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占有権
取得時効における所有の意思の推定 最一小判昭和58年3月24日
概要
186条1項の「所有の意思」の推定は、占有者がその性質上所有の意思のないものとされる権原に基づき占有を取得した事実が証明されるか、又は占有者が占有中、真の所有者であれば通常はとらない態度を示し、若しくは所有者であれば当然とるべき行動に出なかったなど、外形的客観的にみて占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかったものと解される事情が証明されるときは、占有者の内心の意思のいかんを問わず覆され、所有の意思が否定される。
判例
事案:186条1項の「所有の意思」の推定は、どのような事情がある場合に覆されるのかが問題となった。
判旨:「民法186条1項の規定は、占有者は所有の意思で占有するものと推定しており、占有者の占有が自主占有にあたらないことを理由に取得時効の成立を争う者は右占有が所有の意思のない占有にあたることについての立証責任を負うのであるが(最高裁昭和54年(オ)第19号同年7月31日第三小法廷判決・裁判集民事127号317頁参照)、右の所有の意思は、占有者の内心の意思によつてではなく、占有取得の原因である権原又は占有に関する事情により外形的客観的に定められるべきものであるから(最高裁昭和45年(オ)第315号同年6月18日第一小法廷判決・裁判集民事99号375頁、最高裁昭和45年(オ)第265号同47年9月8日第二小法廷判決・民集26巻7号1348頁参照)、占有者がその性質上所有の意思のないものとされる権原に基づき占有を取得した事実が証明されるか、又は占有者が占有中、真の所有者であれば通常はとらない態度を示し、若しくは所有者であれば当然とるべき行動に出なかつたなど、外形的客観的にみて占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかつたものと解される事情が証明されるときは、占有者の内心の意思のいかんを問わず、その所有の意思を否定し、時効による所有権取得の主張を排斥しなければならないものである。」
判旨:「民法186条1項の規定は、占有者は所有の意思で占有するものと推定しており、占有者の占有が自主占有にあたらないことを理由に取得時効の成立を争う者は右占有が所有の意思のない占有にあたることについての立証責任を負うのであるが(最高裁昭和54年(オ)第19号同年7月31日第三小法廷判決・裁判集民事127号317頁参照)、右の所有の意思は、占有者の内心の意思によつてではなく、占有取得の原因である権原又は占有に関する事情により外形的客観的に定められるべきものであるから(最高裁昭和45年(オ)第315号同年6月18日第一小法廷判決・裁判集民事99号375頁、最高裁昭和45年(オ)第265号同47年9月8日第二小法廷判決・民集26巻7号1348頁参照)、占有者がその性質上所有の意思のないものとされる権原に基づき占有を取得した事実が証明されるか、又は占有者が占有中、真の所有者であれば通常はとらない態度を示し、若しくは所有者であれば当然とるべき行動に出なかつたなど、外形的客観的にみて占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかつたものと解される事情が証明されるときは、占有者の内心の意思のいかんを問わず、その所有の意思を否定し、時効による所有権取得の主張を排斥しなければならないものである。」
過去問・解説
(H26 共通 第5問 ウ)
外形的客観的にみて占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかったと解される事情を証明すれば、所有の意思を否定することができる。
外形的客観的にみて占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかったと解される事情を証明すれば、所有の意思を否定することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭58.3.24)は、「占有者が占有中、真の所有者であれば通常はとらない態度を示し、若しくは所有者であれば当然とるべき行動に出なかつたなど、外形的客観的にみて占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかつたものと解される事情が証明されるときは、…その所有の意思を否定」することができると判示している。
判例(最判昭58.3.24)は、「占有者が占有中、真の所有者であれば通常はとらない態度を示し、若しくは所有者であれば当然とるべき行動に出なかつたなど、外形的客観的にみて占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかつたものと解される事情が証明されるときは、…その所有の意思を否定」することができると判示している。
(R5 司法 第7問 イ)
占有取得の原因である権原又は占有に関する事情によって外形的客観的に所有の意思があるといえない場合であっても、占有者が内心において他人の所有権を排斥して占有する意思を有していたときは、所有の意思があると認められる。
占有取得の原因である権原又は占有に関する事情によって外形的客観的に所有の意思があるといえない場合であっても、占有者が内心において他人の所有権を排斥して占有する意思を有していたときは、所有の意思があると認められる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭58.3.24)は、「占有者が占有中、真の所有者であれば通常はとらない態度を示し、若しくは所有者であれば当然とるべき行動に出なかつたなど、外形的客観的にみて占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかつたものと解される事情が証明されるときは、占有者の内心の意思のいかんを問わず、その所有の意思を否定」することができると判示している。したがって、占有取得の原因である権原又は占有に関する事情によって外形的客観的に所有の意思があるといえない場合は、占有者が内心において他人の所有権を排斥して占有する意思を有していたときであっても、所有の意思があるとは認められない。
判例(最判昭58.3.24)は、「占有者が占有中、真の所有者であれば通常はとらない態度を示し、若しくは所有者であれば当然とるべき行動に出なかつたなど、外形的客観的にみて占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかつたものと解される事情が証明されるときは、占有者の内心の意思のいかんを問わず、その所有の意思を否定」することができると判示している。したがって、占有取得の原因である権原又は占有に関する事情によって外形的客観的に所有の意思があるといえない場合は、占有者が内心において他人の所有権を排斥して占有する意思を有していたときであっても、所有の意思があるとは認められない。
総合メモ
解除条件の成就と占有 最一小判昭和60年3月28日
概要
売買契約に基づいて開始された占有は、当該売買契約が解除条件の成就により失効しても、それだけでは、自主占有でなくなるというものではない。
判例
事案:売買契約が、解除条件の成就により当然に解除されたものとして失効した場合において、この事実をもって、当該売買契約の買主の目的物に対する占有が、自主占有でなくなるかが問題となった。
判旨:「売買契約に基づいて開始される占有は、当該売買契約に、残代金を約定期限までに支払わないときは契約は当然に解除されたものとする旨の解除条件が附されている場合であつても、民法162条にいう所有の意思をもつてする占有であるというを妨げず、かつ、現に右の解除条件が成就して当該売買契約が失効しても、それだけでは、右の占有が同条にいう所有の意思をもつてする占有でなくなるというものではないと解するのが相当である。」
判旨:「売買契約に基づいて開始される占有は、当該売買契約に、残代金を約定期限までに支払わないときは契約は当然に解除されたものとする旨の解除条件が附されている場合であつても、民法162条にいう所有の意思をもつてする占有であるというを妨げず、かつ、現に右の解除条件が成就して当該売買契約が失効しても、それだけでは、右の占有が同条にいう所有の意思をもつてする占有でなくなるというものではないと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H30 共通 第8問 ウ)
Aは、Bが所有する甲土地を解除条件付でBから買い受ける旨の売買契約を締結し、当該売買契約に基づいてBから甲土地の引渡しを受けた。その後、解除条件が成就した場合、Aの甲土地に対する占有は自主占有でなくなる。
Aは、Bが所有する甲土地を解除条件付でBから買い受ける旨の売買契約を締結し、当該売買契約に基づいてBから甲土地の引渡しを受けた。その後、解除条件が成就した場合、Aの甲土地に対する占有は自主占有でなくなる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭60.3.28)は、「売買契約に基づいて開始される占有は、当該売買契約に、残代金を約定期限までに支払わないときは契約は当然に解除されたものとする旨の解除条件が附されている場合であつても、民法162条にいう所有の意思をもつてする占有であるというを妨げず、かつ、現に右の解除条件が成就して当該売買契約が失効しても、それだけでは、右の占有が同条にいう所有の意思をもつてする占有でなくなるというものではないと解するのが相当である。」と判示している。したがって、AB間における甲土地の売買契約について解除条件が成就した場合でも、それだけでは、Aの甲土地に対する占有は自主占有でなくなるとは言えない。
判例(最判昭60.3.28)は、「売買契約に基づいて開始される占有は、当該売買契約に、残代金を約定期限までに支払わないときは契約は当然に解除されたものとする旨の解除条件が附されている場合であつても、民法162条にいう所有の意思をもつてする占有であるというを妨げず、かつ、現に右の解除条件が成就して当該売買契約が失効しても、それだけでは、右の占有が同条にいう所有の意思をもつてする占有でなくなるというものではないと解するのが相当である。」と判示している。したがって、AB間における甲土地の売買契約について解除条件が成就した場合でも、それだけでは、Aの甲土地に対する占有は自主占有でなくなるとは言えない。
総合メモ
建物退去土地明渡しの相手方 最三小判昭和34年4月15日
過去問・解説
(H21 司法 第7問 4)
Aが所有する土地上にその土地を利用する権原なくBが建物を所有し、Cがその建物をBC間の賃貸借契約に基づいて占有する場合、Aは所有権に基づく物権的請求権として、Bに対して建物収去土地明渡しを求めることができ、Cに対して建物退去土地明渡しを求めることができる。
Aが所有する土地上にその土地を利用する権原なくBが建物を所有し、Cがその建物をBC間の賃貸借契約に基づいて占有する場合、Aは所有権に基づく物権的請求権として、Bに対して建物収去土地明渡しを求めることができ、Cに対して建物退去土地明渡しを求めることができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭35.6.17)は、建物収去土地明渡請求の事案において、「土地の所有権にもとづく物上請求権の訴訟においては、現実に家屋を所有することによつて現実にその土地を占拠して土地の所有権を侵害しているものを被告としなければならないのである。」と判示している。本肢においては、Aが所有する土地上にその土地を利用する権原なくBが建物を所有しているから、Aは所有権に基づく物権的請求権として、Bに対して建物収去土地明渡しを求めることができる。したがって、本肢前段は正しい。
また、判例(最判昭34.4.15)は、建物退去土地明渡請求の事案において、「建物は、その敷地を離れて存在し得ないのであるから、建物を占有使用する者は、おのづからこれを通じてその敷地をも占有するものと解すべきである。」と判示している。本肢においては、Cは、上記のBが所有する建物をBC間の賃貸借契約に基づいて占有しているため、この占有を通じて、Aが所有する土地をも占有しているといえる。したがって、Aは所有権に基づく物権的請求権として、Cに対して建物退去土地明渡しを求めることができる。よって、本肢後段も正しい。
判例(最判昭35.6.17)は、建物収去土地明渡請求の事案において、「土地の所有権にもとづく物上請求権の訴訟においては、現実に家屋を所有することによつて現実にその土地を占拠して土地の所有権を侵害しているものを被告としなければならないのである。」と判示している。本肢においては、Aが所有する土地上にその土地を利用する権原なくBが建物を所有しているから、Aは所有権に基づく物権的請求権として、Bに対して建物収去土地明渡しを求めることができる。したがって、本肢前段は正しい。
また、判例(最判昭34.4.15)は、建物退去土地明渡請求の事案において、「建物は、その敷地を離れて存在し得ないのであるから、建物を占有使用する者は、おのづからこれを通じてその敷地をも占有するものと解すべきである。」と判示している。本肢においては、Cは、上記のBが所有する建物をBC間の賃貸借契約に基づいて占有しているため、この占有を通じて、Aが所有する土地をも占有しているといえる。したがって、Aは所有権に基づく物権的請求権として、Cに対して建物退去土地明渡しを求めることができる。よって、本肢後段も正しい。
総合メモ
占有の要件 最三小判昭和27年2月19日
概要
家屋の所有者が、当該家屋に錠をかけてその鍵を所持する、あるいは標札や貼紙などで当該所有者が現に占有していることを第三者にもわかるようにするなどの方法を講じていなかったからといって、必ずしも当該所有者に家屋の所持がないとはいえない。家屋の所有者が、その家屋の隣家に居住し、常に出入口を監視して容易に他人の侵入を制止できる状況にあるときは、所有者はその家屋を所持するものといえる。
判例
事案:家屋の所有者が、当該家屋に錠をかけてその鍵を所持する、あるいは標札や貼紙などで当該所有者が現に占有していることを第三者にもわかるようにするなどの方法を講じていなかった場合において、当該所有者が当該家屋の隣家に居住しており、当該家屋の裏口を常に監視して容易に侵入を制止し得る状況であったという事情があるときには、当該所有者に当該家屋の所持が認められるかが問題となった。
判旨:「論旨は、Aは右家屋に錠をかけてその鍵を所持するとか標札や貼紙などでBが現に占有することが第三者にもわかるようにしておくとか、いうような方法を講じなかつた、と指摘する。しかし、さような手段を執らなかつたからとて、必ずしも所持なしとは言えない。」
「論旨は、原判決が認定したところによると、右家屋の裏口には外部からの侵入を防ぐに足る何らの措置も講じてなかつたというのだから、たといA方が隣家であつても、所持があつたとは言い得ない、と主張する。しかしA方が隣家であるため、問題の家屋の裏口を常に監視して容易に侵入を制止し得る状況であり、現にBらの侵入に際しAの妻女が制止した事実を原判決が認めたような次第であつて、Aに本件家屋の所持があつたと言い得る。」
判旨:「論旨は、Aは右家屋に錠をかけてその鍵を所持するとか標札や貼紙などでBが現に占有することが第三者にもわかるようにしておくとか、いうような方法を講じなかつた、と指摘する。しかし、さような手段を執らなかつたからとて、必ずしも所持なしとは言えない。」
