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相殺、更改、免除、混同

受働債権に確定期限がある場合における相殺可能時期 大判昭和8年5月30日

概要
受働債権に確定期限がある場合でも、債務者は期限の利益を放棄することができるから、その確定期限の到来前に、相殺をすることができる。
判例
事案:受働債権に確定期限がある場合でも、その確定期限の到来前に相殺をすることができるかどうかが問題となった。

判旨:「相殺適状ニ在ルカ為ニハ反対債権ハ已ニ弁済期ニ在ルコトヲ必要トスルハ論無キモ主債権ニ付キテハ之ヲ必要トセス債務者ニ於テ即時ニ其ノ弁済ヲ為スノ権利アル以上期限抛棄ノ意思表示ハ現ニ之ヲ為サストモ債務者ハ直チニ相殺ヲ為スヲ妨ケサルモノトス。」
過去問・解説
(H21 司法 第22問 1)
判例によれば、受働債権の履行について確定期限がある場合、弁済期が到来しないと相殺は不可能であるから、相殺をすることができるのは、その確定期限到来後である。

(正答)

(解説)
判例(大判昭8.5.30)は、受働債権に確定期限がある場合でも、債務者は期限の利益を放棄することができるから、その確定期限の到来前に、相殺をすることができる旨判示している。
総合メモ

抵当不動産の第三者取得が抵当権者に対して有する債権と抵当権の被担保債権の相殺 大判昭和8年12月5日

概要
抵当不動産の第三者取得が抵当権者に対して有する債権をもって、抵当権の被担保債権を相殺することはできない。
判例
事案:抵当不動産の第三者取得が抵当権者に対して債権を有する場合において、当該債権を自働債権、抵当権の被担保債権を受働債権として相殺することができるかが問題となった。

判旨:「抵当権ハ従タル物権ニシテ主タル債務ノ弁済ニ因リ当然消滅ニ帰スヘキヲ以テ抵当不動産ノ所有権ヲ取得シタル第三者ハ債務ノ弁済ヲ為スニ付正当ノ利益ヲ有シ民法第474条ノ規定ニ依リ之カ弁済ヲ為シ得ルコト勿論ナルモ抵当不動産ノ所有権取得ニ因リ自ラ債務ヲ負担スルニ至リタルモノト解スヘキ何等ノ理由ナク而カモ相殺ハ当事者互ニ同種ノ目的ヲ有スル債権ヲ有スル場合ニ於テ互ニ給付ヲ為サスシテ其ノ対当額ニ於テ債権ヲ消滅セシムルモノニシテ弁済ト其ノ性質ヲ異ニスルカ故ニ抵当不動産ノ所有権ヲ取得シタル第三者カ偶々抵当権者ニ対シテ債権ヲ有スル場合ニ於テモ該債権ヲ以テ自己ノ債務ニ属セサル抵当権者ノ有スル債権ト相殺ヲ為スカ如キコトハ法律上之ヲ許ササルモノト解セサルヘカラス。」
過去問・解説
(H30 司法 第21問 ア)
抵当不動産の所有権を取得したAが、抵当権者Bに対する売買代金債権を有している場合には、当該売買代金債権と抵当権の被担保債務であるCに対する貸金債務とを対当額において相殺することができる。

(正答)

(解説)
判例(大判昭8.12.5)は、抵当不動産の第三者取得が抵当権者に対して有する債権をもって、抵当権の被担保債権を相殺することはできない旨判示している。したがって、抵当不動産の所有権を取得したAが、抵当権者Bに対する売買代金債権を有している場合であっても、当該売買代金債権と抵当権の被担保債務であるCに対する貸金債務とを対当額において相殺することはできない。
総合メモ

同時履行の抗弁権が付着する場合の相殺の成否 大判昭和13年3月1日

概要
自働債権に同時履行の抗弁権が付着している場合、相殺をすることができない。
判例
事案:自働債権に同時履行の抗弁権が付着している場合、相殺をすることができるかどうかが問題となった。

判旨:「買取請求権行使ノ結果成立スル造作代金支払債務ハ固ヨリ双務契約ニ基クモノニ非スト雖目的タル造作ノ移転義務ト対価的関係ニ立ツモノナル点ニ付テハ恰モ売買契約ニ因ル代金支払債務カ財産権移転ノ債務ト対価的関係ニ立ツト同様ナルヲ以テ造作買取義務者タル賃貸人ハ買取請求権者タル賃借人ヨリ造作ノ引渡シアル迄其ノ代金ノ支払ヲ拒ミ得ル同時履行ノ抗弁権ヲ有スルモノト解スルヲ正当トスヘク斯ル賃貸人ノ抗弁権ハ相手方タル賃借人ノ一方的ナル相殺ノ意思表示ニ因リ消滅セシメラルヘキ理ナキニ依リ賃借人カ…造作買取請求権ヲ行使シ得ル場合ニ於テ其ノ行使ニ因リテ生シタル代金債権ヲ以テ賃貸人ノ自己ニ対シテ有スル賃料其ノ他ノ債権ト相殺セムカ為ニハ造作ノ引渡義務ニ付履行ノ提供ヲ為ササルヘカラス。」
過去問・解説
(H20 司法 第20問 イ)
建物賃借人Aは、賃貸人Bに対する賃料債務を消滅させるため、Aを売主、Bを買主とする動産の売買における引渡債務の履行を提供しなくても、履行期にあるその売買代金債権を自働債権として相殺をすることができる。

