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行政法 公共施設の運営者募集に応募した者に対してなされた不決定の通知の処分性 最三小判平成23年6月14日
概要
市営の老人福祉施設の民間事業者への移管に当たり、その相手方となる事業者の選考のための公募に提案書を提出して応募した者が、市長から、その者を相手方として上記移管の手続を進めることは好ましくないと判断したので提案について決定に至らなかった旨の通知を受けた場合において、上記移管は市と相手方となる事業者との間で契約を締結することにより行うことが予定されていたものであり、上記公募は法令の定めに基づくものではなく上記移管に適する事業者を契約の相手方として選考するための手法として行われたものであったという事情の下では、上記通知は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。
判例
事案:市営の老人福祉施設の移管先の公募に提案書を提出して応募した事業者が市長から受けた、提案につき決定に至らなかった旨の通知の取消訴訟において、通知が、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるかが問題となった。
判旨:「前記事実関係によれば、本件民間移管は、上告人と受託事業者との間で、上告人が受託事業者に対し本件建物等を無償で譲渡し本件土地を貸し付け、受託事業者が移管条件に従い当該施設を老人福祉施設として経営することを約する旨の契約(以下『本件契約』という。)を締結することにより行うことが予定されていたものというべきである。本件募集要綱では、上告人は受託事業者の決定後においても移管条件が遵守される見込みがないと判断するときはその決定を取り消すことができるとされており、本件契約においても、これと同様の条項が定められれば解除権が留保されるほか、本件土地の貸付けには、公益上の理由による解除権が留保されており(地方自治法238条の5第4項、238条の4第5項)、本件土地の貸付け及び本件建物等の無償譲渡には、用途指定違反を理由とする解除権が留保され得るが(同法238条の5第6項、7項)、本件契約を締結するか否かは相手方の意思に委ねられているのであるから、そのような留保によって本件契約の契約としての性格に本質的な変化が生ずるものではない。そして、本件契約は、上告人が価格の高低のみを比較することによって本件民間移管に適する相手方を選定することができる性質のものではないから、地方自治法施行令167条の2第1項2号にいう『その他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないもの』として、随意契約の方法により締結することができるものである。また、紋別市公の施設に係る指定管理者の指定手続に関する条例及び同条例施行規則は、上告人の設置する公の施設に係る地方自治法244条の2第3項所定の指定管理者の指定の手続について定めたものであって(同条例1条参照)、本件契約の締結及びその手続につき適用されるものではない。そうすると、本件募集は、法令の定めに基づいてされたものではなく、上告人が本件民間移管に適する事業者を契約の相手方として選考するための手法として行ったものである。以上によれば、紋別市長がした本件通知は、上告人が、契約の相手方となる事業者を選考するための手法として法令の定めに基づかずに行った事業者の募集に応募した者に対し、その者を相手方として当該契約を締結しないこととした事実を告知するものにすぎず、公権力の行使に当たる行為としての性質を有するものではないと解するのが相当である。したがって、本件通知は、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらないというべきである…。」
判旨:「前記事実関係によれば、本件民間移管は、上告人と受託事業者との間で、上告人が受託事業者に対し本件建物等を無償で譲渡し本件土地を貸し付け、受託事業者が移管条件に従い当該施設を老人福祉施設として経営することを約する旨の契約(以下『本件契約』という。)を締結することにより行うことが予定されていたものというべきである。本件募集要綱では、上告人は受託事業者の決定後においても移管条件が遵守される見込みがないと判断するときはその決定を取り消すことができるとされており、本件契約においても、これと同様の条項が定められれば解除権が留保されるほか、本件土地の貸付けには、公益上の理由による解除権が留保されており(地方自治法238条の5第4項、238条の4第5項)、本件土地の貸付け及び本件建物等の無償譲渡には、用途指定違反を理由とする解除権が留保され得るが(同法238条の5第6項、7項)、本件契約を締結するか否かは相手方の意思に委ねられているのであるから、そのような留保によって本件契約の契約としての性格に本質的な変化が生ずるものではない。そして、本件契約は、上告人が価格の高低のみを比較することによって本件民間移管に適する相手方を選定することができる性質のものではないから、地方自治法施行令167条の2第1項2号にいう『その他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないもの』として、随意契約の方法により締結することができるものである。また、紋別市公の施設に係る指定管理者の指定手続に関する条例及び同条例施行規則は、上告人の設置する公の施設に係る地方自治法244条の2第3項所定の指定管理者の指定の手続について定めたものであって(同条例1条参照)、本件契約の締結及びその手続につき適用されるものではない。そうすると、本件募集は、法令の定めに基づいてされたものではなく、上告人が本件民間移管に適する事業者を契約の相手方として選考するための手法として行ったものである。以上によれば、紋別市長がした本件通知は、上告人が、契約の相手方となる事業者を選考するための手法として法令の定めに基づかずに行った事業者の募集に応募した者に対し、その者を相手方として当該契約を締結しないこととした事実を告知するものにすぎず、公権力の行使に当たる行為としての性質を有するものではないと解するのが相当である。したがって、本件通知は、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらないというべきである…。」
過去問・解説
(H26 司法 第26問 ア)
市が市営の老人福祉施設を民間事業者に移管するために、施設の資産の譲渡先としてその運営を引き継ぐ事業者を公募したが、応募者に対して市長が「決定に至らなかった」旨の通知を行った場合、当該通知は、法令に基づかずに行った公募の応募者に対し、その者を相手方として契約を締結しないこととした事実を告知するものにすぎないから、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない。
市が市営の老人福祉施設を民間事業者に移管するために、施設の資産の譲渡先としてその運営を引き継ぐ事業者を公募したが、応募者に対して市長が「決定に至らなかった」旨の通知を行った場合、当該通知は、法令に基づかずに行った公募の応募者に対し、その者を相手方として契約を締結しないこととした事実を告知するものにすぎないから、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平23.6.14)は、本肢と同種の事案において、「決定に至らなかった旨の通知…は、上告人が、契約の相手方となる事業者を選考するための手法として法令の定めに基づかずに行った事業者の募集に応募した者に対し、その者を相手方として当該契約を締結しないこととした事実を告知するものにすぎず、公権力の行使に当たる行為としての性質を有するものではないと解するのが相当である。したがって、本件通知は、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない…。」としている。
判例(最判平23.6.14)は、本肢と同種の事案において、「決定に至らなかった旨の通知…は、上告人が、契約の相手方となる事業者を選考するための手法として法令の定めに基づかずに行った事業者の募集に応募した者に対し、その者を相手方として当該契約を締結しないこととした事実を告知するものにすぎず、公権力の行使に当たる行為としての性質を有するものではないと解するのが相当である。したがって、本件通知は、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない…。」としている。