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短答判例

再審による無罪判決の確定と裁判の違法性 最二小判平成2年7月20日

概要
刑事事件において、上告審で確定した有罪判決が再審で取り消され、無罪判決が確定した場合であっても、そのことから直ちに、裁判官による裁判や検察官による公訴の提起・追行が国家賠償法1条1項上違法となるものではない。
判例
事案:刑事事件で殺人罪について有罪判決を受け、上告審において有罪判決が確定した者が、その後、再審により有罪判決を取り消され、無罪判決が確定したことから、国に対して国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を請求した。
 そこで、①有罪判決をした裁判官による裁判が国家賠償法1条1項上違法となるか、②検察官による公訴の提起及び追行が同項上違法となるかが問題となった。

判旨:①「裁判官がした争訟の裁判に上訴等の訴訟法上の救済方法によって是正されるべき瑕疵が存在したとしても、これによって当然に国家賠償法1条1項の規定にいう違法な行為があったものとして国の損害賠償責任の問題が生ずるものではなく、当該裁判官が違法又は不当な目的をもって裁判をしたなど、裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情がある場合にはじめて右責任が肯定されると解するのが当裁判所の判例(最高裁昭和53年(オ)第69号同57年3月12日第二小法廷判決・民集36巻3号329頁、昭和55年(オ)第792号同57年3月18日第一小法廷判決・裁判集民事135号405頁)であるところ、この理は、刑事事件において、上告審で確定した有罪判決が再審で取り消され、無罪判決が確定した場合においても異ならないと解するのが相当である。」
 ②「刑事事件において、無罪の判決が確定したというだけで直ちに検察官の公訴の提起及び追行が国家賠償法1条1項の規定にいう違法な行為となるものではなく、公訴の提起及び追行時の検察官の心証は、その性質上、判決時における裁判官の心証と異なり、右提起及び追行時における各種の証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があれば足りるものと解するのが当裁判所の判例(最高裁昭和49年(オ)第419号同53年10月20日第二小法廷判決・民集32巻7号1367頁)であるところ、この理は、上告審で確定した有罪判決が再審で取り消され、無罪判決が確定した場合においても異ならないと解するのが相当である。」
過去問・解説
(R8 予備 第23問 ア)
刑事事件において、上告審で確定した有罪判決が再審で取り消され、無罪判決が確定した場合、検察官の公訴の提起及び追行は、そのことによって国家賠償法第1条第1項の適用上違法の評価を受ける。

(正答)✕

(解説)
判例(最判平2.7.20)は、「刑事事件において、無罪の判決が確定したというだけで直ちに検察官の公訴の提起及び追行が国家賠償法1条1項の規定にいう違法な行為となるものではなく、公訴の提起及び追行時の検察官の心証は、その性質上、判決時における裁判官の心証と異なり、右提起及び追行時における各種の証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があれば足りる」とした上で、「この理は、上告審で確定した有罪判決が再審で取り消され、無罪判決が確定した場合においても異ならない」としている。
したがって、刑事事件において、上告審で確定した有罪判決が再審で取り消され、無罪判決が確定した場合であっても、検察官の公訴の提起及び追行は、そのことによって国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない。
総合メモ