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損失補償制度(特別の擬制)

昭和13年に決定された都市計画に係る計画道路の区域内にその一部が含まれる土地に建築物の建築の制限が課せられることによる損失 最三小判平成17年11月1日

概要
昭和13年に決定された都市計画に係る計画道路の区域内にその一部が含まれる土地に建築物の建築の制限が課せられることによる損失について憲法29条3項に基づく補償請求をすることはできない。
判例
事案:昭和13年に決定された都市計画に係る計画道路の区域内にその一部が含まれる土地に建築物の建築の制限が課せられることによる損失について憲法29条3項を直接の根拠として損失補償請求をすることができるかが問題となった。

判旨:「上告人らが受けた上記の損失は、一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲を超えて特別の犠牲を課せられたものということがいまだ困難であるから、上告人らは、直接憲法29条3項を根拠として上記の損失につき補償請求をすることはできないものというべきである。」
過去問・解説
(H21 司法 第38問 ウ)
都市計画決定に基づく都市計画道路の区域内に土地及び建物を所有している者が、当該都市計画に係る事業が決定から60年以上にわたって着手されないことにより、その間、当該土地への建築物の建築につき都市計画法第53条の建築制限を受けてきた場合には、そのような長期間の建築制限による損失は、通常、一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲を超えた特別の犠牲に当たるから、憲法第29条第3項の損失補償を必要とする。

【参照条文】都市計画法
第53条 都市計画施設の区域又は市街地開発事業の施行区域内において建築物の建築をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる行為については、この限りでない。
一~五 (略)
2、3 (略)

(正答)

(解説)
判例(最判平17.11.1)は、本肢と同種の事案において、「上告人らが受けた上記の損失は、一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲を超えて特別の犠牲を課せられたものということがいまだ困難であるから、上告人らは、直接憲法29条3項を根拠として上記の損失につき補償請求をすることはできないものというべきである。」としている。
したがって、本肢のような場合、特別の犠牲に当たらず、憲法29条3項を直接の根拠として損失補償を請求することはできない。

(R6 予備 第23問 ア)
都市計画法第53条により、同条の施行区域内の土地に対し長期間にわたって建築制限が課されてきた場合、当該建築制限による損失は、その内容や程度にかかわらず、特別の犠牲として補償の対象となる。

【参照条文】都市計画法
第53条 都市計画施設の区域又は市街地開発事業の施行区域内において建築物の建築をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事等の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる行為については、この限りでない。
一~五 (略)
2、3 (略)

(正答)

(解説)
判例(最判平17.11.1)は、本肢と同種の事案において、「上告人らが受けた上記の損失は、一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲を超えて特別の犠牲を課せられたものということがいまだ困難であるから、上告人らは、直接憲法29条3項を根拠として上記の損失につき補償請求をすることはできないものというべきである。」としている。
したがって、本肢における建築制限による損失は、その内容や程度が一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲を超えていなければ特別の犠牲とならず、補償の対象とならない。
総合メモ

都有行政財産である土地についての使用許可の取消し 最三小判昭和49年2月5日

概要
都有行政財産である土地について建物所有を目的とし期間の定めなくされた使用許可が当該行政財産本来の用途又は目的上の必要に基づき将来に向って取り消されたときは、使用権者は、特別の事情のないかぎり、右取消による土地使用権喪失についての補償を求めることはできない。
判例
事案:都有行政財産である土地について使用許可を取り消されたため借地権の確認と土地の引渡等を請求した事案において、使用権者は土地使用権喪失について補償を求めることができるかが問題となった。

