。」としている。
総合メモ

幼児が公の営造物を設置管理者の通常予測し得ない異常な方法で使用して生じた事故 最三小判平成5年3月30日

概要
幼児が、テニスの審判台に昇り、その後部から座席部分の背当てを構成している左右の鉄パイプを両手で握って降りようとしたために転倒した審判台の下敷きになって死亡した場合において、当該審判台には、本来の用法に従って使用する限り、転倒の危険がなく、右幼児の行動が当該審判台の設置管理者の通常予測し得ない異常なものであつたなど判示の事実関係の下においては、設置管理者は、右事故につき、国家賠償法2条1項所定の損害賠償責任を負わない。
判例
事案: 町立中学校のテニスコートに設置してあった審判台で遊んでいるうちに審判台とともに倒れて死亡した幼児の両親であるXらが、審判台を設置管理するY町に対して、国家賠償法2条1項に基づく損害賠償を請求した事案において、幼児が公の営造物を設置管理者の通常予測し得ない異常な方法で使用して生じた事故における設置管理者が損害賠償責任の有無が問題となった。

判旨:「国家賠償法2条1項にいう『公の営造物の設置又は管理に瑕疵』があるとは、公の営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、右の安全性を欠くか否かの判断は、当該営造物の構造、本来の用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的、個別的に判断すべきである…。
 本件において、その設置又は管理に瑕疵があったと主張されている当該営造物とは、具体的には、上告人(栃木県芳賀郡茂木町)町立の中川中学校の校庭に設置されたテニスの審判台であるが、一般に、テニスの審判台は、審判者がコート面より高い位置から競技を見守るための設備であり、座席への昇り降りには、そのために設けられた階段によるべきことはいうまでもなく、審判台の通常有すべき安全性の有無は、この本来の用法に従った使用を前提とした上で、何らかの危険発生の可能性があるか否かによって決せられるべきものといわなければならない。
 本件審判台が本来の用法に従ってこれを使用する限り転倒の危険を有する構造のものでなかったことは、原審の適法に確定するところであり、中川中学校の校庭において生徒らがこれを使用し、20年余の間全く事故がなかったことは、原審の右判断を裏付けて余りあるものというべきであろう。
 そして、本件審判台が右のように安全性に欠けるものでない以上、他種の審判台と比較して安全性が劣っているとか、これを地面に固定すべきであるとか、競技や練習終了後にはその都度片付けて置くべきであるとかいうのは、実情にそぐわない非難というほかはない。
 本件事故の発生した中川中学校の校庭が幼児を含む一般市民に事実上開放されていたことは、前述のとおりであるが、このように、公立学校の校庭が開放されて一般の利用に供されている場合、幼児を含む一般市民の校庭内における安全につき、校庭内の設備等の設置管理者に全面的に責任があるとするのは当を得ないことであり、幼児がいかなる行動に出ても不測の結果が生じないにようにせよというのは、設置管理者に不能を強いるものといわなければならず、これを余りに強調するとすれば、かえって校庭は一般市民に対して全く閉ざされ、都会地においては幼児は危険な路上で遊ぶことを余儀なくされる結果ともなろう。
 公の営造物の設置管理者は、本件の例についていえば、審判台が本来の用法に従って安全であるべきことについて責任を負うのは当然として、その責任は原則としてこれをもって限度とすべく、本来の用法に従えば安全である営造物について、これを設置管理者の通常予測し得ない異常な方法で使用しないという注意義務は、利用者である一般市民の側が負うのが当然であり、幼児について、異常な行動に出ることがないようにさせる注意義務は、もとより、第1次的にその保護者にあるといわなければならない。
 以上説示するところによって本件をみるのに、本件事故時の圭吾の行動は、本件審判台に前部階段から昇った後、その座席部分の背当てを構成している左右の鉄パイプを両手で握って審判台の後部から降りるという極めて異常なもので、本件審判台の本来の用法と異なることはもちろん、設置管理者の通常予測し得ないものであったといわなければならない。そして、このような使用をすれば、本来その安全性に欠けるところのない設備であっても、何らかの危険を生ずることは避け難いところである。幼児が異常な行動に出ることのないようにしつけるのは、保護者の側の義務であり、このような通常予測し得ない異常な行動の結果生じた事故につき、保護者から設置管理者に対して責任を問うというのは、もとより相当でない。まして本件に現れた付随的事情からすれば、圭吾は、保護者である被上告人恒雄らに同伴されていたのであるから、同被上告人らは、テニスの競技中にも圭吾の動静に留意して危険な行動に出ることがないように看守し、万一その危険が察知されたときは直ちに制止するのが当然であり、また容易にこれを制止し得たことも明らかである。
 これを要するに、本件事故は、被上告人らの主張と異なり、本件審判台の安全性の欠如に起因するものではなく、かえって、前記に見るような圭吾の異常な行動に原因があったものといわなければならず、このような場合にまで、上告人が被上告人らに対して国家賠償法2条1項所定の責任を負ういわれはないというべきである。」
過去問・解説
(H25 予備 第22問 ウ)
公の営造物が通常有すべき安全性の有無は、当該営造物の本来の用法に従った使用を前提として判断されるものであり、設置管理者の通常予測し得ない異常な方法で営造物が使用された結果生じた損害については、設置管理者は賠償責任を負わない。