(正答)

(解説)
判例(大判昭13.3.1)は、自働債権に同時履行の抗弁権が付着している場合、相殺することができない旨判示している。売買契約は双務契約であり、動産の買主は、目的物の引き渡しを受けるまでは代金の支払いを拒むことができる同時履行の抗弁権を有する(533条)。したがって、Aを売主、Bを買主とする動産の売買における引渡債務の履行を提供しなければ、自働債権である売買代金債権に付着した同時履行の抗弁権を消滅させることができないため、当該売買代金債権が履行期にあるとしても、その売買代金債権を自働債権として相殺をすることができない。

(H24 司法 第30問 4)
判例によれば、AがBに対し貸金の返還を請求する訴訟において、Aとの動産の売買に基づく代金債権をもってする相殺を主張するBは、目的動産の引渡しを提供したことを主張立証しなければならない。

(正答)

(解説)
判例(大判昭13.3.1)は、自働債権に同時履行の抗弁権が付着している場合、相殺することができない旨判示している。売買契約は双務契約であり、動産の買主は、目的物の引き渡しを受けるまでは代金の支払いを拒むことができる同時履行の抗弁権を有する(533条)。したがって、AがBに対し貸金の返還を請求する訴訟において、Aとの動産の売買に基づく代金債権をもってする相殺を主張するBは、自働債権である当該代金債権に付着した同時履行の抗弁権を消滅させなければならず、目的動産の引渡しを提供したことを主張立証しなければならない。

(H27 予備 第11問 ウ)
AがA所有の宝石を代金100万円でBに売却した際、その宝石の代金債務と宝石の引渡債務の履行期を同一とすることがAB間で合意された。AがBに対して別の貸金債務を負っている場合、BのAに対する宝石の代金債務についてその履行期が到来しても、Aは、AのBに対する宝石の引渡債務について弁済又はその提供をしていないときは、AのBに対する宝石の代金債権とBのAに対する別の貸金債権とを対当額で相殺することができない。

(正答)

(解説)
判例(大判昭13.3.1)は、自働債権に同時履行の抗弁権が付着している場合、相殺することができない旨判示している。売買契約は双務契約であり、動産の買主は、目的物の引き渡しを受けるまでは代金の支払いを拒むことができる同時履行の抗弁権を有する(533条)。したがって、Aが、AのBに対する宝石の引渡債務について弁済又はその提供をしていないときは、自働債権であるAのBに対する宝石の代金債権に同時履行の抗弁権が付着しているといえるから、Aは、当該代金債権とBのAに対する別の貸金債権とを対当額で相殺することができない。

(H27 司法 第21問 オ)
AがBに対し美術品を売却した際、BのAに対する美術品の代金債務とAのBに対する美術品の引渡債務の履行期を同一とすることが合意された場合、Aは、BのAに対する美術品の代金債務についてその履行期が到来しても、AのBに対する美術品の引渡債務について弁済又はその提供をしていないときは、AのBに対する美術品の代金債権とそれとは別にBがAに対して有する貸金債権とを対当額で相殺することができない。

(正答)

(解説)
判例(大判昭13.3.1)は、自働債権に同時履行の抗弁権が付着している場合、相殺することができない旨判示している。売買契約は双務契約であり、動産の買主は、目的物の引き渡しを受けるまでは代金の支払いを拒むことができる同時履行の抗弁権を有する(533条)。したがって、Aが、BのAに対する美術品の代金債務についてその履行期が到来しても、AのBに対する美術品の引渡債務について弁済又はその提供をしていないときは、自働債権であるAのBに対する美術品の代金債権に同時履行の抗弁権が付着しているといえるから、Aは、当該債権とそれとは別にBがAに対して有する貸金債権とを対当額で相殺することができない。

(R5 共通 第21問 ウ)
AのBに対する金銭債権(以下「甲債権」という。)とBのAに対する金銭債権(以下「乙債権」という。)との相殺に関して、甲債権がAB間のパソコンの売買に基づく売買代金債権であったときは、Aは、Bに対してパソコンの引渡しの提供をしていなくても、乙債権との相殺をもってBに対抗することができる。

(正答)