判旨:「本件取消を理由とする損失補償に関する法律および都条例についてみるに、本件取消がされた当時(昭和32年6月29日)の地方自治法および都条例にはこれに関する規定を見出すことができない。しかし、当時の国有財産法は、すでに、普通財産を貸し付けた場合における貸付期間中の契約解除による損失補償の規定をもうけ(同法24条)、これを行政財産に準用していた(同法19条)ところ、国有であれ都有であれ、行政財産に差等はなく、公平の原則からしても国有財産法の右規定は都有行政財産の使用許可の場合にこれを類推適用すべきものと解するのが相当であって、これは憲法29条3項の趣旨にも合致するところである。そして、また、右規定は、貸付期間中の解除に関するものであるが、期間の定めのない場合であっても使用許可の目的、内容ないし条件に照らし一応の使用予定期間を認めうるときは、これを期間の定めのある場合と別異に扱う理由がないから、この場合にも前記規定の類推適用が肯定されてしかるべきである。もっとも、昭和38年法律第99号によって改正された地方自治法238条の4および5は普通財産について補償の規定をもうけているだけで、行政財産についてこれをもうけていないが、そのことは、いまだ前記類推適用を否定する根拠にはならないと解される。そして、原判決の前記判示によれば、本件使用許可は期間を定めないものではあるが建物所有を目的とするというのであるから、前叙のところに従い右類推適用が肯定されるべきである。したがって、本件損失補償については、これを直接憲法29条3項にもとづいて論ずるまでもないのである。 そこで、この見地から、被上告人の本件損失補償請求を一部認容した原判決を是認することができるかどうかについてみるに、前記国有財産法24条2項は『これに因って生じた損失』につき補償すべきことを定めているが、使用許可の取消に際して使用権者に損失が生じても、使用権者においてその損失を受忍すべきときは、右の損失は同条のいう補償を必要とする損失には当たらないと解すべきところ、原判決の前記判示によれば、被上告人は、上告人から上告人所有の行政財産たる土地につき使用期間を定めないで使用の許可を受けていたが、当該行政財産本来の用途または目的上の必要が生じて右使用許可が取り消されたものということができる。このような公有行政財産たる土地は、その所有者たる地方公共団体の行政活動の物的基礎であるから、その性質上行政財産本来の用途または目的のために利用されるべきものであって、これにつき私人の利用を許す場合にその利用上の法律関係をいかなるものにするかは、立法政策に委ねられているところと解される。この点につき、昭和38年法律第99号によって改正された地方自治法238条の4は、行政財産はその用途または目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる旨規定したのであるが、同法施行前においては、右改正前の地方自治法213条1項が公有財産の管理、処分等については条例の定めに委ねていたところ、本件については、昭和23年1月13日東京都条例第3号東京都都有財産条例3条および同条例全部を改正した昭和29年3月31日東京都条例第17号東京都都有財産条例12条において前記改正後の地方自治法238条の4と同旨の定めがされ、さらに古くは昭和19年3月9日東京都規則第4号東京都都有財産規則3条において同旨の定めがされていたのである(なお、国有財産法18条参照)。したがって、本件のような都有行政財産たる土地につき使用許可によって与えられた使用権は、それが期間の定めのない場合であれば、当該行政財産本来の用途または目的上の必要を生じたときはその時点において原則として消滅すべきものであり、また、権利自体に右のような制約が内在しているものとして付与されているものとみるのが相当である。すなわち、当該行政財産に右の必要を生じたときに右使用権が消滅することを余儀なくされるのは、ひっきよう使用権自体に内在する前記のような制約に由来するものということができるから、右使用権者は、行政財産に右の必要を生じたときは、原則として、地方公共団体に対しもはや当該使用権を保有する実質的理由を失うに至るのであって、その例外は、使用権者が使用許可を受けるに当たりその対価の支払いをしているが当該行政財産の使用収益により右対価を償却するに足りないと認められる期間内に当該行政財産に右の必要を生じたとか、使用許可に際し別段の定めがされている等により、行政財産についての右の必要にかかわらず使用権者がなお当該使用権を保有する実質的理由を有すると認めるに足りる特別の事情が存する場合に限られるというべきである。 それゆえ、被上告人は、むしろ、上告人に対し、本件行政財産についての右の必要のもとにされたと認めうる本件取消によって使用権が消滅することを受忍すべき立場にあると解されるから、被上告人が本件取消により土地使用権の喪失という積極的損失を受け、この損失につき補償を必要とするとした原判決の判断は、さらに首肯しうべき事情のないかぎり、これを是認することができないのである。もっとも、原判決は、被上告人が本件使用許可を受けた際上告人の依頼により本件土地を整理、宅地化するため相当の費用を支出したことをもってあたかも借地権取得に際し権利金を支払ったのと対比することができる旨判示しているが、右の一事をもって被上告人の使用権を借地権に比することはできないというべく、右の事情もいまだ原判決の前記判断を是認するに足りるものではない。」
過去問・解説
(H20 司法 第22問 ウ)
行政財産たる土地につき使用許可によって与えられた使用権は、それが期間の定めのない場合であれば、当該行政財産本来の用途又は目的上の必要を生じたときはその時点において原則として消滅すべきものであり、また、権利自体にこのような制約が内在しているものとして付与されているものとみるのが相当であるから、上記の必要が生じたことを理由として許可を撤回する場合、補償が必要となることはない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭49.2.5)は、「行政財産たる土地につき使用許可によって与えられた使用権は、それが期間の定めのない場合であれば、当該行政財産本来の用途または目的上の必要を生じたときはその時点において原則として消滅すべきものであり、また、権利自体に右のような制約が内在しているものとして付与されているものとみるのが相当である。」とした上で、「使用権者は、行政財産に右の必要を生じたときは、原則として、地方公共団体に対しもはや当該使用権を保有する実質的理由を失うに至るのであって、その例外は、使用権者が使用許可を受けるに当たりその対価の支払いをしているが当該行政財産の使用収益により右対価を償却するに足りないと認められる期間内に当該行政財産に右の必要を生じたとか、使用許可に際し別段の定めがされている等により、行政財産についての右の必要にかかわらず使用権者がなお当該使用権を保有する実質的理由を有すると認めるに足りる特別の事情が存する場合に限られるというべきである。」としている。
したがって、当該行政財産本来の用途又は目的上の必要が生じたことを理由として許可を撤回する場合にも、本判例にいう「特別の事情」が認められるのであれば、補償が必要となる。