(正答)

(解説)
判例(最判平5.3.30)は、「審判台の通常有すべき安全性の有無は、この本来の用法に従った使用を前提とした上で、何らかの危険発生の可能性があるか否かによって決せられるべきものといわなければならない。」とした上で、「本件事故時の圭吾の行動は、本件審判台に前部階段から昇った後、その座席部分の背当てを構成している左右の鉄パイプを両手で握って審判台の後部から降りるという極めて異常なもので、本件審判台の本来の用法と異なることはもちろん、設置管理者の通常予測し得ないものであったといわなければならない。」として、設置管理者の国家賠償責任を否定している。
総合メモ

改修計画に基づいて改修中の河川と河川管理の瑕疵 最一小判昭和59年1月26日

概要
①河川の管理についての瑕疵の有無は、過去に発生した水害の規模発生の頻度、発生原因、被害の性質降雨状況、流域の地形その他の自然的条件、土地の利用状況その他の社会的条件、改修を要する緊急性の有無及びその程度等諸般の事情を総合的に考慮し、河川管理における財政的、技術的及び社会的諸制約のもとでの同種・同規模の河川の管理の一般水準及び社会通念に照らして是認しうる安全性を備えていると認められるかどうかを基準として判断すべきである。
②改修計画に基づいて現に改修中である河川については、右計画が、全体として、過去の水害の発生状況その他諸般の事情を総合的に考慮し、河川管理の一般水準及び社会通念に照らして、格別不合理なものと認められないときは、その後の事情の変動により未改修部分につき水害発生の危険性が特に顕著となり、早期の改修工事を施行しなければならないと認めるべき特段の事由が生じない限り、当該河川の管理に瑕疵があるということはできない。
判例
事案:豪雨により、床上浸水の被害を受けたXらが、国、府及び市に対し、河川の管理について瑕疵があったとして、国家賠償を求めた事案において、①未改修河川管理の瑕疵の有無、②改修計画に基づいて現に改修中である河川についての瑕疵の有無が問題となった。

