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損失補償制度(「正当な補償」)
旧都市計画法16条1項に基づき土地を収用する場合に被収用者に補償すべき価格 最一小判昭和48年10月18日
概要
旧都市計画法(大正8年法律第36号)16条1項に基づき土地を収用する場合、被収用者に対し土地収用法72条(昭和42年法律第74号による改正前のもの)によって補償すべき相当な価格を定めるにあたっては、当該都市計画事業のため右土地に課せられた建築制限を斟酌してはならない。
判例
事案:Xの土地について土地収用がなされたことから、Xが損失補償を求めた事案において、土地を収用する場合に、被収用者に対し補償すべき相当な価格を定めるにあたって、当該都市計画事業のため当該土地に課せられた建築制限の影響を斟酌することができるかが問題となった。
判旨:「土地収用法における損失の補償は、特定の公益上必要な事業のために土地が収用される場合、その収用によって当該土地の所有者等が被る特別な犠牲の回復をはかることを目的とするものであるから、完全な補償、すなわち、収用の前後を通じて被収用者の財産価値を等しくならしめるような補償をなすべきであり、金銭をもつて補償する場合には、被収用者が近傍において被収用地と同等の代替地等を取得することをうるに足りる金額の補償を要するものというべく、土地収用法72条(昭和42年法律第74号による改正前のもの。以下同じ。)は右のような趣旨を明らかにした規定と解すべきである。そして、右の理は、土地が都市計画事業のために収用される場合であっても、何ら、異なるものではなく、この場合、被収用地については、街路計画等施設の計画決定がなされたときには建築基準法44条2項に定める建築制限が、また、都市計画事業決定がなされたときには旧都市計画法11条、同法施行令11条、12条等に定める建築制限が課せられているが、前記のような土地収用における損失補償の趣旨からすれば、被収用者に対し土地収用法72条によって補償すべき相当な価格とは、被収用地が、右のような建築制限を受けていないとすれば、裁決時において有するであろうと認められる価格をいうと解すべきである。なるほど、法律上右のような建築制限に基づく損失を補償する旨の明文の規定は設けられていないが、このことは、単に右の損失に対し独立に補償することを要しないことを意味するに止まるものと解すべきであり、損失補償規定の存在しないことから、右のような建築制限の存する土地の収用による損失を決定するにあたり、当該土地をかかる建築制限を受けた土地として評価算定すれば足りると解するのは、前記土地収用法の規定の立法趣旨に反し、被収用者に対し不当に低い額の補償を強いることになるのみならず、右土地の近傍にある土地の所有者に比しても著しく不平等な結果を招くことになり、到底許されないものというべきである。」
判旨:「土地収用法における損失の補償は、特定の公益上必要な事業のために土地が収用される場合、その収用によって当該土地の所有者等が被る特別な犠牲の回復をはかることを目的とするものであるから、完全な補償、すなわち、収用の前後を通じて被収用者の財産価値を等しくならしめるような補償をなすべきであり、金銭をもつて補償する場合には、被収用者が近傍において被収用地と同等の代替地等を取得することをうるに足りる金額の補償を要するものというべく、土地収用法72条(昭和42年法律第74号による改正前のもの。以下同じ。)は右のような趣旨を明らかにした規定と解すべきである。そして、右の理は、土地が都市計画事業のために収用される場合であっても、何ら、異なるものではなく、この場合、被収用地については、街路計画等施設の計画決定がなされたときには建築基準法44条2項に定める建築制限が、また、都市計画事業決定がなされたときには旧都市計画法11条、同法施行令11条、12条等に定める建築制限が課せられているが、前記のような土地収用における損失補償の趣旨からすれば、被収用者に対し土地収用法72条によって補償すべき相当な価格とは、被収用地が、右のような建築制限を受けていないとすれば、裁決時において有するであろうと認められる価格をいうと解すべきである。なるほど、法律上右のような建築制限に基づく損失を補償する旨の明文の規定は設けられていないが、このことは、単に右の損失に対し独立に補償することを要しないことを意味するに止まるものと解すべきであり、損失補償規定の存在しないことから、右のような建築制限の存する土地の収用による損失を決定するにあたり、当該土地をかかる建築制限を受けた土地として評価算定すれば足りると解するのは、前記土地収用法の規定の立法趣旨に反し、被収用者に対し不当に低い額の補償を強いることになるのみならず、右土地の近傍にある土地の所有者に比しても著しく不平等な結果を招くことになり、到底許されないものというべきである。」
過去問・解説
(H19 司法 第22問 イ)
都市計画街路予定地内にあることにより建築制限を受けていた土地の収用に際しての損失補償金額の多寡が争われた事件において、損失補償金額の算定に当たっては、建築制限を受けていた土地であるとしてその評価をすべきではなく、建築制限を受けていないものと想定してそれをすべきである、とされた。
都市計画街路予定地内にあることにより建築制限を受けていた土地の収用に際しての損失補償金額の多寡が争われた事件において、損失補償金額の算定に当たっては、建築制限を受けていた土地であるとしてその評価をすべきではなく、建築制限を受けていないものと想定してそれをすべきである、とされた。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭48.10.18)は、本肢と同種の事案において、「土地収用における損失補償の趣旨からすれば、被収用者に対し土地収用法72条によって補償すべき相当な価格とは、被収用地が、右のような建築制限を受けていないとすれば、裁決時において有するであろうと認められる価格をいうと解すべきである。」としている。
判例(最判昭48.10.18)は、本肢と同種の事案において、「土地収用における損失補償の趣旨からすれば、被収用者に対し土地収用法72条によって補償すべき相当な価格とは、被収用地が、右のような建築制限を受けていないとすれば、裁決時において有するであろうと認められる価格をいうと解すべきである。」としている。
(R3 予備 第23問 ウ)