(解説)
判例(大判昭13.3.1)は、自働債権に同時履行の抗弁権が付着している場合、相殺することができない旨判示している。売買契約は双務契約であり、動産の買主は、目的物の引き渡しを受けるまでは代金の支払いを拒むことができる同時履行の抗弁権を有する(533条)。したがって、甲債権がAB間のパソコンの売買に基づく売買代金債権であったときは、自働債権である甲債権に同時履行の抗弁権が付着しているといえるから、Aは、Bに対してパソコンの引渡しの提供をしていなければ、乙債権との相殺をもってBに対抗することができない。
総合メモ

合意による相殺 大判昭和17年2月18日

概要
合意による相殺の場合、両債権が同種の目的を有する必要はない。
判例
事案:合意による相殺の場合において、相殺される両債権が同種の目的を有する必要があるかどうかが問題となった。

判旨:「合意上ノ相殺ハ常ニ同種債権ノ間ニノミ行ハルルモノニ非サル…。」
過去問・解説
(H20 司法 第20問 オ)
相殺契約においては、両債権が同種の目的を有することは必要ではない。

(正答)

(解説)
判例(大判昭17.2.18)は、合意による相殺の場合、両債権が同種の目的を有する必要はない旨判示している。
総合メモ

弁済期の定めのない債権と相殺 大判昭和17年11月19日

概要
弁済期の定めのない債権は、これを自働債権として直ちに相殺することができる。
判例
事案:弁済期の定めのない債権を自働債権として、これを直ちに相殺することができるかが問題となった。

判旨:「弁済期ノ定メナキ貸金債権ハ債権者ニ於テ何時ニテモ其ノ弁済ヲ請求シ得ルモノニシテ此ノ意味ニ於テ債権成立ト同時ニ弁済期ニアルモノト謂フコトヲ得ヘク而シテ借主ヲシテ履行遅滞ノ責任ヲ負ハシムルニハ貸主ニ於テ相当ノ期間ヲ定メテ返還ノ催告ヲ為シ該期間内ニ弁済ナキコトヲ要スルモノナルヲ以テ此ノ意味ニ於テハ右返還ノ催告(弁済ノ請求)ナクシテハ遅滞ノ責ヲ生スヘキ弁済期到来セサルモノトス従テ等シク弁済期ト謂フモ前者ト後者トニ於テ其ノ意義ヲ異ニスルモノニシテ彼此混同スヘキニ非ス然ラハ本件ニ於ケル如ク貸主タルAカ借主タルBニ対シテ有スル本件貸金債権ヲ自働債権トシテBニ対シテ負担スル本件売買代金債務(Aノ有スル代金債権)ト対当額ニテ相殺スル場合ニ於テハ相殺ノ自働債権タル右貸金債権ハ其ノ成立ノ動機如何ヲ問ハス其ノ成立ノ時(期間ヲ定メテ為シタル返還ノ催告前)即チ貸附ノ時ニ於テ既ニ前述ノ弁済期ニ在ルモノトシテ相殺適状ニ在ルモノト解スヘキモノトス。」
過去問・解説
(R4 司法 第22問 ウ)
返還時期の定めのない金銭消費貸借契約の貸主は、返還の催告をしてから相当期間が経過した後でなければ、その貸金債権を自働債権とする相殺をすることができない。

(正答)

(解説)
判例(大判昭17.11.19)は、弁済期の定めのない債権は、これを自働債権として直ちに相殺することができる旨判示している。したがって、返還時期の定めのない金銭消費貸借契約の貸主は、その貸金債権を自働債権として直ちに相殺をすることができる。
総合メモ

請負人の報酬債権と注文者の目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権との相殺 最一小判昭和53年9月21日

概要
請負人の注文者に対する報酬債権と注文者の請負人に対する目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権とは、同時履行の関係にあるものの、その対等額により相殺することが許され、この理は、相殺に供される自働債権と受働債権の金額に差異があることにより異ならない。
判例
事案:債権額の異なる請負人の報酬債権と注文者の目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権とが存在する場合において、両債権を相殺することができるかが問題となった。