判旨:①「国家賠償法2条1項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠き、他人に危害を及ぼす危険性のある状態をいい…、かかる瑕疵の存否については、当該営造物の構造、用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべきものである…。 
 ところで、河川の管理については、所論も指摘するように、道路その他の営造物の管理とは異なる特質及びそれに基づく諸制約が存するのであって、河川管理の瑕疵の存否の判断にあたっては、右の点を考慮すべきものといわなければならない。すなわち、河川は、本来自然発生的な公共用物であって、管理者による公用開始のための特別の行為を要することなく自然の状態において公共の用に供される物であるから、通常は当初から人工的に安全性を備えた物として設置され管理者の公用開始行為によって公共の用に供される道路その他の営造物とは性質を異にし、もともと洪水等の自然的原因による災害をもたらす危険性を内包しているものである。したがって、河川の管理は、道路の管理等とは異なり、本来的にかかる災害発生の危険性をはらむ河川を対象として開始されるのが通常であって、河川の通常備えるべき安全性の確保は、管理開始後において、予想される洪水等による災害に対処すべく、堤防の安全性を高め、河道を拡幅・掘削し、流路を整え、又は放水路、ダム、遊水池を設置するなどの治水事業を行うことによって達成されていくことが当初から予定されているものということができるのである。この治水事業は、もとより一朝一夕にして成るものではなく、しかも全国に多数存在する未改修河川及び改修の不十分な河川についてこれを実施するには莫大な費用を必要とするものであるから、結局、原則として、議会が国民生活上の他の諸要求との調整を図りつつその配分を決定する予算のもとで、各河川につき過去に発生した水害の規模、頻度、発生原因、被害の性質等のほか、降雨状況、流域の自然的条件及び開発その他土地利用の状況、各河川の安全度の均衡等の諸事情を総合勘案し、それぞれの河川についての改修等の必要性・緊急性を比較しつつ、その程度の高いものから逐次これを実施していくほかはない。また、その実施にあたっては、当該河川の河道及び流域全体について改修等のための調査・検討を経て計画を立て、緊急に改修を要する箇所から段階的に、また、原則として下流から上流に向けて行うことを要するなどの技術的な制約もあり、更に、流域の開発等による雨水の流出機構の変化、地盤沈下、低湿地域の宅地化及び地価の高騰等による治水用地の取得難その他の社会的制約を伴うことも看過することはできない。しかも、河川の管理においては、道路の管理における危険な区間の一時閉鎖等のような簡易、臨機的な危険回避の手段を採ることもできないのである。河川の管理には、以上のような諸制約が内在するため、すべての河川について通常予測し、かつ、回避しうるあらゆる水害を未然に防止するに足りる治水施設を完備するには、相応の期間を必要とし、未改修河川又は改修の不十分な河川の安全性としては、右諸制約のもとで一般に施行されてきた治水事業による河川の改修、整備の過程に対応するいわば過渡的な安全性をもって足りるものとせざるをえないのであって、当初から通常予測される災害に対応する安全性を備えたものとして設置され公用開始される道路その他の営造物の管理の場合とは、その管理の瑕疵の有無についての判断の基準もおのずから異なったものとならざるをえないのである。この意味で、道路の管理者において災害等の防止施設の設置のための予算措置に困却するからといってそのことにより直ちに道路の管理の瑕疵によって生じた損害の賠償責任を免れうるものと解すべきでないとする当裁判所の判例…も、河川管理の瑕疵については当然には妥当しないものというべきである。
 以上説示したところを総合すると、我が国における治水事業の進展等により前示のような河川管理の特質に由来する財政的、技術的及び社会的諸制約が解消した段階においてはともかく、これらの諸制約によっていまだ通常予測される災害に対応する安全性を備えるに至っていない現段階においては、当該河川の管理についての瑕疵の有無は、過去に発生した水害の規模、発生の頻度、発生原因、被害の性質、降雨状況、流域の地形その他の自然的条件、土地の利用状況その他の社会的条件、改修を要する緊急性の有無及びその程度等諸般の事情を総合的に考慮し、前記諸制約のもとでの同種・同規模の河川の管理の一般水準及び社会通念に照らして是認しうる安全性を備えていると認められるかどうかを基準として判断すべきであると解するのが相当である。」
 ②「そして、既に改修計画が定められ、これに基づいて現に改修中である河川については、右計画が全体として右の見地からみて格別不合理なものと認められないときは、その後の事情の変動により当該河川の未改修部分につき水害発生の危険性が特に顕著となり、当初の計画の時期を繰り上げ、又は工事の順序を変更するなどして早期の改修工事を施行しなければならないと認めるべき特段の事由が生じない限り、右部分につき改修がいまだ行われていないとの一事をもって河川管理に瑕疵があるとすることはできないと解すべきである。そして、右の理は、人口密集地域を流域とするいわゆる都市河川の管理についても、前記の特質及び諸制約が存すること自体には異なるところがないのであるから、一般的にはひとしく妥当するものというべきである。」
過去問・解説
(H25 司法 第37問 イ)
未改修河川に要求される安全性は、財政的、技術的、社会的制約等の下で一般に施行されてきた治水事業による河川の改修、整備の過程に対応するいわば過渡的な安全性をもって足りるものとせざるを得ないから、道路の管理の場合とは、管理の瑕疵の有無についての判断基準もおのずから異なる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭59.1.26)は、「未改修河川又は改修の不十分な河川の安全性としては、右諸制約のもとで一般に施行されてきた治水事業による河川の改修、整備の過程に対応するいわば過渡的な安全性をもって足りるものとせざるをえないのであって、当初から通常予測される災害に対応する安全性を備えたものとして設置され公用開始される道路その他の営造物の管理の場合とは、その管理の瑕疵の有無についての判断の基準もおのずから異なったものとならざるをえないのである。」としている。
総合メモ

改修済みの河川の管理についての瑕疵 最一小判平成2年12月13日

概要
河川の管理についての瑕疵の有無は、過去に発生した水害の規模、発生の頻度、発生原因、被害の性質、降雨状況、流域の地形その他の自然的条件、土地の利用状況その他の社会的条件、改修を要する緊急性の有無及びその程度等諸般の事情を総合的に考慮し、河川管理における財政的、技術的及び社会的諸制約のもとでの同種・同規模の河川の管理の一般的水準及び社会通念に照らして是認し得る安全性を備えていると認められるかどうかを基準として判断すべきである。
判例
事案:国家賠償法2条1項に基づく国家賠償請求訴訟が提起された事案において、改修済みの河川の管理についての瑕疵の有無について、どのように判断するかが問題となった。