土地収用法における損失の補償は、特定の公益上必要な事業のために土地が収用される場合、その収用によって当該土地の所有者等が被る特別な犠牲の回復を図ることを目的とするものであるから、被収用者は、収用の前後を通じて被収用者の保持する財産価値を等しくさせるような補償を求めることができる。
土地収用法における損失の補償は、特定の公益上必要な事業のために土地が収用される場合、その収用によって当該土地の所有者等が被る特別な犠牲の回復を図ることを目的とするものであるから、被収用者は、収用の前後を通じて被収用者の保持する財産価値を等しくさせるような補償を求めることができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭48.10.18)は、本肢と同種の事案において、「土地収用法における損失の補償は、特定の公益上必要な事業のために土地が収用される場合、その収用によって当該土地の所有者等が被る特別な犠牲の回復をはかることを目的とするものであるから、…被収用者に対し土地収用法72条によって補償すべき相当な価格とは、被収用地が、右のような建築制限を受けていないとすれば、裁決時において有するであろうと認められる価格をいうと解すべきである。」としている。
判例(最判昭48.10.18)は、本肢と同種の事案において、「土地収用法における損失の補償は、特定の公益上必要な事業のために土地が収用される場合、その収用によって当該土地の所有者等が被る特別な犠牲の回復をはかることを目的とするものであるから、…被収用者に対し土地収用法72条によって補償すべき相当な価格とは、被収用地が、右のような建築制限を受けていないとすれば、裁決時において有するであろうと認められる価格をいうと解すべきである。」としている。
総合メモ
事業認定時点で価額を算定し、権利取得最決までの物価変動率を乗じて補償額とする算定方法を定めた土地収用法71条は憲法29条3項に違反するか 最三小判平成14年6月11日
概要
事業認定時点で価額を算定し、権利取得最決までの物価変動率を乗じて補償額とする算定方法を定めた土地収用法71条は憲法29条3項に違反しない。
判例
事案:事業認定時点で価額を算定し、権利取得最決までの物価変動率を乗じて補償額とする算定方法を定めた土地収用法71条が憲法29条3項に違反するかが問題となった。
判旨:「憲法29条3項にいう『正当な補償』とは、その当時の経済状態において成立すると考えられる価格に基づき合理的に算出された相当な額をいうのであって、必ずしも常に上記の価格と完全に一致することを要するものではないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和25年(オ)第98号同28年12月23日大法廷判決・民集7巻13号1523頁)とするところである。土地収用法71条の規定が憲法29条3項に違反するかどうかも、この判例の趣旨に従って判断すべきものである。 土地の収用に伴う補償は、収用によって土地所有者等が受ける損失に対してされるものである(土地収用法68条)ところ、収用されることが最終的に決定されるのは権利取得裁決によるのであり、その時に補償金の額が具体的に決定される(同法48条1項)のであるから、補償金の額は、同裁決の時を基準にして算定されるべきである。その具体的方法として、同法71条は、事業の認定の告示の時における相当な価格を近傍類地の取引価格等を考慮して算定した上で、権利取得裁決の時までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて、権利取得裁決の時における補償金の額を決定することとしている。 事業認定の告示の時から権利取得裁決の時までには、近傍類地の取引価格に変動が生ずることがあり、その変動率は必ずしも上記の修正率と一致するとはいえない。しかしながら、上記の近傍類地の取引価格の変動は、一般的に当該事業による影響を受けたものであると考えられるところ、事業により近傍類地に付加されることとなった価値と同等の価値を収用地の所有者等が当然に享受し得る理由はないし、事業の影響により生ずる収用地そのものの価値の変動は、起業者に帰属し、又は起業者が負担すべきものである。また、土地が収用されることが最終的に決定されるのは権利取得裁決によるのであるが、事業認定が告示されることにより、当該土地については、任意買収に応じない限り、起業者の申立てにより権利取得裁決がされて収用されることが確定するのであり、その後は、これが一般の取引の対象となることはないから、その取引価格が一般の土地と同様に変動するものとはいえない。そして、任意買収においては、近傍類地の取引価格等を考慮して算定した事業認定の告示の時における相当な価格を基準として契約が締結されることが予定されているということができる。 なお、土地収用法は、事業認定の告示があった後は、権利取得裁決がされる前であっても、土地所有者等が起業者に対し補償金の支払を請求することができ、請求を受けた起業者は原則として2月以内に補償金の見積額を支払わなければならないものとしている(同法46条の2、46条の4)から、この制度を利用することにより、所有者が近傍において被収用地と見合う代替地を取得することは可能である。 これらのことにかんがみれば、土地収用法71条が補償金の額について前記のように規定したことには、十分な合理性があり、これにより、被収用者は、収用の前後を通じて被収用者の有する財産価値を等しくさせるような補償を受けられるものというべきである。」
