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行政法 給水拒否に関する水道法15条1項にいう「正当の理由」 最一小判平成11年1月21日

概要
水道事業者である町が水道水の需要の増加を抑制するためマンション分譲業者との給水契約の締結を拒否したことに水道法15条1項にいう「正当の理由」があるとされた。
判例
事案:マンション分譲行者であるXが建築予定のマンションについての給水契約締結の申込みをしたところ、慢性的な水不足に悩む水道事業者であるY町が、その申込みを拒否した事案において、ことには水道法15条1項にいう「正当の理由」があるといえるか。

判旨:「法15条1項にいう『正当の理由』とは、水道事業者の正常な企業努力にもかかわらず給水契約の締結を拒まざるを得ない理由を指すものと解されるが、具体的にいかなる事由がこれに当たるかについては、同項の趣旨、目的のほか、法全体の趣旨、目的や関連する規定に照らして合理的に解釈するのが相当である。 いうまでもなく、水道は、国民の日常生活に直結し、その健康を守るために欠くことのできないものであるが、我が国においては、地形、気象、人口等の自然的社会的諸条件のため、需要に見合った水道用水の確保は必ずしも容易ではなく、水は貴重な資源である(法2条1項参照)。市町村は、このような水道事業を経営する責任を負うものである(地方自治法2条3項3号、4項、法6条2項参照)ところ、法は、市町村を始めとする地方公共団体に対し、水の適正かつ合理的な使用に関し必要な施策を講じなければならず(法2条1項)、当該地域の自然的社会的諸条件に応じて、水道の計画的整備に関する施策を策定、実施するとともに、水道事業を経営するに当たっては、その適正かつ能率的な運営に努めなければならないとの責務を課し(法2条の2第1項)、他方、国民に対しては、市町村等の右施策に協力するとともに、自らも、水の適正かつ合理的な使用に努めなければならないとの責務を課している(法2条2項)。 右にみたとおり、水道が国民にとって欠くことのできないものであることからすると、市町村は、水道事業を経営するに当たり、当該地域の自然的社会的諸条件に応じて、可能な限り水道水の需要を賄うことができるように、中長期的視点に立って適正かつ合理的な水の供給に関する計画を立て、これを実施しなければならず、当該供給計画によって対応することができる限り、給水契約の申込みに対して応ずべき義務があり、みだりにこれを拒否することは許されないものというべきである。しかしながら、他方、水が限られた資源であることを考慮すれば、市町村が正常な企業努力を尽くしてもなお水の供給に一定の限界があり得ることも否定することはできないのであって、給水義務は絶対的なものということはできず、給水契約の申込みが右のような適正かつ合理的な供給計画によっては対応することができないものである場合には、法15条1項にいう『正当の理由』があるものとして、これを拒むことが許されると解すべきである。 以上の見地に立って考えると、水の供給量が既にひっ迫しているにもかかわらず、自然的条件においては取水源が貧困で現在の取水量を増加させることが困難である一方で、社会的条件としては著しい給水人口の増加が見込まれるため、近い将来において需要量が給水量を上回り水不足が生ずることが確実に予見されるという地域にあっては、水道事業者である市町村としては、そのような事態を招かないよう適正かつ合理的な施策を講じなければならず、その方策としては、困難な自然的条件を克服して給水量をできる限り増やすことが第1に執られるべきであるが、それによってもなお深刻な水不足が避けられない場合には、専ら水の需給の均衡を保つという観点から水道水の需要の著しい増加を抑制するための施策を執ることも、やむを得ない措置として許されるものというべきである。そうすると、右のような状況の下における需要の抑制施策の1つとして、新たな給水申込みのうち、需要量が特に大きく、現に居住している住民の生活用水を得るためではなく住宅を供給する事業を営む者が住宅分譲目的でしたものについて、給水契約の締結を拒むことにより、急激な需要の増加を抑制することには、法15条1項にいう『正当の理由』があるということができるものと解される。」
過去問・解説
(H18 司法 第27問 ウ)
水道事業者である地方公共団体が、建築予定のマンションについての給水契約締結の申込みを拒否した場合、それが、専ら慢性的な水不足の状況の下で水道水の需要の増加を抑制する目的によるときは、水道法第15条にいう「正当な理由」がないため、違法な拒否に当たる。

【参照条文】水道法
第15条第1項 水道事業者は、事業計画に定める給水区域内の需要者から給水契約の申込みを受けたときは、正当な理由がなければ、これを拒んではならない。

(正答)