(H23 共通 第37問 ア)
次の【甲群】に掲げるXの各損失について、国又は地方公共団体が損失補償は不要であると主張する場合に、それぞれの理由として最も適切なものを、【乙群】に掲げるAからFまでの中から選びなさい。

【甲群】
市が卸売市場を開設する区域内の土地について、地方自治法第238条の4第7項によりXが期間の定めのない使用許可を受けて店舗を営業していたところ、市長が卸売市場を拡幅する計画に伴い使用許可を撤回したために、Xが当該店舗で営業できなくなることによる損失

【参照条文】地方自治法
第238条の4 1~6 (略)
7 行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる。
8、9 (略)

【乙群】
A.警察規制による損失であるから。
B.公用制限による損失であるから。
C.地域一帯において土地及び土地利用の現状を変更することの公共性が高いところ、こうした現状変更のための規制による損失であるから。
D.地域一帯において土地及び土地利用の現状を維持することの公共性が高いところ、こうした現状維持のための規制による損失であるから。
E.土地利用の規制により、利益を受ける者が反面で被ることになる損失であるから。
F.土地の利用権が、付与された当初から一定の公益上の理由により消滅すべきことが予定されていたところ、このように予定されていた権利の消滅による損失であるから。

(正答)F

(解説)
判例(最判昭49.2.5)は、【甲群】と同種の事案において、「行政財産たる土地につき使用許可によって与えられた使用権は、それが期間の定めのない場合であれば、当該行政財産本来の用途または目的上の必要を生じたときはその時点において原則として消滅すべきものであり、また、権利自体に右のような制約が内在しているものとして付与されているものとみるのが相当である。」としており、利用権は、付与された当初から一定の公益上の理由により消滅すべきことが予定されていることを示している。

(H25 司法 第23問 ウ)
行政庁が適法に行った行政行為をその後の事情の変化に伴い将来に向かって撤回することが許されたとしても、撤回に伴う財産的損害の補償が当然に不要となるとは限らない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭49.2.5)は、行政財産である土地について使用許可を取り消されたという事案において、「当該行政財産本来の用途または目的上の必要…を生じたときに右使用権が消滅することを余儀なくされるのは、ひっきょう使用権自体に内在する前記のような制約に由来するものということができるから、右使用権者は、行政財産に右の必要を生じたときは、原則として、地方公共団体に対しもはや当該使用権を保有する実質的理由を失うに至るのであ…る。」として、原則として内在的の制約の範囲内であり、特別の犠牲が認められないため、損失補償は不要であるとしている。
しかし、本判例は続けて、「その例外は、使用権者が使用許可を受けるに当たりその対価の支払いをしているが当該行政財産の使用収益により右対価を償却するに足りないと認められる期間内に当該行政財産に右の必要を生じたとか、使用許可に際し別段の定めがされている等により、行政財産についての右の必要にかかわらず使用権者がなお当該使用権を保有する実質的理由を有すると認めるに足りる特別の事情が存する場合に限られるというべきである。」として、例外的に損失補償が必要となる場合もあることを示している。