判旨:「憲法29条3項にいう『正当な補償』とは、その当時の経済状態において成立すると考えられる価格に基づき合理的に算出された相当な額をいうのであって、必ずしも常に上記の価格と完全に一致することを要するものではないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和25年(オ)第98号同28年12月23日大法廷判決・民集7巻13号1523頁)とするところである。土地収用法71条の規定が憲法29条3項に違反するかどうかも、この判例の趣旨に従って判断すべきものである。 土地の収用に伴う補償は、収用によって土地所有者等が受ける損失に対してされるものである(土地収用法68条)ところ、収用されることが最終的に決定されるのは権利取得裁決によるのであり、その時に補償金の額が具体的に決定される(同法48条1項)のであるから、補償金の額は、同裁決の時を基準にして算定されるべきである。その具体的方法として、同法71条は、事業の認定の告示の時における相当な価格を近傍類地の取引価格等を考慮して算定した上で、権利取得裁決の時までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて、権利取得裁決の時における補償金の額を決定することとしている。 事業認定の告示の時から権利取得裁決の時までには、近傍類地の取引価格に変動が生ずることがあり、その変動率は必ずしも上記の修正率と一致するとはいえない。しかしながら、上記の近傍類地の取引価格の変動は、一般的に当該事業による影響を受けたものであると考えられるところ、事業により近傍類地に付加されることとなった価値と同等の価値を収用地の所有者等が当然に享受し得る理由はないし、事業の影響により生ずる収用地そのものの価値の変動は、起業者に帰属し、又は起業者が負担すべきものである。また、土地が収用されることが最終的に決定されるのは権利取得裁決によるのであるが、事業認定が告示されることにより、当該土地については、任意買収に応じない限り、起業者の申立てにより権利取得裁決がされて収用されることが確定するのであり、その後は、これが一般の取引の対象となることはないから、その取引価格が一般の土地と同様に変動するものとはいえない。そして、任意買収においては、近傍類地の取引価格等を考慮して算定した事業認定の告示の時における相当な価格を基準として契約が締結されることが予定されているということができる。 なお、土地収用法は、事業認定の告示があった後は、権利取得裁決がされる前であっても、土地所有者等が起業者に対し補償金の支払を請求することができ、請求を受けた起業者は原則として2月以内に補償金の見積額を支払わなければならないものとしている(同法46条の2、46条の4)から、この制度を利用することにより、所有者が近傍において被収用地と見合う代替地を取得することは可能である。 これらのことにかんがみれば、土地収用法71条が補償金の額について前記のように規定したことには、十分な合理性があり、これにより、被収用者は、収用の前後を通じて被収用者の有する財産価値を等しくさせるような補償を受けられるものというべきである。」
過去問・解説
(H21 司法 第38問 ア)
土地収用法(以下「法」という。)第71条に基づく補償金の額の決定に際しては、事業認定の告示の時から権利取得裁決の時までに近傍類地の取引価格に変動が生ずることがあり、その変動率は必ずしも法第71条による修正率と一致するとはいえないから、被収用者は、収用の前後を通じて被収用者の有する財産価値を等しくさせるような補償を常に受けられるものとはいえないが、憲法第29条第3項にいう「正当な補償」とは、その当時の経済状態において成立すると考えられる価格に基づき合理的に算出された相当な額をいうのであって、必ずしも常に上記の価格と完全に一致することを要するものではないから、法第71条の規定は憲法第29条第3項に違反するものではない。
【参照条文】土地収用法
第71条 収用する土地又はその土地に関する所有権以外の権利に対する補償金の額は、近傍類地の取引価格等を考慮して算定した事業の認定の告示の時における相当な価格に、権利取得裁決の時までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて得た額とする。
土地収用法(以下「法」という。)第71条に基づく補償金の額の決定に際しては、事業認定の告示の時から権利取得裁決の時までに近傍類地の取引価格に変動が生ずることがあり、その変動率は必ずしも法第71条による修正率と一致するとはいえないから、被収用者は、収用の前後を通じて被収用者の有する財産価値を等しくさせるような補償を常に受けられるものとはいえないが、憲法第29条第3項にいう「正当な補償」とは、その当時の経済状態において成立すると考えられる価格に基づき合理的に算出された相当な額をいうのであって、必ずしも常に上記の価格と完全に一致することを要するものではないから、法第71条の規定は憲法第29条第3項に違反するものではない。
【参照条文】土地収用法
第71条 収用する土地又はその土地に関する所有権以外の権利に対する補償金の額は、近傍類地の取引価格等を考慮して算定した事業の認定の告示の時における相当な価格に、権利取得裁決の時までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて得た額とする。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平14.6.11)は、「憲法29条3項にいう『正当な補償』とは、その当時の経済状態において成立すると考えられる価格に基づき合理的に算出された相当な額をいうのであって、必ずしも常に上記の価格と完全に一致することを要するものではない…。」とした上で、「事業認定の告示の時から権利取得裁決の時までには、近傍類地の取引価格に変動が生ずることがあり、その変動率は必ずしも上記の修正率と一致するとはいえない。」としている。
そして、本判例は、続けて、「土地収用法71条が補償金の額について前記のように規定したことには、十分な合理性があり、これにより、被収用者は、収用の前後を通じて被収用者の有する財産価値を等しくさせるような補償を受けられるものというべきである。」としている。
したがって、土地収用法71条により、被収用者は、収用の前後を通じて被収用者の有する財産価値を等しくさせるような補償を常に受けられるといえる。
判例(最判平14.6.11)は、「憲法29条3項にいう『正当な補償』とは、その当時の経済状態において成立すると考えられる価格に基づき合理的に算出された相当な額をいうのであって、必ずしも常に上記の価格と完全に一致することを要するものではない…。」とした上で、「事業認定の告示の時から権利取得裁決の時までには、近傍類地の取引価格に変動が生ずることがあり、その変動率は必ずしも上記の修正率と一致するとはいえない。」としている。
そして、本判例は、続けて、「土地収用法71条が補償金の額について前記のように規定したことには、十分な合理性があり、これにより、被収用者は、収用の前後を通じて被収用者の有する財産価値を等しくさせるような補償を受けられるものというべきである。」としている。
したがって、土地収用法71条により、被収用者は、収用の前後を通じて被収用者の有する財産価値を等しくさせるような補償を常に受けられるといえる。