判旨:「請負契約における注文者の工事代金支払義務と請負人の目的物引渡義務とは対価的牽連関係に立つものであり、瑕疵ある目的物の引渡を受けた注文者が請負人に対し取得する瑕疵修補に代る損害賠償請求権は、右法律関係を前提とするもので、実質的・経済的には、請負代金を減額し、請負契約の当事者が相互に負う義務につきその間に等価関係をもたらす機能を有するのであって(最高裁昭和50年(オ)第485号同51年3月4日第一小法廷判決・民集30巻2号48頁参照)、しかも、請負人の注文者に対する工事代金債権と注文者の請負人に対する瑕疵修補に代る損害賠償債権は、ともに同一の原因関係に基づく金銭債権である。以上のような実質関係に着目すると、右両債権は同時履行の関係にある…とはいえ、相互に現実の履行をさせなければならない特別の利益があるものとは認められず、両債権のあいだで相殺を認めても、相手方に対し抗弁権の喪失による不利益を与えることにはならないものと解される。むしろ、このような場合には、相殺により清算的調整を図ることが当事者双方の便宜と公平にかない、法律関係を簡明ならしめるゆえんでもある。この理は、相殺に供される自働債権と受働債権の金額に差異があることにより異なるものではない。したがって、本件工事代金債権と瑕疵修補に代る損害賠償債権とは、その対当額による相殺を認めるのが相当であり、右と同旨の原判決は正当として是認することができる。」
過去問・解説
(H23 共通 第23問 エ)
請負人の注文者に対する請負代金債権と、注文者の請負人に対する目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償請求権は、同時履行の関係にあるため、注文者及び請負人は、原則として共に相殺することができないが、双方の債権額が等しい場合には例外として相殺をすることができる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.9.21)は、請負人の注文者に対する報酬債権と注文者の請負人に対する目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権とは、同時履行の関係にあるものの、その対等額により相殺することが許され、この理は、相殺に供される自働債権と受働債権の金額に差異があることにより異ならない旨判示している。

(H27 共通 第20問 オ)
注文者は、請負人に対する目的物の瑕疵の修補に代わる損害賠償債権を自働債権として、請負人の注文者に対する報酬債権と相殺することはできない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.9.21)は、請負人の注文者に対する報酬債権と注文者の請負人に対する目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権とは、同時履行の関係にあるものの、その対等額により相殺することが許され、この理は、相殺に供される自働債権と受働債権の金額に差異があることにより異ならない旨判示している。
総合メモ

時効にかかった譲受債権を自働債権として相殺することの許否 最二小判昭和36年4月1日

概要
消滅時効にかかった他人の債権を譲り受け、これを自働債権として相殺することは許されない。
判例
事案:消滅時効にかかった他人の債権を譲り受け、これを自働債権として相殺することが許されるかが問題となった。

判旨:「既に消滅時効にかかった他人の債権を譲り受け、これを自働債権として相殺することは、民法506条、508条の法意に照らし許されないものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H20 司法 第20問 エ)
時効により消滅した他人の債権を譲り受け、これを自働債権として相殺をすることは許されない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭36.4.14)は、「既に消滅時効にかかった他人の債権を譲り受け、これを自働債権として相殺することは、民法506条、508条の法意に照らし許されないものと解するのが相当である。」と判示している。

(H30 司法 第21問 ウ)
請負代金債務を負担する注文者が、請負人に対する貸金債権を譲り受けたが、譲受けの時点で当該貸金債権の消滅時効が完成していた。その後、請負人により消滅時効が援用された場合、注文者は、これらの債権債務を対当額において相殺することができない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭36.4.14)は、「既に消滅時効にかかった他人の債権を譲り受け、これを自働債権として相殺することは、民法506条、508条の法意に照らし許されないものと解するのが相当である。」と判示している。したがって、請負代金債務を負担する注文者が、請負人に対する貸金債権を譲り受けたが、譲受けの時点で当該貸金債権の消滅時効が完成していたのであれば、その後、請負人により消滅時効が援用された場合、注文者は、これらの債権債務を対当額において相殺することができない。

(R4 司法 第22問 エ)
AがBに対して甲債権を有し、CがAに対して消滅時効が完成したがその援用がされていない乙債権を有している。この場合において、BがCから乙債権を譲り受け、その後Aが消滅時効を援用したときは、Bは、乙債権を自動債権とする相殺をすることができない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭36.4.14)は、「既に消滅時効にかかった他人の債権を譲り受け、これを自働債権として相殺することは、民法506条、508条の法意に照らし許されないものと解するのが相当である。」と判示している。したがって、BがCからすでに消滅時効が完成している乙債権を譲り受け、その後Aが消滅時効を援用したときは、Bは、乙債権を自動債権とする相殺をすることができない。
総合メモ

有価証券に表章された金銭債権と相殺 最三小判平成13年12月18日

概要
有価証券に表章された金銭債権の債務者は、その債権者に対して有する弁済期にある自己の金銭債権を自働債権とし、有価証券に表章された金銭債権を受働債権として相殺をするに当たり、有価証券の占有を取得する必要はない。
判例
事案:有価証券に表章された金銭債権の債務者は、その債権者に対して有する弁済期にある自己の金銭債権を自働債権とし、有価証券に表章された金銭債権を受働債権として相殺をする場合において、有価証券の占有を取得する必要があるかが問題となった。

