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弁済総則、供託、弁済による代位

債権者が弁済の受領を拒むことが明確な場合における口頭の提供と供託 大判大正11年10月25日

概要
債権者が弁済の受領を拒むことが明らかなときには、債務者は口頭の提供を要せずに、供託をすることができる。
判例
事案:債権者が弁済の受領を拒むことが明確な場合において、口頭の提供をすることなく供託をすることができるかが問題となった。

判旨:「債権者カ債務者ニ対シ予メ弁済ノ受領ヲ拒ミタル場合ニ債務者カ其ノ目的物ヲ供託スルコトニ因リテ債務ヲ免ルルヲ得ルカ為ニハ何等特別ノ事情ノ存セサルトキハ債務者ニ於テ弁済ノ準備ヲ為シタルコトヲ債権者ニ通知シ其ノ受領ヲ催告スルコトヲ必要トスヘキモ債務者カ債権者ニ対シ債務ノ弁済ヲ為シタル後債権者ヨリ或給付ヲ受クル場合ニ於テ債権者カ予メ其ノ弁済ノ受領ヲ拒ミタルトキハ自己ノ主張ヲ維持スルノ必要上之ヲ受領セサルヘキコト明確ナルヲ以テ債務者ハ更ニ債権者ニ対シテ右ノ通知及催告ヲナスヲ要セス直ニ供託ヲ為シテ其ノ債務ヲ免ルルコトヲ得ヘキコトハ当院判例ノ認ムル所ナリ(明治45年(オ)第106号同年7月3日判決参照)。」
過去問・解説
(H30 司法 第20問 イ)
口頭の提供をしても債権者が弁済の受領を拒むことが明確な場合、債務者は、口頭の提供をしなくても、供託することができる。

(正答)

(解説)
判例(大判大11.10.25)は、債権者が弁済の受領を拒むことが明らかなときには、債務者は口頭の提供を要せずに、供託をすることができる旨判示している。

(R4 司法 第21問 ア)
弁済者は、口頭の提供をしても債権者が受領を拒むことが明確である場合には、弁済の目的物を直ちに供託することができる。

(正答)

(解説)
判例(大判大11.10.25)は、債権者が弁済の受領を拒むことが明らかなときには、債務者は口頭の提供を要せずに、供託をすることができる旨判示している。
総合メモ

弁済を受領しない意思が明確な債権者に口頭の提供をしない場合と債務不履行 最大判昭和32年6月5日

概要
債権者が契約の存在を否定する等、弁済を受領しない意思が明確と認められるときは、債務者は口頭の提供をしなくても債務不履行の責を免れる。
判例
事案:債権者が弁済を受領しない意思が明確な場合においても、債務者は、口頭の提供をしなければ債務不履行責任を負うこととなるかが問題となった。

判旨:「債権者が予め弁済の受領を拒んだときは、債務者をして現実の提供をなさしめることは無益に帰する場合があるから、これを緩和して民法493条但書において、債務者は、いわゆる言語上の提供、すなわち弁済の準備をなしその旨を通知してその受領を催告するを以て足りると規定したのである。そして、債権者において予め受領拒絶の意思を表示した場合においても、その後意思を翻して弁済を受領するに至る可能性があるから、債権者にかかる機会を与えるために債務者をして言語上の提供をなさしめることを要するものとしているのである。しかし、債務者が言語上の提供をしても、債権者が契約そのものの存在を否定する等弁済を受領しない意思が明確と認められる場合においては、債務者が形式的に弁済の準備をし且つその旨を通知することを必要とするがごときは全く無意義であって、法はかかる無意義を要求しているものと解することはできない。それ故、かかる場合には、債務者は言語上の提供をしないからといつて、債務不履行の責に任ずるものということはできない。」
過去問・解説
(R1 司法 第20問 ウ)
賃借人には債務不履行がないのに、賃貸人が債務不履行による賃貸借契約の解除を主張して賃料の受領を拒絶し、口頭の提供をしても賃料の弁済を受領しない意思が明確である場合、賃借人は、賃料債務について、口頭の提供をしなくても、履行遅滞の責任を負わない。

(正答)

(解説)
判例(最大判昭32.6.5)は、「債務者が言語上の提供をしても、債権者が契約そのものの存在を否定する等弁済を受領しない意思が明確と認められる場合においては、債務者が形式的に弁済の準備をし且つその旨を通知することを必要とするがごときは全く無意義であって、法はかかる無意義を要求しているものと解することはできない。それ故、かかる場合には、債務者は言語上の提供をしないからといつて、債務不履行の責に任ずるものということはできない。」と判示している。
総合メモ

受領しない意思が明確な場合における弁済の提供 最一小判昭和44年5月1日

概要
弁済の準備ができない経済状態にあるため口頭の提供もできない債務者は、債権者が弁済を受領しない意思が明確な場合であっても、弁済の提供をしないかぎり、債務不履行の責を免れない。
判例
事案:弁済の準備をできない状態にあるため口頭の提供もできない債務者は、債権者が弁済を受領しない意思が明確な場合において、弁済の提供をしなくても債務不履行責任を免れることとなるかが問題となった。

判旨:「弁済の準備ができない経済状態にあるため言語上の提供もできない債務者は、債権者が弁済を受領しない意思が明確と認められるときでも、弁済の提供をしないことによって債務不履行の責を免かれないものと解すべきである。けだし、弁済に関して債務者のなすべき準備の程度と債権者のなすべき協力の程度とは、信義則に従って相関的に決せられるべきものであるところ、債権者が弁済を受領しない意思が明確であると認められるときには、債務者において言語上の提供をすることを必要としないのは、債権者により現実になされた協力の程度に応じて、信義則上、債務者のなすべき弁済の準備の程度の軽減を計っているものであつて、逆に、債務者が経済状態の不良のため弁済の準備ができない状態にあるときは、そもそも債権者に協力を要求すべきものではないから、現実になされた債権者の協力の程度とはかかわりなく、信義則上このような債務者に前記のような弁済の準備の程度についての軽減を計るべきいわれはないのである。」
過去問・解説
(H22 司法 第21問 3)
弁済の準備ができない経済状態にあるため口頭の提供をすることができない債務者は、債権者が弁済を受領しない意思が明確な場合であっても、弁済の提供をしないことによる債務不履行の責任を免れない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭44.5.1)は、「弁済の準備ができない経済状態にあるため言語上の提供もできない債務者は、債権者が弁済を受領しない意思が明確と認められるときでも、弁済の提供をしないことによって債務不履行の責を免かれないものと解すべきである。」と判示している。
総合メモ

474条2項における「弁済をするについて正当な利益を有するもの」 最三小判昭和39年4月21日

概要
474条2項にいう「正当な利益を有する者」とは、弁済をするについて法律上の利害関係を有する第三者をいうものと解すべきである。
判例
事案:474条2項にいう「弁済をするについて正当な利益を有するもの」の意義が問題となった。

判旨:「民法第474条第2項にいう「利害ノ関係」を有する者とは、物上保証人、担保不動産の第三取得者などのように弁済をすることに法律上の利害関係を有する第三者をいうものと解するのが相当であ…る。」
過去問・解説
(R1 共通 第19問 ウ)
債務者Aが債権者Bに対して負う金銭債務(以下、「本件債務」という。)に関して、本件債務の物上保証人は、Aの意思に反しては、本件債務を弁済することができない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭39.4.21)は、「民法第474条第2項にいう「利害ノ関係」を有する者とは、物上保証人、担保不動産の第三取得者などのように弁済をすることに法律上の利害関係を有する第三者をいうものと解するのが相当であ…る。」と判示しており、この判例の理解は、改正民法下における474条2項本文の「弁済をするについて正当な利益を有する者」の解釈においても妥当する。そして、同本文は、「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。」と規定しているから、反対に、「弁済をするについて正当な利益を有する者」に当たれば、債務者の意思に反しても弁済をすることができるといえる。本肢においては、本件債務の物上保証人は、「弁済をするについて正当な利益を有する者」にあたるから、債務者であるAの意思に反しても、本件債務を弁済することができる。
総合メモ

借地上の建物の賃借人と地代の弁済についての利害関係の有無 最二小判昭和63年7月1日

概要
借地上の建物の賃借人は、地代の弁済について法律上の利害関係を有する。
判例
事案:借地上の建物の賃借人が、地代の弁済について法律上の利害関係を有するかが問題となった。

判旨:「借地上の建物の賃借人はその敷地の地代の弁済について法律上の利害関係を有すると解するのが相当である。けだし、建物賃借人と土地賃貸人との間には直接の契約関係はないが、土地賃借権が消滅するときは、建物賃借人は土地賃貸人に対して、賃借建物から退去して土地を明け渡すべき義務を負う法律関係にあり、建物賃借人は、敷地の地代を弁済し、敷地の賃借権が消滅することを防止することに法律上の利益を有するものと解されるからである。」
過去問・解説
(H22 司法 第24問 エ)
Aが所有する土地をAから建物所有目的で賃借したBが、同土地上に自ら建築して所有する建物をCに賃貸して引き渡した。Aが土地の賃料の支払をCに対し催告した場合において、Cは、Bの意思に反するときは、この催告に応じて賃料を支払うことができない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭63.7.1)は、「借地上の建物の賃借人はその敷地の地代の弁済について法律上の利害関係を有すると解するのが相当である。」と判示しており、この判例の理解は、改正民法下における474条2項本文の「弁済をするについて正当な利益を有する者」の解釈にも妥当すると解される。そして、同本文は、「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。」と規定しているから、反対に、「弁済をするについて正当な利益を有する者」に当たれば、債務者の意思に反しても弁済をすることができるといえる。
本肢においては、Aが所有する土地をAから建物所有目的で賃借したBが、同土地上に自ら建築して所有する建物をCに賃貸して引き渡したという場合、CはAが所有する土地の賃料の「弁済をするについて正当な利益を有する者」に当たるといえる。したがって、Aが土地の賃料の支払をCに対し催告した場合において、Cは、Bの意思に反するときであっても、この催告に応じて賃料を支払うことができる。