(R3 予備 第14問 ア)
行政庁が適法に行った行政行為をその後の事情の変化に伴って将来に向かって撤回することは、法令上直接明文の規定がなくとも可能であるが、それによって不利益を被る者に生じる損失を補償しなければ当該撤回の効力は生じない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭49.2.5)は、「当該行政財産本来の用途または目的上の必要…を生じたときに右使用権が消滅することを余儀なくされるのは、ひっきょう使用権自体に内在する前記のような制約に由来するものということができるから、右使用権者は、行政財産に右の必要を生じたときは、原則として、地方公共団体に対しもはや当該使用権を保有する実質的理由を失うに至るのであって、その例外は、使用権者が使用許可を受けるに当たりその対価の支払をしているが当該行政財産の使用収益により右対価を償却するに足りないと認められる期間内に当該行政財産に右の必要を生じたとか、使用許可に際し別段の定めがされている等により、行政財産についての右の必要にかかわらず使用権者がなお当該使用権を保有する実質的理由を有すると認めるに足りる特別の事情が存する場合に限られるというべきである。」として、損失補償が必要な場合もあることを示している。
しかし、本判例は、不利益を被る者に生じる損失を補償しなければ当該撤回の効力は生じないとまではしていない。
総合メモ

国が地下道を新設したことにより、消防法の定める離隔距離規定違反の状態となり、ガソリンタンクの移動を余儀なくされたことによる損失 最二小判昭和58年2月18日

概要
道路法70条1項の定める損失の補償の対象は、道路工事の施行による土地の形状の変更を直接の原因として生じた隣接地の用益又は管理上の障害を除去するためにやむをえない必要があってした通路、みぞ、かき、さくその他これに類する工作物の新築、増築、修繕若しくは移転又は切土若しくは盛土の工事に起因する損失に限られ、道路工事の施行の結果、危険物の保管場所等につき保安物件との間に一定の離隔距離を保持すべきことを内容とする技術上の基準を定めた警察法規に違反する状態を生じ、危険物保有者が右の基準に適合するように工作物の移転等を余儀なくされたことによって被った損失は、右補償の対象には属しない。
判例
事案:国道の交差点に地下横断歩道が新設された結果、同交差点に面する土地でガソリンスタンドを経営していたXが、消防法等の警察法規上の規制により埋設されていたガソリンタンクを移転しなければならなくなったため、その移転費用相当額について損失補償等を請求した事案において、当該移転費用が道路法70条1項の補償の対象となるかどうかが問題となった。

判旨:「道路法70条1項の規定は、道路の新設又は改築のための工事の施行によって当該道路とその隣接地との間に高低差が生ずるなど土地の形状の変更が生じた結果として、隣接地の用益又は管理に障害を来し、従前の用法に従ってその用益又は管理を維持、継続していくためには、用益上の利便又は境界の保全等の管理の必要上当該道路の従前の形状に応じて設置されていた通路、みぞ、かき、さくその他これに類する工作物を増築、修繕若しくは移転し、これらの工作物を新たに設置し、又は切土若しくは盛土をするやむを得ない必要があると認められる場合において、道路管理者は、これに要する費用の全部又は一部を補償しなければならないものとしたものであって、その補償の対象は、道路工事の施行による土地の形状の変更を直接の原因として生じた隣接地の用益又は管理上の障害を除去するためにやむを得ない必要があってした前記工作物の新築、増築、修繕若しくは移転又は切土若しくは盛土の工事に起因する損失に限られると解するのが相当である。したがって、警察法規が一定の危険物の保管場所等につき保安物件との間に一定の離隔距離を保持すべきことなどを内容とする技術上の基準を定めている場合において、道路工事の施行の結果、警察違反の状態を生じ、危険物保有者が右技術上の基準に適合するように工作物の移転等を余儀なくされ、これによって損失を被つたとしても、それは道路工事の施行によって警察規制に基づく損失がたまたま現実化するに至ったものにすぎず、このような損失は、道路法70条1項の定める補償の対象には属しないものというべきである。 これを本件についてみると、原審の適法に確定したところによれば、被上告人は、その経営する石油給油所においてガソリン等の地下貯蔵タンクを埋設していたところ、上告人を道路管理者とする道路工事の施行に伴い、右地下貯蔵タンクの設置状況が消防法10条、12条、危険物の規制に関する政令13条、危険物の規制に関する規則23条の定める技術上の基準に適合しなくなって警察違反の状態を生じたため、右地下貯蔵タンクを別の場所に移設せざるを得なくなったというのであって、これによって被上告人が被った損失は、まさしく先にみた警察規制に基づく損失にほかならず、道路法70条1項の定める補償の対象には属しないといわなければならない。」
過去問・解説
(H23 共通 第37問 イ)
次の【甲群】に掲げるXの各損失について、国又は地方公共団体が損失補償は不要であると主張する場合に、それぞれの理由として最も適切なものを、【乙群】に掲げるAからFまでの中から選びなさい。