判旨:「有価証券に表章された金銭債権の債務者は、その債権者に対して有する弁済期にある自己の金銭債権を自働債権とし、有価証券に表章された金銭債権を受働債権として相殺をするに当たり、有価証券の占有を取得することを要しないというべきである。けだし、有価証券に表章された債権の請求に有価証券の呈示を要するのは、債務者に二重払の危険を免れさせるためであるところ、有価証券に表章された金銭債権の債務者が、自ら二重払の危険を甘受して上記の相殺をすることは、これを妨げる理由がないからである。」
過去問・解説
(H23 共通 第23問 オ)
有価証券に表章された金銭債権の債務者は、その債権者に対して有する弁済期にある自己の金銭債権を自働債権とし、有価証券に表章された金銭債権を受働債権として相殺する場合であっても、有価証券の占有を取得する必要はない。

(正答)

(解説)
判例(最判平13.12.18)は、「有価証券に表章された金銭債権の債務者は、その債権者に対して有する弁済期にある自己の金銭債権を自働債権とし、有価証券に表章された金銭債権を受働債権として相殺をするに当たり、有価証券の占有を取得することを要しないというべきである。」と判示している。
総合メモ

時効によって消滅した債権の相殺 最一小判平成25年2月28日

概要
508条が適用されるためには、消滅時効が援用された自働債権はその消滅時効期間が経過する以前に受働債権と相殺適状にあったことを要すると解される。
判例
事案:508条が適用されるためには、消滅時効が援用された自働債権について、当該消滅時効期間が経過する以前に受働債権と相殺適状にあったことを必要とするかが問題となった。

判旨:「当事者の相殺に対する期待を保護するという民法508条の趣旨に照らせば、同条が適用されるためには、消滅時効が援用された自働債権はその消滅時効期間が経過する以前に受働債権と相殺適状にあったことを要すると解される。」
過去問・解説
(H29 予備 第9問 ウ)
時効によって消滅した債権を自働債権とする相殺をするためには、消滅時効が援用された自働債権は、その消滅時効期間が経過する以前に受働債権と相殺適状にあったことを要する。

(正答)

(解説)
判例(最判平25.2.28)は、「当事者の相殺に対する期待を保護するという民法508条の趣旨に照らせば、同条が適用されるためには、消滅時効が援用された自働債権はその消滅時効期間が経過する以前に受働債権と相殺適状にあったことを要すると解される。」と判示している。そして、508条は、「時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる。」と規定している。
したがって、時効によって消滅した債権を自働債権とする相殺をするためには、消滅時効が援用された自働債権は、その消滅時効期間が経過する以前に受働債権と相殺適状にあったことを要する。
総合メモ

相殺の遡及効が契約解除に及ぼす影響の有無 最二小判昭和32年3月8日

概要
賃貸借契約が、賃料不払のため適法に解除された以上、たとえその後、賃借人の相殺の意思表示により当該賃料債務が相殺適状時に遡って消滅しても、解除の効力に影響はない。
判例
事案:相殺の意思表示により賃貸借契約の賃料不払分の債務が遡って消滅した場合において、賃貸借契約の賃料不払いを理由とする解除の効力に影響が及ぶかが問題となった。

判旨:「相殺の意思表示は双方の債務が互に相殺をなすに適したる始めに遡ってその効力を生ずることは、民法506条2項の規定するところであるが、この遡及効は相殺の債権債務それ自体に対してであつて、相殺の意思表示以前既に有効になされた契約解除の効力には何らの影響を与えるものではないと解するを相当とする。」
過去問・解説
(H20 司法 第20問 ウ)
賃貸借契約が賃料不払のため適法に解除された場合であっても、その後、賃借人の相殺の意思表示により賃料債務がさかのぼって消滅したときは、解除も遡及的に効力を失う。

(正答)

(解説)
判例(最判昭32.3.8)は、「相殺の意思表示は双方の債務が互に相殺をなすに適したる始めに遡ってその効力を生ずることは、民法506条2項の規定するところであるが、この遡及効は相殺の債権債務それ自体に対してであつて、相殺の意思表示以前既に有効になされた契約解除の効力には何らの影響を与えるものではないと解するを相当とする。」と判示している。

(H27 共通 第20問 イ)
賃貸人が賃料の不払を理由として賃貸借契約を解除した後、賃借人が解除後に存在を知った賃貸人に対する債権と賃料債務を相殺により消滅させたとしても、賃貸借契約の解除の効力には影響がない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭32.3.8)は、「相殺の意思表示は双方の債務が互に相殺をなすに適したる始めに遡ってその効力を生ずることは、民法506条2項の規定するところであるが、この遡及効は相殺の債権債務それ自体に対してであつて、相殺の意思表示以前既に有効になされた契約解除の効力には何らの影響を与えるものではないと解するを相当とする。」と判示している。
総合メモ