(H23 司法 第28問 3)
借地上の建物の賃借人は、その敷地の地代の弁済について法律上の利害関係を有するとはいえないので、借地人の意思に反して、第三者として地代を弁済することはできない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭63.7.1)は、「借地上の建物の賃借人はその敷地の地代の弁済について法律上の利害関係を有すると解するのが相当である。」と判示しており、この判例の理解は、改正民法下における474条2項本文の「弁済をするについて正当な利益を有する者」の解釈にも妥当すると解される。そして、同本文は、「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。」と規定しているから、反対に、「弁済をするについて正当な利益を有する者」に当たれば、債務者の意思に反しても弁済をすることができるといえる。
したがって、借地上の建物の賃借人は、その敷地の地代の弁済について法律上の利害関係を有するといえ、「弁済をするについて正当な利益を有する者」に当たるから、借地人の意思に反して、第三者として地代を弁済することができる。

(H25 共通 第23問 ア)
判例によれば、土地の賃借人がその土地上の建物を賃貸している場合において、建物の賃借人は、その土地の賃料について、土地の賃借人の意思に反しても弁済をすることができる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭63.7.1)は、「借地上の建物の賃借人はその敷地の地代の弁済について法律上の利害関係を有すると解するのが相当である。」と判示しており、この判例の理解は、改正民法下における474条2項本文の「弁済をするについて正当な利益を有する者」の解釈にも妥当すると解される。そして、同本文は、「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。」と規定しているから、反対に、「弁済をするについて正当な利益を有する者」に当たれば、債務者の意思に反しても弁済をすることができるといえる。
したがって、土地の賃借人がその土地上の建物を賃貸している場合において、建物の賃借人は、「弁済をするについて正当な利益を有する者」に当たるから、その土地の賃料について、土地の賃借人の意思に反しても弁済をすることができる。

(H27 司法 第19問 ウ)
Aの所有する甲土地を、Bが建物の所有を目的として賃借し、Bが甲土地上に乙建物を建築して乙建物をCに賃貸した場合、BがAに対し甲土地の賃料の支払を拒絶しているときは、Cは、Aに対し甲土地の賃料の支払をすることができる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭63.7.1)は、「借地上の建物の賃借人はその敷地の地代の弁済について法律上の利害関係を有すると解するのが相当である。」と判示しており、この判例の理解は、改正民法下における474条2項本文の「弁済をするについて正当な利益を有する者」の解釈にも妥当すると解される。そして、同本文は、「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。」と規定しているから、反対に、「弁済をするについて正当な利益を有する者」に当たれば、債務者の意思に反しても弁済をすることができるといえる。
本肢においては、Aの所有する甲土地を、Bが建物の所有を目的として賃借し、Bが甲土地上に乙建物を建築して乙建物をCに賃貸した場合、CはAが所有する甲土地の賃料の「弁済をするについて正当な利益を有する者」に当たるといえる。したがって、BがAに対し甲土地の賃料の支払を拒絶しているときは、Cは、Aに対し甲土地の賃料の支払をすることができる。

(H29 司法 第21問 イ)
Aがその所有する土地をBに賃貸し、Bがその土地上にあるB所有の建物をCに賃貸していた場合、Cは、Bの意思に反するときでも、AB間の賃貸借契約における賃料について、Aに弁済をすることができる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭63.7.1)は、「借地上の建物の賃借人はその敷地の地代の弁済について法律上の利害関係を有すると解するのが相当である。」と判示しており、この判例の理解は、改正民法下における474条2項本文の「弁済をするについて正当な利益を有する者」の解釈にも妥当すると解される。そして、同本文は、「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。」と規定しているから、反対に、「弁済をするについて正当な利益を有する者」に当たれば、債務者の意思に反しても弁済をすることができるといえる。
本肢においては、Aがその所有する土地をBに賃貸し、Bがその土地上にあるB所有の建物をCに賃貸していた場合、CはAが所有する土地の賃料の「弁済をするについて正当な利益を有する者」に当たるといえる。したがって、Cは、Bの意思に反するときでも、AB間の賃貸借契約における賃料について、Aに弁済をすることができる。

(R5 司法 第20問 イ)
建物の所有を目的とする土地の賃貸借がされた場合において、その建物を賃借した者は、土地の賃借人の意思に反しても、その土地の賃料債務の弁済をすることができる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭63.7.1)は、「借地上の建物の賃借人はその敷地の地代の弁済について法律上の利害関係を有すると解するのが相当である。」と判示しており、この判例の理解は、改正民法下における474条2項本文の「弁済をするについて正当な利益を有する者」の解釈にも妥当すると解される。そして、同本文は、「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。」と規定しているから、反対に、「弁済をするについて正当な利益を有する者」に当たれば、債務者の意思に反しても弁済をすることができるといえる。
したがって、建物の所有を目的とする土地の賃貸借がされた場合において、その建物を賃借した者は、「弁済をするについて正当な利益を有する者」に当たるから、土地の賃借人の意思に反しても、その土地の賃料債務の弁済をすることができる。
総合メモ

債権の準占有者と弁済者の善意無過失 最三小判昭和37年8月21日

概要
債権者の代理人と称して債権を行使する者も、478条のいわゆる債権の準占有者に当たる。
判例
事案:債権者の代理人と称して債権を行使する者が、478条のいわゆる債権の準占有者に当たるかが問題となった。

判旨:「債権者の代理人と称して債権を行使する者も民法478条にいわゆる債権の準占有者に該る…。」
過去問・解説
(H26 共通 第21問 ア)
A名義のB銀行に対する預金に係る通帳と印鑑を窃取したCが、Aの代理人と称して、B銀行から預金の払戻しを受けた場合、Cは、自己のためにする意思でしたものではなく、債権の準占有者には当たらないので、B銀行の過失の有無にかかわらず、弁済の効力は生じない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭37.8.21)は、「債権者の代理人と称して債権を行使する者も民法478条にいわゆる債権の準占有者に該る…。」と判示している。この判例の理解は、改正民法下における478条の「受領権者…以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するもの」の解釈にも妥当すると解されている。そして、同条は、「受領権者…以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するものに対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する。」と規定している。
本肢においては、Aの代理人と称しているCは、準占有者に当たり、「受領権者…以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者」に当たるといえるから、B銀行が善意無過失であれば、弁済の効力が生じる。

(H29 司法 第21問 ウ)
AのBに対する債権についてCがAの代理人であると偽って、Bから弁済を受けた場合には、表見代理の要件を満たさない限り、Bは、Aに対し、その弁済が有効であると主張することはできない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭37.8.21)は、「債権者の代理人と称して債権を行使する者も民法478条にいわゆる債権の準占有者に該る…。」と判示している。この判例の理解は、改正民法下における478条の「受領権者…以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するもの」の解釈にも妥当すると解されている。そして、同条は、「受領権者…以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するものに対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する。」と規定している。
本肢においては、AのBに対する債権についてCがAの代理人であると偽って、Bから弁済を受けた場合、Cは、「受領権者…以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するもの」に当たるから、表見代理の要件を満たさなかったとしても、Bが、Cが受領権者でないことについて善意無過失であった場合には、478条により、Bは、Aに対し、その弁済が有効であると主張することができる。
総合メモ

無記名定期預金の相殺と478条 最三小判昭和48年3月27日

概要
銀行が、定期預金債権に担保の設定をうけ、または、当該債権を受働債権として相殺をする予定のもとに、新たに貸付をする場合においては、預金者を定め、その者に対し貸付をし、これによって生じた貸金債権を自働債権として定期預金債務と相殺がされるに至ったとき等は、銀行は、銀行が預金者と定めた者が真実の預金者と異なるとしても、銀行として尽くすべき相当な注意を用いた場合は、478条の類推適用によって、銀行が預金者と定めた者に対する貸金債権と定期預金債務との相殺等をもって真実の預金者に対抗できる。
判例
事案:銀行が定期預金の預金者と認定した者に対して貸付をした場合において、貸付債権と定期預金債務を相殺するときに、478条の類推適用がされるかが問題となった。

判旨:「銀行が、無記名定期預金債権に担保の設定をうけ、または、右債権を受働債権として相殺をする予定のもとに、新たに貸付をする場合においては、預金者を定め、その者に対し貸付をし、これによって生じた貸金債権を自働債権として無記名定期預金債務と相殺がされるに至ったとき等は、実質的には、無記名定期預金の期限前払戻と同視することができるから、銀行は、銀行が預金者と定めた者(以下、表見預金者という。)が真実の預金者と異なるとしても、銀行として尽くすべき相当な注意を用いた以上、民法478条の類推適用…によつて、表見預金者に対する貸金債権と無記名定期預金債務との相殺等ををもつて真実の預金者に対抗しうるものと解する…。」
過去問・解説
(H26 共通 第21問 イ)
AがB銀行に対する定期預金債権を有していたところ、Cが、Aと称して、B銀行に対し、その定期預金債権を担保とした貸付けの申込みをし、B銀行は、CをAと誤信したため貸付けに応じた。その後、貸付金債権の履行期に弁済がなかったため、B銀行がその貸付金債権を自働債権としてその定期預金債権と相殺をした場合において、貸付けの際に、金融機関として負担すべき相当の注意義務を尽くしていたときは、B銀行は、その相殺をもってAに対抗することができる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭48.3.27)は、「銀行が、無記名定期預金債権に担保の設定をうけ、…新たに貸付をする場合においては、預金者を定め、その者に対し貸付をし、これによって生じた貸金債権を自働債権として無記名定期預金債務と相殺がされるに至ったとき等は、実質的には、無記名定期預金の期限前払戻と同視することができるから、銀行は、銀行が預金者と定めた者(以下、表見預金者という。)が真実の預金者と異なるとしても、銀行として尽くすべき相当な注意を用いた以上、民法478条の類推適用…によつて、表見預金者に対する貸金債権と無記名定期預金債務との相殺等ををもつて真実の預金者に対抗しうるものと解する…。」と判示している。本肢においても、貸付金債権の履行期に弁済がなかったため、B銀行がその貸付金債権を自働債権としてその定期預金債権と相殺をした場合において、貸付けの際に、金融機関として負担すべき相当の注意義務を尽くしていたときは、B銀行は、その相殺をもってAに対抗することができる。
総合メモ