「論旨は、原判決が認定したところによると、右家屋の裏口には外部からの侵入を防ぐに足る何らの措置も講じてなかつたというのだから、たといA方が隣家であつても、所持があつたとは言い得ない、と主張する。しかしA方が隣家であるため、問題の家屋の裏口を常に監視して容易に侵入を制止し得る状況であり、現にBらの侵入に際しAの妻女が制止した事実を原判決が認めたような次第であつて、Aに本件家屋の所持があつたと言い得る。」
過去問・解説
(H21 司法 第8問 イ)
家屋の所有者が、その家屋の隣家に居住し、常に出入口を監視して容易に他人の侵入を制止できる状況にあるとしても、その所有者がその家屋に錠をかけて鍵を所持し、又は標札や貼紙によって占有中であることを示さなければ、家屋を占有するものとはいえない。
家屋の所有者が、その家屋の隣家に居住し、常に出入口を監視して容易に他人の侵入を制止できる状況にあるとしても、その所有者がその家屋に錠をかけて鍵を所持し、又は標札や貼紙によって占有中であることを示さなければ、家屋を占有するものとはいえない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭27.2.19)は、家屋の所有者が、当該家屋に錠をかけてその鍵を所持する、あるいは標札や貼紙などで当該所有者が現に占有していることを第三者にもわかるようにするなどの方法を講じていなかったからといって、必ずしも当該所有者に家屋の所持がないとはいえない旨判示したうえで、家屋の所有者が、その家屋の隣家に居住し、常に出入口を監視して容易に他人の侵入を制止できる状況にあるときは、所有者はその家屋を所持するものといえる旨判示している。したがって、家屋の所有者が、その家屋の隣家に居住し、常に出入口を監視して容易に他人の侵入を制止できる状況にある場合には、その所有者がその家屋に錠をかけて鍵を所持し、又は標札や貼紙によって占有中であることを示していないとしても、なお家屋を占有するものといえる。
判例(最判昭27.2.19)は、家屋の所有者が、当該家屋に錠をかけてその鍵を所持する、あるいは標札や貼紙などで当該所有者が現に占有していることを第三者にもわかるようにするなどの方法を講じていなかったからといって、必ずしも当該所有者に家屋の所持がないとはいえない旨判示したうえで、家屋の所有者が、その家屋の隣家に居住し、常に出入口を監視して容易に他人の侵入を制止できる状況にあるときは、所有者はその家屋を所持するものといえる旨判示している。したがって、家屋の所有者が、その家屋の隣家に居住し、常に出入口を監視して容易に他人の侵入を制止できる状況にある場合には、その所有者がその家屋に錠をかけて鍵を所持し、又は標札や貼紙によって占有中であることを示していないとしても、なお家屋を占有するものといえる。
総合メモ
金銭の所有権者と占有者 最二小判昭和39年1月24日
概要
金銭の所有権者は、特段の事情のないかぎり、その占有者と一致する。
判例
事案:金銭の所有権者と占有者は常に一致するのかが問題となった。
判旨:「金銭は、特別の場合を除いては、物としての個性を有せず、単なる価値そのものと考えるべきであり、価値は金銭の所在に随伴するものであるから、金銭の所有権者は、特段の事情のないかぎり、その占有者と一致すると解すべきであり、また金銭を現実に支配して占有する者は、それをいかなる理由によつて取得したか、またその占有を正当づける権利を有するか否かに拘わりなく、価値の帰属者即ち金銭の所有者とみるべきものである(昭和29年11月5日最高裁判所第2小法廷判決、刑集8巻11号1675頁参照)。」
判旨:「金銭は、特別の場合を除いては、物としての個性を有せず、単なる価値そのものと考えるべきであり、価値は金銭の所在に随伴するものであるから、金銭の所有権者は、特段の事情のないかぎり、その占有者と一致すると解すべきであり、また金銭を現実に支配して占有する者は、それをいかなる理由によつて取得したか、またその占有を正当づける権利を有するか否かに拘わりなく、価値の帰属者即ち金銭の所有者とみるべきものである(昭和29年11月5日最高裁判所第2小法廷判決、刑集8巻11号1675頁参照)。」
総合メモ
相続と所有の意思を持った占有の開始 最三小判昭和46年11月30日
概要
相続人が、被相続人の死亡により、相続財産の占有を承継したばかりでなく、新たに相続財産を事実上支配することによって占有を開始し、その占有に所有の意思があるとみられる場合においては、被相続人の占有が所有の意思のないものであったときでも、相続人は185条にいう「新権原」により所有の意思をもって占有を始めたものというべきである。
判例
事案:被相続人が所有の意思なく不動産を占有していた場合において、相続人が被相続人の占有を承継し、占有を開始した時は、当該占有に185条が適用され、自主占有となることがあるかが問題となった。
判旨:「Aらは、Bの死亡により、本件土地建物に対する同人の占有を相続により承継したばかりでなく、新たに本件土地建物を事実上支配することによりこれに対する占有を開始したものというべく、したがつて、かりにAらに所有の意思があるとみられる場合においては、Aらは、Bの死亡後民法185条にいう「新権原ニ因リ」本件土地建物の自主占有をするに至つたものと解するのを相当とする。」
判旨:「Aらは、Bの死亡により、本件土地建物に対する同人の占有を相続により承継したばかりでなく、新たに本件土地建物を事実上支配することによりこれに対する占有を開始したものというべく、したがつて、かりにAらに所有の意思があるとみられる場合においては、Aらは、Bの死亡後民法185条にいう「新権原ニ因リ」本件土地建物の自主占有をするに至つたものと解するのを相当とする。」
過去問・解説
(H20 司法 第7問 エ)
相続人が、被相続人の死亡により、相続財産の占有を承継したばかりでなく、新たに相続財産を事実上支配することによって占有を開始して、その占有に所有の意思があるとみられる場合においては、被相続人の占有が所有の意思のないものであったときでも、相続人は新権原により所有の意思をもって占有を始めたものといえる。
相続人が、被相続人の死亡により、相続財産の占有を承継したばかりでなく、新たに相続財産を事実上支配することによって占有を開始して、その占有に所有の意思があるとみられる場合においては、被相続人の占有が所有の意思のないものであったときでも、相続人は新権原により所有の意思をもって占有を始めたものといえる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭46.11.30)は、相続人が、被相続人の死亡により、相続財産の占有を承継したばかりでなく、新たに相続財産を事実上支配することによって占有を開始し、その占有に所有の意思があるとみられる場合においては、被相続人の占有が所有の意思のないものであったときでも、相続人は185条にいう「新権原」により所有の意思をもって占有を始めたものというべきである旨判示している。
判例(最判昭46.11.30)は、相続人が、被相続人の死亡により、相続財産の占有を承継したばかりでなく、新たに相続財産を事実上支配することによって占有を開始し、その占有に所有の意思があるとみられる場合においては、被相続人の占有が所有の意思のないものであったときでも、相続人は185条にいう「新権原」により所有の意思をもって占有を始めたものというべきである旨判示している。
総合メモ
賃借人と所有の意思 最一小判昭和45年6月18日
過去問・解説
(R3 司法 第8問 ウ)
AがB所有の動産甲を無断でCに賃貸した後、Cの責めに帰すべき事由によって甲が損傷した場合、Bから甲の返還を求められたCは、甲の所有者がAであると過失なく信じていたとしても、その損害の全部の賠償をしなければならない。
AがB所有の動産甲を無断でCに賃貸した後、Cの責めに帰すべき事由によって甲が損傷した場合、Bから甲の返還を求められたCは、甲の所有者がAであると過失なく信じていたとしても、その損害の全部の賠償をしなければならない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭45.6.18)は、「占有における所有の意思の有無は、占有取得の原因たる事実によつて外形的客観的に定められるべきものであるから、賃貸借が法律上効力を生じない場合にあつても、賃貸借により取得した占有は他主占有というべきであ…る。」と判示している。したがって、Cは、Aから賃貸借により甲を取得しているため、当該賃貸借が、AがB所有の動産甲を無断でCに賃貸したものであって法律上効力を生じない場合であったとしても、Cの動産甲に対する占有は他主占有であるといえる。
ここで、191条は、「占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときは、その回復者に対し、悪意の占有者はその損害の全部の賠償をする義務を負い、善意の占有者はその滅失又は損傷によって現に利益を受けている限度において賠償をする義務を負う。ただし、所有の意思のない占有者は、善意であるときであっても、全部の賠償をしなければならない。」と規定している。上記の通り、Cの動産甲に対する占有は他主占有であるため、Cは「所有の意思のない占有者」であるといえ、同条ただし書が適用される。
したがって、Cの責めに帰すべき事由によって甲が損傷した場合、甲の所有者がAであると過失なく信じていたとしても、その損害の全部の賠償をしなければならない。
判例(最判昭45.6.18)は、「占有における所有の意思の有無は、占有取得の原因たる事実によつて外形的客観的に定められるべきものであるから、賃貸借が法律上効力を生じない場合にあつても、賃貸借により取得した占有は他主占有というべきであ…る。」と判示している。したがって、Cは、Aから賃貸借により甲を取得しているため、当該賃貸借が、AがB所有の動産甲を無断でCに賃貸したものであって法律上効力を生じない場合であったとしても、Cの動産甲に対する占有は他主占有であるといえる。
ここで、191条は、「占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときは、その回復者に対し、悪意の占有者はその損害の全部の賠償をする義務を負い、善意の占有者はその滅失又は損傷によって現に利益を受けている限度において賠償をする義務を負う。ただし、所有の意思のない占有者は、善意であるときであっても、全部の賠償をしなければならない。」と規定している。上記の通り、Cの動産甲に対する占有は他主占有であるため、Cは「所有の意思のない占有者」であるといえ、同条ただし書が適用される。
したがって、Cの責めに帰すべき事由によって甲が損傷した場合、甲の所有者がAであると過失なく信じていたとしても、その損害の全部の賠償をしなければならない。
総合メモ
相続と取得時効 最三小判平成8年11月12日
概要
他主占有者の相続人が独自の占有に基づく取得時効の成立を主張する場合には、占有者である当該相続人において、その事実的支配が外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものと解される事情を証明すべきである。
判例
事案:他主占有者の相続人が独自の占有に基づく取得時効の成立を主張する場合において、当該占有が所有の意思に基づくものであるということにつき、占有者である当該相続人自身が立証責任を負うのかが問題となった。
判旨:「他主占有者の相続人が独自の占有に基づく取得時効の成立を主張する場合において、右占有が所有の意思に基づくものであるといい得るためには、取得時効の成立を争う相手方ではなく、占有者である当該相続人において、その事実的支配が外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものと解される事情を自ら証明すべきものと解するのが相当である。けだし、右の場合には、相続人が新たな事実的支配を開始したことによって、従来の占有の性質が変更されたものであるから、右変更の事実は取得時効の成立を主張する者において立証を要するものと解すべきであり、また、この場合には、相続人の所有の意思の有無を相続という占有取得原因事実によって決することはできないからである。」
判旨:「他主占有者の相続人が独自の占有に基づく取得時効の成立を主張する場合において、右占有が所有の意思に基づくものであるといい得るためには、取得時効の成立を争う相手方ではなく、占有者である当該相続人において、その事実的支配が外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものと解される事情を自ら証明すべきものと解するのが相当である。けだし、右の場合には、相続人が新たな事実的支配を開始したことによって、従来の占有の性質が変更されたものであるから、右変更の事実は取得時効の成立を主張する者において立証を要するものと解すべきであり、また、この場合には、相続人の所有の意思の有無を相続という占有取得原因事実によって決することはできないからである。」
過去問・解説
(H22 司法 第7問 イ)
他主占有の相続人が独自の占有に基づく取得時効の成立を主張する場合、その占有が所有の意思に基づくものでないことについて、取得時効の成立を争う者が主張立証しなければならない。
他主占有の相続人が独自の占有に基づく取得時効の成立を主張する場合、その占有が所有の意思に基づくものでないことについて、取得時効の成立を争う者が主張立証しなければならない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平8.11.12)は、「他主占有者の相続人が独自の占有に基づく取得時効の成立を主張する場合において、右占有が所有の意思に基づくものであるといい得るためには、取得時効の成立を争う相手方ではなく、占有者である当該相続人において、その事実的支配が外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものと解される事情を自ら証明すべきものと解するのが相当である。」と判示している。
判例(最判平8.11.12)は、「他主占有者の相続人が独自の占有に基づく取得時効の成立を主張する場合において、右占有が所有の意思に基づくものであるといい得るためには、取得時効の成立を争う相手方ではなく、占有者である当該相続人において、その事実的支配が外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものと解される事情を自ら証明すべきものと解するのが相当である。」と判示している。
総合メモ
他主占有と占有権限の立証責任の所在 最三小判昭和35年3月1日
概要
他人の所有物を占有する権原があるとの主張をする場合には、当該占有権原の存在につき、その主張をする者に立証責任があると解すべきであり、占有者の権利推定を定めた188条を援用して自己の占有権原を所有者に対抗することはできない。
判例
事案:他人の土地上に存する建物を賃借して当該土地を占有する者が、当該土地所有者に対して土地を占有する権原があることを主張する場合において、当該占有権原の存在につき、占有者が立証責任を負うのかが問題となった。
判旨:「Aが本件土地を所有しかつその登記を経由していること、右土地上にBの所有する建物が存在し、Cがこれに居住してその敷地を占有していることは、いずれも原判決の確定するところであり、Cは、BがAから本件土地を使用貸借により借り受けてその地上に前記建物を建築し、Cがこれを賃借したと主張し、Aはこれを争つているのである。この場合、Cの前記正権原の主張については、Cに立証責任の存することは明らかであり、Cは占有者の権利推定を定めた民法188条の規定を援用して自己の正権原をAに対抗することはできないと解するのが相当である。」