(H29 予備 第23問 ウ)
損失補償に際しては「正当な補償」が必要であると解されているが、第二次世界大戦後の農地改革をめぐる最高裁判所の判例では、この「正当な補償」の額は、その当時の経済状態において成立すると考えられる価格と完全に一致することを要しないとされている。
損失補償に際しては「正当な補償」が必要であると解されているが、第二次世界大戦後の農地改革をめぐる最高裁判所の判例では、この「正当な補償」の額は、その当時の経済状態において成立すると考えられる価格と完全に一致することを要しないとされている。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平14.6.11)は、「憲法29条3項にいう『正当な補償』とは、その当時の経済状態において成立すると考えられる価格に基づき合理的に算出された相当な額をいうのであって、必ずしも常に上記の価格と完全に一致することを要するものではないことは、当裁判所の判例…とするところである。」としている。
判例(最判平14.6.11)は、「憲法29条3項にいう『正当な補償』とは、その当時の経済状態において成立すると考えられる価格に基づき合理的に算出された相当な額をいうのであって、必ずしも常に上記の価格と完全に一致することを要するものではないことは、当裁判所の判例…とするところである。」としている。
総合メモ
輪中堤(堤防)の敷地が収用された場合に当該輪中堤の文化財的価値が土地収用法88条による損失補償の対象となるか 最一小判昭和63年1月21日
概要
江戸時代初期から水害より村落共同体を守ってきた輪中堤の典型の1つとして歴史的、社会的、学術的価値を内包している輪中堤(堤防)の文化財的価値は、その敷地の不動産としての市場価格の形成に影響を与えないものとして、土地収用法(昭和42年法律第74号による改正前のもの)88条による損失補償の対象となり得ない。
判例
事案:輪中堤(堤防)の敷地が収用された場合に、当該輪中堤の文化財的価値が土地収用法による損失補償の対象となるかが問題となった。
判旨:「土地収用法88条にいう『通常受ける損失』とは、客観的社会的にみて収用に基づき被収用者が当然に受けるであろうと考えられる経済的・財産的な損失をいうと解するのが相当であって、経済的価値でない特殊な価値についてまで補償の対象とする趣旨ではないというべきである。もとより、由緒ある書画、刀剣、工芸品等のように、その美術性・歴史性などのいわゆる文化財的価値なるものが、当該物件の取引価格に反映し、その市場価格を形成する1要素となる場合があることは否定できず、この場合には、かかる文化財的価値を反映した市場価格がその物件の補償されるべき相当な価格となることはいうまでもないが、これに対し、例えば、貝塚、古戦場、関跡などにみられるような、主としてそれによって国の歴史を理解し往時の生活・文化等を知り得るという意味での歴史的・学術的な価値は、特段の事情のない限り、当該土地の不動産としての経済的・財産的価値を何ら高めるものではなく、その市場価格の形成に影響を与えることはないというべきであって、このような意味での文化財的価値なるものは、それ自体経済的評価になじまないものとして、右土地収用法上損失補償の対象とはなり得ないと解するのが相当である。 原審の認定によれば、本件輪中堤は江戸時代初期から水害より村落共同体を守ってきた輪中堤の典型の1つとして歴史的、社会的、学術的価値を内包しているが、それ以上に本件堤防の不動産としての市場価格を形成する要素となり得るような価値を有するというわけでないことは明らかであるから、前示のとおり、かかる価値は本件補償の対象となり得ないというべきである。」
判旨:「土地収用法88条にいう『通常受ける損失』とは、客観的社会的にみて収用に基づき被収用者が当然に受けるであろうと考えられる経済的・財産的な損失をいうと解するのが相当であって、経済的価値でない特殊な価値についてまで補償の対象とする趣旨ではないというべきである。もとより、由緒ある書画、刀剣、工芸品等のように、その美術性・歴史性などのいわゆる文化財的価値なるものが、当該物件の取引価格に反映し、その市場価格を形成する1要素となる場合があることは否定できず、この場合には、かかる文化財的価値を反映した市場価格がその物件の補償されるべき相当な価格となることはいうまでもないが、これに対し、例えば、貝塚、古戦場、関跡などにみられるような、主としてそれによって国の歴史を理解し往時の生活・文化等を知り得るという意味での歴史的・学術的な価値は、特段の事情のない限り、当該土地の不動産としての経済的・財産的価値を何ら高めるものではなく、その市場価格の形成に影響を与えることはないというべきであって、このような意味での文化財的価値なるものは、それ自体経済的評価になじまないものとして、右土地収用法上損失補償の対象とはなり得ないと解するのが相当である。 原審の認定によれば、本件輪中堤は江戸時代初期から水害より村落共同体を守ってきた輪中堤の典型の1つとして歴史的、社会的、学術的価値を内包しているが、それ以上に本件堤防の不動産としての市場価格を形成する要素となり得るような価値を有するというわけでないことは明らかであるから、前示のとおり、かかる価値は本件補償の対象となり得ないというべきである。」
過去問・解説
(H20 司法 第22問 イ)
土地収用法が補償を義務付けている「通常受ける損失」(同法第88条)とは、客観的社会的にみて収用に基づき被収用者が当然に受けるであろうと考えられる経済的・財産的な損失をいうと解するのが相当であるから、経済的価値でない特殊な価値については補償の対象とはならない。
【参照条文】土地収用法
第88条 第71条、第72条、第74条、第75条、第77条、第80条及び第80条の2に規定する損失の補償の外、離作料、営業上の損失、建物の移転による賃貸料の損失その他土地を収用し、又は使用することに因って土地所有者又は関係人が通常受ける損失は、補償しなければならない。
土地収用法が補償を義務付けている「通常受ける損失」(同法第88条)とは、客観的社会的にみて収用に基づき被収用者が当然に受けるであろうと考えられる経済的・財産的な損失をいうと解するのが相当であるから、経済的価値でない特殊な価値については補償の対象とはならない。
【参照条文】土地収用法