指名債権の二重譲渡と478条 最二小判昭和61年4月11日

概要
①二重に譲渡された指名債権の債務者が、467条2項所定の対抗要件を後れて具備した譲受人に対して弁済をした場合においても、478条の適用がある。
②二重に譲渡された指名債権の債務者が、467条2項所定の対抗要件を後れて具備した譲受人を真の債権者であると信じてした弁済について過失がないというためには、対抗要件を先に具備した譲受人の債権譲受又は対抗要件に瑕疵があるためその効力を生じないと誤信してもやむを得ない事情があるなど対抗要件を後れて具備した譲受人を真の債権者であると信ずるにつき相当な理由があることを要する。
判例
事案:①二重に譲渡された指名債権の債務者が、467条2項所定の対抗要件を後れて具備した譲受人に対して弁済をした場合において、478条の適用があるかが問題となった。
 ②二重に譲渡された指名債権の債務者が、467条2項所定の対抗要件を後れて具備した譲受人に対して弁済をした場合において、当該譲受人が真の債権者であると信じてした弁済について過失がなかった(478条)というための要件が問題となった。

判旨:①「二重に譲渡された指名債権の債務者が、民法467条2項所定の対抗要件を具備した他の譲受人(以下「優先譲受人」という。)よりのちにこれを具備した譲受人(以下「劣後譲受人」といい、「譲受人」には、債権の譲受人と同一債権に対し仮差押命令及び差押・取立命令の執行をした者を含む。)に対してした弁済についても、同法478条の規定の適用があるものと解すべきである。」
 ②「民法467条2項の規定は、指名債権の二重譲渡につき劣後譲受人は同項所定の対抗要件を先に具備した優先譲受人に対抗しえない旨を定めているのであるから、優先譲受人の債権譲受行為又はその対抗要件に瑕疵があるためその効力を生じない等の場合でない限り、優先譲受人が債権者となるべきものであつて、債務者としても優先譲受人に対して弁済すべきであり、また、債務者が、右譲受人に対して弁済するときは、債務消滅に関する規定に基づきその効果を主張しうるものである。したがって、債務者において、劣後譲受人が真正の債権者であると信じてした弁済につき過失がなかったというためには、優先譲受人の債権譲受行為又は対抗要件に瑕疵があるためその効力を生じないと誤信してもやむを得ない事情があるなど劣後譲受人を真の債権者であると信ずるにつき相当な理由があることが必要であると解すべきである。」
過去問・解説
(H26 共通 第21問 オ)
Aは、Bに対する債権をC及びDに二重に譲渡し、それぞれの譲渡につきBに対して確定日付のある証書で通知をしたが、その到達はCへの譲渡についてのものが先であった場合において、BがDに対してした弁済が効力を生ずるためには、Dを真の債権者であると信ずるにつき相当な理由があることを要する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭61.4.11)は、「二重に譲渡された指名債権の債務者が、民法467条2項所定の対抗要件を具備した他の譲受人(以下「優先譲受人」という。)よりのちにこれを具備した譲受人(以下「劣後譲受人」といい、「譲受人」には、債権の譲受人と同一債権に対し仮差押命令及び差押・取立命令の執行をした者を含む。)に対してした弁済についても、同法478条の規定の適用があるものと解すべきである。」と判示した上で、「債務者において、劣後譲受人が真正の債権者であると信じてした弁済につき過失がなかったというためには、優先譲受人の債権譲受行為又は対抗要件に瑕疵があるためその効力を生じないと誤信してもやむを得ない事情があるなど劣後譲受人を真の債権者であると信ずるにつき相当な理由があることが必要であると解するべきである。」と判示している。
したがって、Aが、Bに対する債権をC及びDに二重に譲渡し、それぞれの譲渡につきBに対して確定日付のある証書で通知をしたが、その到達はCへの譲渡についてのものが先であった場合において、BがDに対して弁済をした場合には、478条が適用され、当該弁済が効力を生ずるためには、Dを真の債権者であると信ずるにつき相当な理由があることを要する。
総合メモ

金融機関が記名式定期預金の預金者と誤認した者に対する貸付債権をもつてした預金債権との相殺につき478条が類推適用されるために必要な注意義務を尽くしたか否かの判断の基準時 最一小判昭和59年2月23日

概要
金融機関が、記名式定期預金につき真実の預金者と異なる者を預金者と認定して貸付をしたのち、貸付債権を自働債権とし、預金債権を受働債権としてした相殺が478条の類推適用により真実の債権者に対して効力を生ずるためには、当該貸付時において、預金者と誤信した者を預金者本人と認定するにつき金融機関として負担すべき相当の注意義務を尽くしたと認められれば足りる。
判例
事案:金融機関が、記名式定期預金につき真実の預金者と異なるものを預金者として認定したのち、貸付債権を自働債権とし、預金債権を受働債権として相殺をした場合において、当該相殺が478条の類推適用により真実の債権者に対して効力を生ずるためには、いつの時点において、預金者と誤信した者を預金者本人と認定するにつき金融機関として負担すべき相当の注意義務を尽くしたと認められることが必要かが問題となった。

判旨:「金融機関が、自行の記名式定期預金の預金者名義人であると称する第三者から、その定期預金を担保とする金銭貸付の申込みを受け、右定期預金についての預金通帳及び届出印と同一の印影の呈示を受けたため同人を右預金者本人と誤信してこれに応じ、右定期預金に担保権の設定を受けてその第三者に金銭を貸し付け、その後、担保権実行の趣旨で右貸付債権を自働債権とし右預金債権を受働債権として相殺をした場合には、少なくともその相殺の効力に関する限りは、これを実質的に定期預金の期限前解約による払戻と同視することができ、また、そうするのが相当であるから、右金融機関が、当該貸付等の契約締結にあたり、右第三者を預金者本人と認定するにつき、かかる場合に金融機関として負担すべき相当の注意義務を尽くしたと認められるときには、民法478条の規定を類推適用し、右第三者に対する貸金債権と担保に供された定期預金債権との相殺をもつて真実の預金者に対抗することができるものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H30 司法 第21問 オ)
AがB銀行に対する定期預金債権を有していたところ、Cが、Aと称して、B銀行に対し、その定期預金債権を担保とした貸付けの申込みをし、B銀行は、CをAと誤信したため貸付けに応じた。この場合、B銀行は、貸付けの際に、Cを預金者本人と認定するにつき金融機関として負担すべき相当の注意義務を尽くしていたとしても、その貸付債権と定期預金債権とを対当額において相殺することができない。

(正答)

(解説)
(最判昭59.2.23)は、「金融機関が、自行の記名式定期預金の預金者名義人であると称する第三者から、その定期預金を担保とする金銭貸付の申込みを受け、右定期預金についての預金通帳及び届出印と同一の印影の呈示を受けたため同人を右預金者本人と誤信してこれに応じ、右定期預金に担保権の設定を受けてその第三者に金銭を貸し付け、その後、担保権実行の趣旨で右貸付債権を自働債権とし右預金債権を受働債権として相殺をした場合には、…右金融機関が、当該貸付等の契約締結にあたり、右第三者を預金者本人と認定するにつき、かかる場合に金融機関として負担すべき相当の注意義務を尽くしたと認められるときには、民法478条の規定を類推適用し、右第三者に対する貸金債権と担保に供された定期預金債権との相殺をもつて真実の預金者に対抗することができるものと解するのが相当である。」と判示している。本肢においては、AがB銀行に対する定期預金債権を有していたところ、Cが、Aと称して、B銀行に対し、その定期預金債権を担保とした貸付けの申込みをし、B銀行は、CをAと誤信したため貸付けに応じたのであるから、478条が類推適用される。したがって、B銀行は、貸付けの際に、Cを預金者本人と認定するにつき金融機関として負担すべき相当の注意義務を尽くしていたのであれば、その貸付債権と定期預金債権とを対当額において相殺することができる。
総合メモ

預金の払戻しと478条の適用の有無 最三小判平成15年4月8日

概要
無権限者のした機械払の方法による預金の払戻しについても、478条の適用がある。
判例
事案:無権限者が、機械払の方法により預金の払戻しをした場合において、478条の適用があるかが問題となった。

判旨:「無権限者のした機械払の方法による預金の払戻しについても、民法478条の適用があるものと解すべきであり、これが非対面のものであることをもって同条の適用を否定すべきではない。」
過去問・解説
(H30 共通 第19問 オ)
預金通帳を盗んだ者が預金通帳を使用して現金自動入出機から預金の払戻しを受ける行為については、弁済の効力が生じることはない。

(正答)

(解説)
判例(最判平15.4.8)は、「無権限者のした機械払の方法による預金の払戻しについても、民法478条の適用がある…。」と判示している。したがって、預金通帳を盗んだ者が預金通帳を使用して現金自動入出機から預金の払戻しを受ける行為についても、478条により弁済の効力が生じることがある。

(R6 司法 第21問 ウ)
真正なキャッシュカードを盗取した者が、機械払の方法により当該キャッシュカードに係る預金の払戻しを受けたときは、当該払戻しが受領権者としての外観を有する者に対する弁済として有効となることはない。

(正答)

(解説)
判例(最判平15.4.8) は、「無権限者のした機械払の方法による預金の払戻しについても、民法478条の適用がある…。」と判示している。したがって、真正なキャッシュカードを盗取した者が、機械払の方法により当該キャッシュカードに係る預金の払戻しを受けたときにおいても、478条が適用されることにより、当該払戻しが受領権者としての外観を有する者に対する弁済として有効となることがある。
総合メモ

約束手形の振出しと既存債務との関係 大判大正11年4月8日

概要
債務者が既存の債務に関し約束手形を振り出したときは、その債務の弁済のために振り出したものと推定され、債務者が当該振出を代物弁済であると主張する場合には、当該債務者は代物弁済のために振り出したことについて立証責任を負う。
判例
事案:債務者が既存の債務に関し約束手形を振り出した場合において、当該振出は債務の弁済のために振り出したものと推定されるのか、債務の弁済に代えて振り出したものと推定されるのかが問題となった。