判旨:「Aが本件土地を所有しかつその登記を経由していること、右土地上にBの所有する建物が存在し、Cがこれに居住してその敷地を占有していることは、いずれも原判決の確定するところであり、Cは、BがAから本件土地を使用貸借により借り受けてその地上に前記建物を建築し、Cがこれを賃借したと主張し、Aはこれを争つているのである。この場合、Cの前記正権原の主張については、Cに立証責任の存することは明らかであり、Cは占有者の権利推定を定めた民法188条の規定を援用して自己の正権原をAに対抗することはできないと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H18 司法 第10問 1)
所有者が占有者に対して占有物の返還を求める場合、原告は、被告の占有が権原に基づかないことを立証する必要はなく、被告が自己に正当な占有権原のあることを立証しなければならない。
所有者が占有者に対して占有物の返還を求める場合、原告は、被告の占有が権原に基づかないことを立証する必要はなく、被告が自己に正当な占有権原のあることを立証しなければならない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭35.3.1)は、他人の所有物を占有する正権原があるとの主張がされた場合には、当該占有権原の存在につき、その主張をする者に立証責任があると解すべきであり、占有者の権利推定を定めた188条を援用して自己の占有権原を所有者に対抗することはできない旨判示している。したがって、原告は、被告の占有が権原に基づかないことを立証する必要はなく、被告が自己に正当な占有権原のあることを立証しなければならない。
判例(最判昭35.3.1)は、他人の所有物を占有する正権原があるとの主張がされた場合には、当該占有権原の存在につき、その主張をする者に立証責任があると解すべきであり、占有者の権利推定を定めた188条を援用して自己の占有権原を所有者に対抗することはできない旨判示している。したがって、原告は、被告の占有が権原に基づかないことを立証する必要はなく、被告が自己に正当な占有権原のあることを立証しなければならない。
(H21 司法 第8問 ウ)
占有者が占有物について行使する権利は適法に有するものと推定されるが、土地の所有者から占有者に対する土地明渡請求訴訟において、占有者が当該土地に賃借権を有すると主張しても、占有者が賃借権を有し、その賃借権に基づき土地を占有する事実は推定されず、占有者は、賃借権を取得し、その賃借権に基づき土地を占有する事実を立証する必要がある。
占有者が占有物について行使する権利は適法に有するものと推定されるが、土地の所有者から占有者に対する土地明渡請求訴訟において、占有者が当該土地に賃借権を有すると主張しても、占有者が賃借権を有し、その賃借権に基づき土地を占有する事実は推定されず、占有者は、賃借権を取得し、その賃借権に基づき土地を占有する事実を立証する必要がある。
(正答)〇
(解説)
188条は、「占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する」と規定している。したがって、本肢前段は正しい。
これに対して、判例(最判昭35.3.1)は、他人の所有物を占有する正権原があるとの主張がされた場合には、当該占有権原の存在につき、その主張をする者に立証責任があると解すべきであり、占有者の権利推定を定めた188条を援用して自己の占有権原を所有者に対抗することはできない旨判示している。したがって、土地の所有者から占有者に対する土地明渡請求訴訟において、占有者が当該土地に賃借権を有すると主張しても、占有者が賃借権を有し、その賃借権に基づき土地を占有する事実は188条により推定されず、占有者は、賃借権を取得し、その賃借権に基づき土地を占有する事実を立証する必要がある。よって、本肢後段も正しい。
188条は、「占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する」と規定している。したがって、本肢前段は正しい。
これに対して、判例(最判昭35.3.1)は、他人の所有物を占有する正権原があるとの主張がされた場合には、当該占有権原の存在につき、その主張をする者に立証責任があると解すべきであり、占有者の権利推定を定めた188条を援用して自己の占有権原を所有者に対抗することはできない旨判示している。したがって、土地の所有者から占有者に対する土地明渡請求訴訟において、占有者が当該土地に賃借権を有すると主張しても、占有者が賃借権を有し、その賃借権に基づき土地を占有する事実は188条により推定されず、占有者は、賃借権を取得し、その賃借権に基づき土地を占有する事実を立証する必要がある。よって、本肢後段も正しい。
(H22 司法 第7問 エ)
他人の所有地上の建物に居住している者がその敷地を占有する権原については、その者がその権原の主張立証責任を負う。
他人の所有地上の建物に居住している者がその敷地を占有する権原については、その者がその権原の主張立証責任を負う。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭35.3.1)は、本肢と同種の事案において、他人の所有物を占有する権原があるとの主張をする場合には、当該占有権原の存在につき、その主張をする者に立証責任があると解すべきであり、占有者の権利推定を定めた188条を援用して自己の占有権原を所有者に対抗することはできない旨判示している。
判例(最判昭35.3.1)は、本肢と同種の事案において、他人の所有物を占有する権原があるとの主張をする場合には、当該占有権原の存在につき、その主張をする者に立証責任があると解すべきであり、占有者の権利推定を定めた188条を援用して自己の占有権原を所有者に対抗することはできない旨判示している。
総合メモ
相続人は187条1項の承継人に含まれるか 最二小判昭和37年5月18日
概要
187条1項は、相続のような包括承継にも適用があるため、相続人は必ずしも被相続人の占有についての善意悪意の地位をそのまま承継するものではなく、その選択に従って自己の占有のみを主張し、又は被相続人の占有に自己の占有を併せて主張することができる。
判例
事案:相続のような包括承継についても、187条1項の適用があるかが問題となった。
判旨:「民法187条1項は「占有者ノ承継人ハ其選択ニ従ヒ自己ノ占有ノミヲ主張シ又ハ自己ノ占有ニ前主ノ占有ヲ併セテ之ヲ主張スルコトヲ得」と規定し、右は相続の如き包括承継の場合にも適用せられ、相続人は必ずしも被相続人の占有についての善意悪意の地位をそのまま承継するものではなく、その選択に従い自己の占有のみを主張し又は被相続人の占有に自己の占有を併せて主張することができるものと解するを相当とする。」
判旨:「民法187条1項は「占有者ノ承継人ハ其選択ニ従ヒ自己ノ占有ノミヲ主張シ又ハ自己ノ占有ニ前主ノ占有ヲ併セテ之ヲ主張スルコトヲ得」と規定し、右は相続の如き包括承継の場合にも適用せられ、相続人は必ずしも被相続人の占有についての善意悪意の地位をそのまま承継するものではなく、その選択に従い自己の占有のみを主張し又は被相続人の占有に自己の占有を併せて主張することができるものと解するを相当とする。」
過去問・解説
(H20 司法 第34問 5)
相続人は、被相続人の占有についての善意・悪意の地位を当然に承継する。
相続人は、被相続人の占有についての善意・悪意の地位を当然に承継する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭37.5.18)は、「民法187条1項は…相続の如き包括承継の場合にも適用せられ、相続人は必ずしも被相続人の占有についての善意悪意の地位をそのまま承継するものではな」いと判示している。
判例(最判昭37.5.18)は、「民法187条1項は…相続の如き包括承継の場合にも適用せられ、相続人は必ずしも被相続人の占有についての善意悪意の地位をそのまま承継するものではな」いと判示している。
(R2 司法 第36問 ウ)
占有者の包括承継人は、取得時効に関して、自己の占有のみを主張することもできる。
占有者の包括承継人は、取得時効に関して、自己の占有のみを主張することもできる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭37.5.18)は、「民法187条1項は…相続の如き包括承継の場合にも適用せられ、…その選択に従い自己の占有のみを主張し又は被相続人の占有に自己の占有を併せて主張することができるものと解するを相当とする。」と判示している。したがって、占有者の包括承継人は、取得時効に関して、自己の占有のみを主張することもできる。
判例(最判昭37.5.18)は、「民法187条1項は…相続の如き包括承継の場合にも適用せられ、…その選択に従い自己の占有のみを主張し又は被相続人の占有に自己の占有を併せて主張することができるものと解するを相当とする。」と判示している。したがって、占有者の包括承継人は、取得時効に関して、自己の占有のみを主張することもできる。
(R5 司法 第7問 ア)
相続人は、所有権の時効取得を主張するに際し、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は被相続人の占有に自己の占有を併せて主張することができる。
相続人は、所有権の時効取得を主張するに際し、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は被相続人の占有に自己の占有を併せて主張することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭37.5.18)は、「民法187条1項は…相続の如き包括承継の場合にも適用せられ、…その選択に従い自己の占有のみを主張し又は被相続人の占有に自己の占有を併せて主張することができるものと解するを相当とする。」と判示している。したがって、相続人は、所有権の時効取得を主張するに際し、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は被相続人の占有に自己の占有を併せて主張することができる。
判例(最判昭37.5.18)は、「民法187条1項は…相続の如き包括承継の場合にも適用せられ、…その選択に従い自己の占有のみを主張し又は被相続人の占有に自己の占有を併せて主張することができるものと解するを相当とする。」と判示している。したがって、相続人は、所有権の時効取得を主張するに際し、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は被相続人の占有に自己の占有を併せて主張することができる。
総合メモ
権利能力なき社団の法人化と取得時効の起算点 最二小判平成元年12月22日
概要
187条1項は、権利能力なき社団等の占有する不動産を法人格を取得した以後当該法人が引き継いで占有している場合にも適用されるから、当該不動産の取得時効について、その法人格取得の日を起算点と選択することができる。
判例
事案:権利能力なき社団等が不動産を占有している場合において、当該社団等が法人格を取得したときについても、187条1項が適用されるかが問題となった。
判旨:「民法187条1項は、いわゆる権利能力なき社団等の占有する不動産を法人格を取得した以後当該法人が引き継いで占有している場合にも適用されるものと解すべきであるから、当該不動産の時効取得について、その法人格取得の日を起算点と選択することができる。」
判旨:「民法187条1項は、いわゆる権利能力なき社団等の占有する不動産を法人格を取得した以後当該法人が引き継いで占有している場合にも適用されるものと解すべきであるから、当該不動産の時効取得について、その法人格取得の日を起算点と選択することができる。」
過去問・解説
(H22 司法 第7問 ウ)
権利能力なき社団の占有する不動産を、法人格を取得した以降、当該法人が引き継いで占有している場合には、当該不動産の時効取得について、その法人格取得の日を起算点として主張することはできない。
権利能力なき社団の占有する不動産を、法人格を取得した以降、当該法人が引き継いで占有している場合には、当該不動産の時効取得について、その法人格取得の日を起算点として主張することはできない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平元.12.22)は、「民法187条1項は、いわゆる権利能力なき社団等の占有する不動産を法人格を取得した以後当該法人が引き継いで占有している場合にも適用されるものと解すべきであるから、当該不動産の時効取得について、その法人格取得の日を起算点と選択することができる。」と判示している。
判例(最判平元.12.22)は、「民法187条1項は、いわゆる権利能力なき社団等の占有する不動産を法人格を取得した以後当該法人が引き継いで占有している場合にも適用されるものと解すべきであるから、当該不動産の時効取得について、その法人格取得の日を起算点と選択することができる。」と判示している。
(H30 共通 第8問 エ)
甲土地を占有していた権利能力なき社団が一般社団法人になった場合、その一般社団法人は、甲土地の取得時効を主張するに際して、権利能力なき社団として占有した期間を併せて主張することができる。
甲土地を占有していた権利能力なき社団が一般社団法人になった場合、その一般社団法人は、甲土地の取得時効を主張するに際して、権利能力なき社団として占有した期間を併せて主張することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平元.12.22)は、「民法187条1項は、いわゆる権利能力なき社団等の占有する不動産を法人格を取得した以後当該法人が引き継いで占有している場合にも適用される」と判示している。したがって、甲土地を占有していた権利能力なき社団が一般社団法人になった場合についても、187条1項が適用される。
そして、同項は「占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。」と定めている。よって、当該一般社団法人は、甲土地の取得時効を主張するに際して、権利能力なき社団として占有した期間を併せて主張することができる。
判例(最判平元.12.22)は、「民法187条1項は、いわゆる権利能力なき社団等の占有する不動産を法人格を取得した以後当該法人が引き継いで占有している場合にも適用される」と判示している。したがって、甲土地を占有していた権利能力なき社団が一般社団法人になった場合についても、187条1項が適用される。
そして、同項は「占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。」と定めている。よって、当該一般社団法人は、甲土地の取得時効を主張するに際して、権利能力なき社団として占有した期間を併せて主張することができる。
総合メモ
192条の善意無過失の意義 最三小判昭和26年11月27日
過去問・解説
(H28 司法 第9問 イ)
Aがその占有する時計をBに売却した場合において、Bが、当該時計の引渡しの当時、当該時計の所有者がAであることに疑いを持っていたときは、Bは即時取得により当該時計の所有権を取得することができない。
Aがその占有する時計をBに売却した場合において、Bが、当該時計の引渡しの当時、当該時計の所有者がAであることに疑いを持っていたときは、Bは即時取得により当該時計の所有権を取得することができない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭26.11.27)は、即時取得の成否が問題となった事案において、「民法192条にいわゆる「善意ニシテ且過失ナキトキ」とは、動産の占有を始めた者において、取引の相手方がその動産につき無権利者でないと誤信し、且つかく信ずるにつき過失のなかつたことを意味する…。」と判示している。この判例の理解に基づけば、取引の相手方が権利者であることに疑いを持っていた場合は、当該相手方が無権利者でないと誤信していたとは言えないため、「善意」(192条)ではないといえる。