第88条 第71条、第72条、第74条、第75条、第77条、第80条及び第80条の2に規定する損失の補償の外、離作料、営業上の損失、建物の移転による賃貸料の損失その他土地を収用し、又は使用することに因って土地所有者又は関係人が通常受ける損失は、補償しなければならない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭63.1.21)は、「土地収用法88条にいう『通常受ける損失』とは、客観的社会的にみて収用に基づき被収用者が当然に受けるであろうと考えられる経済的・財産的な損失をいうと解するのが相当であって、経済的価値でない特殊な価値についてまで補償の対象とする趣旨ではないというべきである。」としている。
判例(最判昭63.1.21)は、「土地収用法88条にいう『通常受ける損失』とは、客観的社会的にみて収用に基づき被収用者が当然に受けるであろうと考えられる経済的・財産的な損失をいうと解するのが相当であって、経済的価値でない特殊な価値についてまで補償の対象とする趣旨ではないというべきである。」としている。
総合メモ
痘そうの予防接種による重篤な後遺障害の発生と予防接種実施規則4条の禁忌者に該当したことの推定 最二小判平成3年4月19日
概要
痘そうの予防接種によって重篤な後遺障害が発生した場合には、予防接種実施規則(昭和45年厚生省令第44号による改正前の昭和33年厚生省令第27号)4条の禁忌者を識別するために必要とされる予診が尽くされたが禁忌者に該当する事由を発見することはできなかったこと、被接種者が右後遺障害を発生しやすい個人的素因を有していたこと等の特段の事情が認められない限り、被接種者は禁忌者に該当していたものと推定すべきである。
判例
事案: 生後6か月のXが、保健所において予防接種法に基づく痘そうの予防接種を受けたところ、脳炎及び脊髄炎を発症し、下半身麻痺による運動障害及び知能障害の後遺症を残すに至ったことにつき、同後遺症は予防接種担当医の予診義務違反によるものであるなどとして、Xらが国、市等に対し国家賠償を求めた事案において、予防接種による後遺症について、予診の不十分と後遺障害の関係をどのように判断するかが問題となった。
判旨:「予防接種によって重篤な後遺障害が発生する原因としては、被接種者が禁忌者に該当していたこと又は被接種者が後遺障害を発生しやすい個人的素因を有していたことが考えられるところ、禁忌者として掲げられた事由は一般通常人がなり得る病的状態、比較的多く見られる疾患又はアレルギー体質等であり、ある個人が禁忌者に該当する可能性は右の個人的素因を有する可能性よりもはるかに大きいものというべきであるから、予防接種によって右後遺障害が発生した場合には、当該被接種者が禁忌者に該当していたことによって右後遺障害が発生した高度の蓋然性があると考えられる。したがって、予防接種によって右後遺障害が発生した場合には、禁忌者を識別するために必要とされる予診が尽くされたが禁忌者に該当すると認められる事由を発見することができなかったこと、被接種者が右個人的素因を有していたこと等の特段の事情が認められない限り、被接種者は禁忌者に該当していたと推定するのが相当である。」
判旨:「予防接種によって重篤な後遺障害が発生する原因としては、被接種者が禁忌者に該当していたこと又は被接種者が後遺障害を発生しやすい個人的素因を有していたことが考えられるところ、禁忌者として掲げられた事由は一般通常人がなり得る病的状態、比較的多く見られる疾患又はアレルギー体質等であり、ある個人が禁忌者に該当する可能性は右の個人的素因を有する可能性よりもはるかに大きいものというべきであるから、予防接種によって右後遺障害が発生した場合には、当該被接種者が禁忌者に該当していたことによって右後遺障害が発生した高度の蓋然性があると考えられる。したがって、予防接種によって右後遺障害が発生した場合には、禁忌者を識別するために必要とされる予診が尽くされたが禁忌者に該当すると認められる事由を発見することができなかったこと、被接種者が右個人的素因を有していたこと等の特段の事情が認められない限り、被接種者は禁忌者に該当していたと推定するのが相当である。」
過去問・解説
(H22 司法 第38問 イ)
予防接種により重篤な後遺障害をもたらす事故が発生した場合には、伝染病から社会を防衛するという公共目的のために特定個人が特別の犠牲を被ったことから、予防接種により被害を受けた者に対して、最高裁判所は損失補償による救済を認めている。
予防接種により重篤な後遺障害をもたらす事故が発生した場合には、伝染病から社会を防衛するという公共目的のために特定個人が特別の犠牲を被ったことから、予防接種により被害を受けた者に対して、最高裁判所は損失補償による救済を認めている。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平3.4.19)は、本肢と同種の事案において、痘そうの予防接種による重篤な後遺障害の問題について、当時の予防接種実施規則4条の禁忌者に該当したことの推定を問題としており、同判例では予防接種による後遺症の問題について損失補償ではなく損害賠償により解決を図っている。他に損失補償による救済を認めた最高裁判例も存在しない。
判例(最判平3.4.19)は、本肢と同種の事案において、痘そうの予防接種による重篤な後遺障害の問題について、当時の予防接種実施規則4条の禁忌者に該当したことの推定を問題としており、同判例では予防接種による後遺症の問題について損失補償ではなく損害賠償により解決を図っている。他に損失補償による救済を認めた最高裁判例も存在しない。
(H25 共通 第38問 4)
次の例は、損失補償請求権として法律構成することが考えられる事案について、損害賠償を認めることにより解決される例として適切か。
【例】
市の保健所で受けた予防接種により個人に後遺障害が生じた場合に、接種した医師の過失が一部推定され、市が損害賠償責任を負う例。
次の例は、損失補償請求権として法律構成することが考えられる事案について、損害賠償を認めることにより解決される例として適切か。
【例】
市の保健所で受けた予防接種により個人に後遺障害が生じた場合に、接種した医師の過失が一部推定され、市が損害賠償責任を負う例。
(正答)〇
(解説)
損失補償請求権は、適法な公権力の行使によって財産権が侵害され、特別の犠牲を負った者に対して金銭で補填をするという概念である。
