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行政法 鉄道営業法42条1項により鉄道係員が旅客公衆を車外または鉄道地外に退去させるにあたり必要最少限度の強制力を用いることの可否 最大判昭和48年4月25日

概要
鉄道営業法42条1項により鉄道係員が当該の旅客、公衆を車外または鉄道地外に退去させるにあたつて、旅客、公衆が自発的な退去に応じない場合、または危険が切迫する等やむをえない場合には、鉄道係員において当該具体的事情に応じて必要最少限度の強制力を用いることができ、このように解しても、憲法31条に違反しない。
判例
事案:国鉄労働組合の組合員である被告人3名が、年度末手当の増額支給等の要求のための争議に際し、ピケに参加し、本件てこ扱所に立入り、国鉄労組員数名と共謀し、数十回にわたり鉄道公安職員に水を浴びせかけたとして起訴された事案において、鉄道営業法42条1項により鉄道係員が旅客公衆を車外または鉄道地外に退去させるにあたり必要最少限度の強制力を用いることの可否とそれをすることが憲法31条に違反しないか問題となった。

判旨:「鉄道営業法42条1項は、旅客、公衆が停車場その他鉄道地内にみだりに立ち入ったとき等同項各号に定める所為に及んだ場合、鉄道係員は、当該旅客、公衆を車外または鉄道地外に退去させうる旨を規定している。けだし、鉄道施設は、不特定多数の旅客および公衆が利用するものであり、また、性質上特別の危険性を蔵するものであるから、車内または鉄道地内における法規ないし秩序違反の行動は、これをすみやかに排除する必要があるためにほかならない。すなわち、同条項は、鉄道事業の公共性にかんがみ、事業の安全かつ確実な運営を可能ならしめるため、とくにかかる運営につき責任を負う鉄道事業者に直接にこの排除の権限を付与したものである(同様の趣旨の根拠に基づく規定として、航空法73条の3第1項は、航空機の機長に、航空機の安全に危害を及ぼす行為をする者等に対し必要な限度で拘束その他抑止の措置をとり、またはその者等を降機させる権限を認め、また、同法86条の2第1項は、航空運送事業者に危険物件を航空機内から取り卸す権限を認めている。)。そして、鉄道営業法42条1項の規定により、鉄道係員が当該旅客、公衆を車外または鉄道地外に退去させるにあたっては、まず退去を促して自発的に退去させるのが相当であり、また、この方法をもって足りるのが通常であるが、自発的な退去に応じない場合、または危険が切迫する等やむをえない事情がある場合には、警察官の出動を要請するまでもなく、鉄道係員において当該具体的事情に応じて必要最少限度の強制力を用いうるものであり、また、このように解しても前述のような鉄道事業の公共性に基づく合理的な規定として、憲法31条に違反するものではないと解すべきである。なお、警察官職務執行法所定の警察官の職務執行は、一般社会においてひろく個人の生命、身体、財産の保護、犯罪の予防、公安の維持、法令の執行等のために、執行の場所、理由、相手方、方法等が予定されることなく、随時必要な場合になされるべき性質のものであるのに対し、鉄道営業法42条1項所定の鉄道係員による退去強制は、右のように鉄道事業の公共性に基づいて鉄道事業者にとくに認められたものであり、その権限の行使も、現に車内または鉄道地内において所定の法規に違反し、ないしは秩序を乱す者をとりあえず車外または鉄道地外に退去させるにとどまり、それ以上には出ないものであって、両者は、人身に対する強制という点では相似たところがあるにしても、明らかにその性格を異にするものである。」
過去問・解説
(R3 予備 第17問 ウ)
公務員である鉄道公安職員が、鉄道施設に立ち入り、座り込むなどした労働組合員を実力で退去させた事案に関する最高裁判所大法廷判決の多数意見は、鉄道公安職員による強制的な退去行為について、危険が切迫する等やむを得ない事情が認められる場合には、法律による明文の根拠がなくても、具体的事情に応じて必要最小限度の強制力を用いることができるとして適法性を肯定した。

(正答)

(解説)
判例(最判昭48.4.25)は、「鉄道営業法42条1項の規定により、鉄道係員が当該旅客、公衆を車外または鉄道地外に退去させるにあたっては、まず退去を促して自発的に退去させるのが相当であり、また、この方法をもって足りるのが通常であるが、自発的な退去に応じない場合、または危険が切迫する等やむをえない事情がある場合には、警察官の出動を要請するまでもなく、鉄道係員において当該具体的事情に応じて必要最少限度の強制力を用いうるものであり、また、このように解しても前述のような鉄道事業の公共性に基づく合理的な規定として、憲法31条に違反するものではない…。」として、鉄道営業法42条1項を根拠として、強制的な退去行為を適法としている。
したがって、法律による明文の根拠がない場合、具体的事情に応じて必要最小限度の強制力を用いることができるとはいえない。
総合メモ
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