判旨:「国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠き、他人に危害を及ぼす危険性のある状態をいい、このような瑕疵の存在については、当該営造物の構造、用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的、個別的に判断すべきものである。ところで、河川は、当初から通常有すべき安全性を有するものとして管理が開始されるものではなく、治水事業を経て、逐次その安全性を高めてゆくことが予定されているものであるから、河川が通常予測し、かつ、回避し得る水害を未然に防止するに足りる安全性を備えるに至っていないとしても、直ちに河川管理に瑕疵があるとすることはできず、河川の備えるべき安全性としては、一般に施行されてきた治水事業の過程における河川の改修、整備の段階に対応する安全性をもって足りるものとせざるを得ない。そして、河川の管理についての瑕疵の有無は、過去に発生した水害の規模、発生の頻度、発生原因、被害の性質、降雨状況、流域の地形その他の自然的条件、土地の利用状況その他の社会的条件、改修を要する緊急性の有無及びその程度等諸般の事情を総合的に考慮し、河川管理における財政的、技術的及び社会的諸制約のもとでの同種・同規模の河川の管理の一般的水準及び社会通念に照らして是認し得る安全性を備えていると認められるかどうかを基準として判断すべきであると解するのが相当である…。右当審判例が示した右の河川管理の瑕疵についての判断基準は、本件の場合にも適用されるものというべきであるから、原審の判断のうち、この点を指摘する部分は、正当であるというべきである。
 ところで、本件河川部分は、基本計画策定後本件災害時までの間において、基本計画に定める事項に照らして新規の改修、整備の必要がないものとされていたところから、工事実施基本計画に準拠して改修、整備がされた河川と同視されるものであり、本件は、このような河川部分について、管理の瑕疵が問題となる事案である。
 工事実施基本計画が策定され、右計画に準拠して改修、整備がされ、あるいは右計画に準拠して新規の改修、整備の必要がないものとされた河川の改修、整備の段階に対応する安全性とは、同計画に定める規模の洪水における流水の通常の作用から予測される災害の発生を防止するに足りる安全性をいうものと解すべきである。けだし、前記判断基準に示された河川管理の特質から考えれば、改修、整備がされた河川は、その改修、整備がされた段階において想定された洪水から、当時の防災技術の水準に照らして通常予測し、かつ、回避し得る水害を未然に防止するに足りる安全性を備えるべきものであるというべきであり、水害が発生した場合においても、当該河川の改修、整備がされた段階において想定された規模の洪水から当該水害の発生の危険を通常予測することができなかった場合には、河川管理の瑕疵を問うことができないからである。
 また、水害発生当時においてその発生の危険を通常予測することができたとしても、右危険が改修、整備がされた段階においては予測することができなかったものであって、当該改修、整備の後に生じた河川及び流域の環境の変化、河川工学の知見の拡大又は防災技術の向上等によってその予測が可能となったものである場合には、直ちに、河川管理の瑕疵があるとすることはできない。けだし、右危険を除去し、又は減殺するための措置を講ずることについては、前記判断基準の示す河川管理に関する諸制約が存在し、右措置を講ずるためには相応の期間を必要とするのであるから、右判断基準が示している諸事情及び諸制約を当該事案に即して考慮した上、右危険の予測が可能となった時点から当該水害発生時までに、予測し得た危険に対する対策を講じなかったことが河川管理の瑕疵に該当するかどうかを判断すべきものであると考えられるからである。
 次に、本件は、基本計画策定前から許可工作物である本件堰が河道内に存在し、基本計画に定める計画高水流量規模の洪水に際して、本件堰及びその取付部護岸の欠陥が原因となって高水敷の欠込みが生じ、更に破堤に至ったという事案である。
 このように、許可工作物の存在する河川部分における河川管理の瑕疵の有無は、当該河川部分の全体について、前記判断基準の示す安全性を備えていると認められるかどうかによって判断すべきものであり、全体としての当該河川部分の管理から右工作物の管理を切り離して、右工作物についての改修の要否のみに基づいて、これを判断すべきものではない。けだし、河道内に河川管理施設以外の許可工作物が存在する場合においては、原審の説示するとおり、河川管理者としては、当該工作物そのものの管理権を有しないとしても、右工作物が存在することを所与の条件として当該工作物に関する監督処分権の行使又は自己の管理する河川施設の改修、整備により、河川の安全性を確保する責務があるのであって、当該工作物に存在する欠陥により当該河川部分についてその備えるべき安全性が損なわれるに至り、他の要件が具備するときは、右工作物が存在する河川部分について河川管理の瑕疵があるというべきことになるからである。
 また、許可工作物が存在することによって生ずる危険を除去し、減殺するために当該工作物又はこれと接続する河川管理施設のみを改修し、整備する場合においても、前記判断基準の示す財政的、技術的及び社会的諸制約があることは、いうまでもない。しかし、その程度は、広範囲にわたる河川流域に及ぶ河川管理施設を改修し、整備する場合におけるそれと比較して、通常は、相当に小さいというべきであるから、右判断基準の示す安全性の有無を判断するに当たっては、右の事情をも考慮すべきである。
 以上説示したところを本件についてみると、次のようにいうことができる。
 すなわち、本件河川部分については、基本計画が策定された後において、これに定める事項に照らして新規の改修、整備の必要がないものとされていたというのであるから、本件災害発生当時において想定された洪水の規模は、基本計画に定められた計画高水流量規模の洪水であるというべきことになる。また、本件における問題は、本件堰及びその取付部護岸の欠陥から本件河川部分において破堤が生じたことについて、本件堰を含む全体としての本件河川部分に河川管理の瑕疵があったかどうかにある。したがって、本件における河川管理の瑕疵の有無を検討するに当たっては、まず、本件災害時において、基本計画に定める計画高水流量規模の流水の通常の作用により本件堰及びその取付部護岸の欠陥から本件河川部分において破堤が生ずることの危険を予測することができたかどうかを検討し、これが肯定された場合には、右予測をすることが可能となった時点を確定した上で、右の時点から本件災害時までに前記判断基準に示された諸制約を考慮しても、なお、本件堰に関する監督処分権の行使又は本件堰に接続する河川管理施設の改修、整備等の各措置を適切に講じなかったことによって、本件河川部分が同種・同規模の河川の管理の一般的水準及び社会通念に照らして是認し得る安全性を欠いていたことになるかどうかを、本件事案に即して具体的に判断すべきものである。」
過去問・解説
(H18 司法 第22問 ア)
「現に改修中の河川については、河川管理の特質に由来する財政的・技術的・社会的諸制約のもとで一般に施行されてきた治水事業による河川の改修・整備の過程に対応する過渡的安全性で足りる」とする見解は、前記判示によって明確に否定されることとなった。