予防接種によって個人に後遺障害が生じることは、適法な公権力の行使によってその治療費相当額の金銭という財産権が侵害され、特別の犠牲を負った者に対して金銭で補填をする性質を有しているから、損失補償請求権として法律構成することが考えられる。
他方、判例(最判平3.4.19)は、本肢と同種の事案において、国家賠償請求という形での損害賠償請求が認めることで解決を図っている。
損失補償請求権は、適法な公権力の行使によって財産権が侵害され、特別の犠牲を負った者に対して金銭で補填をするという概念である。
予防接種によって個人に後遺障害が生じることは、適法な公権力の行使によってその治療費相当額の金銭という財産権が侵害され、特別の犠牲を負った者に対して金銭で補填をする性質を有しているから、損失補償請求権として法律構成することが考えられる。
他方、判例(最判平3.4.19)は、本肢と同種の事案において、国家賠償請求という形での損害賠償請求が認めることで解決を図っている。
(H29 予備 第23問 イ)
損失補償は、適法な公権力の行使により特別の犠牲が生じた場合に、公平負担の見地から認められるものであるところ、特別の犠牲は財産上の損害に限られるのかという議論がある。
予防接種による副作用被害が問題となった事案では、生命や身体に対する損害であっても損失補償の対象になり得ると主張されたが、このような損失補償による救済を明示的に認めた最高裁判所の判例は存在しない。
損失補償は、適法な公権力の行使により特別の犠牲が生じた場合に、公平負担の見地から認められるものであるところ、特別の犠牲は財産上の損害に限られるのかという議論がある。
予防接種による副作用被害が問題となった事案では、生命や身体に対する損害であっても損失補償の対象になり得ると主張されたが、このような損失補償による救済を明示的に認めた最高裁判所の判例は存在しない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平3.4.19)は、「予防接種によって右後遺障害が発生した場合には、禁忌者を識別するために必要とされる予診が尽くされたが禁忌者に該当すると認められる事由を発見することができなかったこと、被接種者が右個人的素因を有していたこと等の特段の事情が認められない限り、被接種者は禁忌者に該当していたと推定するのが相当である。」として、医師の過失を認定することで解決を図ろうとしている。
したがって、本判例は国家賠償による救済であり、他に損失補償による救済を明示的に認めた最高裁判所の判例はない。
判例(最判平3.4.19)は、「予防接種によって右後遺障害が発生した場合には、禁忌者を識別するために必要とされる予診が尽くされたが禁忌者に該当すると認められる事由を発見することができなかったこと、被接種者が右個人的素因を有していたこと等の特段の事情が認められない限り、被接種者は禁忌者に該当していたと推定するのが相当である。」として、医師の過失を認定することで解決を図ろうとしている。
したがって、本判例は国家賠償による救済であり、他に損失補償による救済を明示的に認めた最高裁判所の判例はない。
総合メモ
土地収用法133条所定の訴訟における補償額 最三小判平成9年1月28日
概要
①土地収用法133条所定の損失補償に関する訴訟において、裁判所は、収用委員会の補償に関する認定判断に裁量権の逸脱濫用があるかどうかを審理判断するのではなく、裁決時点における正当な補償額を客観的に認定し裁決に定められた補償額が右認定額と異なるときは、これを違法とし、正当な補償額を確定すべきである。
②被収用者は、土地収用法123条所定の損失補償に関する訴訟において、正当な補償額と権利取得裁決に定められた補償額との差額のみならず、右差額に対する裁決に定められた権利取得の時期からその支払済みまで民法所定の年5分の利率に相当する金員を請求することができる。
②被収用者は、土地収用法123条所定の損失補償に関する訴訟において、正当な補償額と権利取得裁決に定められた補償額との差額のみならず、右差額に対する裁決に定められた権利取得の時期からその支払済みまで民法所定の年5分の利率に相当する金員を請求することができる。
判例
事案:土地収用法133条所定の損失補償に関する訴訟において、①土地収用法133条所定の訴訟における補償額についての審理判断の方法はいかにすべきか、②被収用者は、土地収用法123条所定の訴訟において補償金増額分に対する収用の時期以降の法定利率相当の金員を請求することができるかなどが問題となった。
判旨:①「土地収用法における損失の補償は、特定の公益上必要な事業のために土地が収用される場合、その収用によって当該土地の所有者等が被る特別な犠牲の回復を図ることを目的とするものであるから、完全な補償、すなわち、収用の前後を通じて被収用者の有する財産価値を等しくさせるような補償をすべきであり、金銭をもって補償する場合には、被収用者が近傍において被収用地と同等の代替地等を取得することを可能にするに足りる金額の補償を要するものと解される…。同法による補償金の額は、『相当な価格』(同法71条参照)等の不確定概念をもって定められているものではあるが、右の観点から、通常人の経験則及び社会通念に従って、客観的に認定され得るものであり、かつ、認定すべきものであって、補償の範囲及びその額(以下、これらを『補償額』という。)の決定につき収用委員会に裁量権が認められるものと解することはできない。したがって、同法133条所定の損失補償に関する訴訟において、裁判所は、収用委員会の補償に関する認定判断に裁量権の逸脱濫用があるかどうかを審理判断するものではなく、証拠に基づき裁決時点における正当な補償額を客観的に認定し、裁決に定められた補償額が右認定額と異なるときは、裁決に定められた補償額を違法とし、正当な補償額を確定すべきものと解するのが相当である。」
②「土地収用法133条所定の損失補償に関する訴訟は、裁決のうち損失補償に関する部分又は補償裁決に対する不服を実質的な内容とし、その適否を争うものであるが、究極的には、起業者と被収用者との間において、裁決時における同法所定の正当な補償額を確定し、これをめぐる紛争を終局的に解決し、正当な補償の実現を図ることを目的とするものということができる。右訴訟において、権利取得裁決において定められた補償額が裁決の当時を基準としてみても過少であったと判断される場合には、判決によって、裁決に定める権利取得の時期までに支払われるべきであった正当な補償額が確定されるものである。しかも、被収用者である土地所有者等は右の時期において収用土地に関する権利を失い、収用土地の利用ができなくなる反面、起業者は右の時期に権利を取得してこれを利用することができるようになっているのであるから、被収用者は、正当な補償額と裁決に定められていた補償額との差額のみならず、右差額に対する権利取得の時期からその支払済みに至るまで民法所定の年5分の法定利率に相当する金員を請求することができるものと解するのが相当である。」