判旨:「債務者カ既存ノ債務ニ關シ債權者ニ約束手形ヲ振出シタル場合ニ於テハ一應其ノ債務支拂ノ爲ニシタルモノト推定セラルヘキモノニシテ債務者ニ於テ更改又ハ代物辨濟ナリト主張スルトキハ之カ立證ヲ爲スノ責任アルモノトス何トナレハ更改又ハ代物辨濟アリタルトキハ既存ノ債權ニ附從セル質權抵當權保證等ノ擔保ハ手形ノ授受ト共ニ消滅スルモノニシテ債權者ハ通常斯カル不利益ヲ甘諾スルヲ欲セサルヘケレハナリ(大正6年(オ)第255號同年6月9日當院判決參照)。」
過去問・解説
(H18 司法 第4問 エ)
既存の金銭債務に関しての約束手形の振出しは、代物弁済と推定される。

(正答)

(解説)
判例(大判大11.4.8)は、債務者が既存の債務に関し約束手形を振り出したときは、その債務の弁済のために振り出したものと推定され、債務者が当該振出を代物弁済であると主張する場合には、当該債務者は代物弁済のために振り出したことについて立証責任を負う旨判示している。
総合メモ

不動産の所有権と代物弁済の成立要件 最一小判昭和39年11月26日

概要
482条にいう「他の給付」が不動産の所有権を移転することにある場合には、当事者がその意思表示をするだけでは足りず、登記その他引渡行為を終了し、第三者に対する対抗要件を具備したときでなければ、代物弁済は成立しないと解すべきである。
判例
事案:代物弁済において不動産の所有権を移転することが弁済の内容となっている場合に、482条にいう「他の給付」が認められるためには、対抗要件の具備まで必要かが問題となった。

判旨:「代物弁済が債務消滅の効力を生ずるには、債務者が本来の給付に代えてなす他の給付を現実に実行することを要し、単に代りの給付をなすことを債権者に約すのみでは足りず、従って他の給付が不動産の所有権を移転することに存する場合においては、当事者がその意思表示をなすのみでは足りず、登記その他引渡行為を終了し、法律行為が当事者間のみならず、第三者に対する関係においても全く完了したときでなければ代物弁済は成立しないと解すべきである(大正6年8月22日大審院判決、民録23輯下1293頁参照)。」
過去問・解説
(H24 司法 第22問 2)
判例によれば、金銭消費貸借契約を締結して1000万円を借り受けた債務者が、貸主との間で、金銭を支払う代わりに債務者所有の1000万円相当の土地を譲り渡す合意をしたときは、この合意の性質を代物弁済又は更改のいずれと解しても、合意成立の時点で旧債務は消滅する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭39.11.26)は、「代物弁済が債務消滅の効力を生ずるには、債務者が本来の給付に代えてなす他の給付を現実に実行することを要し、単に代りの給付をなすことを債権者に約すのみでは足りず、従って他の給付が不動産の所有権を移転することに存する場合においては、当事者がその意思表示をなすのみでは足りず、登記その他引渡行為を終了し、法律行為が当事者間のみならず、第三者に対する関係においても全く完了したときでなければ代物弁済は成立しないと解すべきである…。」と判示している。したがって、合意の性質を代物弁済と解したのであれば、合意成立の時点では旧債務は消滅せず、登記その他引渡行為を終了し、対抗要件を具備させて初めて旧債務が消滅する。
一方、513条は、「当事者が従前の債務に代えて、新たな債務であって次に掲げるものを発生させる契約をしたときは、従前の債務は、更改によって消滅する。」と規定している。したがって、合意の性質を更改と解したのであれば、合意成立の時点で旧債務は消滅する。

(H29 司法 第22問 ウ)
AのBに対する1000万円の債務(以下「本件債務」という。)について、AB間でA所有の甲土地で代物弁済をする合意をした。AがCから売買契約により甲土地の所有権を取得した後に代物弁済の合意がされ、その合意に基づいてAからBへの所有権移転登記がされた後、CがAの強迫を理由としてその売買契約を取り消したときは、Aは、Bに対し、本件債務の消滅を主張することができない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭39.11.26)は、「代物弁済が債務消滅の効力を生ずるには、債務者が本来の給付に代えてなす他の給付を現実に実行することを要し、単に代りの給付をなすことを債権者に約すのみでは足りず、従って他の給付が不動産の所有権を移転することに存する場合においては、当事者がその意思表示をなすのみでは足りず、登記その他引渡行為を終了し、法律行為が当事者間のみならず、第三者に対する関係においても全く完了したときでなければ代物弁済は成立しないと解すべきである…。」と判示している。したがって、代物弁済の合意に基づいてAからBへの所有権移転登記がなされたことで、代物弁済の効力が生じ本件債務が消滅したとも思える。
しかし、CがAの強迫を理由として売買契約を取り消したときは(96条1項)、同売買契約は遡及的に無効となり(121条)、Aは甲土地の所有権を取得することができない。そして、強迫による取消には第三者保護規定がないため、Bへの所有権移転は生じず、代物弁済の効力は生じないことになるから、Aは、Bに対し、本件債務の消滅を主張することができない。
総合メモ

不動産を目的とする代物弁済と不動産所有権移転の時期 最一小判昭和40年3月11日

概要
不動産を目的とする代物弁済の予約完結の意思表示がなされたときは、これにより、不動産の所有権移転の効果が生ずる。
判例
事案:不動産を目的とする代物弁済における当該不動産の所有権移転時期が問題となった。

判旨:「不動産所有権の譲渡を以てする代物弁済による債務消滅の効果は、移転登記の完了する迄生じないにせよ、そのことは、所有権移転の効果が代物弁済予約の完結の意思表示によって生ずることを妨げるものではない。」
過去問・解説
(H25 司法 第9問 4)
不動産の譲渡をもって代物弁済契約がされた場合、所有権移転登記をするまでは、その不動産の所有権が債権者に移転することはない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭40.3.11)は、「不動産所有権の譲渡を以てする代物弁済による債務消滅の効果は、移転登記の完了する迄生じないにせよ、そのことは、所有権移転の効果が代物弁済予約の完結の意思表示によって生ずることを妨げるものではない。」と判示している。
総合メモ

不動産所有権の譲渡をもって代物弁済をする場合における債務消滅の要件 最二小判昭和40年4月30日

概要
不動産所有権の譲渡をもって代物弁済をする場合の債務消滅の効力は、原則として、単に所有権移転の意思表示をなすのみでは足らず、所有権移転登記手続の完了によって生ずるものと解すべきである。
判例
事案:不動産所有権の譲渡をもって代物弁済をする場合において、債務消滅の効力が生じるためには、所有権移転登記の完了まで要するかが問題となった。

判旨:「債務者がその負担した給付に代えて不動産所有権の譲渡をもつて代物弁済する場合の債務消滅の効力は、原則として単に所有権移転の意思表示をなすのみでは足らず、所有権移転登記手続の完了によって生ずるものと解すべきである。」
過去問・解説
(H18 司法 第4問 オ)
土地をもってする代物弁済による債務消滅の効果を主張する場合、当事者の合意を主張立証すれば足り、対抗要件の具備まで主張立証する必要はない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭40.4.30)は、「債務者がその負担した給付に代えて不動産所有権の譲渡をもつて代物弁済する場合の債務消滅の効力は、原則として単に所有権移転の意思表示をなすのみでは足らず、所有権移転登記手続の完了によって生ずるものと解すべきである。」と判示している。したがって、土地をもってする代物弁済による債務消滅の効果を主張する場合、当事者の合意を主張立証だけでは足りず、対抗要件の具備まで主張立証する必要がある。
総合メモ

代物弁済と債務消滅に関する特約 最三小判昭和43年11月19日

概要
債務者が不動産所有権の譲渡をもって代物弁済をする場合でも、債権者が当該不動産の所有権移転登記手続に必要な一切の書類を債務者から受領しただけでただちに代物弁済による債務消滅の効力を生ぜしめる旨の特約が存するときには、債権者が債務者から当該書類を受領した時に、代物弁済による債務消滅の効力が生ずる。
判例
事案:不動産所有権の譲渡をもって代物弁済をする場合において、債権者が当該不動産の所有権移転登記手続に必要な一切の書類を債務者から受領しただけでただちに代物弁済による債務消滅の効力を生ぜしめる旨の特約の効力が問題となった。

判旨:「債務者がその負担した給付に代えて不動産所有権の譲渡をもつて代物弁済する場合の債務消滅の効力は、原則として、単に所有権移転の意思表示をなすのみでは足らず、所有権移転登記手続の完了によって生ずるものと解すべきであることは当裁判所の判例とするところである(昭和39年(オ)第665号同40年4月30日第二小法廷判決、集19巻3号768頁参照)。
 しかし、このことは、当事者間において、債権者が右不動産の所有権移転登記手続に必要な一切の書類を債務者から受領したときは右移転登記手続の実行をまたないでただちに代物弁済による債務消滅の効力を生ぜしめる旨の特約をすることを妨げるものではなく、かかる特約が存する場合には、債権者が債務者から右書類を受領したときに、ただちに代物弁済による債務消滅の効力が生ずるものと解すべきである。」
過去問・解説
(H29 司法 第22問 オ)
AのBに対する1000万円の債務(以下「本件債務」という。)について、AB間でA所有の甲土地で代物弁済をする合意をした。甲土地の所有権移転登記手続に必要な書類をBがAから受領した時点で本件債務の消滅の効果が生じるという特約がある場合、BがAからその書類を受領した時に、本件債務の消滅の効果が生じる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭43.11.19)は、「債務者がその負担した給付に代えて不動産所有権の譲渡をもつて代物弁済する場合の債務消滅の効力は、原則として、単に所有権移転の意思表示をなすのみでは足らず、所有権移転登記手続の完了によって生ずるものと解すべきであることは当裁判所の判例とするところである…。」と判示した上で、「しかし、このことは、当事者間において、債権者が右不動産の所有権移転登記手続に必要な一切の書類を債務者から受領したときは右移転登記手続の実行をまたないでただちに代物弁済による債務消滅の効力を生ぜしめる旨の特約をすることを妨げるものではなく、かかる特約が存する場合には、債権者が債務者から右書類を受領したときに、ただちに代物弁済による債務消滅の効力が生ずるものと解すべきである。」と判示している。
したがって、AB間の代物弁済の合意において、甲土地の所有権移転登記手続に必要な書類をBがAから受領した時点で本件債務の消滅の効果が生じるという特約がある場合、BがAからその書類を受領したときに、本件債務の消滅の効果が生じる。
総合メモ