Bは、Aからその占有する時計を買い受けた場合において、当該時計の引渡しの当時、当該時計の所有者がAであることに疑いを持っていたことから、「善意」とはいえない。したがって、即時取得の要件を満たさず、Bは即時取得により当該時計の所有権を取得することができない。
判例(最判昭26.11.27)は、即時取得の成否が問題となった事案において、「民法192条にいわゆる「善意ニシテ且過失ナキトキ」とは、動産の占有を始めた者において、取引の相手方がその動産につき無権利者でないと誤信し、且つかく信ずるにつき過失のなかつたことを意味する…。」と判示している。この判例の理解に基づけば、取引の相手方が権利者であることに疑いを持っていた場合は、当該相手方が無権利者でないと誤信していたとは言えないため、「善意」(192条)ではないといえる。
Bは、Aからその占有する時計を買い受けた場合において、当該時計の引渡しの当時、当該時計の所有者がAであることに疑いを持っていたことから、「善意」とはいえない。したがって、即時取得の要件を満たさず、Bは即時取得により当該時計の所有権を取得することができない。
総合メモ
即時取得と占有改定 最一小判昭和35年2月11日
概要
占有取得の方法が外観上の占有状態に変更を来たさないいわゆる占有改定(183条)にとどまるときは、192条にいう「動産の占有を始めた」とはいえず、即時取得は成立しない。
判例
事案:占有改定による占有の取得が「動産の占有を始めた」(192条)に含まれ、即時取得が成立するかが問題となった。
判旨:「無権利者から動産の譲渡を受けた場合において、譲受人が民法192条によりその所有権を取得しうるためには、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することを要し、かかる状態に一般外観上変更を来たさないいわゆる占有改定の方法による取得をもつては足らないものといわなければならない(大正5年5月16日大審院判決、民録22輯961頁、昭和32年12月27日第2小法廷判決、集11巻14号2485頁参照)。」
判旨:「無権利者から動産の譲渡を受けた場合において、譲受人が民法192条によりその所有権を取得しうるためには、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することを要し、かかる状態に一般外観上変更を来たさないいわゆる占有改定の方法による取得をもつては足らないものといわなければならない(大正5年5月16日大審院判決、民録22輯961頁、昭和32年12月27日第2小法廷判決、集11巻14号2485頁参照)。」
過去問・解説
(H19 司法 第9問 4)
占有改定により占有を取得した者は、動産の即時取得を主張することができない。
占有改定により占有を取得した者は、動産の即時取得を主張することができない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭35.2.11)は、「無権利者から動産の譲渡を受けた場合において、譲受人が民法192条によりその所有権を取得しうるためには、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することを要し、かかる状態に一般外観上変更を来たさないいわゆる占有改定の方法による取得をもつては足らないものといわなければならない…。」と判示している。
判例(最判昭35.2.11)は、「無権利者から動産の譲渡を受けた場合において、譲受人が民法192条によりその所有権を取得しうるためには、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することを要し、かかる状態に一般外観上変更を来たさないいわゆる占有改定の方法による取得をもつては足らないものといわなければならない…。」と判示している。
(H23 司法 第9問 4)
売買の目的物である動産について占有改定の方法により当該動産の占有を取得した買主は、売主が無権利者であったとしても、売主が無権利者であることについて善意無過失であれば、即時取得により当該動産についての所有権を取得する。
売買の目的物である動産について占有改定の方法により当該動産の占有を取得した買主は、売主が無権利者であったとしても、売主が無権利者であることについて善意無過失であれば、即時取得により当該動産についての所有権を取得する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭35.2.11)は、「無権利者から動産の譲渡を受けた場合において、譲受人が民法192条によりその所有権を取得しうるためには、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することを要し、かかる状態に一般外観上変更を来たさないいわゆる占有改定の方法による取得をもつては足らないものといわなければならない…。」と判示している。したがって、売買の目的物である動産について占有改定の方法により当該動産の占有を取得した買主には、即時取得は成立せず、当該動産についての所有権を取得できない。
判例(最判昭35.2.11)は、「無権利者から動産の譲渡を受けた場合において、譲受人が民法192条によりその所有権を取得しうるためには、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することを要し、かかる状態に一般外観上変更を来たさないいわゆる占有改定の方法による取得をもつては足らないものといわなければならない…。」と判示している。したがって、売買の目的物である動産について占有改定の方法により当該動産の占有を取得した買主には、即時取得は成立せず、当該動産についての所有権を取得できない。
(H27 司法 第14問 イ)
対抗要件を備えた集合動産譲渡担保権の設定者が、その目的とされた動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をし、その動産を占有改定の方法により買主に引き渡した場合、買主はその動産の所有権を取得することができる。
対抗要件を備えた集合動産譲渡担保権の設定者が、その目的とされた動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をし、その動産を占有改定の方法により買主に引き渡した場合、買主はその動産の所有権を取得することができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平18.7.20)は、「対抗要件を備えた集合動産譲渡担保の設定者がその目的物である動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合、当該処分は上記権限に基づかないものである以上、譲渡担保契約に定められた保管場所から搬出されるなどして当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められる場合でない限り、当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得することはできないというべきである。」としている。したがって、対抗要件を備えた集合動産譲渡担保権の設定者が、その目的とされた動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした本肢においても、買主がその動産を占有改定の方法により引渡しを受けたにとどまり、いまだ当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められる場合ではない以上、買主はその動産の所有権を承継取得することができない。
また、判例(最判昭35.2.11)は、「無権利者から動産の譲渡を受けた場合において、譲受人が民法192条によりその所有権を取得しうるためには、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することを要し、かかる状態に一般外観上変更を来たさないいわゆる占有改定の方法による取得をもつては足らないものといわなければならない…。」と判示している。したがって、本肢においても、買主は占有改定の方法により占有を取得しているに過ぎないため、即時取得(192条)は成立せず、買主はその動産の所有権を即時取得により取得することもできない。
判例(最判平18.7.20)は、「対抗要件を備えた集合動産譲渡担保の設定者がその目的物である動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合、当該処分は上記権限に基づかないものである以上、譲渡担保契約に定められた保管場所から搬出されるなどして当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められる場合でない限り、当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得することはできないというべきである。」としている。したがって、対抗要件を備えた集合動産譲渡担保権の設定者が、その目的とされた動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした本肢においても、買主がその動産を占有改定の方法により引渡しを受けたにとどまり、いまだ当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められる場合ではない以上、買主はその動産の所有権を承継取得することができない。
また、判例(最判昭35.2.11)は、「無権利者から動産の譲渡を受けた場合において、譲受人が民法192条によりその所有権を取得しうるためには、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することを要し、かかる状態に一般外観上変更を来たさないいわゆる占有改定の方法による取得をもつては足らないものといわなければならない…。」と判示している。したがって、本肢においても、買主は占有改定の方法により占有を取得しているに過ぎないため、即時取得(192条)は成立せず、買主はその動産の所有権を即時取得により取得することもできない。
(H28 司法 第9問 ウ)
Aがその占有する時計をBに売却した場合において、その売買契約の際に、以後AがBのために占有する意思を表示したが、当該時計の引渡しが現実にされていないときは、Bは即時取得により当該時計の所有権を取得することができない。
Aがその占有する時計をBに売却した場合において、その売買契約の際に、以後AがBのために占有する意思を表示したが、当該時計の引渡しが現実にされていないときは、Bは即時取得により当該時計の所有権を取得することができない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭35.2.11)は、「無権利者から動産の譲渡を受けた場合において、譲受人が民法192条によりその所有権を取得しうるためには、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することを要し、かかる状態に一般外観上変更を来たさないいわゆる占有改定の方法による取得をもつては足らないものといわなければならない…。」と判示している。
Aがその占有する時計をBに売却した場合において、その売買契約の際に、以後AがBのために占有する意思を表示したが、当該時計の引渡しが現実にされていないという場合、これは占有改定(183条)による占有取得に当たる。したがって、Bは即時取得により当該時計の所有権を取得することができない。
判例(最判昭35.2.11)は、「無権利者から動産の譲渡を受けた場合において、譲受人が民法192条によりその所有権を取得しうるためには、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することを要し、かかる状態に一般外観上変更を来たさないいわゆる占有改定の方法による取得をもつては足らないものといわなければならない…。」と判示している。
Aがその占有する時計をBに売却した場合において、その売買契約の際に、以後AがBのために占有する意思を表示したが、当該時計の引渡しが現実にされていないという場合、これは占有改定(183条)による占有取得に当たる。したがって、Bは即時取得により当該時計の所有権を取得することができない。
(R4 司法 第7問 エ)
Aはその所有する絵画甲をBに預けていたが、Bは、Aに無断で、Bが甲の所有者であると過失なく信じているCに甲を売却した。Bは甲の占有を継続し、以後Cのために占有する意思を表示した。その後AがBから甲の返還を受けた場合、CはAに対し、所有権に基づいて甲の引渡しを請求することができない。
Aはその所有する絵画甲をBに預けていたが、Bは、Aに無断で、Bが甲の所有者であると過失なく信じているCに甲を売却した。Bは甲の占有を継続し、以後Cのために占有する意思を表示した。その後AがBから甲の返還を受けた場合、CはAに対し、所有権に基づいて甲の引渡しを請求することができない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭35.2.11)は、「無権利者から動産の譲渡を受けた場合において、譲受人が民法192条によりその所有権を取得しうるためには、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することを要し、かかる状態に一般外観上変更を来たさないいわゆる占有改定の方法による取得をもつては足らないものといわなければならない…。」と判示している。
Bは甲の占有を継続し、以後Cのために占有する意思を表示しているところ、これは占有改定(183条)による占有取得に当たる。したがって、Cに即時取得(192条)は成立せず、甲の所有権を取得できないから、AがBから甲の返還を受けた場合、CはAに対し、所有権に基づいて甲の引渡しを請求することができない。
判例(最判昭35.2.11)は、「無権利者から動産の譲渡を受けた場合において、譲受人が民法192条によりその所有権を取得しうるためには、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することを要し、かかる状態に一般外観上変更を来たさないいわゆる占有改定の方法による取得をもつては足らないものといわなければならない…。」と判示している。
Bは甲の占有を継続し、以後Cのために占有する意思を表示しているところ、これは占有改定(183条)による占有取得に当たる。したがって、Cに即時取得(192条)は成立せず、甲の所有権を取得できないから、AがBから甲の返還を受けた場合、CはAに対し、所有権に基づいて甲の引渡しを請求することができない。
(R6 司法 第9問 エ)
Aは、Bから預かっているB所有のパソコン甲を自らの所有物であると偽ってCに売り、Cとの間で、以後AがCのために甲を占有する旨の合意をした。この合意の時に、Aが甲の所有者であるとCが過失なく信じていたときは、Cは、甲の所有権を即時取得する。
Aは、Bから預かっているB所有のパソコン甲を自らの所有物であると偽ってCに売り、Cとの間で、以後AがCのために甲を占有する旨の合意をした。この合意の時に、Aが甲の所有者であるとCが過失なく信じていたときは、Cは、甲の所有権を即時取得する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭35.2.11)は、「無権利者から動産の譲渡を受けた場合において、譲受人が民法192条によりその所有権を取得しうるためには、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することを要し、かかる状態に一般外観上変更を来たさないいわゆる占有改定の方法による取得をもつては足らないものといわなければならない…。」と判示している。