判旨:①「土地収用法における損失の補償は、特定の公益上必要な事業のために土地が収用される場合、その収用によって当該土地の所有者等が被る特別な犠牲の回復を図ることを目的とするものであるから、完全な補償、すなわち、収用の前後を通じて被収用者の有する財産価値を等しくさせるような補償をすべきであり、金銭をもって補償する場合には、被収用者が近傍において被収用地と同等の代替地等を取得することを可能にするに足りる金額の補償を要するものと解される…。同法による補償金の額は、『相当な価格』(同法71条参照)等の不確定概念をもって定められているものではあるが、右の観点から、通常人の経験則及び社会通念に従って、客観的に認定され得るものであり、かつ、認定すべきものであって、補償の範囲及びその額(以下、これらを『補償額』という。)の決定につき収用委員会に裁量権が認められるものと解することはできない。したがって、同法133条所定の損失補償に関する訴訟において、裁判所は、収用委員会の補償に関する認定判断に裁量権の逸脱濫用があるかどうかを審理判断するものではなく、証拠に基づき裁決時点における正当な補償額を客観的に認定し、裁決に定められた補償額が右認定額と異なるときは、裁決に定められた補償額を違法とし、正当な補償額を確定すべきものと解するのが相当である。」
②「土地収用法133条所定の損失補償に関する訴訟は、裁決のうち損失補償に関する部分又は補償裁決に対する不服を実質的な内容とし、その適否を争うものであるが、究極的には、起業者と被収用者との間において、裁決時における同法所定の正当な補償額を確定し、これをめぐる紛争を終局的に解決し、正当な補償の実現を図ることを目的とするものということができる。右訴訟において、権利取得裁決において定められた補償額が裁決の当時を基準としてみても過少であったと判断される場合には、判決によって、裁決に定める権利取得の時期までに支払われるべきであった正当な補償額が確定されるものである。しかも、被収用者である土地所有者等は右の時期において収用土地に関する権利を失い、収用土地の利用ができなくなる反面、起業者は右の時期に権利を取得してこれを利用することができるようになっているのであるから、被収用者は、正当な補償額と裁決に定められていた補償額との差額のみならず、右差額に対する権利取得の時期からその支払済みに至るまで民法所定の年5分の法定利率に相当する金員を請求することができるものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H20 司法 第22問 エ)
土地収用法による補償金額は「相当な価格」(同法第71条)等の不確定概念をもって定められているので、補償の範囲及びその額の決定については、収用委員会の合理的な裁量にゆだねられているものと解される。
【参照条文】土地収用法
第71条 収用する土地又はその土地に関する所有権以外の権利に対する補償金の額は、近傍類地の取引価格等を考慮して算定した事業の認定の告示の時における相当な価格に、権利取得裁決の時までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて得た額とする。
土地収用法による補償金額は「相当な価格」(同法第71条)等の不確定概念をもって定められているので、補償の範囲及びその額の決定については、収用委員会の合理的な裁量にゆだねられているものと解される。
【参照条文】土地収用法
第71条 収用する土地又はその土地に関する所有権以外の権利に対する補償金の額は、近傍類地の取引価格等を考慮して算定した事業の認定の告示の時における相当な価格に、権利取得裁決の時までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて得た額とする。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平9.1.28)は、「補償金の額は、『相当な価格』(同法71条参照)等の不確定概念をもって定められているものではあるが、右の観点から、通常人の経験則及び社会通念に従って、客観的に認定され得るものであり、かつ、認定すべきものであって、補償の範囲及びその額…の決定につき収用委員会に裁量権が認められるものと解することはできない。」としており、収用委員会の広範な裁量に委ねていない。
判例(最判平9.1.28)は、「補償金の額は、『相当な価格』(同法71条参照)等の不確定概念をもって定められているものではあるが、右の観点から、通常人の経験則及び社会通念に従って、客観的に認定され得るものであり、かつ、認定すべきものであって、補償の範囲及びその額…の決定につき収用委員会に裁量権が認められるものと解することはできない。」としており、収用委員会の広範な裁量に委ねていない。
(H24 司法 第38問 エ)
自己の所有する土地を収用されたDは、権利取得裁決に定められた補償額を不服として増額請求訴訟を提起して勝訴した場合には、正当な補償額と裁決で定められた補償額との差額のみならず、その差額に対する、裁決で定められた権利取得の時期からその支払済みに至るまでの民法所定の法定利率相当額を請求することができる。
自己の所有する土地を収用されたDは、権利取得裁決に定められた補償額を不服として増額請求訴訟を提起して勝訴した場合には、正当な補償額と裁決で定められた補償額との差額のみならず、その差額に対する、裁決で定められた権利取得の時期からその支払済みに至るまでの民法所定の法定利率相当額を請求することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平9.1.28)は、本肢と同種の事案において、「被収用者である土地所有者等は右の時期において収用土地に関する権利を失い、収用土地の利用ができなくなる反面、起業者は右の時期に権利を取得してこれを利用することができるようになっているのであるから、被収用者は、正当な補償額と裁決に定められていた補償額との差額のみならず、右差額に対する権利取得の時期からその支払済みに至るまで民法所定の年5分の法定利率に相当する金員を請求することができるものと解するのが相当である。」としている。