不動産の代物弁済契約後その所有権移転登記手続完了前になされた弁済と代物弁済契約の効力 最三小判昭和43年12月24日

概要
不動産所有権譲渡を内容とする代物弁済契約は、その契約後、所有権移転登記手続の完了前になされた既存債務の弁済によってその効力を失う。
判例
事案:不動産の代物弁済契約がされた場合において、当該代物弁済契約に基づく所有権移転登記手続が完了する前になされた弁済によって、当該代物弁済契約の効力が失われるかが問題となった。

判旨:「債務者がその負担した給付に代えて不動産所有権の譲渡をもって代物弁済する場合の債務消滅の効力は、原則として単に所有権移転の意思表示をなすのみでは足らず、所有権移転登記手続の完了によって生ずることは、当裁判所の判例とするところである(最高裁昭和37年(オ)第1051号同39年11月26日第一小法廷判決民集18巻9号1984頁、同昭和39年(オ)第665号同40年4月30日第二小法廷判決民集19巻3号768頁参照)。
 したがって、右既存債務の弁済が、代物弁済による所有権移転の意思表示の後にされても、その所有権移転登記手続の完了前にされたときは、右意思表示は右弁済による既存債務の消滅によって、その効力を失うものと解するのを相当とする。」
過去問・解説
(H29 司法 第22問 イ)
AのBに対する1000万円の債務(以下「本件債務」という。)について、AB間でA所有の甲土地で代物弁済をする合意をした。代物弁済の合意をしても、その所有権移転登記手続の完了前であれば、AはBに1000万円を支払って、本件債務を弁済により消滅させることができる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭43.12.24)は、「既存債務の弁済が、代物弁済による所有権移転の意思表示の後にされても、その所有権移転登記手続の完了前にされたときは、右意思表示は右弁済による既存債務の消滅によって、その効力を失うものと解するのを相当とする。」と判示している。したがって、代物弁済の合意をしても、その所有権移転登記手続の完了前であれば、AはBに1000万円を支払って、本件債務を弁済により消滅させることができる。
総合メモ

不動産の代物弁済と所有権移転の時期 最二小判昭和57年6月4日

概要
不動産を目的とする代物弁済契約の意思表示がされたときは、これにより不動産の所有権移転の効果が生ずる。
判例
事案:不動産の代物弁済における所有権移転の時期が問題となった。

判旨:「不動産所有権の譲渡をもってする代物弁済による債務消滅の効果は、単に当事者がその意思表示をするだけでは足りず、登記その他引渡行為を完了し、第三者に対する対抗要件を具備したときでなければ生じないことはいうまでもないが(最高裁昭和37年(オ)第1051号同39年11月26日第一小法廷判決・民集18巻9号1984頁)、そのことは、代物弁済による所有権移転の効果が、原則として当事者間の代物弁済契約の意思表示によって生ずることを妨げるものではないと解するのが相当である(昭和39年(オ)第919号同40年3月11日第一小法廷判決・裁判集民事78号259頁)。」
過去問・解説
(H18 司法 第4問 ウ)
代物弁済として譲渡された土地の所有権の移転の効果を主張する場合、当事者の合意を主張立証すれば足り、対抗要件の具備まで主張立証する必要はない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭57.6.4)は、「不動産所有権の譲渡をもってする代物弁済による債務消滅の効果は、単に当事者がその意思表示をするだけでは足りず、登記その他引渡行為を完了し、第三者に対する対抗要件を具備したときでなければ生じないことはいうまでもないが…、そのことは、代物弁済による所有権移転の効果が、原則として当事者間の代物弁済契約の意思表示によって生ずることを妨げるものではないと解するのが相当である…。」と判示している。したがって、代物弁済として譲渡された土地の所有権の移転の効果を主張する場合、当事者の合意を主張立証すれば足り、対抗要件の具備まで主張立証する必要はない。

(H29 司法 第22問 ア)
AのBに対する1000万円の債務(以下「本件債務」という。)について、AB間でA所有の甲土地で代物弁済をする合意をした。Bが、甲土地の所有権を取得するには、代物弁済の合意に加えて、給付の完了として対抗要件を具備する必要がある。

(正答)

(解説)
判例(最判昭57.6.4)は、「不動産所有権の譲渡をもってする代物弁済による債務消滅の効果は、単に当事者がその意思表示をするだけでは足りず、登記その他引渡行為を完了し、第三者に対する対抗要件を具備したときでなければ生じないことはいうまでもないが…、そのことは、代物弁済による所有権移転の効果が、原則として当事者間の代物弁済契約の意思表示によって生ずることを妨げるものではないと解するのが相当である…。」と判示している。したがって、Bが、甲土地の所有権を取得するには、代物弁済の合意のみで足り、給付の完了として対抗要件を具備する必要はない。

(R5 司法 第20問 エ)
金銭債権の債務者が債権者との間で金銭の支払に代えて特定物を譲渡することにより債務を消滅させる旨の契約をしたときは、目的物の所有権は、別段の意思表示がない限り、その契約がされた時点で債権者に移転する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭57.6.4)は、「不動産所有権の譲渡をもってする代物弁済による債務消滅の効果は、単に当事者がその意思表示をするだけでは足りず、登記その他引渡行為を完了し、第三者に対する対抗要件を具備したときでなければ生じないことはいうまでもないが…、そのことは、代物弁済による所有権移転の効果が、原則として当事者間の代物弁済契約の意思表示によって生ずることを妨げるものではないと解するのが相当である…。」と判示している。したがって、金銭債権の債務者が債権者との間で金銭の支払に代えて特定物を譲渡することにより債務を消滅させる旨の契約をしたときは、目的物の所有権は、別段の意思表示がない限り、その契約がされた時点で債権者に移転する。
総合メモ

金銭債務の一部の供託 大判明治44年12月16日

概要
金銭債権の一部の供託は、債権者の承諾のない限り、その供託部分についても供託の効力は生じない。
判例
事案:金銭債務の一部のみを供託した場合において、当該供託によって弁済の効力が生じるかが問題となった。

判旨:「弁済ノ提供ハ債務ノ本旨ニ従ヒテ現実ニ之ヲ為スコトヲ要スルヲ以テ債務ノ全部ヲ消滅セシムルニ足ラサル弁済即チ一部弁済ノ提供ハ苟クモ債権者ノ承諾ナキ限リハ債務ノ本旨ニ従ヒテ為ス弁済ノ現実ナル提供ト為ラス従テ債権者カ一部弁済ノ受領ヲ拒ミタル為メ債務者ニ於テ之ヲ供託スルモ其供託シタル部分ニ相当スル債務ヲ免カルルコトヲ得サルノ筋合ナリトス。」
過去問・解説
(H30 司法 第20問 オ)
自己が相当と考える額を債務者が供託した場合には、債務の全額に満たなくても、その額については供託は有効である。

(正答)

(解説)
判例(大判明44.12.16)は、金銭債権の一部の供託は、債権者の承諾のない限り、その供託部分についても供託の効力は生じない旨判示している。したがって、自己が相当と考える額を債務者が供託した場合において、債務の全額に満たないのであれば、その額についても供託は効力を生じない。
総合メモ

弁済のための現金の持参と現実の提供 最三小判昭和23年12月14日

概要
債務者が弁済のため現金を債権者方に持参してその受領を催告すれば、当該現金を債権者の面前に提示しなくても、現実に弁済の提供をしたものといえる。
判例
事案:弁済のために現金を持参した場合において、実際に当該現金を債権者の面前に提示しなくても、現実の提供があったといえるかが問題となった。

判旨:「Aは原審のBに対する本人訊問における同人の供述中「Aが買つてからAに地代はやりませんでした。Aは貸すことはできないといつてそれ以上話は進まなかつたので、金は持つて行きましたが出しませんでした。持つて行つたことは3、4回ありましたが、目の前に出すまでには至らなかつたのです」とあるを引用して、Bは弁済期の到来した賃料の支払につき、Aに対し現実の提供をしないから、賃料支払義務につき履行遅滞の責に任じなければならないと主張するが、Bの右供述によれば、金は持つて行つたというのであるから、Aが地代を受取ると言えば即座に現金をAの面前に出して支払を為し得るように準備ができていたことを窺い知ることができるのである。かように相手方が受取ると言いさえすれば、何時でも支払うことができるのであるから、形式的にAの面前に現金をならべて見せなくとも、現金の提供があつたと見るを相当とする。」
過去問・解説
(H22 司法 第21問 2)
金銭債務の債務者が現金を債権者の住所に持参して受領を催告したにもかかわらず、債権者がその受領を拒絶した場合には、債権者の面前に現金を提示しなくても、現実の提供となる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭23.12.14)は、債務者が弁済のため現金を債権者方に持参してその受領を催告すれば、当該現金を債権者の面前に提示しなくても、現実に弁済の提供をしたものといえる旨判示している。
総合メモ

賃料の支払いと債務の本旨に従った弁済の提供 最三小判昭和31年11月27日

概要
甲家屋の賃貸人がその賃料の支払を催告したのに対し、賃借人が、乙家屋と丙土地もともに賃貸借の目的物であると争って、甲家屋の賃料に乙家屋と丙土地の相当賃料額を合わせた金員を、この全額を受領しなければ支払わない意思で提供した場合には、債務の本旨に従った履行の提供があったものとはいえない。
判例
事案:賃借人が、賃貸人が要求する賃貸物の賃料の支払いに加え、他の不動産も賃貸借の目的物であるとして、その賃料もともに受領しなければ支払わないという意思で提供した場合おいて、債務の本旨に従った履行の提供があったと認められるかが問題となった。