(解説)
判例(最判平11.1.21)は、「水の供給量が既にひっ迫しているにもかかわらず、自然的条件においては取水源が貧困で現在の取水量を増加させることが困難である一方で、社会的条件としては著しい給水人口の増加が見込まれるため、近い将来において需要量が給水量を上回り水不足が生ずることが確実に予見されるという地域にあっては、水道事業者である市町村としては、そのような事態を招かないよう適正かつ合理的な施策を講じなければならず、その方策としては、困難な自然的条件を克服して給水量をできる限り増やすことが第1に執られるべきであるが、それによってもなお深刻な水不足が避けられない場合には、専ら水の需給の均衡を保つという観点から水道水の需要の著しい増加を抑制するための施策を執ることも、やむを得ない措置として許されるものというべきである。」とした上で、「給水契約の締結を拒むことにより、急激な需要の増加を抑制することには、法15条1項にいう『正当の理由』があるということができるものと解される。」としている。
したがって、専ら慢性的な水不足の状況の下で水道水の需要の増加を抑制する目的によるときは、水道法第15条にいう「正当な理由」が認められ、拒否は適法である。

(H24 司法 第28問 ア)
最高裁判所の判例によれば、新規に大規模マンションの建設を予定している住宅分譲業者AがB市に給水申込みをした事案において、B市が水道事業者として正常な企業努力をしているにもかかわらず近い将来において水不足が生ずることが確実に予見される場合には、水道法第15条第1項にいう「正当の理由」が認められることから、B市はA の給水契約の申込みを拒否することができる。

【参照条文】水道法
第15条 水道事業者は、事業計画に定める給水区域内の需要者から給水契約の申込みを受けたときは、正当の理由がなければ、これを拒んではならない。
2、3 (略)

(正答)

(解説)
判例(最判平11.1.21)は、「近い将来において需要量が給水量を上回り水不足が生ずることが確実に予見されるという地域にあっては、水道事業者である市町村としては、そのような事態を招かないよう適正かつ合理的な施策を講じなければならず、その方策としては、困難な自然的条件を克服して給水量をできる限り増やすことが第一に執られるべきであるが、それによってもなお深刻な水不足が避けられない場合には、専ら水の需給の均衡を保つという観点から水道水の需要の著しい増加を抑制するための施策を執ることも、やむを得ない措置として許されるものというべきである。」とした上で、「新たな給水申込みのうち、需要量が特に大きく、現に居住している住民の生活用水を得るためではなく住宅を供給する事業を営む者が住宅分譲目的でしたものについて、給水契約の締結を拒むことにより、急激な需要の増加を抑制することには、法15条1項にいう『正当の理由』があるということができる…。」としている。

(H30 予備 第18問 エ)
水道事業者は、事業計画に定める給水区域内の需要者から受けた給水契約の申込みを拒否するか否かを判断するに当たり、正常な企業努力を尽くしても水の供給に一定の限界があり得ることを考慮することが許される。

(正答)

(解説)
判例(最判平11.1.21)は、「水が限られた資源であることを考慮すれば、市町村が正常な企業努力を尽くしてもなお水の供給に一定の限界があり得ることも否定することはできないのであって、給水義務は絶対的なものということはできず、給水契約の申込みが右のような適正かつ合理的な供給計画によっては対応することができないものである場合には、法15条1項にいう『正当の理由』があるものとして、これを拒むことが許される…。」としている。
したがって、判例は、給水契約の申込拒否の「正当の理由」の考慮要素として、正常な企業努力を尽くしても水の供給に一定の限界があり得ることを考慮している。

(R6 予備 第18問 ウ)
給水契約の申込みが適正かつ合理的な供給計画によっては対応することができないものである場合には、水道事業者は、水道法第15条第1項にいう「正当の理由」があるものとして、これを拒むことが許される。

【参照条文】水道法
第15条 水道事業者は、事業計画に定める給水区域内の需要者から給水契約の申込みを受けたときは、正当の理由がなければ、これを拒んではならない。
2、3 (略)

(正答)

(解説)
判例(最判平11.1.21)は、「水が限られた資源であることを考慮すれば、市町村が正常な企業努力を尽くしてもなお水の供給に一定の限界があり得ることも否定することはできないのであって、給水義務は絶対的なものということはできず、給水契約の申込みが右のような適正かつ合理的な供給計画によっては対応することができないものである場合には、法15条1項にいう『正当の理由』があるものとして、これを拒むことが許される…。」としている。
総合メモ
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