Aは、B所有のパソコン甲を自らの所有物であると偽ってCに売却する際、Cとの間で、以降AがCのために甲を占有する旨の合意をしているところ、これは占有改定(183条)による占有取得に当たる。したがって、この合意の時に、Aが甲の所有者であるとCが過失なく信じていたとしても、占有改定による占有取得では即時取得は成立しないため、Cは、甲の所有権を即時取得することができない。
判例(最判昭35.2.11)は、「無権利者から動産の譲渡を受けた場合において、譲受人が民法192条によりその所有権を取得しうるためには、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することを要し、かかる状態に一般外観上変更を来たさないいわゆる占有改定の方法による取得をもつては足らないものといわなければならない…。」と判示している。
Aは、B所有のパソコン甲を自らの所有物であると偽ってCに売却する際、Cとの間で、以降AがCのために甲を占有する旨の合意をしているところ、これは占有改定(183条)による占有取得に当たる。したがって、この合意の時に、Aが甲の所有者であるとCが過失なく信じていたとしても、占有改定による占有取得では即時取得は成立しないため、Cは、甲の所有権を即時取得することができない。
総合メモ
即時取得における無過失の立証責任 最一小判昭和41年6月9日
概要
192条による即時取得の成立を主張する動産の占有者は、同条の「過失がないとき」の立証責任を負わない。
判例
事案:192条による即時取得の成立を主張する動産の占有者は、同条の「過失がないとき」の立証責任を負うかが問題となった。
判旨:「思うに、右法条にいう「過失なきとき」とは、物の譲渡人である占有者が権利者たる外観を有しているため、その譲受人が譲渡人にこの外観に対応する権利があるものと誤信し、かつこのように信ずるについて過失のないことを意味するものであるが、およそ占有者が占有物の上に行使する権利はこれを適法に有するものと推定される以上(民法188条)、譲受人たる占有取得者が右のように信ずるについては過失のないものと推定され、占有取得者自身において過失のないことを立証することを要しないものと解すべきである。」
判旨:「思うに、右法条にいう「過失なきとき」とは、物の譲渡人である占有者が権利者たる外観を有しているため、その譲受人が譲渡人にこの外観に対応する権利があるものと誤信し、かつこのように信ずるについて過失のないことを意味するものであるが、およそ占有者が占有物の上に行使する権利はこれを適法に有するものと推定される以上(民法188条)、譲受人たる占有取得者が右のように信ずるについては過失のないものと推定され、占有取得者自身において過失のないことを立証することを要しないものと解すべきである。」
過去問・解説
(H19 司法 第9問 3)
占有者から動産を譲り受けてその占有を取得した者は、即時取得を主張するために、自己に過失がないことを立証しなければならない。
占有者から動産を譲り受けてその占有を取得した者は、即時取得を主張するために、自己に過失がないことを立証しなければならない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭41.6.9)は、即時取得(192条)の成否が問題となった事案において、「およそ占有者が占有物の上に行使する権利はこれを適法に有するものと推定される以上(民法188条)、譲受人たる占有取得者が右のように信ずるについては過失のないものと推定され、占有取得者自身において過失のないことを立証することを要しないものと解すべきである。」と判示している。
判例(最判昭41.6.9)は、即時取得(192条)の成否が問題となった事案において、「およそ占有者が占有物の上に行使する権利はこれを適法に有するものと推定される以上(民法188条)、譲受人たる占有取得者が右のように信ずるについては過失のないものと推定され、占有取得者自身において過失のないことを立証することを要しないものと解すべきである。」と判示している。
(H27 共通 第13問 1)
Aが、A所有の甲動産を占有するBに対し、所有権に基づく甲動産の引渡請求訴訟を提起したところ、Bは、Aの夫Cから質権の設定を受けその質権を即時取得した旨の反論をした。占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定されるから、Bは、質権の即時取得の成立を基礎付ける事実を主張・立証する必要はない。
Aが、A所有の甲動産を占有するBに対し、所有権に基づく甲動産の引渡請求訴訟を提起したところ、Bは、Aの夫Cから質権の設定を受けその質権を即時取得した旨の反論をした。占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定されるから、Bは、質権の即時取得の成立を基礎付ける事実を主張・立証する必要はない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭41.6.9)は、即時取得(192条)の成否が問題となった事案において、「およそ占有者が占有物の上に行使する権利はこれを適法に有するものと推定される以上(民法188条)、譲受人たる占有取得者が右のように信ずるについては過失のないものと推定され、占有取得者自身において過失のないことを立証することを要しないものと解すべきである。」と判示している。そうすると、Bは、甲動産につきCが無権利者であることについて善意であることにつき「過失がない」ことを立証する必要はないといえるが、推定されない他の即時取得の成立を基礎づける事実(「取引行為」によって「動産の占有を始めた」こと(192条))については、なお主張・立証する責任を負う。したがって、Bは、なおこれらの、質権の即時取得の成立を基礎づける事実を主張・立証する必要がある。
判例(最判昭41.6.9)は、即時取得(192条)の成否が問題となった事案において、「およそ占有者が占有物の上に行使する権利はこれを適法に有するものと推定される以上(民法188条)、譲受人たる占有取得者が右のように信ずるについては過失のないものと推定され、占有取得者自身において過失のないことを立証することを要しないものと解すべきである。」と判示している。そうすると、Bは、甲動産につきCが無権利者であることについて善意であることにつき「過失がない」ことを立証する必要はないといえるが、推定されない他の即時取得の成立を基礎づける事実(「取引行為」によって「動産の占有を始めた」こと(192条))については、なお主張・立証する責任を負う。したがって、Bは、なおこれらの、質権の即時取得の成立を基礎づける事実を主張・立証する必要がある。
(H28 司法 第9問 ア)
Aがその占有する時計をBに売却した場合において、Bが、即時取得により当該時計の所有権を取得したことを主張するためには、当該時計の引渡しの当時、自己に過失がなかったことを立証しなければならない。
Aがその占有する時計をBに売却した場合において、Bが、即時取得により当該時計の所有権を取得したことを主張するためには、当該時計の引渡しの当時、自己に過失がなかったことを立証しなければならない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭41.6.9)は、即時取得(192条)の成否が問題となった事案において、「およそ占有者が占有物の上に行使する権利はこれを適法に有するものと推定される以上(民法188条)、譲受人たる占有取得者が右のように信ずるについては過失のないものと推定され、占有取得者自身において過失のないことを立証することを要しないものと解すべきである。」と判示している。したがって、Bが、即時取得により当該時計の所有権を取得したことを主張するためには、当該時計の引渡しの当時、自己に過失がなかったことを立証する必要はない。
判例(最判昭41.6.9)は、即時取得(192条)の成否が問題となった事案において、「およそ占有者が占有物の上に行使する権利はこれを適法に有するものと推定される以上(民法188条)、譲受人たる占有取得者が右のように信ずるについては過失のないものと推定され、占有取得者自身において過失のないことを立証することを要しないものと解すべきである。」と判示している。したがって、Bが、即時取得により当該時計の所有権を取得したことを主張するためには、当該時計の引渡しの当時、自己に過失がなかったことを立証する必要はない。
総合メモ
競売と即時取得 最三小判昭和42年5月30日
過去問・解説
(R1 司法 第7問 エ)
Aは、その所有する動産甲をBに保管させていた。この場合において、Bの債権者により甲が強制競売に付され、Fは、甲がBの所有物であると過失なく信じて、甲を競落し、現実の引渡しを受けた。甲が宝石であった場合、Fは、即時取得により甲の所有権を取得する。
Aは、その所有する動産甲をBに保管させていた。この場合において、Bの債権者により甲が強制競売に付され、Fは、甲がBの所有物であると過失なく信じて、甲を競落し、現実の引渡しを受けた。甲が宝石であった場合、Fは、即時取得により甲の所有権を取得する。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭42.5.30)は、「執行債務者の所有に属さない動産が強制競売に付された場合であつても、競落人は、192条の要件を具備するときは、同条によつて右動産の所有権を取得できるものと解すべきである。」と判示している。したがって、Bの債権者により宝石である甲が強制競売に付され、Fが、甲がBの所有物であると過失なく信じて、甲を競落し、現実の引渡しを受けた場合においては、192条の要件を具備するため、Fは、即時取得により甲の所有権を取得する。
判例(最判昭42.5.30)は、「執行債務者の所有に属さない動産が強制競売に付された場合であつても、競落人は、192条の要件を具備するときは、同条によつて右動産の所有権を取得できるものと解すべきである。」と判示している。したがって、Bの債権者により宝石である甲が強制競売に付され、Fが、甲がBの所有物であると過失なく信じて、甲を競落し、現実の引渡しを受けた場合においては、192条の要件を具備するため、Fは、即時取得により甲の所有権を取得する。
総合メモ
道路運送車両法による登録を抹消された自動車と即時取得 最二小判昭和45年12月4日
概要
道路運送車両法による登録を受けていない自動車については、192条の規定の適用があり、この理は、同法により登録を受けた自動車が、その後抹消登録を受けた場合においても妥当する。
判例
事案:道路運送車両法による登録を受けていない自動車、及び同法による抹消登録を受けた自動車に、192条の規定の適用があるかが問題となった。
判旨:「道路運送車両法による登録を受けていない自動車は、同法5条1項および自動車抵当法5条(昭和44年法律第68号による改正前のもの)の規定により所有権の得喪ならびに抵当権の得喪および変更につき登録を対抗要件とするものではなく、また同法20条により質権の設定を禁じられるものではないのであるから、取引保護の要請により、一般の動産として民法192条の規定の適用を受けるべきものと解するのを相当とする。
そして、この理は、道路運送車両法により登録を受けた自動車が、同法16条(昭和44年法律第68号による改正前のもの)の規定により抹消登録を受けた場合においても同様である。」
判旨:「道路運送車両法による登録を受けていない自動車は、同法5条1項および自動車抵当法5条(昭和44年法律第68号による改正前のもの)の規定により所有権の得喪ならびに抵当権の得喪および変更につき登録を対抗要件とするものではなく、また同法20条により質権の設定を禁じられるものではないのであるから、取引保護の要請により、一般の動産として民法192条の規定の適用を受けるべきものと解するのを相当とする。
そして、この理は、道路運送車両法により登録を受けた自動車が、同法16条(昭和44年法律第68号による改正前のもの)の規定により抹消登録を受けた場合においても同様である。」
過去問・解説
(R1 司法 第7問 ア)
Aは、その所有する動産甲をBに保管させていた。この場合において、Bは、甲をCに売却し、Cは、甲がBの所有物であると過失なく信じて、現実の引渡しを受けた。甲が道路運送車両法による登録を抹消された自動車であった場合、Cは、即時取得により甲の所有権を取得することができない。
Aは、その所有する動産甲をBに保管させていた。この場合において、Bは、甲をCに売却し、Cは、甲がBの所有物であると過失なく信じて、現実の引渡しを受けた。甲が道路運送車両法による登録を抹消された自動車であった場合、Cは、即時取得により甲の所有権を取得することができない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭45.12.4)は、「道路運送車両法による登録を受けていない自動車は、…一般の動産として民法192条の規定の適用を受けるべきものと解するのを相当とする。」と判示した上で、「そして、この理は、道路運送車両法により登録を受けた自動車が、…抹消登録を受けた場合においても同様である。」と判示している。したがって、甲が道路運送車両法による登録を抹消された自動車であった場合においても、192条の規定が適用される。よって、同条の要件を満たしているCは、即時取得により甲の所有権を取得することができる。
判例(最判昭45.12.4)は、「道路運送車両法による登録を受けていない自動車は、…一般の動産として民法192条の規定の適用を受けるべきものと解するのを相当とする。」と判示した上で、「そして、この理は、道路運送車両法により登録を受けた自動車が、…抹消登録を受けた場合においても同様である。」と判示している。したがって、甲が道路運送車両法による登録を抹消された自動車であった場合においても、192条の規定が適用される。よって、同条の要件を満たしているCは、即時取得により甲の所有権を取得することができる。
総合メモ
指図による占有移転と即時取得 最三小判昭和57年9月7日
過去問・解説
(H28 予備 第5問 オ)
Aは、甲をBに賃貸していたところ、Bが甲をCに寄託した。その後、BがAに無断で甲をDに売却するとともに、Cに対し以後Dのために甲を占有するように命じた。Dは、甲がBの所有物であると過失なく信じて、Cによる甲の占有を承諾した。この場合、Aは、Dに対し、甲の返還を求めることができる。
Aは、甲をBに賃貸していたところ、Bが甲をCに寄託した。その後、BがAに無断で甲をDに売却するとともに、Cに対し以後Dのために甲を占有するように命じた。Dは、甲がBの所有物であると過失なく信じて、Cによる甲の占有を承諾した。この場合、Aは、Dに対し、甲の返還を求めることができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭57.9.7)は、指図による占有移転の方法による占有取得は、「動産の占有を始めた」(192条)に含まれる旨判示している。BがAに無断で甲をDに売却するとともに、Cに対し以後Dのために甲を占有するように命じ、Dは、Cによる甲の占有を承諾しており、このことから、Dは、指図による占有移転(184条)の方法によって甲の占有を取得したといえる。そうすると、甲がBの所有物であると過失なく信じているDは、即時取得(192条)により甲の所有権を取得するから、反対にAは、甲の所有権を失う。したがって、この場合、Aは、Dに対し、甲の返還を求めることができない。
