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行政法 税務調査としての質問検査権行使により収集された証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定される場合における質問検査権行使の適法性 最二小判平成16年1月20日

概要
法人税法(平成13年法律第129号による改正前のもの)153条ないし155条に規定する質問又は検査の権限の行使に当たって、取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できたとしても、そのことによって直ちに、上記質問又は検査の権限が同法156条に反して犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使されたことにはならない。
判例
事案:砂利の採取や販売等を目的とする被告人2社の代表取締役である被告人が、売上の一部を除外し、架空経費を計上するなどの方法により、被告人2社の所得を秘匿し、両社について延べ5事業年度に渡って法人税をほ脱した事案において、税務調査としての質問検査権行使により収集された証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できる場合における質問検査権行使の適法性が問題となった。

判旨:「法人税法(平成13年法律第129号による改正前のもの)156条によると、同法153条ないし155条に規定する質問又は検査の権限は、犯罪の証拠資料を取得収集し、保全するためなど、犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使することは許されないと解するのが相当である。しかしながら、上記質問又は検査の権限の行使に当たって、取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できたとしても、そのことによって直ちに、上記質問又は検査の権限が犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使されたことにはならないというべきである。 原判決は、本件の事実関係の下で、上記質問又は検査の権限が、犯則事件の調査を担当する者から依頼されるか、その調査に協力する意図の下に、証拠資料を保全するために行使された可能性を排除できず、一面において、犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使されたものと評することができる旨判示している。しかしながら、原判決の認定及び記録によると、本件では、上記質問又は検査の権限の行使に当たって、取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できたにとどまり、上記質問又は検査の権限が犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使されたものとみるべき根拠はないから、その権限の行使に違法はなかったというべきである。」
過去問・解説
(H19 司法 第28問 ウ)
Aは、公衆浴場法の許可を行政庁Bから得て公衆浴場を経営している。あるとき、Bの職員CがAの公衆浴場に現れ、公衆浴場法第6条第1項に基づく立入検査を実施するとAに告げた。
公衆浴場法には、「第6条第1項の規定に基づく立入検査の権限は犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」という趣旨の規定はない。したがって、この立入検査の権限は犯罪捜査のために用いてよい。

(正答)

(解説)
判例(最判平16.1.20)は、「法人税法(平成13年法律第129号による改正前のもの)156条によると、同法153条ないし155条に規定する質問又は検査の権限は、犯罪の証拠資料を取得収集し、保全するためなど、犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使することは許されない…。」としている。
このように、行政調査の権限を犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使することは許されない。
したがって、行政調査の権限である公衆浴場法6条1項に基づく立入検査の権限を犯罪捜査のために用いることは許されない。

(H26 司法 第28問 イ)
Aは、海岸保全区域に当たる海岸で、海岸管理者であるB県知事の許可を受けずに、レジャー施設(以下「本件施設」という。)を設置しており、更に本件施設を拡張しようとしている。これに対し、B県知事は、海岸法(以下「法」という。)第12条により本件施設の除却を求める処分(以下「本件監督処分」という。)、及びAが本件監督処分に従わない場合の代執行(以下「本件代執行」という。)を含めて、様々な措置を執ることを検討している。
最高裁判所の判例によれば、本件監督処分を準備する調査を担当して本件施設に係る情報を収集したB県の職員が、Aを法第41条第1号の罪について刑事告発することは認められない。
【参照条文】海岸法
第7条 海岸管理者以外の者が海岸保全区域(中略)内において、海岸保全施設以外の施設又は工作物(以下(中略)第12条において「他の施設等」という。)を設けて当該海岸保全区域を占用しようとするときは、(中略)海岸管理者の許可を受けなければならない。
2 (略)
第11条 海岸管理者は、(中略)第7条第1項(中略)の規定による許可を受けた者から占用料(中略)を徴収することができる。(以下略)
第12条 海岸管理者は、次の各号の1に該当する者に対して(中略)他の施設等の(中略)除却(中略)を命ずることができる。
 一 第7条第1項(中略)の規定に違反した者
 二・三 (略)
2~10 (略)
第41条 次の各号の1に該当する者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
 一 第7条第1項の規定に違反して海岸保全区域を占用した者
 二・三 (略)

(正答)

(解説)
判例(最判平16.1.20)は、「質問又は検査の権限は、犯罪の証拠資料を取得収集し、保全するためなど、犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使することは許されないと解するのが相当である。しかしながら、上記質問又は検査の権限の行使に当たって、取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できたとしても、そのことによって直ちに、上記質問又は検査の権限が犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使されたことにはならない…。」としている。
したがって、質問検査権の行使により取得収集される証拠資料を後に犯則事件の証拠として利用することができないとまではいえないから、本件監督処分を準備する調査を担当して本件施設に係る情報を収集したB県の職員が、Aを法第41条第1号の罪について刑事告発することも許容されうる。

(R4 予備 第16問 イ)
国税通則法の定める税務調査は犯罪捜査のために認められたものと解してはならないから、当該調査により取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定されるときは、質問検査の権限を行使することは許されない。

(正答)

(解説)
判例(最判平16.1.20)は、法人税法(平成13年法律第129号による改正前のもの。)153条ないし155条の質問検査について、「質問又は検査の権限の行使に当たって、取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できたとしても、そのことによって直ちに、上記質問又は検査の権限が犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使されたことにはならない…。」としている。
したがって、行政調査により取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定されるにとどまる場合には、質問検査の権限が許容されうる。
総合メモ
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