受働債権の譲渡と債務者の相殺の意思表示の相手方 最二小判昭和32年7月19日

概要
債務者が受働債権の譲受人に対し相殺をもって対抗する場合には、その相殺の意思表示は、受働債権の譲受人に対してするべきである。
判例
事案:債務者が受働債権の譲受人に対し相殺をもって対抗する場合、相殺の意思表示は、受働債権の譲渡人、譲受人どちらに対してするべきかが問題となった。

判旨:「民法506条1項に所謂相手方とは、相殺の意思表示を為す債務者が、自己の債務を履行すべき相手方たる債権者(受働債権の債権者)を指すものと解すべきである。又民法468条2項において、債務者が『譲渡人に対して生じたる事由を以て譲受人に対抗することを得』とは、その事由が相殺の場合においては、譲受人に対し相殺の意思表示を為すことを認めたものと解すべきである…。」
過去問・解説
(H23 共通 第23問 イ)
債務者が受働債権の譲受人に対し相殺をもって対抗することができる場合には、その相殺の意思表示は、受働債権の譲渡人にすれば足りる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭32.7.19)は、「民法506条1項に所謂相手方とは、相殺の意思表示を為す債務者が、自己の債務を履行すべき相手方たる債権者(受働債権の債権者)を指すものと解すべきである。」と判示している。
総合メモ

715条による損害賠償義務者と相殺の許否 最三小判昭和32年4月30日

概要
自働債権及び受働債権のいずれもが不法行為による損害賠償債権である場合においても、509条が適用される。
判例
事案:自働債権及び受働債権のいずれもが不法行為による損害賠償債権である場合において、509条が適用されるかが問題となった。

判旨:「論旨は、先ず、Aの負担する債務がA自身の不法行為によるものでないとの理由により、Bの自動車破損による損害賠償請求権をもつてする相殺は許容すべきものであるとして、民法509条の擬律錯誤を主張する。しかし民法715条の使用者責任が使用者自身の過失責任を理由とするか、純然たる結果責任であるかの問題は別とし、仮りに後者であつたとしても不法行為による債務であることに変りなく、民法509条の条文も彼此区別していないのみならず、同条の趣旨が不法行為の被害者に現実の弁償済によつて損害の填補を受けしめようとするにある以上、これを除外すべき何等の理由がなく、所論のように自己の不法行為でないとの理由により同条の適用を免れ得ないと解すべきであるから、これと同趣旨の原判決の判断は正当である。
 論旨はさらに自働債権が不法行為による損害賠償請求権であること等の理由をあげて、本件に同条を適用すべきでないと主張するが、右に述べた同条の立法趣旨に照らせば、所論はいずれも採用に値しないこと明かである。」
過去問・解説
(H20 司法 第20問 ア)
自働債権及び受働債権がともに不法行為による損害賠償債権の場合、いずれの当事者からも相殺をすることができない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭32.4.30)は、自働債権及び受働債権のいずれもが不法行為による損害賠償債権である場合においても、509条が適用される旨判示している。この判例の理解は、改正民法下における509条の解釈においても妥当すると解されている。もっとも、同条は、その柱書本文において「次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。」と規定し、1号において「悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務」を挙げ、2号において「人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(前号に掲げるものを除く。)」を挙げる。
したがって、自働債権及び受働債権がともに不法行為による損害賠償債権である場合において、いずれの当事者からも相殺をすることができないのは、両債権がともに、悪意による不法行為に基づく損害賠償債権又は人の生命または身体の侵害による損害賠償債権である場合に限定される。本肢においては、このような限定が付されていないため、本肢は誤っている。
総合メモ

不法行為に基づく損害賠償債権を自働債権とし不法行為以外の原因による債権を受働債権とする相殺の許否 最一小判昭和42年11月30日

概要
509条は、不法行為に基づく損害賠償債権を自働債権とし、不法行為による損害賠償債権以外の債権を受働債権として相殺をすることまでも禁止するものではない。
判例
事案:不法行為に基づく損害賠償債権を自働債権とし、不法行為による損害賠償債権以外の債権を受働債権として相殺をすることが許されるかが問題となった。

判旨:「民法509条は、不法行為の被害者をして現実の弁済により損害の填補をうけしめるとともに、不法行為の誘発を防止することを目的とするものであるから、不法行為に基づく損害賠償債権を自働債権とし不法行為による損害賠償債権以外の債権を受働債権として相殺をすることまでも禁止する趣旨ではないと解するのを相当とする。」
過去問・解説
(H27 共通 第20問 エ)
債権が不法行為によって生じたときは、その債権者は、その債権を自働債権として相殺することができる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭42.11.30)は、「民法509条は、不法行為の被害者をして現実の弁済により損害の填補をうけしめるとともに、不法行為の誘発を防止することを目的とするものであるから、不法行為に基づく損害賠償債権を自働債権とし不法行為による損害賠償債権以外の債権を受働債権として相殺をすることまでも禁止する趣旨ではないと解するのを相当とする。」と判示している。この判例の理解は、改正民法下における509条の解釈においても妥当すると解されている。したがって、債権が不法行為によって生じたときは、その債権者は、その債権を自働債権として相殺することができる。
総合メモ