判旨:「被上告人の延滞賃料の催告は別紙第1目録(イ)の家屋に関するものであつて、(ロ)の家屋と同第2目録(ハ)の土地とは上告人において賃貸していなかつたものである。しかるに上告人は被上告人の催告に対し右(ロ)の家屋と(ハ)の土地とが(イ)の家屋とともに賃貸借の目的物であるとし、この部分をも含めた賃料を提供し、この全額を受領しなければ支払わない意思であつたという趣旨である。右催告は所論のように不適法なものではなくこのような場合に、賃貸人が、争われている目的物に相当する賃料をも合せて受領すれば、それが賃貸借の目的物となっていることを承認していたと認められる資料となるおそれがあるから、債務の本旨に従った履行の提供があつたものとすることはできず、賃貸人が提供の全額について受領を拒絶するのは相当であって、受領の遅滞もまた生ずるものでないと解するを相当とする。」
過去問・解説
(R1 司法 第20問 オ)
甲土地の賃貸人がその賃料の支払を催告したのに対し、賃借人が、賃貸借の目的物ではない乙土地も共に賃貸借の目的物であると主張して、甲土地の賃料額を超える額の金員を、その全額が受領されるのでなければ支払わない意思で提供した場合、債務の本旨に従った弁済の提供があったものとはいえない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭31.11.27)は、本肢と同種の事案において、「被上告人の延滞賃料の催告は別紙第1目録(イ)の家屋に関するものであつて、(ロ)の家屋と同第2目録(ハ)の土地とは上告人において賃貸していなかつたものである。しかるに上告人は被上告人の催告に対し右(ロ)の家屋と(ハ)の土地とが(イ)の家屋とともに賃貸借の目的物であるとし、この部分をも含めた賃料を提供し、この全額を受領しなければ支払わない意思であつたという趣旨である。右催告は所論のように不適法なものではなくこのような場合に、賃貸人が、争われている目的物に相当する賃料をも合せて受領すれば、それが賃貸借の目的物となっていることを承認していたと認められる資料となるおそれがあるから、債務の本旨に従った履行の提供があつたものとすることはでき」ないと判示している。したがって、甲土地の賃貸人がその賃料の支払を催告したのに対し、賃借人が、賃貸借の目的物ではない乙土地も共に賃貸借の目的物であると主張して、甲土地の賃料額を超える額の金員を、その全額が受領されるのでなければ支払わない意思で提供した場合、債務の本旨に従った弁済の提供があったものとはいえない。
総合メモ

小切手による弁済提供と493条 最三小判昭和35年11月22日

概要
金銭債務を負担する者が、弁済のため同額の小切手を提供しても、特別の意思表示又は慣習のない限り、債務の本旨に従ったものといえない。
判例
事案:金銭債務を負担する者が、弁済のため同額の小切手を提供した場合に、債務の本旨に従った弁済の提供があったといえるかが問題となった。

判旨:「金銭債務を負担する者が、弁済のため同額の小切手を提供しても、特別の意思表示又は慣習のない限り、債務の本旨に従つたものといえないことは、大審院判例(大正8年(オ)第296号、同年8月28日大審院民事部判決、民録、25輯1529頁)の示す所である。銀行の自己宛振出小切手或は銀行の支払保証ある小切手の如き、支払確実であること明白なものは格別として、然らざる限り、その支払の必然であることの保証がないのであるから、右判例の示す所は当然であつて、遽に右判例を変更する必要を見ない。」
過去問・解説
(H22 司法 第21問 5)
債務者が金銭債務の弁済のために債務者個人が振り出した小切手を提供しても、債務の本旨に従った弁済の提供とならない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭35.11.22)は、「金銭債務を負担する者が、弁済のため同額の小切手を提供しても、特別の意思表示又は慣習のない限り、債務の本旨に従ったものといえない…。」と判示している。
総合メモ

供託金額の不足が弁済提供及び供託の効力に影響を及ぼさない事例 最一小判昭和35年12月15日

概要
債務弁済のため提供、供託された金額が、本来提供、供託されるべき金額に僅かに不足していたという場合であっても、この一事により弁済提供及び供託の効果を否定することはできない。
判例
事案:供託金額に僅かな不足があった場合において、当該不足が弁済提供及び供託の効力に影響を及ぼすかが問題となった。

判旨:「原判決認定の弁済提供および供託金額は、本件消費貸借成立が原判示のように昭和28年9月下旬とすれば、原判示の元金120,000円とその利息金33,140円計153,140円では不足であることは所論のとおりであるが、所論の提供、供託さるべき元利合計金154,500円に比し、不足額は僅かに1300余円をいでないものであるから、この一事をもつて弁済提供および供託の効果を否定しえないものというべきである。」
過去問・解説
(H22 司法 第21問 1)
金銭債務の債務者が弁済のため債権者に提供した額が債務の額にわずかに不足する場合であっても、債務の全額を提供していない以上、弁済の提供の効力が生ずることはない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭35.12.15)は、債務弁済のため提供、供託された金額が、本来提供、供託されるべき金額に僅かに不足していたという場合であっても、この一事により弁済提供及び供託の効果を否定することはできない旨判示している。
総合メモ

交通事故による損害賠償債務についての一部の弁済の提供及び供託が有効である場合 最二小判平成6年7月18日

概要
交通事故によって被った損害の賠償を求める訴訟の控訴審係属中に、加害者が被害者に対し、第一審判決によって支払を命じられた損害賠償金の全額を任意に弁済のため提供した場合には、その提供額が損害賠償債務の全額に満たないことが控訴審における審理判断の結果判明したときであっても、原則として、その弁済の提供はその範囲において有効であり、被害者においてその受領を拒絶したことを理由にされた弁済のための供託もまた有効である。
判例
事案:交通事故によって被った損害の賠償を求める訴訟の控訴審係属中に、加害者が被害者に対し、第一審判決によって支払を命じられた損害賠償金の全額を任意に弁済のため提供した場合において、その提供額が損害賠償債務の全額に満たないことが控訴審における審理判断の結果判明したとき、すでにしていた弁済の提供及び被害者においてその受領を拒絶したことを理由にされた弁済のための供託が有効となるか否かが問題となった。

判旨:「交通事故の加害者が被害者から損害の賠償を求める訴訟を提起された場合において、加害者は右事故についての事実関係に基づいて損害額を算定した判決が確定して初めて自己の負担する客観的な債務の全額を知るものであるから、加害者が第一審判決によって支払を命じられた損害賠償金の全額を提供し、供託してもなお、右提供に係る部分について遅滞の責めを免れることができず、右供託に係る部分について債務を免れることができないと解するのは、加害者に対し難きを強いることになる。他方、被害者は、右提供に係る金員を自己の請求する損害賠償債権の一部の弁済として受領し、右供託に係る金員を同様に一部の弁済として受領する旨留保して還付を受けることができ、そうすることによって何ら不利益を受けるものではない。以上の点を考慮すると、右提供及び供託を有効とすることは債権債務関係に立つ当事者間の公平にかなうものというべきである。したがって、交通事故によって被った損害の賠償を求める訴訟の控訴審係属中に、加害者が被害者に対し、第1審判決によって支払を命じられた損害賠償金の全額を任意に弁済のため提供した場合には、その提供額が損害賠償債務の全額に満たないことが控訴審における審理判断の結果判明したときであっても、原則として、その弁済の提供はその範囲において有効なものであり、被害者においてその受領を拒絶したことを理由にされた弁済のための供託もまた有効なものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(R1 司法 第20問 エ)
不法行為の加害者Aが被害者Bに対して第1審判決で支払を命じられた損害賠償金1億円の全額について弁済の提供をしたが、その後、控訴審判決において損害賠償金が2億円に増額され、それが確定した場合、Aがした弁済の提供は、無効となる。

(正答)

(解説)
判例(最判平6.7.18)は、「交通事故によって被った損害の賠償を求める訴訟の控訴審係属中に、加害者が被害者に対し、第一審判決によって支払を命じられた損害賠償金の全額を任意に弁済のため提供した場合には、その提供額が損害賠償債務の全額に満たないことが控訴審における審理判断の結果判明したときであっても、原則として、その弁済の提供はその範囲において有効なものであ…る。」と判示している。したがって、不法行為の加害者Aが被害者Bに対して第1審判決で支払を命じられた損害賠償金1億円の全額について弁済の提供をした場合においては、その後、控訴審判決において損害賠償金が2億円に増額され、それが確定したとしても、Aがした弁済の提供は有効である。
総合メモ

保証と弁済による代位 最三小判昭和59年5月29日

概要
①代位弁済者が弁済による代位によって取得した担保権を実行する場合において、その被担保債権として扱うべきものは、原債権である。
②保証人と物上保証人との間に501条所定の代位の割合と異なる特約がある場合には、代位弁済をした当該保証人は、物上保証人の後順位担保権者等の利害関係人に対する関係において、当該特約の割合に応じて債権者が物上保証人に対して有していた抵当権等の担保権を代位行使することができる。
判例
事案:①代位弁済者が弁済による代位によつて取得した担保権を実行する場合において、その被担保債権として扱うべきものは、原債権であるか保証人の債務者に対する求償権であるかが問題となった。
 ②保証人と物上保証人との間に成立した501条所定の代位の割合と異なる特約がある場合において、当該保証人が代位弁済をした際の代位の範囲が問題となった。