判例(最判昭57.9.7)は、指図による占有移転の方法による占有取得は、「動産の占有を始めた」(192条)に含まれる旨判示している。BがAに無断で甲をDに売却するとともに、Cに対し以後Dのために甲を占有するように命じ、Dは、Cによる甲の占有を承諾しており、このことから、Dは、指図による占有移転(184条)の方法によって甲の占有を取得したといえる。そうすると、甲がBの所有物であると過失なく信じているDは、即時取得(192条)により甲の所有権を取得するから、反対にAは、甲の所有権を失う。したがって、この場合、Aは、Dに対し、甲の返還を求めることができない。
(R2 共通 第8問 ウ)
Aは、B所有の宝石をBから賃借して引渡しを受けた上、宝石をCに預けていたが、宝石をDに売却し、Cに対し、宝石を今後Dのために占有するよう命じ、Dがこれを承諾した。この場合、Dは、宝石がA所有であると信じ、かつ、そのことに過失がなかったとしても、即時取得により宝石の所有権を取得することはない。
Aは、B所有の宝石をBから賃借して引渡しを受けた上、宝石をCに預けていたが、宝石をDに売却し、Cに対し、宝石を今後Dのために占有するよう命じ、Dがこれを承諾した。この場合、Dは、宝石がA所有であると信じ、かつ、そのことに過失がなかったとしても、即時取得により宝石の所有権を取得することはない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭57.9.7)は、指図による占有移転の方法による占有取得は、「動産の占有を始めた」(192条)に含まれる旨判示している。AがB所有の宝石をDに売却し、Cに対し、宝石を今後Dのために占有するよう命じ、Dがこれを承諾しており、このことから、Dは、指図による占有移転(184条)の方法によってB所有の宝石の占有を取得したといえる。そうすると、当該宝石がA所有であると信じ、かつ、そのことに過失がなかったDは、192条の要件を満たすから、即時取得により当該宝石の所有権を取得することができる。
判例(最判昭57.9.7)は、指図による占有移転の方法による占有取得は、「動産の占有を始めた」(192条)に含まれる旨判示している。AがB所有の宝石をDに売却し、Cに対し、宝石を今後Dのために占有するよう命じ、Dがこれを承諾しており、このことから、Dは、指図による占有移転(184条)の方法によってB所有の宝石の占有を取得したといえる。そうすると、当該宝石がA所有であると信じ、かつ、そのことに過失がなかったDは、192条の要件を満たすから、即時取得により当該宝石の所有権を取得することができる。
総合メモ
登録を受けている自動車と即時取得 最二小判昭和62年4月24日
過去問・解説
(H19 司法 第9問 5)
登録を受けている自動車については、動産の即時取得の規定は適用されない。
登録を受けている自動車については、動産の即時取得の規定は適用されない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭62.4.24)は、「道路運送車両法による登録を受けている自動車については、…民法192条の適用はないものと解するのが相当であ…る。」と判示している。
判例(最判昭62.4.24)は、「道路運送車両法による登録を受けている自動車については、…民法192条の適用はないものと解するのが相当であ…る。」と判示している。
(H23 司法 第9問 1)
即時取得の規定は、取引の相手方を保護する制度であるが、道路運送車両法による登録を受けている自動車については、その登録が抹消されない限り即時取得の規定の適用はない。
即時取得の規定は、取引の相手方を保護する制度であるが、道路運送車両法による登録を受けている自動車については、その登録が抹消されない限り即時取得の規定の適用はない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭62.4.24)は、「道路運送車両法による登録を受けている自動車については、…民法192条の適用はないものと解するのが相当であ…る。」と判示している。
これに対し、判例(最判昭45.12.4)は、「道路運送車両法による登録を受けていない自動車は、…一般の動産として民法192条の規定の適用を受けるべきものと解するのを相当とする。」と判示した上で、「そして、この理は、道路運送車両法により登録を受けた自動車が、…抹消登録を受けた場合においても同様である。」と判示している。
したがって、道路運送車両法による登録を受けている自動車については、その登録が抹消されない限り即時取得の規定の適用はないといえる。
判例(最判昭62.4.24)は、「道路運送車両法による登録を受けている自動車については、…民法192条の適用はないものと解するのが相当であ…る。」と判示している。
これに対し、判例(最判昭45.12.4)は、「道路運送車両法による登録を受けていない自動車は、…一般の動産として民法192条の規定の適用を受けるべきものと解するのを相当とする。」と判示した上で、「そして、この理は、道路運送車両法により登録を受けた自動車が、…抹消登録を受けた場合においても同様である。」と判示している。
したがって、道路運送車両法による登録を受けている自動車については、その登録が抹消されない限り即時取得の規定の適用はないといえる。
(H28 司法 第9問 オ)
Aがその占有する中古自動車をBに売却し、現実に引き渡した場合において、当該中古自動車につき道路運送車両法による登録がされていたときは、Bは、即時取得により当該中古自動車の所有権を取得することができない。
Aがその占有する中古自動車をBに売却し、現実に引き渡した場合において、当該中古自動車につき道路運送車両法による登録がされていたときは、Bは、即時取得により当該中古自動車の所有権を取得することができない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭62.4.24)は、「道路運送車両法による登録を受けている自動車については、…民法192条の適用はないものと解するのが相当であ…る。」と判示している。したがって、BがAから買い受け、現実の引き渡しを受けた中古自動車につき道路運送車両法による登録がされていたときは、当該中古自動車については、192条の適用はないため、Bは、即時取得により当該中古自動車の所有権を取得することができない。
判例(最判昭62.4.24)は、「道路運送車両法による登録を受けている自動車については、…民法192条の適用はないものと解するのが相当であ…る。」と判示している。したがって、BがAから買い受け、現実の引き渡しを受けた中古自動車につき道路運送車両法による登録がされていたときは、当該中古自動車については、192条の適用はないため、Bは、即時取得により当該中古自動車の所有権を取得することができない。
総合メモ
盗品又は遺失物の回復とその間の所有者 大判大正10年7月8日
概要
①盗品・遺失物について、192条の規定の要件を満たす占有を始めた者は、盗難又は遺失の時から2年以内に被害者又は遺失者より回復の請求を受けないときに限って初めてその物の上に行使する権利を取得することができる。
②193条にいう「回復」とは、占有者が一旦その盗品・遺失物について即時取得した所有権その他の本権を回復するということではなく、単に占有物の返還をすることを意味する。
②193条にいう「回復」とは、占有者が一旦その盗品・遺失物について即時取得した所有権その他の本権を回復するということではなく、単に占有物の返還をすることを意味する。
判例
事案:①盗品・遺失物について192条の規定の要件を満たす占有を始めた者がある場合において、被害者又は遺失者が2年以内に盗品等回復請求をするまでの間においても、当該占有者は、当該盗品・遺失物の上に行使する権利を取得することができるのかが問題となった。
②193条にいう「回復」の意義が問題となった。
判旨:「民法第193条ハ平穏公然善意無過失ニ動産ノ占有ヲ始メタル場合(即法文ニ所謂前条ノ場合)ト雖モ若シ其物カ盗品又ハ遺失物ナルトキハ占有者ハ盗難又ハ遺失ノ時ヨリ2年内ニ被害者又ハ遺失主ヨリ回復ノ請求ヲ受ケサルトキニ限リ始メテ其物ノ上ニ行使スル権利ヲ取得スト云ウ旨趣ニシテ従テ又回復ト云ウハ占有者カ一旦其物ニ付キ即時ニ取得シタル所有権其他ノ本権ヲ回復スルノ謂ニ非ス単ニ占有物ノ返還ト云ウコトヲ意味スルモノニ外ナラス欺カル解釈ヲ採ラサル可カラサルコトハ占有ノ不任意喪失ト云ウ点ニ於テ畢竟同一ニ帰著スル場合ノ規定タル同法第195条ノ行文トノ対照上明白ナルノミナラス法文ニ依レハ所謂回復請求権ヲ有スル者ハ即被害者又ハ遺失主ナルコトニ徴スルモ亦明白ナリ何者被害者又ハ遺失主トハ単ニ盗難又ハ遺失ニ依リ不任意ニ其占有ヲ喪失シタル者ヲ意味スルニ止マリ決シテ何等カ其物ニ付キ本権ヲ有スル者タルヲ必要トセサルコトハ言ヲ竢タサル所ナルヲ以テ今若シ回復ト云ウコトハ本権ノ回復ヲ指スモノトセムカ其帰スルトコロ自己カ始メヨリ之ヲ有セサル権利ヲ回復スト云ウカ如キ極メテ奇異ナル結果ヲ観ルニ至ル可ケレハナリ。」
②193条にいう「回復」の意義が問題となった。
判旨:「民法第193条ハ平穏公然善意無過失ニ動産ノ占有ヲ始メタル場合(即法文ニ所謂前条ノ場合)ト雖モ若シ其物カ盗品又ハ遺失物ナルトキハ占有者ハ盗難又ハ遺失ノ時ヨリ2年内ニ被害者又ハ遺失主ヨリ回復ノ請求ヲ受ケサルトキニ限リ始メテ其物ノ上ニ行使スル権利ヲ取得スト云ウ旨趣ニシテ従テ又回復ト云ウハ占有者カ一旦其物ニ付キ即時ニ取得シタル所有権其他ノ本権ヲ回復スルノ謂ニ非ス単ニ占有物ノ返還ト云ウコトヲ意味スルモノニ外ナラス欺カル解釈ヲ採ラサル可カラサルコトハ占有ノ不任意喪失ト云ウ点ニ於テ畢竟同一ニ帰著スル場合ノ規定タル同法第195条ノ行文トノ対照上明白ナルノミナラス法文ニ依レハ所謂回復請求権ヲ有スル者ハ即被害者又ハ遺失主ナルコトニ徴スルモ亦明白ナリ何者被害者又ハ遺失主トハ単ニ盗難又ハ遺失ニ依リ不任意ニ其占有ヲ喪失シタル者ヲ意味スルニ止マリ決シテ何等カ其物ニ付キ本権ヲ有スル者タルヲ必要トセサルコトハ言ヲ竢タサル所ナルヲ以テ今若シ回復ト云ウコトハ本権ノ回復ヲ指スモノトセムカ其帰スルトコロ自己カ始メヨリ之ヲ有セサル権利ヲ回復スト云ウカ如キ極メテ奇異ナル結果ヲ観ルニ至ル可ケレハナリ。」
過去問・解説
(H18 司法 第14問 オ)
Aがその所有するギター(以下「甲」という。)をBに貸していたところ、無職のCが金に困ってBから甲を盗み、自分の物だと称して友人のDに売却した。Dは、甲がCの所有物だと過失なく信じて、その引渡しを受けた。この場合、Bが盗まれた時から2年間は、Dは、甲の所有権を取得することができない。
Aがその所有するギター(以下「甲」という。)をBに貸していたところ、無職のCが金に困ってBから甲を盗み、自分の物だと称して友人のDに売却した。Dは、甲がCの所有物だと過失なく信じて、その引渡しを受けた。この場合、Bが盗まれた時から2年間は、Dは、甲の所有権を取得することができない。
(正答)〇
(解説)
判例(大判大10.7.8)は、盗品・遺失物について、192条の規定の要件を満たす占有を始めた者は、盗難又は遺失の時から2年以内に被害者又は遺失者より回復の請求を受けないときに限って初めてその物の上に行使する権利を取得することができる旨判示している。甲は盗品であるため、Bが甲を盗まれた時から2年間は、Dが甲について即時取得(192条)の要件を満たしていても、Dは、甲の所有権を取得することができない。
判例(大判大10.7.8)は、盗品・遺失物について、192条の規定の要件を満たす占有を始めた者は、盗難又は遺失の時から2年以内に被害者又は遺失者より回復の請求を受けないときに限って初めてその物の上に行使する権利を取得することができる旨判示している。甲は盗品であるため、Bが甲を盗まれた時から2年間は、Dが甲について即時取得(192条)の要件を満たしていても、Dは、甲の所有権を取得することができない。
(R2 共通 第8問 オ)
Aは、BがCから賃借していた宝石を盗み、Dに贈与した。Dが宝石をAの所有物であると過失なく信じて現実の引渡しを受けた場合、Bは、宝石の盗難時から2年間は、Dに宝石の回復を請求することができる。
Aは、BがCから賃借していた宝石を盗み、Dに贈与した。Dが宝石をAの所有物であると過失なく信じて現実の引渡しを受けた場合、Bは、宝石の盗難時から2年間は、Dに宝石の回復を請求することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(大判大10.7.8)は、193条にいう「回復」とは、占有者が一旦その盗品・遺失物について即時取得した所有権その他の本権を回復するということではなく、単に占有物の返還を受けることを意味する旨判示している。この判例の理解によれば、193条の「被害者」は、所有者その他の本権者に限られず、賃借人や受寄者などの、所有権その他の本権を有しない占有者を含むと解される。
本肢においては、Aが、BがCから賃借していた宝石を盗み、Dに贈与し、Dが宝石をAの所有物であると過失なく信じて現実の引渡しを受けた場合、Dは当該宝石について、192条の要件を満たす占有を始めた者であるといえる。そして、当該宝石は「盗品」に当たり、Bは当該宝石の賃借人であるから「被害者」に当たる。したがって、Bは、193条の要件を満たすから、宝石の盗難時から2年間は、Dに宝石の回復を請求することができる。
判例(大判大10.7.8)は、193条にいう「回復」とは、占有者が一旦その盗品・遺失物について即時取得した所有権その他の本権を回復するということではなく、単に占有物の返還を受けることを意味する旨判示している。この判例の理解によれば、193条の「被害者」は、所有者その他の本権者に限られず、賃借人や受寄者などの、所有権その他の本権を有しない占有者を含むと解される。
本肢においては、Aが、BがCから賃借していた宝石を盗み、Dに贈与し、Dが宝石をAの所有物であると過失なく信じて現実の引渡しを受けた場合、Dは当該宝石について、192条の要件を満たす占有を始めた者であるといえる。そして、当該宝石は「盗品」に当たり、Bは当該宝石の賃借人であるから「被害者」に当たる。したがって、Bは、193条の要件を満たすから、宝石の盗難時から2年間は、Dに宝石の回復を請求することができる。
総合メモ
商人から買い受けた者と即時取得 最三小判平成12年6月27日
概要
盗品又は遺失物(以下、「盗品等」という。)の占有者は、盗品等の被害者又は遺失者からの回復請求(193条)に対して、194条に基づき当該盗品等の引渡しを拒むことができる場合には、代価の弁償の提供があるまで当該盗品等の使用収益を行う権限を有する。
判例
事案:盗品又は遺失物(以下、「盗品等」という。)の被害者又は遺失者が、盗品等の占有者に対してその物の回復を求めたのに対し、占有者が194条に基づき支払った代価の弁償があるまで盗品等の引渡しを拒むことができる場合において、占有者が、当該弁償の提供があるまで、盗品等の使用収益を行う権限を有するかが問題となった。
判旨:「盗品又は遺失物(以下「盗品等」という。)の被害者又は遺失主(以下「被害者等」という。)が盗品等の占有者に対してその物の回復を求めたのに対し、占有者が民法194条に基づき支払った代価の弁償があるまで盗品等の引渡しを拒むことができる場合には、占有者は、右弁償の提供があるまで盗品等の使用収益を行う権限を有すると解するのが相当である。けだし、民法194条は、盗品等を競売若しくは公の市場において又はその物と同種の物を販売する商人から買い受けた占有者が同法192条所定の要件を備えるときは、被害者等は占有者が支払った代価を弁償しなければその物を回復することができないとすることによって、占有者と被害者等との保護の均衡を図った規定であるところ、被害者等の回復請求に対し占有者が民法194条に基づき盗品等の引渡しを拒む場合には、被害者等は、代価を弁償して盗品等を回復するか、盗品等の回復をあきらめるかを選択することができるのに対し、占有者は、被害者等が盗品等の回復をあきらめた場合には盗品等の所有者として占有取得後の使用利益を享受し得ると解されるのに、被害者等が代価の弁償を選択した場合には代価弁償以前の使用利益を喪失するというのでは、占有者の地位が不安定になること甚だしく、両者の保護の均衡を図った同条の趣旨に反する結果となるからである。また、弁償される代価には利息は含まれないと解されるところ、それとの均衡上占有者の使用収益を認めることが両者の公平に適うというべきである。」