(正答)

(解説)
判例(最判平2.12.13)は、「河川の管理についての瑕疵の有無は、過去に発生した水害の規模、発生の頻度、発生原因、被害の性質、降雨状況、流域の地形その他の自然的条件、土地の利用状況その他の社会的条件、改修を要する緊急性の有無及びその程度等諸般の事情を総合的に考慮し、河川管理における財政的、技術的及び社会的諸制約のもとでの同種・同規模の河川の管理の一般的水準及び社会通念に照らして是認し得る安全性を備えていると認められるかどうかを基準として判断すべきであると解するのが相当である…。右当審判例が示した右の河川管理の瑕疵についての判断基準は、本件の場合にも適用されるものというべきである。」としている。
したがって、改修中の河川に関する基準は、改修済の河川についても適用されることになるから、本肢の見解は明確には否定されていない。

(H18 司法 第22問 イ)
「道路への落石を防止するための措置を講じるための費用が多額にのぼり予算措置に困却することがあっても、道路の管理の瑕疵によって生じた損害に対する賠償責任を免れ得ない」とする見解は、前記判示によって明確に否定されることとなった。

(正答)

(解説)
判例(最判平2.12.13)は、「河川の管理についての瑕疵の有無は、過去に発生した水害の規模、発生の頻度、発生原因、被害の性質、降雨状況、流域の地形その他の自然的条件、土地の利用状況その他の社会的条件、改修を要する緊急性の有無及びその程度等諸般の事情を総合的に考慮し、河川管理における財政的、技術的及び社会的諸制約のもとでの同種・同規模の河川の管理の一般的水準及び社会通念に照らして是認し得る安全性を備えていると認められるかどうかを基準として判断すべきであると解するのが相当である…。」であるとして、財政的制約を考慮することを認めている。
そのため、本判決の判示によって、本肢の見解は明確に否定されたともいえそうである。
しかし、本肢のような人工公物である道路の場合は、供用開始行為が行われ、その供用開始行為以後、一定の安全性を保証することになるが、多摩川水害訴訟判決が判示しているように、「河川は、当初から通常有すべき安全性を有するものとして管理が開始されるものではなく、治水事業を経て、逐次その安全性を高めてゆくことが予定されているものである…。」という違いがある。
したがって、河川は道路と異なり、財政的制約を考慮せざるを得ないのである。よって、本判決の判示と本肢との差は、自然公物と人工公物との差異に基づくものであり、本判決の判示によって本肢のような見解が否定されるという関係にはないということができる。

(H18 司法 第22問 ウ)
「河川法に基づく計画に従って改修・整備が完了した河川が備えるべき安全性とは、同計画に定める規模の洪水における流水の通常の作用から予測される災害の発生を防止するに足りる安全性である」とする見解は、前記判示によって明確に否定されることとなった。

(正答)