判旨:①「弁済による代位の制度は、代位弁済者が債務者に対して取得する求償権を確保するために、法の規定により弁済によつて消滅すべきはずの債権者の債務者に対する債権(以下「原債権」という。)及びその担保権を代位弁済者に移転させ、代位弁済者がその求償権の範囲内で原債権及びその担保権を行使することを認める制度であり、したがつて、代位弁済者が弁済による代位によつて取得した担保権を実行する場合において、その被担保債権として扱うべきものは、原債権であつて、保証人の債務者に対する求償権でないことはいうまでもない。」
 ②「民法501条は、その本文において弁済による代位の効果を定め、その但書各号において代位者相互間の優劣ないし代位の割合などを定めている。弁済による代位の制度は、すでに説示したとおり、その効果として、債権者の有していた原債権及びその担保権をそのまま代位弁済者に移転させるのであり、決してそれ以上の権利を移転させるなどして右の原債権及びその担保権の内容に変動をもたらすものではないのであつて、代位弁済者はその求償権の範囲内で右の移転を受けた原債権及びその担保権自体を行使するにすぎないのであるから、弁済による代位が生ずることによつて、物上保証人所有の担保不動産について右の原債権を担保する根抵当権等の担保権の存在を前提として抵当権等の担保権その他の権利関係を設定した利害関係人に対し、その権利を侵害するなどの不当な影響を及ぼすことはありえず、それゆえ、代位弁済者は、代位によつて原債権を担保する根抵当権等の担保権を取得することについて、右の利害関係人との間で物権的な対抗問題を生ずる関係に立つことはないというべきである。そして、同条但書5号は、右のような代位の効果を前提として、物上保証人及び保証人相互間において、先に代位弁済した者が不当な利益を得たり、代位弁済が際限なく循環して行われたりする事態の生ずることを避けるため、右の代位者相互間における代位の割合を定めるなど一定の制限を設けているのであるが、その窮極の趣旨・目的とするところは代位者相互間の利害を公平かつ合理的に調節することにあるものというべきであるから、物上保証人及び保証人が代位の割合について同号の定める割合と異なる特約をし、これによつてみずからその間の利害を具体的に調節している場合にまで、同号の定める割合によらなければならないものと解すべき理由はなく、同号が保証人と物上保証人の代位についてその頭数ないし担保不動産の価格の割合によつて代位するものと規定しているのは、特約その他の特別な事情がない一般的な場合について規定しているにすぎず、同号はいわゆる補充規定であると解するのが相当である。したがつて、物上保証人との間で同号の定める割合と異なる特約をした保証人は、後順位抵当権者等の利害関係人に対しても右特約の効力を主張することができ、その求償権の範囲内で右特約の割合に応じ抵当権等の担保権を行使することができるものというべきである。」
過去問・解説
(H19 司法 第20問 ウ)
代位弁済者が弁済による代位によって取得した担保権を実行する場合において、その被担保債権は、代位弁済者の債務者に対する求償権である。

(正答)

(解説)
判例(最判昭59.5.29)は、「代位弁済者が弁済による代位によつて取得した担保権を実行する場合において、その被担保債権として扱うべきものは、原債権であつて、保証人の債務者に対する求償権でないことはいうまでもない。」と判示している。

(R2 司法 第19問 ウ)
保証人Aと物上保証人Bとの間で、Aが自己の弁済した全額につき債権者に代位することができる旨の特約をした場合において、弁済をしたAが債権者に代位してB所有の不動産上の第1順位の抵当権を行使するときは、Aはその特約の効力を当該不動産の後順位抵当権者に主張することはできない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭59.5.29)は、保証人と物上保証人との間に501条所定の代位の割合と異なる特約がある場合には、代位弁済をした当該保証人は、物上保証人の後順位担保権者等の利害関係人に対する関係において、当該特約の割合に応じて債権者が物上保証人に対して有していた抵当権等の担保権を代位行使することができる旨判示している。したがって、保証人Aと物上保証人Bとの間で、Aが自己の弁済した全額につき債権者に代位することができる旨の特約をした場合において、弁済をしたAが債権者に代位してB所有の不動産上の第1順位の抵当権を行使するときは、Aはその特約の効力を当該不動産の後順位抵当権者に主張することができる。
総合メモ

弁済による代位と原債権と求償権の関係 最三小判昭和60年1月22日

概要
弁済による代位が生じた場合、弁済者が代位により取得する担保権の被担保債権は、求償権ではなく原債権である。
判例
事案:弁済による代位が生じた場合に、弁済者が代位により取得する担保権の被担保債権が、原債権又は求償権のいずれかが問題となった。

判旨:「民法501条の定める弁済による代位は、代位弁済者が債務者に対して取得する求償権を確保するために、債権者の債務者に対する貸金等の債権(以下「原債権」という。)及び債務者ないし物上保証人に対するその担保権を消滅させずに、その全部又は一部を代位弁済者に当然に移転させ、代位弁済者がその求償権の範囲内で右の原債権及び担保権を行使することを認めるものである。したがつて、代位弁済した保証人は、当該担保権が根抵当権の場合においては、民法501条本文の規定により債権者が債務者又は物上保証人に対し有していた根抵当権を行使することができるが、弁済による代位があっても、右根抵当権の被担保権が保証人の債務者に対する求償権に変更されるものではなく、右根抵当権は従来どおり原債権を担保することに変わりはないから、担保不動産の競売手続において保証人が優先弁済を受けるのは、右の原債権であつて、債務者に対する求償権ではない。」
過去問・解説
(H25 予備 第10問 2)
弁済による代位が生じた場合、弁済者が代位により取得する担保権の被担保債権は、求償権ではなく原債権である。

(正答)

(解説)
判例(最判昭60.1.22)は、「代位弁済した保証人は、当該担保権が根抵当権の場合においては、民法501条本文の規定により債権者が債務者又は物上保証人に対し有していた根抵当権を行使することができるが、弁済による代位があっても、右根抵当権の被担保権が保証人の債務者に対する求償権に変更されるものではなく、右根抵当権は従来どおり原債権を担保することに変わりはないから、担保不動産の競売手続において保証人が優先弁済を受けるのは、右の原債権であって、債務者に対する求償権ではない。」と判示している。
総合メモ

代位弁済と償権の成立及びその内容に関する主張立証責任 最一小判昭和61年2月20日

概要
代位弁済者が、原債権及び担保権を行使して訴訟においてその給付又は確認を請求する場合には、それによって確保されるべき求償権の成立、債権の内容を主張立証しなければならない。
判例
事案:代位弁済者が、原債権及び担保権を行使して訴訟においてその給付又は確認を請求する場合において、それによって確保されるべき求償権の成立、債権の内容の主張立証責任を負うかが問題となった。

判旨:「弁済による代位の制度は、代位弁済者の債務者に対する求償権を確保することを目的として、弁済によって消滅するはずの債権者の債務者に対する債権(以下「原債権」という。)及びその担保権を代位弁済者に移転させ、代位弁済者がその求償権を有する限度で右の原債権及びその担保権を行使することを認めるものである。それゆえ、代位弁済者が代位取得した原債権と求償権とは、元本額、弁済期、利息・遅延損害金の有無・割合を異にすることにより総債権額が各別に変動し、債権としての性質に差違があることにより別個に消滅時効にかかるなど、別異の債権ではあるが、代位弁済者に移転した原債権及びその担保権は、求償権を確保することを目的として存在する附従的な性質を有し、求償権が消滅したときはこれによって当然に消滅し、その行使は求償権の存する限度によって制約されるなど、求償権の存在、その債権額と離れ、これと独立してその行使が認められるものではない。したがつて、代位弁済者が原債権及び担保権を行使して訴訟においてその給付又は確認を請求する場合には、それによって確保されるべき求償権の成立、債権の内容を主張立証しなければなら…ないものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H19 司法 第20問 エ)
代位弁済をした保証人が原債権を行使してその給付を請求する場合には、保証人は、主たる債務者に対する求償権の成立及びその内容について主張立証することを要しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭61.2.20)は、「代位弁済者が原債権及び担保権を行使して訴訟においてその給付又は確認を請求する場合には、それによって確保されるべき求償権の成立、債権の内容を主張立証しなければなら…ないものと解するのが相当である。」と判示している。
総合メモ

遅延損害金の代位の範囲 最三小判昭和59年5月29日

概要
保証人と債務者との間に求償権について法定利息と異なる約定利率による遅延損害金を支払う旨の特約がある場合には、代位弁済をした保証人は、物上保証人及び当該物件の後順位担保権者等の利害関係人に対する関係において、債権者の有していた債権及び担保権につき、特約に基づく遅延損害金を含む求償権の総額を上限として、求償権を行使することができる。
判例
事案:保証人と債務者との間に求償権について法定利息と異なる約定利率による遅延損害金を支払う旨の特約がある場合において、代位弁済をした保証人が、債権者の有していた債権及び担保権につき、いかなる範囲で代位をすることができるのかが問題となった。

判旨:「債務者から委託を受けた保証人が債務者に対して取得する求償権の内容については、民法459条2項によって準用される同法442条2項は、これを代位弁済額のほかこれに対する弁済の日以後の法定利息等とする旨を定めているが、右の規定は、任意規定であって、保証人と債務者との間で右の法定利息に代えて法定利率と異なる約定利率による代位弁済の日の翌日以後の遅延損害金を支払う旨の特約をすることを禁ずるものではない。また、弁済による代位の制度は保証人と債務者との右のような特約の効力を制限する性質を当然に有すると解する根拠もない。けだし、単に右のような特約の効力を制限する明文がないというのみならず、当該担保権が根抵当権の場合においては、根抵当権はその極度額の範囲内で原債権を担保することに変わりはなく、保証人と債務者が約定利率による遅延損害金を支払う旨の特約によって求償権の総額を増大させても、保証人が代位によって行使できる根抵当権の範囲は右の極度額及び原債権の残存額によって限定されるのであり、また、原債権の遅延損害金の利率が変更されるわけでもなく、いずれにしても、右の特約は、担保不動産の物的負担を増大させることにはならず、物上保証人に対しても、後順位の抵当権者その他の利害関係人に対しても、なんら不当な影響を及ぼすものではないからである。そして、保証人と右の利害関係人とが保証人と債務者との間で求償権の内容についてされた特約の効力に関して物権変動の対抗問題を生ずるような関係に立つものでないことは、右に説示したところから明らかであり、保証人は右の特約を登記しなければこれをもつて右の利害関係人に対抗することができない関係にあるわけでもない(法がそのような特約を登記する方法を現に講じていないのも、そのゆえであると解される。)。以上のとおりであるから、保証人が代位によって行使できる原債権の額の上限は、これらの利害関係人に対する関係において、約定利率による遅延損害金を含んだ求償権の総額によって画されるものというべきである。」
過去問・解説
(H23 司法 第22問 オ)
保証人が債権者に弁済をした場合、債務者との間であらかじめ求償権につき法定利率を超える利率による遅延損害金を支払う特約をしていたとしても、当該債務者の物上保証人との関係においては、保証人が取得した求償権についての遅延損害金は、法定利率の範囲に限定される。

(正答)

