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行政法 国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟の適否 最三小判平成14年7月9日

概要
国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、不適法である。
判例
事案:地方自治法上の普通地方公共団体であるXが、パチンコ店を建築しようとするYに対し、パチンコ店等の建築等の規制に関する条例に基づき、同工事を続行してはならない旨の裁判を求めた事案において、国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟の適否が問題となった。

判旨:「行政事件を含む民事事件において裁判所がその固有の権限に基づいて審判することのできる対象は、裁判所法3条1項にいう『法律上の争訟』、すなわち当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ、それが法令の適用により終局的に解決することができるものに限られる(最高裁昭和51年(オ)第749号同56年4月7日第三小法廷判決・民集35巻3号443頁参照)。国又は地方公共団体が提起した訴訟であって、財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合には、法律上の争訟に当たるというべきであるが、国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許されるものと解される。そして、行政代執行法は、行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、同法の定めるところによるものと規定して(1条)、同法が行政上の義務の履行に関する一般法であることを明らかにした上で、その具体的な方法としては、同法2条の規定による代執行のみを認めている。また、行政事件訴訟法その他の法律にも、一般に国又は地方公共団体が国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟を提起することを認める特別の規定は存在しない。したがって、国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、裁判所法3条1項にいう法律上の争訟に当たらず、これを認める特別の規定もないから、不適法というべきである。」
過去問・解説
(H20 司法 第30問 ウ)
Aは、国有地である河川区域内の土地について行政庁Bから河川法第24条の占用許可を受けていたが、同法第26条第1項の許可を受けることなく当該土地上に工作物を設置した。以下の記述について、それぞれ正しい場合には〇を、誤っている場合には×を選びなさい。

【参照条文】河川法
第24条 河川区域内の土地(中略)を占用しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。
第26条 河川区域内の土地において工作物を新築し、改築し、又は除却しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。(以下略)
2~5 (略)
第75条 河川管理者は、次の各号のいずれかに該当する者に対して、この法律若しくはこの法律に基づく政令若しくは都道府県の条例の規定によって与えた許可若しくは承認を取り消し、(中略)、又は工事その他の行為の中止、工作物の改築若しくは除却(中略)その他の措置をとること若しくは河川を原状に回復することを命ずることができる。
 一 この法律若しくはこの法律に基づく政令若しくは都道府県の条例の規定若しくはこれらの規定に基づく処分に違反した者、(以下略)
 二、三 (略)
2~10 (略)

【記述】
Bが、行政代執行法に基づく代執行により当該工作物を除却することができる場合であっても、国は、当該土地の所有権に基づいて工作物収去土地明渡しを求める民事訴訟を提起し、確定判決を得て民事執行により当該工作物を撤去することができる。

(正答)

(解説)
判例(最判平14.7.9)は、「国又は地方公共団体が提起した訴訟であって、財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合には、法律上の争訟に当たる…。」としている。
そして、国が当該土地の所有権に基づいて工作物収去土地明渡しを求める民事訴訟は、「財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合」に当たる。
したがって、本肢のような場合であっても、国は、当該土地の所有権に基づいて工作物収去土地明渡しを求める民事訴訟を提起し、確定判決を得て民事執行により当該工作物を撤去することができる。

(H26 共通 第27問 エ)
本件訴えは、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものではないから、法律上の争訟に当たらない。

(正答)

(解説)
判例(最判平14.7.9)は、「国又は地方公共団体が提起した訴訟であって、財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合には、法律上の争訟に当たるというべきであるが、国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許される…。」としている。

(H26 共通 第28問 エ)
Aは、海岸保全区域に当たる海岸で、海岸管理者であるB県知事の許可を受けずに、レジャー施設(以下「本件施設」という。)を設置しており、更に本件施設を拡張しようとしている。これに対し、B県知事は、海岸法(以下「法」という。)第12条により本件施設の除却を求める処分(以下「本件監督処分」という。)、及びAが本件監督処分に従わない場合の代執行(以下「本件代執行」という。)を含めて、様々な措置を執ることを検討している。Aに対し執ることが想定される措置に関する以下の記述について、それぞれ正しい場合には〇を、誤っている場合には×を選びなさい。

【参照条文】海岸法
第7条 海岸管理者以外の者が海岸保全区域(中略)内において、海岸保全施設以外の施設又は工作物(以下(中略)第12条において「他の施設等」という。)を設けて当該海岸保全区域を占用しようとするときは、(中略)海岸管理者の許可を受けなければならない。
2 (略)
第11条 海岸管理者は、(中略)第7条第1項(中略)の規定による許可を受けた者から占用料(中略)を徴収することができる。(以下略)
第12条 海岸管理者は、次の各号の一に該当する者に対して(中略)他の施設等の(中略)除却(中略)を命ずることができる。
 一 第7条第1項(中略)の規定に違反した者
 二・三 (略)
2~10 (略)
第41条 次の各号の一に該当する者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
 一 第7条第1項の規定に違反して海岸保全区域を占用した者
 二・三 (略)

【記述】
最高裁判所の判例によれば、B県が、占有保全の訴えを提起して、Aによる本件施設の拡張を予防することはできない。

(正答)

(解説)
判例(最判平14.7.9)は、「国又は地方公共団体が提起した訴訟であって、財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合には、法律上の争訟に当たるというべきであるが、国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許される…。」としている。
そして、B県が、占有保全の訴えを提起して、Aによる本件施設の拡張を予防することは、財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるものに当たる。
したがって、B県は、占有保全の訴えを提起して、Aによる本件施設の拡張を予防することができる。

(H29 予備 第17問 イ)
国が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許される。

(正答)

(解説)
判例(最判平14.7.9)は、「国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許される…。」としている。

(R5 予備 第17問 イ)
建築工事の中止命令の不履行があったときにこれを強制的に履行させるための手段が当該条例に定められていない場合であれば、地方公共団体は、条例に基づく建築工事の中止命令に従わない者に対し、当該工事の続行禁止を求める民事訴訟を提起することができる。

(正答)

(解説)
判例(最判平14.7.9)は、「国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許される…。」としている。
地方公共団体が、条例に基づく建築工事の中止命令に従わない者に対し、当該工事の続行禁止を求める民事訴訟は、「地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟」に当たる。
したがって、強制的に履行させるための手段が当該条例に定められていない場合には、当該工事の続行禁止を求める民事訴訟を提起することは許されない。
総合メモ
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