(解説)
判例(最判平2.12.13)は、「河川の備えるべき安全性としては、一般に施行されてきた治水事業の過程における河川の改修、整備の段階に対応する安全性をもって足りるものとせざるを得ない。」とした上で、河川管理の瑕疵の判断基準を示している。本肢の見解は、本判決の判示を前提にしたものということができ、両者は矛盾するものではない。
したがって、本判決の判示によって、本記述のような見解が明確に否定されることとなったとはいえない。

(H29 予備 第22問 エ)
河川の管理についての瑕疵の有無は、河川管理における財政的、技術的及び社会的諸制約の下での同種・同規模の河川の管理の一般的水準及び社会通念に照らして是認し得る安全性を備えていると認められるか否かを基準として判断される。

(正答)

(解説)
判例(最判平2.12.13)は、「河川の管理についての瑕疵の有無は、…河川管理における財政的、技術的及び社会的諸制約のもとでの同種・同規模の河川の管理の一般的水準及び社会通念に照らして是認し得る安全性を備えていると認められるかどうかを基準として判断すべきであると解するのが相当である…。」としている。
総合メモ

点字ブロック等の新たに開発された視力障害者用の安全設備が日本国有鉄道の駅のホームに敷設されていないこと 最三小判昭和61年3月25日

概要
当該駅のホームが通常有すべき安全性を欠くか否かを判断するに当たっては、その安全設備が、視力障害者の事故防止に有効なものとして、その素材、形状及び敷設方法等において相当程度標準化されて全国的ないし当該地域における道路及び駅のホーム等に普及しているかどうか、当該駅のホームにおける構造又は視力障害者の利用度との関係から予測される視力障害者の事故の発生の危険性の程度、右事故を未然に防止するため右安全設備を設置する必要性の程度及び右安全設備の設置の困難性の有無等の諸般の事情を総合考慮することを要する。
判例
事案:点字ブロック等の新たに開発された視力障害者用の安全設備が日本国有鉄道の駅のホームに敷設されていないことが、国家賠償法2条1項にいう設置又は管理の瑕疵となるのかが問題となった。

判旨:「国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠く状態をいい、かかる瑕疵の存否については、当該営造物の構造、用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべきものである…。そして、点字ブロック等のように、新たに開発された視力障害者用の安全設備を駅のホームに設置しなかったことをもって当該駅のホームが通常有すべき安全性を欠くか否かを判断するに当たっては、その安全設備が、視力障害者の事故防止に有効なものとして、その素材、形状及び敷設方法等において相当程度標準化されて全国的ないし当該地域における道路及び駅のホーム等に普及しているかどうか、当該駅のホームにおける構造又は視力障害者の利用度との関係から予測される視力障害者の事故の発生の危険性の程度、右事故を未然に防止するため右安全設備を設置する必要性の程度及び右安全設備の設置の困難性の有無等の諸般の事情を総合考慮することを要するものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H21 司法 第37問 イ)
点字ブロック等のように、新たに開発された視力障害者用の安全設備を駅に設置しなかったことが当該駅のホームに係る設置又は管理の瑕疵に該当するか否かを判断するに当たっては、視力障害者の事故発生の危険性の程度、その事故を防止するために当該安全設備を設置する必要性の程度及び当該安全設備の設置の困難性等の諸般の事情を総合考慮することを要するが、その際、当該安全設備が全国ないし当該地域における駅のホーム等に普及しているかどうかについてまで考慮する必要はない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭61.3.25)は、「点字ブロック等のように、新たに開発された視力障害者用の安全設備を駅のホームに設置しなかったことをもって当該駅のホームが通常有すべき安全性を欠くか否かを判断するに当たっては、その安全設備が、視力障害者の事故防止に有効なものとして、その素材、形状及び敷設方法等において相当程度標準化されて全国的ないし当該地域における道路及び駅のホーム等に普及しているかどうか、当該駅のホームにおける構造又は視力障害者の利用度との関係から予測される視力障害者の事故の発生の危険性の程度、右事故を未然に防止するため右安全設備を設置する必要性の程度及び右安全設備の設置の困難性の有無等の諸般の事情を総合考慮することを要するものと解するのが相当である。」としている。
したがって、安全設備が全国ないし当該地域における駅のホーム等に普及しているかどうかについても考慮する必要がある。
総合メモ

営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連においてその利用者以外の第三者に対して危害を生ぜしめる危険性がある場合(供用関連瑕疵) 最大判昭和56年12月16日