転付債権者・第三債務者間の債権債務の相殺適状は債務者・第三債務者間の債権債務の相殺適状より後に生じたが転付債権者の相殺の意思表示が第三債務者の相殺の意思表示より先にされた場合と相殺の優劣 最三小判昭和54年7月10日

概要
転付債権者に転付された債務者の第三債務者に対する甲債権と第三債務者の転付債権者に対する乙債権との相殺適状が、甲債権と第三債務者の債務者に対する丙債権との相殺適状より後に生じた場合であっても、第三債務者が丙債権を自働債権とし甲債権を受働債権とする相殺の意思表示をするより先に、転付債権者の甲債権を自働債権、乙債権を受働債権とする相殺の意思表示により甲債権が消滅していた場合には、第三債務者による当該相殺の意思表示は、その効力を生じない。
判例
事案:転付債権者・第三債務者間の債権債務の相殺適状は債務者・第三債務者間の債権債務の相殺適状より後に生じたが、転付債権者の相殺の意思表示が第三債務者の相殺の意思表示より先にされた場合において、両相殺の優劣を、相殺適状の先後で判断するのか、相殺の意思表示の先後で判断するのかが問題となった。

判旨:「相殺適状は、原則として、相殺の意思表示がされたときに現存することを要するのであるから、いつたん相殺適状が生じていたとしても、相殺の意思表示がされる前に一方の債権が弁済、代物弁済、更改、相殺等の事由によって消滅していた場合には相殺は許されない(民法508条はその例外規定である。)、と解するのが相当である。また、債権が差し押さえられた場合において第三債務者が債務者に対して反対債権を有していたときは、その債権が差押後に取得されたものでない限り、右債権及び被差押債権の弁済期の前後を問わず、両者が相殺適状になりさえすれば、第三債務者は、差押後においても右反対債権を自働債権とし被差押債権を受働債権として相殺することができるわけであるけれども、そのことによって、第三債務者が右の相殺の意思表示をするまでは、転付債権者が転付命令によって委付された債権を自働債権とし、第三債務者に対して負担する債務を受働債権として相殺する権能が妨げられるべきいわれはない。
 したがつて、本件において、上告人の相殺の意思表示が被上告人のそれより先にされたものであつても、上告人の主張にかかる両債権が相殺適状となった時期が被上告人の主張にかかる両債権が相殺適状となった時期より後のことであるから上告人主張の相殺の自働債権はさかのぼって消滅したこととなるとして、結局、上告人の相殺の抗弁を排斥した原判決は、民法505条、506条の解釈適用を誤ったものというべきであ…る。」
過去問・解説
(R3 共通 第21問 ア)
AのBに対する金銭債権(以下「甲債権」という。)とBのAに対する金銭債権(以下「乙債権」という。)がある。甲債権と乙債権の両方の弁済期が到来した後、甲債権がAからCに譲渡され、その対抗要件が具備された。この場合において、Bは、CがBのCに対する金銭債権(丙債権)と甲債権とを相殺した後であっても、乙債権と甲債権との相殺をもってCに対抗することができる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭54.7.10)は、本肢と同種の事案において、転付債権者に転付された債務者の第三債務者に対する甲債権と第三債務者の転付債権者に対する乙債権との相殺適状が、甲債権と第三債務者の債務者に対する丙債権との相殺適状より後に生じた場合であっても、第三債務者が丙債権を自働債権とし甲債権を受働債権とする相殺の意思表示をするより先に、転付債権者の甲債権を自働債権、乙債権を受働債権とする相殺の意思表示により甲債権が消滅していた場合には、第三債務者による当該相殺の意思表示は、その効力を生じない旨判示している。本肢においても、甲債権と乙債権の両方の弁済期が到来した後、甲債権がAからCに譲渡され、その対抗要件が具備された場合において、Bは、CがBのCに対する金銭債権(丙債権)と甲債権とを相殺した後は、乙債権と甲債権との相殺をもってCに対抗することができない。
総合メモ

賃貸人の地位と転借人の地位との混同と転貸借 最一小判昭和35年6月23日

概要
賃貸人の地位と転借人の地位とが同一人に帰した場合であっても、転貸借関係は、当事者間に当該関係を消滅させる特別の合意が成立しない限り、当然には消滅しない。
判例
事案:賃貸人の地位と転借人の地位とが同一人に帰した場合において、転貸借関係が混同により当然に消滅するかが問題となった。

