現在お使いのブラウザのバージョンでは、本サービスの機能をご利用いただけない可能性があります
バージョンアップを試すか、Google ChromeやMozilla Firefoxなどの最新ブラウザをお試しください

引き続き問題が発生する場合は、 お問い合わせ までご連絡ください。

行政法 消滅時効の主張が信義則上許されない場合 最三小判平成19年2月6日

概要
原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律等に基づき健康管理手当の支給認定を受けた被爆者が、外国へ出国したことに伴いその支給を打ち切られたため、未支給の健康管理手当の支払を求める訴訟において、支給義務者が地方自治法236条所定の消滅時効を主張することは、信義則に反し許されない。
判例
事案:原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律等に基づき健康管理手当の支給認定を受けた被爆者が、外国へ出国したことに伴いその支給を打ち切られたため、未支給の健康管理手当の支払を求める訴訟において、支給義務者が地方自治法236条所定の消滅時効を主張することが信義則上許されるかが問題となった。

判旨:「被爆者援護法等に基づく健康管理手当は、原子爆弾の投下の結果として生じた放射能に起因する健康被害が他の戦争被害とは異なる特殊の被害であることにかんがみ、原子爆弾の放射能の影響による造血機能障害等の障害に苦しみ続け、不安の中で生活している被爆者に対し、毎月定額の手当を支給することにより、その健康及び福祉に寄与することを目的とするものである(原爆特別措置法5条、被爆者援護法前文、27条参照)。前記事実関係等によれば、被上告人らは、その申請により本件健康管理手当の受給権を具体的な権利として取得したところ、上告人は、被上告人らがブラジルに出国したとの一事により、同受給権につき402号通達に基づく失権の取扱いをしたものであり、しかも、このような通達や取扱いには何ら法令上の根拠はなかったというのである。通達は、行政上の取扱いの統一性を確保するために、上級行政機関が下級行政機関に対して発する法解釈の基準であって、国民に対し直接の法的効力を有するものではないとはいえ、通達に定められた事項は法令上相応の根拠を有するものであるとの推測を国民に与えるものであるから、前記のような402号通達の明確な定めに基づき健康管理手当の受給権について失権の取扱いをされた者に、なおその行使を期待することは極めて困難であったといわざるを得ない。他方、国が具体的な権利として発生したこのような重要な権利について失権の取扱いをする通達を発出する以上、相当程度慎重な検討ないし配慮がされてしかるべきものである。しかも、402号通達の上記失権取扱いに関する定めは、我が国を出国した被爆者に対し、その出国時点から適用されるものであり、失権取扱い後の権利行使が通常困難となる者を対象とするものであったということができる。 以上のような事情の下においては、上告人が消滅時効を主張して未支給の本件健康管理手当の支給義務を免れようとすることは、違法な通達を定めて受給権者の権利行使を困難にしていた国から事務の委任を受け、又は事務を受託し、自らも上記通達に従い違法な事務処理をしていた普通地方公共団体ないしその機関自身が、受給権者によるその権利の不行使を理由として支払義務を免れようとするに等しいものといわざるを得ない。そうすると、上告人の消滅時効の主張は、402号通達が発出されているにもかかわらず、当該被爆者については同通達に基づく失権の取扱いに対し訴訟を提起するなどして自己の権利を行使することが合理的に期待できる事情があったなどの特段の事情のない限り、信義則に反し許されないものと解するのが相当である。本件において上記特段の事情を認めることはできないから、上告人は、消滅時効を主張して未支給の本件健康管理手当の支給義務を免れることはできないものと解される。」
過去問・解説
(H30 予備 第13問 ウ)
原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律等に基づき被爆者に対して支給される健康管理手当の受給権につき、法令上の根拠がないのに、被爆者が国外に居住地を移した場合に失権の取扱いとなるものと定めた違法な通達に基づき、地方公共団体が支給を打ち切った事案に関する最高裁判所平成19年2月6日第三小法廷判決(民集61巻1号122頁)は、上記通達に基づき違法な事務処理をしていた地方公共団体が、未支給の健康管理手当の支給義務を免れるために消滅時効を主張することは、特段の事情のない限り、信義則に反し許されないと判断したものである。

(正答)

(解説)
判例(最判平19.2.6)は、国の担当者が発出していた違法な通達に従い違法な事務処理をしていた地方公共団体が上告人である事案において、「上告人が消滅時効を主張して未支給の本件健康管理手当の支給義務を免れようとすることは、…402号通達が発出されているにもかかわらず、当該被爆者については同通達に基づく失権の取扱いに対し訴訟を提起するなどして自己の権利を行使することが合理的に期待できる事情があったなどの特段の事情のない限り、信義則に反し許されない…。」としている。
総合メモ
前の判例 次の判例