概要
営造物の利用の態様及び程度が一定の限度にとどまる限りはその施設に危害を生ぜしめる危険性がなくても、これを超える利用によって利用者又は第三者に対して危害を生ぜしめる危険性がある状況にある場合には、そのような利用に供される限りにおいて右営造物につき国家賠償法2条1項にいう設置又は管理の瑕疵があるといえる。
判例
事案:空港の周辺に住むXらが、離着陸する航空機の振動、排ガス、騒音等によって生活環境が破壊されたことを理由に、空港の設置及び管理者である国に対して国家賠償請求訴訟等を提起した事案において、営造物の利用の態様及び程度が一定の限度を超えるために利用者又は第三者に対して危害を生ぜしめる危険性がある場合に国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理の瑕疵があるといえるかが問題となった。

判旨:「国家賠償法2条1項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が有すべき安全性を欠いている状態をいうのであるが、そこにいう安全性の欠如、すなわち、他人に危害を及ぼす危険性のある状態とは、ひとり当該営造物を構成する物的施設自体に存する物理的、外形的な欠陥ないし不備によって一般的に右のような危害を生ぜしめる危険性がある場合のみならず、その営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連において危害を生ぜしめる危険性がある場合をも含み、また、その危害は、営造物の利用者に対してのみならず、利用者以外の第三者に対するそれをも含むものと解すべきである。すなわち、当該営造物の利用の態様及び程度が一定の限度にとどまる限りにおいてはその施設に危害を生ぜしめる危険性がなくても、これを超える利用によって危害を生ぜしめる危険性がある状況にある場合には、そのような利用に供される限りにおいて右営造物の設置、管理には瑕疵があるというを妨げず、したがって、右営造物の設置・管理者において、かかる危険性があるにもかかわらず、これにつき特段の措置を講ずることなく、また、適切な制限を加えないままこれを利用に供し、その結果利用者又は第三者に対して現実に危害を生ぜしめたときは、それが右設置・管理者の予測しえない事由によるものでない限り、国家賠償法2条1項の規定による責任を免れることができないと解されるのである。
 本件についてこれをみるのに、本件において被上告人らが主張し、かつ、原審が認定した本件空港の設置、管理の瑕疵は、右空港の施設自体がもつ物理的・外形的欠陥ではなく、また、それが空港利用者に対して危害を生ぜしめているというのでもなくて、本件空港に多数のジェット機を含む航空機が離着陸するに際して発生する騒音等が被上告人ら周辺住民に被害を生ぜしめているという点にあるのであるが、利用者以外の第三者に対する危害もまた右瑕疵のうちに含まれること、営造物がその供用目的に沿って利用されている状況のもとにおいてこれから危害が生ずるような場合もこれに含まれることは前示のとおりであるから、本件空港に離着陸する航空機の騒音等による周辺住民の被害の発生を右空港の設置、管理の瑕疵の概念に含ましめたこと自体に所論の違法があるものということはできない。そして、原審の適法に確定したところによれば、本件空港は第1種空港として大量の航空機の離着陸を予定して設置されたものであるにもかかわらず、その面積はこのような機能を果たすべき空港としては狭隘であり、しかも多数の住民の居住する地域にきわめて近接しているなど、立地条件が劣悪であって、これに多数のジェット機を含む航空機が離着陸することにより周辺住民に騒音等による甚大な影響を与えることは避け難い状況にあり、しかも本件空港の設置・管理者たる国は右被害の発生を防止するのに十分な措置を講じないまま右空港をジェット機を含む大量の航空機の離着陸に継続的に使用させてきた、というのである。そうすると、のちに上告理由第4点の1ないし4について判示するとおり右供用の違法性が肯定される限り、国家賠償法2条1項の規定の解釈に関しさきに判示したところに照らし、右事実関係のもとにおいて本件空港の設置、管理に瑕疵があるものと認めた原審の判断は正当というべきである。」
過去問・解説
(H19 司法 第21問 ウ)
国家賠償法第2条第1項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、利用者にとって営造物が通常有すべき安全性を欠いている状態をいうのであって、同項の規定は当該営造物の利用者以外の者に対しては適用されない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭56.12.16)は、「国家賠償法2条1項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が有すべき安全性を欠いている状態をいうのであるが、そこにいう安全性の欠如、すなわち、他人に危害を及ぼす危険性のある状態とは、ひとり当該営造物を構成する物的施設自体に存する物理的、外形的な欠陥ないし不備によって一般的に右のような危害を生ぜしめる危険性がある場合のみならず、その営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連において危害を生ぜしめる危険性がある場合をも含み、また、その危害は、営造物の利用者に対してのみならず、利用者以外の第三者に対するそれをも含むものと解すべきである。」としている。
したがって、国家賠償法2条1項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、第三者にとって営造物が通常有すべき安全性を欠いている状態も含み、同項の規定は当該営造物の利用者以外の者に対しても適用される。