【甲群】
Xが埋設した石油の導管が、近隣に新たに建築物が建築されたために、石油パイプライン事業法に基づく石油パイプライン事業の事業用施設の技術上の基準を定める省令第13条第1号に違反する状態となり、Xが導管の移設工事をしなければならなくなった場合の工事費用

【参照条文】石油パイプライン事業の事業用施設の技術上の基準を定める省令
第13条 導管を地下に埋設する場合は、次の各号に掲げるところによらなければならない。
 一 導管は、その外面から建築物、地下街、隧道その他の告示で定める工作物に対し告示で定める水平距離を有すること。
 二~七 (略)

【乙群】
A.警察規制による損失であるから。
B.公用制限による損失であるから。
C.地域一帯において土地及び土地利用の現状を変更することの公共性が高いところ、こうした現状変更のための規制による損失であるから。
D.地域一帯において土地及び土地利用の現状を維持することの公共性が高いところ、こうした現状維持のための規制による損失であるから。
E.土地利用の規制により、利益を受ける者が反面で被ることになる損失であるから。
F.土地の利用権が、付与された当初から一定の公益上の理由により消滅すべきことが予定されていたところ、このように予定されていた権利の消滅による損失であるから。

(正答)A

(解説)
判例(最判昭58.2.18)は、【甲群】と同種の事案において、「警察法規が一定の危険物の保管場所等につき保安物件との間に一定の離隔距離を保持すべきことなどを内容とする技術上の基準を定めている場合において、道路工事の施行の結果、警察違反の状態を生じ、危険物保有者が右技術上の基準に適合するように工作物の移転等を余儀なくされ、これによって損失を被ったとしても、それは道路工事の施行によって警察規制に基づく損失がたまたま現実化するに至ったものにすぎず、このような損失は、道路法70条1項の定める補償の対象には属しないものというべきである。」としている。
したがって、Xが導管の移設工事をしなければならなくなった場合の工事費用は、警察規制による損失であるから損失補償が不要であるとするのが最も適切な理由である。

(R6 予備 第23問 ウ)
X社が自己所有地の地下にガソリンタンクを適法に設置したところ、その後、国が地下道を新設したため、上記ガソリンタンクの設置状況が消防法違反の状態となりその移転を余儀なくされた場合でも、X社の支出した移転費用は道路法第70条の規定する補償の対象とならない。

【参照条文】道路法
第70条 土地収用法第93条第1項の規定による場合の外、道路を新設し、又は改築したことに因り、当該道路に面する土地について、通路、みぞ、かき、さくその他の工作物を新築し、増築し、修繕し、若しくは移転し、又は切土若しくは盛土をするやむを得ない必要があると認められる場合においては、道路管理者は、これらの工事をすることを必要とする者(中略)の請求により、これに要する費用の全部又は一部を補償しなければならない。(以下略)
2~4 (略)

(正答)

(解説)
判例(最判昭58.2.18)は、本肢と同種の事案において、「原審の適法に確定したところによれば、被上告人は、その経営する石油給油所においてガソリン等の地下貯蔵タンクを埋設していたところ、上告人を道路管理者とする道路工事の施行に伴い、右地下貯蔵タンクの設置状況が消防法10条、12条、危険物の規制に関する政令13条、危険物の規制に関する規則23条の定める技術上の基準に適合しなくなって警察違反の状態を生じたため、右地下貯蔵タンクを別の場所に移設せざるを得なくなったというのであって、これによって被上告人が被った損失は、まさしく先にみた警察規制に基づく損失にほかならず、道路法70条1項の定める補償の対象には属しないといわなければならない。」としている。
したがって、X社の支出した移転費用は道路法第70条の規定する補償の対象とならない。
総合メモ