判例(最判平9.1.28)は、本肢と同種の事案において、「被収用者である土地所有者等は右の時期において収用土地に関する権利を失い、収用土地の利用ができなくなる反面、起業者は右の時期に権利を取得してこれを利用することができるようになっているのであるから、被収用者は、正当な補償額と裁決に定められていた補償額との差額のみならず、右差額に対する権利取得の時期からその支払済みに至るまで民法所定の年5分の法定利率に相当する金員を請求することができるものと解するのが相当である。」としている。
(H27 予備 第14問 エ)
土地収用法による土地収用は、国土交通大臣又は都道府県知事が起業者(土地収用を必要とする事業を行う者)からの申請に対して行う事業認定と、それに続く都道府県の収用委員会による収用裁決とを経て行われるところ、最高裁判所の判例によれば、収用委員会が収用裁決において行う損失補償の範囲及び額の決定について、収用委員会に裁量権は認められない。
土地収用法による土地収用は、国土交通大臣又は都道府県知事が起業者(土地収用を必要とする事業を行う者)からの申請に対して行う事業認定と、それに続く都道府県の収用委員会による収用裁決とを経て行われるところ、最高裁判所の判例によれば、収用委員会が収用裁決において行う損失補償の範囲及び額の決定について、収用委員会に裁量権は認められない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平9.1.28)は、「補償金の額は、『相当な価格』(同法71条参照)等の不確定概念をもって定められているものではあるが、右の観点から、通常人の経験則及び社会通念に従って、客観的に認定され得るものであり、かつ、認定すべきものであって、補償の範囲及びその額…の決定につき収用委員会に裁量権が認められるものと解することはできない。」としている。
判例(最判平9.1.28)は、「補償金の額は、『相当な価格』(同法71条参照)等の不確定概念をもって定められているものではあるが、右の観点から、通常人の経験則及び社会通念に従って、客観的に認定され得るものであり、かつ、認定すべきものであって、補償の範囲及びその額…の決定につき収用委員会に裁量権が認められるものと解することはできない。」としている。
総合メモ
憲法第29条第3項は、損失補償が私有財産の供与と交換的に同時履行されることまで保障しているのか 最大判昭和24年7月13日
概要
憲法29条3項は、国家の補償が私人の財産供与と同時になされるべきことを保障しているものではない。
判例
事案:損失補償が争われた事案において、憲法29条3項における補償金の支払時期が問題となった。
判旨:「憲法第29条は、財産権の不可侵を規定すると共に『私有財産権は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる』と定めている。従って、国家が私人の財産を公共の用に供するにはこれによって私人の破るべき損害を填補するに足りるだけの相当な賠償をしなければならないことは言うまでもない。しかしながら、憲法は『正当な補償』と規定しているだけであって、補償の時期についてはすこしも言明していないのであるから、補償が財産の供与と交換的に同時に履行さるべきことについては、憲法の保障するところではないと言わなければならない。もっとも、補償が財産の供与より甚しく遅れた場合には、遅延による損害をも填補する問題を生ずるであらうが、だからといって、憲法は補償の同時履行までをも保障したものと解することはできない。」
判旨:「憲法第29条は、財産権の不可侵を規定すると共に『私有財産権は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる』と定めている。従って、国家が私人の財産を公共の用に供するにはこれによって私人の破るべき損害を填補するに足りるだけの相当な賠償をしなければならないことは言うまでもない。しかしながら、憲法は『正当な補償』と規定しているだけであって、補償の時期についてはすこしも言明していないのであるから、補償が財産の供与と交換的に同時に履行さるべきことについては、憲法の保障するところではないと言わなければならない。もっとも、補償が財産の供与より甚しく遅れた場合には、遅延による損害をも填補する問題を生ずるであらうが、だからといって、憲法は補償の同時履行までをも保障したものと解することはできない。」
過去問・解説
(R3 予備 第23問 ア)
憲法第29条第3項は「正当な補償」と規定しているだけで補償の時期については規定していないから、損失補償が私有財産の供与と交換的に同時履行されなくても、憲法に違反するものではない。
憲法第29条第3項は「正当な補償」と規定しているだけで補償の時期については規定していないから、損失補償が私有財産の供与と交換的に同時履行されなくても、憲法に違反するものではない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭24.7.13)は、「憲法は『正当な補償』と規定しているだけであって、補償の時期についてはすこしも言明していないのであるから、補償が財産の供与と交換的に同時に履行さるべきことについては、憲法の保障するところではないと言わなければならない。もっとも、補償が財産の供与より甚しく遅れた場合には、遅延による損害をも填補する問題を生ずるであらうが、だからといって、憲法は補償の同時履行までをも保障したものと解することはできない。」としている。
したがって、損失補償が私有財産の供与と交換的に同時履行されなくても、憲法に違反するものではないといえる。
判例(最判昭24.7.13)は、「憲法は『正当な補償』と規定しているだけであって、補償の時期についてはすこしも言明していないのであるから、補償が財産の供与と交換的に同時に履行さるべきことについては、憲法の保障するところではないと言わなければならない。もっとも、補償が財産の供与より甚しく遅れた場合には、遅延による損害をも填補する問題を生ずるであらうが、だからといって、憲法は補償の同時履行までをも保障したものと解することはできない。」としている。
したがって、損失補償が私有財産の供与と交換的に同時履行されなくても、憲法に違反するものではないといえる。