判旨:「盗品又は遺失物(以下「盗品等」という。)の被害者又は遺失主(以下「被害者等」という。)が盗品等の占有者に対してその物の回復を求めたのに対し、占有者が民法194条に基づき支払った代価の弁償があるまで盗品等の引渡しを拒むことができる場合には、占有者は、右弁償の提供があるまで盗品等の使用収益を行う権限を有すると解するのが相当である。けだし、民法194条は、盗品等を競売若しくは公の市場において又はその物と同種の物を販売する商人から買い受けた占有者が同法192条所定の要件を備えるときは、被害者等は占有者が支払った代価を弁償しなければその物を回復することができないとすることによって、占有者と被害者等との保護の均衡を図った規定であるところ、被害者等の回復請求に対し占有者が民法194条に基づき盗品等の引渡しを拒む場合には、被害者等は、代価を弁償して盗品等を回復するか、盗品等の回復をあきらめるかを選択することができるのに対し、占有者は、被害者等が盗品等の回復をあきらめた場合には盗品等の所有者として占有取得後の使用利益を享受し得ると解されるのに、被害者等が代価の弁償を選択した場合には代価弁償以前の使用利益を喪失するというのでは、占有者の地位が不安定になること甚だしく、両者の保護の均衡を図った同条の趣旨に反する結果となるからである。また、弁償される代価には利息は含まれないと解されるところ、それとの均衡上占有者の使用収益を認めることが両者の公平に適うというべきである。」
過去問・解説
(H23 司法 第9問 5)
動産が盗品であることについて善意無過失で競売により取得してこれを占有している者は、被害者から当該盗品の返還請求を受けたとしても、競売代金相当額の支払を被害者から受けるまでは盗品の引渡しを拒むことができ、当該盗品の使用利益相当額を被害者に支払う必要もない。
動産が盗品であることについて善意無過失で競売により取得してこれを占有している者は、被害者から当該盗品の返還請求を受けたとしても、競売代金相当額の支払を被害者から受けるまでは盗品の引渡しを拒むことができ、当該盗品の使用利益相当額を被害者に支払う必要もない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平12.6.27)は、「盗品又は遺失物(以下「盗品等」という。)の被害者又は遺失主(以下「被害者等」という。)が盗品等の占有者に対してその物の回復を求めたのに対し、占有者が民法194条に基づき支払った代価の弁償があるまで盗品等の引渡しを拒むことができる場合には、占有者は、右弁償の提供があるまで盗品等の使用収益を行う権限を有すると解するのが相当である。」と判示している。
本肢においては、動産が盗品であることについて善意無過失で競売により取得してこれを占有している者は、194条の規定の要件を満たすため、被害者から当該盗品の返還請求を受けたとしても、競売代金相当額の支払を被害者から受けるまでは盗品の引渡しを拒むことができる。
そして、当該占有者は、上記の判例の理解に基づけば、当該盗品の使用収益を行う権限を有するから、当該盗品の使用利益相当額を被害者に支払う必要もない。
判例(最判平12.6.27)は、「盗品又は遺失物(以下「盗品等」という。)の被害者又は遺失主(以下「被害者等」という。)が盗品等の占有者に対してその物の回復を求めたのに対し、占有者が民法194条に基づき支払った代価の弁償があるまで盗品等の引渡しを拒むことができる場合には、占有者は、右弁償の提供があるまで盗品等の使用収益を行う権限を有すると解するのが相当である。」と判示している。
本肢においては、動産が盗品であることについて善意無過失で競売により取得してこれを占有している者は、194条の規定の要件を満たすため、被害者から当該盗品の返還請求を受けたとしても、競売代金相当額の支払を被害者から受けるまでは盗品の引渡しを拒むことができる。
そして、当該占有者は、上記の判例の理解に基づけば、当該盗品の使用収益を行う権限を有するから、当該盗品の使用利益相当額を被害者に支払う必要もない。
総合メモ
一般財団法人における理事の返還請求権 最二小判昭和32年2月22日
過去問・解説
(H22 司法 第8問 ウ)
一般財団法人の理事が専ら法人の業務として管理している物を他人が侵奪した場合において、その他人に対し占有回収の訴えを提起して返還を請求することができる者は、その一般財団法人であり、理事個人ではない。
一般財団法人の理事が専ら法人の業務として管理している物を他人が侵奪した場合において、その他人に対し占有回収の訴えを提起して返還を請求することができる者は、その一般財団法人であり、理事個人ではない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭32.2.2)は、「法人の代表者は法人の機関であり、したがつて法人の代表者が法人の業務上なす物の所持は法人そのものの占有、すなわち法人の直接占有と解すべく、またこの場合代表者は所論民法197条後段の代理占有者でもないと解するを相当とする。」と判示している。そうすると、一般財団法人の理事が専ら法人の業務として管理している物は、当該一般財団法人が直接占有している物であると解され、理事は197条後段の「他人のために占有する者」にも当たらない。
したがって、当該物を他人が侵奪した場合において、その他人に対し占有回収の訴えを提起して返還を請求することができる者は、当該物を直接占有しているその一般社団法人であり、当該物を直接占有しておらず、同条後段の「他人のために占有する者」にも当たらない理事個人ではないといえる。
判例(最判昭32.2.2)は、「法人の代表者は法人の機関であり、したがつて法人の代表者が法人の業務上なす物の所持は法人そのものの占有、すなわち法人の直接占有と解すべく、またこの場合代表者は所論民法197条後段の代理占有者でもないと解するを相当とする。」と判示している。そうすると、一般財団法人の理事が専ら法人の業務として管理している物は、当該一般財団法人が直接占有している物であると解され、理事は197条後段の「他人のために占有する者」にも当たらない。
したがって、当該物を他人が侵奪した場合において、その他人に対し占有回収の訴えを提起して返還を請求することができる者は、当該物を直接占有しているその一般社団法人であり、当該物を直接占有しておらず、同条後段の「他人のために占有する者」にも当たらない理事個人ではないといえる。
総合メモ
占有回収の訴えにおける「占有を奪われたとき」 大判大正11年11月27日
概要
200条1項の「占有を奪われたとき」とは、占有者の意思に反して占有を奪われることをいい、占有移転が他人の欺罔によって生じた場合は、「占有を奪われたとき」に当たらない。
判例
事案:200条1項の「占有を奪われたとき」の定義が問題となった。
判旨:「民法第200条第1項ノ「占有者カ其ノ占有物ヲ奪ハレタルトキ」トハ占有者カ其ノ意思ニ因ラスシテ物ノ所持ヲ失ヒタル場合ヲ指称スルモノナレハ占有侵奪ノ事実アルニハ占有者自ラ占有ノ意思ヲ失ヒタルニ非サルコトヲ要ス故ニ占有者カ他人ニ任意ニ物ノ占有ヲ移転シタルトキハ仮令其ノ移転ノ意思カ他人ノ欺罔ニ因リテ生シタル場合ナリトスルモ占有侵奪ノ事実アリト謂フヲ得ス。」
判旨:「民法第200条第1項ノ「占有者カ其ノ占有物ヲ奪ハレタルトキ」トハ占有者カ其ノ意思ニ因ラスシテ物ノ所持ヲ失ヒタル場合ヲ指称スルモノナレハ占有侵奪ノ事実アルニハ占有者自ラ占有ノ意思ヲ失ヒタルニ非サルコトヲ要ス故ニ占有者カ他人ニ任意ニ物ノ占有ヲ移転シタルトキハ仮令其ノ移転ノ意思カ他人ノ欺罔ニ因リテ生シタル場合ナリトスルモ占有侵奪ノ事実アリト謂フヲ得ス。」
過去問・解説
(H26 司法 第10問 3)
A大学の図書館所蔵の書籍甲を、同大学教授Bが借り出し、図書館と同一の構内にある自己の研究室で利用していた。Bが研究室から自宅に甲を持ち帰る途中、電車内に甲を置き忘れたところ、Fがこれを拾得して現に所持している場合、Bは、Fに対し、占有回収の訴えにより甲の返還を求めることができる。
A大学の図書館所蔵の書籍甲を、同大学教授Bが借り出し、図書館と同一の構内にある自己の研究室で利用していた。Bが研究室から自宅に甲を持ち帰る途中、電車内に甲を置き忘れたところ、Fがこれを拾得して現に所持している場合、Bは、Fに対し、占有回収の訴えにより甲の返還を求めることができる。
(正答)✕
(解説)
判例(大判大11.11.27)は、「民法第200条第1項ノ「占有者カ其ノ占有物ヲ奪ハレタルトキ」トハ占有者カ其ノ意思ニ因ラスシテ物ノ所持ヲ失ヒタル場合ヲ指称スルモノナレハ占有侵奪ノ事実アルニハ占有者自ラ占有ノ意思ヲ失ヒタルニ非サルコトヲ要ス。」と判示している。この判例の理解によれば、占有者が遺失した物を他人が拾った場合は、200条1項の「占有を奪われたとき」に当たらないといえる。
したがって、Bが研究室から自宅に甲を持ち帰る途中、電車内に甲を置き忘れたところ、Fがこれを拾得して現に所持している場合は、「占有を奪われたとき」に当たらず、Bは、Fに対し、同項の占有回収の訴えにより甲の返還を求めることはできない。
判例(大判大11.11.27)は、「民法第200条第1項ノ「占有者カ其ノ占有物ヲ奪ハレタルトキ」トハ占有者カ其ノ意思ニ因ラスシテ物ノ所持ヲ失ヒタル場合ヲ指称スルモノナレハ占有侵奪ノ事実アルニハ占有者自ラ占有ノ意思ヲ失ヒタルニ非サルコトヲ要ス。」と判示している。この判例の理解によれば、占有者が遺失した物を他人が拾った場合は、200条1項の「占有を奪われたとき」に当たらないといえる。
したがって、Bが研究室から自宅に甲を持ち帰る途中、電車内に甲を置き忘れたところ、Fがこれを拾得して現に所持している場合は、「占有を奪われたとき」に当たらず、Bは、Fに対し、同項の占有回収の訴えにより甲の返還を求めることはできない。
(R2 司法 第9問 エ)
Aは、自己の所有する自転車をBに詐取された。この場合、Aは、Bに対し、占有回収の訴えにより自転車の返還を請求することができる。
Aは、自己の所有する自転車をBに詐取された。この場合、Aは、Bに対し、占有回収の訴えにより自転車の返還を請求することができる。
(正答)✕
(解説)
判例(大判大11.11.27)は、「民法第200条第1項ノ「占有者カ其ノ占有物ヲ奪ハレタルトキ」トハ占有者カ其ノ意思ニ因ラスシテ物ノ所持ヲ失ヒタル場合ヲ指称スルモノナレハ占有侵奪ノ事実アルニハ占有者自ラ占有ノ意思ヲ失ヒタルニ非サルコトヲ要ス故ニ占有者カ他人ニ任意ニ物ノ占有ヲ移転シタルトキハ仮令其ノ移転ノ意思カ他人ノ欺罔ニ因リテ生シタル場合ナリトスルモ占有侵奪ノ事実アリト謂フヲ得ス。」と判示している。したがって、Aは、自己の所有する自転車をBに詐取されているが、これは200条1項の「占有を奪われたとき」には当たらない。よって、Aは、Bに対し、占有回収の訴えにより自転車の返還を請求することができない。
判例(大判大11.11.27)は、「民法第200条第1項ノ「占有者カ其ノ占有物ヲ奪ハレタルトキ」トハ占有者カ其ノ意思ニ因ラスシテ物ノ所持ヲ失ヒタル場合ヲ指称スルモノナレハ占有侵奪ノ事実アルニハ占有者自ラ占有ノ意思ヲ失ヒタルニ非サルコトヲ要ス故ニ占有者カ他人ニ任意ニ物ノ占有ヲ移転シタルトキハ仮令其ノ移転ノ意思カ他人ノ欺罔ニ因リテ生シタル場合ナリトスルモ占有侵奪ノ事実アリト謂フヲ得ス。」と判示している。したがって、Aは、自己の所有する自転車をBに詐取されているが、これは200条1項の「占有を奪われたとき」には当たらない。よって、Aは、Bに対し、占有回収の訴えにより自転車の返還を請求することができない。
総合メモ
200条2項但書にいう「侵奪の事実を知っていたとき」 最一小判昭和56年3月19日
概要
200条2項ただし書にいう「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」といい得るためには、承継人が少なくともなんらかの形での侵奪があったことについての認識を有していたことが必要であり、単に前主の占有取得がなんらかの犯罪行為ないし不法行為によるものであって、これによっては前主が正当な権利取得者とはなりえないものであることを知っていただけでは足りないことはもちろん、占有侵奪の事実があったかもしれないと考えていた場合でも、それが単に1つの可能性についての認識にとどまる限りは、「侵奪の事実を知っていたとき」に当たるとは言えない。
判例
事案:200条2項ただし書にいう「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」という要件の解釈が問題となった。
判旨:「占有者がその占有の侵奪者の特定承継人に対して占有回収の訴を提起することができるのは、その者が右侵奪の事実を知つて占有を承継した場合に限られるが、この場合侵奪を知つて占有を承継したということができるためには、右の承継人が少なくともなんらかの形での侵奪があつたことについての認識を有していたことが必要であり、単に前主の占有取得がなんらかの犯罪行為ないし不法行為によるものであつて、これによつては前主が正当な権利取得者とはなりえないものであることを知つていただけでは足りないことはもちろん、占有侵奪の事実があつたかもしれないと考えていた場合でも、それが単に1つの可能性についての認識にとどまる限りは、未だ侵奪の事実を知つていたものということはできないと解するのが相当である。」
判旨:「占有者がその占有の侵奪者の特定承継人に対して占有回収の訴を提起することができるのは、その者が右侵奪の事実を知つて占有を承継した場合に限られるが、この場合侵奪を知つて占有を承継したということができるためには、右の承継人が少なくともなんらかの形での侵奪があつたことについての認識を有していたことが必要であり、単に前主の占有取得がなんらかの犯罪行為ないし不法行為によるものであつて、これによつては前主が正当な権利取得者とはなりえないものであることを知つていただけでは足りないことはもちろん、占有侵奪の事実があつたかもしれないと考えていた場合でも、それが単に1つの可能性についての認識にとどまる限りは、未だ侵奪の事実を知つていたものということはできないと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H26 司法 第10問 2)
A大学の図書館所蔵の書籍甲を、同大学教授Bが借り出し、図書館と同一の構内にある自己の研究室で利用していた。Bが目を離した隙に、Dが甲を盗み出した上、自己の物と偽ってEに売却し、引き渡した。甲にはA大学図書館の蔵書印が押捺されており、Eは、Dが甲を横領したものであると考えていた場合であっても、Bは、Eに対し、占有回収の訴えにより甲の返還を求めることはできない。
A大学の図書館所蔵の書籍甲を、同大学教授Bが借り出し、図書館と同一の構内にある自己の研究室で利用していた。Bが目を離した隙に、Dが甲を盗み出した上、自己の物と偽ってEに売却し、引き渡した。甲にはA大学図書館の蔵書印が押捺されており、Eは、Dが甲を横領したものであると考えていた場合であっても、Bは、Eに対し、占有回収の訴えにより甲の返還を求めることはできない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭56.3.19)は、200条2項ただし書の「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」という要件の解釈について、「侵奪を知つて占有を承継したということができるためには、右の承継人が少なくともなんらかの形での侵奪があつたことについての認識を有していたことが必要であり、単に前主の占有取得がなんらかの犯罪行為ないし不法行為によるものであつて、これによつては前主が正当な権利取得者とはなりえないものであることを知つていただけでは足りない」と判示している。Eは、Bの甲に対する占有を侵奪したDの「特定承継人」(200条2項本文)であるから、Bが、Eに対し、占有回収の訴えにより甲の返還を求めるためには、Eが「侵奪の事実を知っていたとき」(同項ただし書)でなければならない。しかし、Eは、Dが甲を横領したものであると考えていたにとどまり、占有の侵奪があったことの認識はなかった。したがって、「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」には当たらず、同ただし書の要件を満たさないため、Bは、Eに対し、占有回収の訴えにより甲の返還を求めることはできない。