(H21 司法 第37問 ウ)
国家賠償法第2条第1項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、そこにいう安全性の欠如とは、当該営造物を構成する物的施設自体に存する物理的、外形的な欠陥ないし不備によって一般的にその利用者に危害を生ぜしめる危険性があることを意味するから、このような危険性ではなく、その営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連においてその利用者以外の第三者に危害を生ぜしめる危険性があるというだけでは、国家賠償法第2条第1項の営造物の設置又は管理の瑕疵があるとはいえない。

(正答)

(解説)
判例(最大判昭56.12.16)は、「国家賠償法2条1項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が有すべき安全性を欠いている状態をいうのであるが、そこにいう安全性の欠如、すなわち、他人に危害を及ぼす危険性のある状態とは、ひとり当該営造物を構成する物的施設自体に存する物理的、外形的な欠陥ないし不備によって一般的に右のような危害を生ぜしめる危険性がある場合のみならず、その営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連において危害を生ぜしめる危険性がある場合をも含み、また、その危害は、営造物の利用者に対してのみならず、利用者以外の第三者に対するそれをも含むものと解すべきである。」としている。
したがって、利用者以外の第三者に危害を生ぜしめる危険性があるというだけでも、国家賠償法2条1項の営造物の設置又は管理の瑕疵があるといえる。

(R4 予備 第23問 ウ)
国家賠償法第2条第1項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、利用者にとって営造物が通常有すべき安全性を欠いている状態をいうのであって、同項の規定は当該営造物の利用者以外の者に対しては適用されない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭56.12.16)は、「国家賠償法2条1項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が有すべき安全性を欠いている状態をいうのであるが、そこにいう安全性の欠如、すなわち、他人に危害を及ぼす危険性のある状態とは、ひとり当該営造物を構成する物的施設自体に存する物理的、外形的な欠陥ないし不備によって一般的に右のような危害を生ぜしめる危険性がある場合のみならず、その営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連において危害を生ぜしめる危険性がある場合をも含み、また、その危害は、営造物の利用者に対してのみならず、利用者以外の第三者に対するそれをも含むものと解すべきである。」としている。
したがって、国家賠償法2条1項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、第三者にとって営造物が通常有すべき安全性を欠いている状態も含み、同項の規定は当該営造物の利用者以外の者に対しても適用される。
総合メモ

営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連においてその利用者以外の第三者に対して危害を生ぜしめる危険性がある場合(供用関連瑕疵) 最二小判平成7年7月7日

概要
国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いている状態、すなわち他人に危害を及ぼす危険性のある状態をいうのであるが、これには営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連においてその利用者以外の第三者に対して危害を生ぜしめる危険性がある場合をも含む。
判例
事案:一般国道等の道路の周辺住民がその供用に伴う自動車騒音等により被害を受けたことから国家賠償請求訴訟を提起した事案において、道路の設置又は管理に瑕疵があるかが問題となった。

判旨: 「国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いている状態、すなわち他人に危害を及ぼす危険性のある状態をいうのであるが、これには営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連においてその利用者以外の第三者に対して危害を生ぜしめる危険性がある場合をも含むものであり、営造物の設置・管理者において、このような危険性のある営造物を利用に供し、その結果周辺住民に社会生活上受忍すべき限度を超える被害が生じた場合には、原則として同項の規定に基づく責任を免れることができないものと解すべきである…そして、道路の周辺住民から道路の設置・管理者に対して同項の規定に基づき損害賠償の請求がされた場合において、右道路からの騒音、排気ガス等が右住民に対して現実に社会生活上受忍すべき限度を超える被害をもたらしたことが認定判断されたときは、当然に右住民との関係において右道路が他人に危害を及ぼす危険性のある状態にあったことが認定判断されたことになるから、右危険性を生じさせる騒音レベル、排気ガス濃度等の最低基準を確定した上でなければ右道路の設置又は管理に瑕疵があったという結論に到達し得ないものではない。」
過去問・解説
(H22 司法 第38問 ア)
収用事業として整備された道路が供用され、通行車両による騒音や振動などで、沿道住民が特別の犠牲を負った場合には、最高裁判所の判例によれば、当該住民に対する損失補償が必要である。

(正答)

(解説)
判例(最判平7.7.7)は、本肢と同種の事案において国家賠償請求を認めているものの、本肢のような場合に損失補償請求を認めた最高裁判例は存在しない。

(H25 司法 第37問 ウ)
国家賠償法第2条第1項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いている状態、すなわち、他人に危害を及ぼす危険性のある状態をいうが、そこにいう危害は、営造物の利用者以外の第三者に対するものを含む。

(正答)

(解説)
判例(最判平7.7.7)は、「国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いている状態、すなわち他人に危害を及ぼす危険性のある状態をいうのであるが、これには営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連においてその利用者以外の第三者に対して危害を生ぜしめる危険性がある場合をも含む…。」としている。
総合メモ