(解説)
判例(最判昭59.5.29)は、保証人と債務者との間に求償権について法定利息と異なる約定利率による遅延損害金を支払う旨の特約がある場合には、代位弁済をした保証人は、物上保証人に対する関係において、債権者の有していた債権及び担保権につき、特約に基づく遅延損害金を含む求償権の総額を上限として、これを行使することができる旨判示している。したがって、本肢においても、保証人が取得した求償権についての遅延損害金は、法定利率の範囲に限定されず、債権者の有していた債権及び担保権につき、特約に基づく遅延損害金を含む求償権の総額を上限として、これを行使することができる。
総合メモ

保証人・物上保証人の両資格を兼ねる者と弁済による代位の割合 最一小判昭和61年11月27日

概要
複数の保証人及び物上保証人の中に二重の資格をもつ者が含まれる場合における代位の割合は、二重の資格をもつ者も1人と扱い、全員の頭数に応じた平等の割合とする。
判例
事案:複数の保証人及び物上保証人の中に二重の資格をもつ者が含まれる場合における代位の割合を算定するにあたって、二重の資格を持つものを1人として扱うか、2人として扱うかが問題となった。

判旨:「民法501条但書4号、5号の規定は、保証人又は物上保証人が複数存在する場合における弁済による代位に関し、右代位者相互間の利害を公平かつ合理的に調整するについて、代位者の通常の意思ないし期待によって代位の割合を決定するとの原則に基づき、代位の割合の決定基準として、担保物の価格に応じた割合と頭数による平等の割合を定めているが、右規定は、物上保証人相互間、保証人相互間、そして保証人及び物上保証人が存在する場合における保証人全員と物上保証人全員との間の代位の割合は定めているものの、代位者の中に保証人及び物上保証人の二重の資格をもつ者が含まれる場合における代位の割合の決定基準については直接定めていない。したがつて、右の場合における代位の割合の決定基準については、二重の資格をもつ者を含む代位者の通常の意思ないし期待なるものを捉えることができるのであれば、右規定の原則に基づき、その意思ないし期待に適合する決定基準を求めるべきであるが、それができないときは、右規定の基本的な趣旨・目的である公平の理念にたち返って、代位者の頭数による平等の割合をもつて決定基準とするほかはないものといわざるをえない。しかして、右の場合に、二重の資格をもつ者は他の代位者との関係では保証人の資格と物上保証人の資格による負担を独立して負う、すなわち、二重の資格をもつ者は代位者の頭数のうえでは2人である、として代位の割合を決定すべきであると考えるのが代位者の通常の意思ないし期待でないことは、取引の通念に照らして明らかであり、また、仮に二重の資格をもつ者を頭数のうえであくまで1人と扱い、かつ、その者の担保物の価格を精確に反映させて代位の割合を決定すべきであると考えるのが代位者の通常の意思ないし期待であるとしても、右の2つの要請を同時に満足させる簡明にしてかつ実効性ある基準を見い出すこともできない。そうすると、複数の保証人及び物上保証人の中に二重の資格をもつ者が含まれる場合における代位の割合は、民法501条但書4号、5号の基本的な趣旨・目的である公平の理念に基づいて、二重の資格をもつ者も1人と扱い、全員の頭数に応じた平等の割合であると解するのが相当である。」
過去問・解説
(H23 司法 第22問 イ)
900万円の主たる債務について2人の連帯保証人がおり、そのうちの1人が物上保証人を兼ねている場合、連帯保証債務のみを負担している者が全額弁済をすると、この者が代位する債権額は600万円である。

(正答)

(解説)
判例(最判昭61.11.27)は、「複数の保証人及び物上保証人の中に二重の資格をもつ者が含まれる場合における代位の割合は、501条但書4号、5号の基本的な趣旨・目的である公平の理念に基づいて、二重の資格をもつ者も1人と扱い、全員の頭数に応じた平等の割合であると解するのが相当である。」と判示しており、改正民法下における501条3項4号の解釈においても同様に解されている。そして、同号本文は、「保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する。」と規定している。
本肢においては、900万円の主たる債務について2人の連帯保証人がおり、そのうちの1人が物上保証人を兼ねている場合、保証人と物上保証人を兼ねている者も、1人として扱われることとなるから、保証人と物上保証人の数は、2人ということになる。そうすると、連帯保証債務のみを負担している者が全額弁済をすると、全員の頭数に応じた平等の割合で代位の割合が決せられるから、この者が代位する債権額は、2分の1の範囲に当たる450万円であるといえる。
総合メモ

保証人及び物上保証人が要る場合の代位 最一小判平成9年12月18日

概要
501条3項4号には、保証人と物上保証人の間における弁済による代位の割合は頭数によるべきことが規定されているところ、単独所有であった物件に担保権が設定された後、これが弁済までの間に共同相続により共有となった場合には、弁済の時における物件の共有持分権者をそれぞれ1名としてその頭数を数える。
判例
事案:担保権の設定された物件が弁済までの間に共同相続により共有となった場合において、501条3項4号の物上保証人の数の数え方に変動が生じるかが問題となった。

判旨:「民法501条5号には、保証人と物上保証人の間における弁済による代位の割合は頭数によるべきことが規定されているところ、単独所有であった物件に担保権が設定された後、これが弁済までの間に共同相続により共有となった場合には、弁済の時における物件の共有持分権者をそれぞれ1名として右頭数を数えるべきものと解するのが相当である。けだし、弁済による代位は、弁済がされたことによって初めて生ずる法律関係であるところ、弁済の時点においては、各相続人がそれぞれ相続によって自己の取得した共有持分を担保に供しているのであるから、各相続人それぞれが民法501条5号の物上保証人に当たるというべきであるからである。当初から共有に属していた物件について全共有者が共有持分を担保に供した場合には、共有者ごとに頭数を数えるべきことは明らかであり、この場合と、単独所有であった物件に担保権が設定された後に弁済までの間に相続又は持分譲渡等により共有になった場合とで、頭数を別異に解することは、法律関係を複雑にするだけで、必ずしも合理的でない。確かに、相続という偶然の事情により頭数が変化することは当事者の意思ないし期待に反する場合がないではないが、このように頭数が変化する事態は、保証人の増加、担保物件の滅失等によっても起こり得ることであり、弁済時における人数と解することにより法律関係の簡明を期するのが相当である。」
過去問・解説
(H23 司法 第22問 ウ)
1000万円の主たる債務に対する連帯保証人と物上保証人が1人ずついたところ、連帯保証人が債権者に弁済をする前に、物上保証の目的不動産が3人の共同相続人により相続され共有となった場合、その後連帯保証人が全額弁済をすると、この者が法定代位する債権額の合計は750万円である。

(正答)

(解説)
判例(最判平9.12.18)は、「民法501条5号には、保証人と物上保証人の間における弁済による代位の割合は頭数によるべきことが規定されているところ、単独所有であった物件に担保権が設定された後、これが弁済までの間に共同相続により共有となった場合には、弁済の時における物件の共有持分権者をそれぞれ1名として右頭数を数えるべきものと解するのが相当である。」と判示しており、改正民法下における501条3項4号の解釈においても同様に解されている。そして、同号本文は、「保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する。」と規定している。
本肢においては、1000万円の主たる債務に対する連帯保証人と物上保証人が1人ずついたところ、連帯保証人が債権者に弁済をする前に、物上保証の目的不動産が3人の共同相続人により相続され共有となっているから、保証人が1人、物上保証人が3人の計4人を頭数として、代位の割合を計算することとなる。そうすると、その後連帯保証人が全額弁済をすると、当該保証人は、主たる債務額1000万円の4分の3の割合に当たる750万円について、債権者に代位することができるといえる。したがって、この者が法定代位する債権額の合計は750万円である。
総合メモ

物上保証人による免責の主張の可否 最二小判平成7年6月23日

概要
債権者が過失により担保を減少させた後に物上保証人から抵当目的不動産を譲り受けた者は、物上保証人と債権者との間に債権者の担保保存義務を免除する旨の特約がされていたために担保の減少に基づく免責が生じていなかった場合、債権者に対して担保の減少に基づく自己の免責(504条1項)を主張することはできない。
判例
事案:物上保証人と債権者との間に債権者の担保保存義務を免除する旨の特約がされていたために担保の減少に基づく免責が生じていなかった場合において、債権者が過失により担保を減少させた後に物上保証人から抵当目的不動産を譲り受けた者が、債権者に対して担保の減少に基づく自己の免責(504条1項)を主張することができるかどうかが問題となった。

判旨:「債権者が担保を喪失し、又は減少させた後に、物上保証人として代位の正当な利益を有していた者から担保物件を譲り受けた者も、民法504条による免責の効果を主張することができるのが原則である(最高裁昭和61年(オ)第1194号平成3年9月3日第三小法廷判決・民集45巻7号1121頁参照)。しかし、債権者と物上保証人との間に本件特約のような担保保存義務免除の特約があるため、債権者が担保を喪失し、又は減少させた時に、右特約の効力により民法504条による免責の効果が生じなかった場合は、担保物件の第三取得者への譲渡によって改めて免責の効果が生ずることはないから、第三取得者は、免責の効果が生じていない状態の担保の負担がある物件を取得したことになり、債権者に対し、民法504条による免責の効果を主張することはできないと解するのが相当である。」
過去問・解説
(R2 司法 第19問 オ)
債権者が過失により担保を減少させた後に物上保証人から抵当目的不動産を譲り受けた者は、物上保証人と債権者との間に債権者の担保保存義務を免除する旨の特約がされていたために担保の減少に基づく免責が生じていなかった場合、債権者に対して担保の減少に基づく自己の免責を主張することはできない。

(正答)

(解説)
判例(最判平7.6.23)は、「債権者と物上保証人との間に本件特約のような担保保存義務免除の特約があるため、債権者が担保を喪失し、又は減少させた時に、右特約の効力により民法504条による免責の効果が生じなかった場合は、担保物件の第三取得者への譲渡によって改めて免責の効果が生ずることはないから、第三取得者は、免責の効果が生じていない状態の担保の負担がある物件を取得したことになり、債権者に対し、民法504条による免責の効果を主張することはできないと解するのが相当である。」と判示しており、改正民法下における504条1項の解釈においても同様に解されている。
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