判例(最判昭56.3.19)は、200条2項ただし書の「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」という要件の解釈について、「侵奪を知つて占有を承継したということができるためには、右の承継人が少なくともなんらかの形での侵奪があつたことについての認識を有していたことが必要であり、単に前主の占有取得がなんらかの犯罪行為ないし不法行為によるものであつて、これによつては前主が正当な権利取得者とはなりえないものであることを知つていただけでは足りない」と判示している。Eは、Bの甲に対する占有を侵奪したDの「特定承継人」(200条2項本文)であるから、Bが、Eに対し、占有回収の訴えにより甲の返還を求めるためには、Eが「侵奪の事実を知っていたとき」(同項ただし書)でなければならない。しかし、Eは、Dが甲を横領したものであると考えていたにとどまり、占有の侵奪があったことの認識はなかった。したがって、「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」には当たらず、同ただし書の要件を満たさないため、Bは、Eに対し、占有回収の訴えにより甲の返還を求めることはできない。
(H26 予備 第5問 1)
Aが所有して占有する動産を奪ったBは、この動産をCに売って引き渡した。Cは、Bが動産の所有者でないことを過失により知らなかった。このとき、AはCに対して占有回収の訴えを提起することができる。
Aが所有して占有する動産を奪ったBは、この動産をCに売って引き渡した。Cは、Bが動産の所有者でないことを過失により知らなかった。このとき、AはCに対して占有回収の訴えを提起することができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭56.3.19)は、200条2項ただし書の「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」という要件の解釈について、「侵奪を知つて占有を承継したということができるためには、右の承継人が少なくともなんらかの形での侵奪があつたことについての認識を有していたことが必要であり、単に前主の占有取得がなんらかの犯罪行為ないし不法行為によるものであつて、これによつては前主が正当な権利取得者とはなりえないものであることを知つていただけでは足りないことはもちろん、占有侵奪の事実があつたかもしれないと考えていた場合でも、それが単に1つの可能性についての認識にとどまる限りは、未だ侵奪の事実を知つていたものということはできないと解するのが相当である。」と判示している。Cは200条2項本文の「特定承継人」に当たるところ、Bが動産の所有者でないことを過失により知らなかったにとどまり、少なくとも何らかの形での侵奪があったことについての認識を有していたとはいえないから、「承継人が侵奪の事実を知っていた」(同項ただし書)とはいえない。したがって、同ただし書の要件を満たさず、AはCに対して占有回収の訴えを提起することができない。
判例(最判昭56.3.19)は、200条2項ただし書の「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」という要件の解釈について、「侵奪を知つて占有を承継したということができるためには、右の承継人が少なくともなんらかの形での侵奪があつたことについての認識を有していたことが必要であり、単に前主の占有取得がなんらかの犯罪行為ないし不法行為によるものであつて、これによつては前主が正当な権利取得者とはなりえないものであることを知つていただけでは足りないことはもちろん、占有侵奪の事実があつたかもしれないと考えていた場合でも、それが単に1つの可能性についての認識にとどまる限りは、未だ侵奪の事実を知つていたものということはできないと解するのが相当である。」と判示している。Cは200条2項本文の「特定承継人」に当たるところ、Bが動産の所有者でないことを過失により知らなかったにとどまり、少なくとも何らかの形での侵奪があったことについての認識を有していたとはいえないから、「承継人が侵奪の事実を知っていた」(同項ただし書)とはいえない。したがって、同ただし書の要件を満たさず、AはCに対して占有回収の訴えを提起することができない。
(R2 司法 第9問 イ)
Aは、底面に「所有者A」と印字されたシールを貼ってある自己所有のパソコンをBに窃取された。その後、Bは、パソコンの外観に変更を加えることなく、パソコンを盗難の事情を知らないCに譲渡した。この場合、Aは、Cに対し、占有回収の訴えにより同パソコンの返還を請求することはできない。
Aは、底面に「所有者A」と印字されたシールを貼ってある自己所有のパソコンをBに窃取された。その後、Bは、パソコンの外観に変更を加えることなく、パソコンを盗難の事情を知らないCに譲渡した。この場合、Aは、Cに対し、占有回収の訴えにより同パソコンの返還を請求することはできない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭56.3.19)は、200条2項ただし書の「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」という要件の解釈について、「侵奪を知つて占有を承継したということができるためには、右の承継人が少なくともなんらかの形での侵奪があつたことについての認識を有していたことが必要であり、単に前主の占有取得がなんらかの犯罪行為ないし不法行為によるものであつて、これによつては前主が正当な権利取得者とはなりえないものであることを知つていただけでは足りないことはもちろん、占有侵奪の事実があつたかもしれないと考えていた場合でも、それが単に1つの可能性についての認識にとどまる限りは、未だ侵奪の事実を知つていたものということはできないと解するのが相当である。」と判示している。Cは200条2項本文の「特定承継人」に当たるところ、Cはパソコンの譲渡を受けた際、盗難の事情を知らなかったのであるから、「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」に当たらない。したがって、Aは、Cに対し、占有回収の訴えにより同パソコンの返還を請求することはできない。
判例(最判昭56.3.19)は、200条2項ただし書の「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」という要件の解釈について、「侵奪を知つて占有を承継したということができるためには、右の承継人が少なくともなんらかの形での侵奪があつたことについての認識を有していたことが必要であり、単に前主の占有取得がなんらかの犯罪行為ないし不法行為によるものであつて、これによつては前主が正当な権利取得者とはなりえないものであることを知つていただけでは足りないことはもちろん、占有侵奪の事実があつたかもしれないと考えていた場合でも、それが単に1つの可能性についての認識にとどまる限りは、未だ侵奪の事実を知つていたものということはできないと解するのが相当である。」と判示している。Cは200条2項本文の「特定承継人」に当たるところ、Cはパソコンの譲渡を受けた際、盗難の事情を知らなかったのであるから、「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」に当たらない。したがって、Aは、Cに対し、占有回収の訴えにより同パソコンの返還を請求することはできない。
総合メモ
占有の訴えと本権に基づく反訴許否 最一小判昭和40年3月4日
総合メモ
占有回収の訴えと占有の継続 最三小判昭和44年12月2日
概要
占有を奪われた者は、占有回収の訴えを提起して勝訴し、現実にその物の占有を回復した場合は、203条ただし書により、現実に占有しなかった間も占有を失わず占有が継続していたものと擬制される。
判例
事案:占有を奪われた者が、占有回収の訴えを提起して勝訴し、現実にその物の占有を回復した場合、現実に占有しなかった間も占有を失わず占有が継続していたと擬制されるかが問題となった。
判旨:「民法203条本文によれば、占有権は占有者が占有物の所持を失うことによつて消滅するのであり、ただ、占有者は、同条但書により、占有回収の訴を提起して勝訴し、現実にその物の占有を回復したときは、右現実に占有しなかつた間も占有を失わず占有が継続していたものと擬制されると解するのが相当である。」
判旨:「民法203条本文によれば、占有権は占有者が占有物の所持を失うことによつて消滅するのであり、ただ、占有者は、同条但書により、占有回収の訴を提起して勝訴し、現実にその物の占有を回復したときは、右現実に占有しなかつた間も占有を失わず占有が継続していたものと擬制されると解するのが相当である。」
過去問・解説
(H24 共通 第14問 イ)
留置権者が目的物の占有を奪われた場合、留置権者が占有回収の訴えを提起して勝訴し、現実の占有を回復すれば、留置権は消滅しない。
留置権者が目的物の占有を奪われた場合、留置権者が占有回収の訴えを提起して勝訴し、現実の占有を回復すれば、留置権は消滅しない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭44.12.2)は、「占有回収の訴を提起して勝訴し、現実にその物の占有を回復したときは、右現実に占有しなかつた間も占有を失わず占有が継続していたものと擬制されると解するのが相当である。」と判示している。そうすると、302条本文は、「留置権は、留置権者が留置物の占有を失うことによって、消滅する。」と規定しているものの、留置権者が目的物の占有を奪われた場合において、留置権者が占有回収の訴えを提起して勝訴し、現実の占有を回復すれば、現実に占有しなかった間も占有を失わず占有が継続していたものと擬制されるから、同条本文は適用されず、留置権は消滅しない。
判例(最判昭44.12.2)は、「占有回収の訴を提起して勝訴し、現実にその物の占有を回復したときは、右現実に占有しなかつた間も占有を失わず占有が継続していたものと擬制されると解するのが相当である。」と判示している。そうすると、302条本文は、「留置権は、留置権者が留置物の占有を失うことによって、消滅する。」と規定しているものの、留置権者が目的物の占有を奪われた場合において、留置権者が占有回収の訴えを提起して勝訴し、現実の占有を回復すれば、現実に占有しなかった間も占有を失わず占有が継続していたものと擬制されるから、同条本文は適用されず、留置権は消滅しない。
(H26 予備 第5問 2)
Aが所有して占有する動産を奪ったBが、この動産をCに売って引き渡した。AがCに対して占有回収の訴えを提起した場合、Aは、占有回収の訴えを提起したことにより占有を継続していたとみなされる。
Aが所有して占有する動産を奪ったBが、この動産をCに売って引き渡した。AがCに対して占有回収の訴えを提起した場合、Aは、占有回収の訴えを提起したことにより占有を継続していたとみなされる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭44.12.2)は、「占有回収の訴を提起して勝訴し、現実にその物の占有を回復したときは、右現実に占有しなかつた間も占有を失わず占有が継続していたものと擬制されると解するのが相当である。」と判示している。したがって、Aは、占有回収の訴えを提起したのみでは、占有を継続していたとみなされることはなく、当該訴えにおいて勝訴し、現実に動産の占有を回復したときに初めて、占有を継続していたとみなされる。
判例(最判昭44.12.2)は、「占有回収の訴を提起して勝訴し、現実にその物の占有を回復したときは、右現実に占有しなかつた間も占有を失わず占有が継続していたものと擬制されると解するのが相当である。」と判示している。したがって、Aは、占有回収の訴えを提起したのみでは、占有を継続していたとみなされることはなく、当該訴えにおいて勝訴し、現実に動産の占有を回復したときに初めて、占有を継続していたとみなされる。
(R4 共通 第11問 オ)
留置権者が留置物の占有を奪われたとしても、占有回収の訴えによってその物の占有を回復すれば、留置権は消滅しない。
留置権者が留置物の占有を奪われたとしても、占有回収の訴えによってその物の占有を回復すれば、留置権は消滅しない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭44.12.2)は、「占有回収の訴を提起して勝訴し、現実にその物の占有を回復したときは、右現実に占有しなかつた間も占有を失わず占有が継続していたものと擬制されると解するのが相当である。」と判示している。そうすると、302条本文は、「留置権は、留置権者が留置物の占有を失うことによって、消滅する。」と規定しているが、留置権者が留置物の占有を奪われたとしても、占有回収の訴えによってその物の占有を回復すれば、現実に占有しなかった間も占有を失わず占有が継続していたものと擬制されるから、同条本文は適用されず、留置権は消滅しない。
判例(最判昭44.12.2)は、「占有回収の訴を提起して勝訴し、現実にその物の占有を回復したときは、右現実に占有しなかつた間も占有を失わず占有が継続していたものと擬制されると解するのが相当である。」と判示している。そうすると、302条本文は、「留置権は、留置権者が留置物の占有を失うことによって、消滅する。」と規定しているが、留置権者が留置物の占有を奪われたとしても、占有回収の訴えによってその物の占有を回復すれば、現実に占有しなかった間も占有を失わず占有が継続していたものと擬制されるから、同条本文は適用されず、留置権は消滅しない。
総合メモ
民法第162条第2項にいう平穏の占有の意義 最二小判昭和41年4月15日
過去問・解説
(R6 司法 第6問 ア)
土地の占有者が所有者からの明渡請求を拒否して占有を継続してきたときは、取得時効の要件である平穏な占有があるとはいえない。
土地の占有者が所有者からの明渡請求を拒否して占有を継続してきたときは、取得時効の要件である平穏な占有があるとはいえない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭41.4.15)は、162条各項のいわゆる平穏の占有とは、占有者がその占有を取得し、又は、保持するについて、暴行強迫などの違法強暴の行為を用いていない占有をいう旨判示している。したがって、土地の占有者が所有者からの明渡請求を拒否して占有を継続してきたにとどまるときは、その占有を取得し、又は、保持するについて、暴行強迫などの違法強暴の行為を用いていない占有であるといえるため、取得時効の要件である平穏な占有があるといえる。
判例(最判昭41.4.15)は、162条各項のいわゆる平穏の占有とは、占有者がその占有を取得し、又は、保持するについて、暴行強迫などの違法強暴の行為を用いていない占有をいう旨判示している。したがって、土地の占有者が所有者からの明渡請求を拒否して占有を継続してきたにとどまるときは、その占有を取得し、又は、保持するについて、暴行強迫などの違法強暴の行為を用いていない占有であるといえるため、取得時効の要件である平穏な占有があるといえる。