破壊消防に伴う損失補償の要件 最三小判昭和47年5月30日

概要
消防法29条3項にいう延焼の防止のために緊急の必要があったといえるためには、消火若しくは延焼の防止又は人命の救助のために緊急の必要があるときになされたものであることを要する。
判例
事案:Y村の消防団による消防活動によってXら所有の建物及び動産が破壊されたことについて、Xらが、Y村に対し、国家賠償法1条により損害賠償を請求した事案において、消防法29条3項における「消火もしくは延焼の防止または人命の救助のために緊急の必要があるとき」の意義が問題となった。

判旨:「消防法29条によれば、(1)火災が発生しようとし、または発生した消防対象物およびこれらのもののある土地について、消防吏員または消防団員が、消火もしくは延焼の防止または人命の救助のために必要があるときに、これを使用し、処分しまたはその使用を制限した場合(同条1項の場合)および(2)延焼のおそれがある消防対象物およびこれらのもののある土地について、消防長もしくは消防署長または消防本部を置かない市町村においては消防団の長が、火勢、気象の状況その他周囲の事情から合理的に判断して延焼防止のためやむを得ないと認められるときに、これを使用し、処分しまたはその使用を制限した場合(同条2項の場合)には、そのために損害を受けた者があっても、その損失を補償することを要しないが、(3)右(1)および(2)にかかげた消防対象物および土地以外の消防対象物および土地について、消防長もしくは消防署長または消防本部を置かない市町村においては消防団の長が、消火もしくは延焼の防止または人命の救助のために緊急の必要があるときに、これを使用し、処分しまたはその使用を制限した場合(同条3項の場合)には、そのために損害を受けた者からその損失の補償の要求があれば、その損失を補償しなければならないことが明らかである。すなわち、火災の際の消防活動により損害を受けた者がその損失の補償を請求しうるためには、当該処分等が、火災が発生しようとし、もしくは発生し、または延焼のおそれがある消防対象物およびこれらのもののある土地以外の消防対象物および土地に対しなされたものであり、かつ、右処分等が消火もしくは延焼の防止または人命の救助のために緊急の必要があるときになされたものであることを要するものといわなければならない。 ところで、これを本件についてみるに、原審が適法に確定した事実関係、ことに、原判決添付図面表示のB建物の東方約30メートルの距離にあつた御母衣旅館ではほとんど延焼の危険がなかったこと、風向は南ないし南々西から北ないし北々東であったが、風速は4ないし6メートル位で弱かったこと、右図面表示のト建物とル建物との間隔は5メートルあり、同図面表示のト、チ、リ、ヌの各建物はほとんど間隙なく接続していたが、ト建物とヌ建物との距離は約30メートルあったこと、バラック建構造の右建物をブルトーザーで破壊するには1棟につき3分位しか要しなかったこと、しかし、右図面表示のイ建物から北方約50メートルに1箇所、それから更に北方約50メートルに1箇所ガソリンスタンドがあったこと等に徴すれば、本件破壊消防活動の行なわれた当時右図面表示のロ、ニ、ヌの建物自体は必ずしも延焼のおそれがあったとはいえないが、B建物から北に連なる建物への延焼を防止するために右ロ、ニ、ヌの建物を破壊する緊急の必要があったものであることは明らかである。してみれば、小坂消防団長が右建物を破壊したことは消防法29条3項による適法な行為ではあるが、そのために損害を受けた被上告人らは右法条によりその損失の補償を請求することができるものといわなければならない。」
過去問・解説
(R6 予備 第23問 イ)
旅館Aで火災が発生し、消防団長が消火活動に当たり、旅館Aに隣接する建物Bを破壊した際、建物Bへの延焼のおそれはなかったものの、付近の建物への延焼防止のため建物Bを破壊する緊急の必要性があった場合、建物Bの損失は補償の対象とならない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭47.5.30)は、本肢と同種の事案において、「本件破壊消防活動の行なわれた当時右図面表示のロ、ニ、ヌの建物自体は必ずしも延焼のおそれがあったとはいえないが、B建物から北に連なる建物への延焼を防止するために右ロ、ニ、ヌの建物を破壊する緊急の必要があったものであることは明らかである。してみれば、小坂消防団長が右建物を破壊したことは消防法29条3項による適法な行為ではあるが、そのために損害を受けた被上告人らは右法条によりその損失の補償を請求することができるものといわなければならない。」としている。
したがって、付近の建物への延焼防止のため建物Bを破壊する緊急の必要性があった場合、建物Bの損失は補償の対象となる。
総合メモ