判旨:「賃貸人の地位と転借人たる地位とが同一人に帰した場合は民法613条1項の規定による転借人の賃貸人に対する直接の義務が混同により消滅するは別論として、当事者間に転貸借関係を消滅させる特別の合意が成立しない限りは転貸借関係は当然には消滅しないものと解するを相当とする。」
過去問・解説
(H30 司法 第36問 イ)
賃貸人たる地位と転借人たる地位とが同一人に帰属した場合、転貸借関係は消滅する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭35.6.23)は、「賃貸人の地位と転借人たる地位とが同一人に帰した場合は民法613条1項の規定による転借人の賃貸人に対する直接の義務が混同により消滅するは別論として、当事者間に転貸借関係を消滅させる特別の合意が成立しない限りは転貸借関係は当然には消滅しないものと解するを相当とする。」と判示している。

(R5 司法 第22問 オ)
Aがその所有する甲建物をBに賃貸し、BがこれをCに転貸した場合において、CがAから甲建物を購入して賃貸人たる地位がCに帰属したときは、転貸借関係は、混同により消滅する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭35.6.23)は、「賃貸人の地位と転借人たる地位とが同一人に帰した場合は民法613条1項の規定による転借人の賃貸人に対する直接の義務が混同により消滅するは別論として、当事者間に転貸借関係を消滅させる特別の合意が成立しない限りは転貸借関係は当然には消滅しないものと解するを相当とする。」と判示している。したがって、Aがその所有する甲建物をBに賃貸し、BがこれをCに転貸した場合において、CがAから甲建物を購入して賃貸人たる地位がCに帰属したときであっても、転貸借関係は、当然には混同により消滅しない。
総合メモ

不動産の二重譲渡と520条 最三小判昭和40年12月21日

概要
不動産の賃借人が賃貸人から不動産を譲り受けてその旨の所有権移転登記をしないうちに、第三者が不動産を二重に譲り受けてその旨の所有権移転登記をしたため、前の譲受人である賃借人において不動産の取得を後の譲受人である第三者に対抗できなくなったような場合には、一旦混同によって消滅した賃借権は、当該第三者に対する関係では、同人の所有権取得によって、消滅しなかったものとなる。
判例
事案:不動産の賃借人が賃貸人から不動産を譲り受けてその旨の所有権移転登記をしないうちに、第三者が不動産を二重に譲り受けてその旨の所有権移転登記をしたため、前の譲受人である賃借人において不動産の取得を後の譲受人である第三者に対抗できなくなった場合において、一旦混同によって消滅した賃借権の帰すうが問題となった。

判旨:「不動産の賃借人が賃貸人から該不動産を譲り受けてその旨の所有権移転登記をしないうちに、第三者が右不動産を二重に譲り受けてその旨の所有権移転登記を経由したため、前の譲受人たる賃借人において右不動産の取得を後の譲受人たる第三者に対抗できなくなつたような場合には、一たん混同によつて消滅した右賃借権は、右第三者に対する関係では、同人の所有権取得によつて、消滅しなかつたものとなると解するを相当とする。」
過去問・解説
(R1 司法 第21問 オ)
Aが所有する甲建物の賃借人BがAから甲建物を譲り受けて占有を継続していたが、CがAから甲建物を譲り受け、その旨の所有権移転登記を経由したため、Bにおいて甲建物の所有権の取得をCに対抗することができなくなったときは、賃借権は、Cに対する関係で消滅しなかったものとなる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭40.12.21)は、「不動産の賃借人が賃貸人から該不動産を譲り受けてその旨の所有権移転登記をしないうちに、第三者が右不動産を二重に譲り受けてその旨の所有権移転登記を経由したため、前の譲受人たる賃借人において右不動産の取得を後の譲受人たる第三者に対抗できなくなつたような場合には、一たん混同によつて消滅した右賃借権は、右第三者に対する関係では、同人の所有権取得によつて、消滅しなかつたものとなると解するを相当とする。」と判示している。したがって、Aが所有する甲建物の賃借人BがAから甲建物を譲り受けて占有を継続していたが、CがAから甲建物を譲り受け、その旨の所有権移転登記を経由したため、Bにおいて甲建物の所有権の取得をCに対抗することができなくなったときは、賃借権は、Cに対する関係で消滅しなかったものとなる。
総合メモ

催告・検索の抗弁権が付着する債権を自動債権とする相殺の成否 最二小判昭和32年2月22日

概要
催告及び検索の抗弁権の付着する保証契約上の債権を自働債権とする相殺は、許されない。
判例
事案:催告・検索の抗弁権が付着する債権を自動債権とする相殺が許されるかが問題となった。

判旨:「催告並びに検索の抗弁権の附着する保証契約上の債権を自働債権として相殺することをみとめるときは、相殺者一方の意思表示をもつて、相手方の抗弁権行使の機会を喪失せしめる結果を生ずるのであるから、かかる相殺はこれを許さない…。」
過去問・解説
(H25 共通 第23問 エ)
判例によれば、債権者が保証人に対して有する保証契約上の債権を自働債権とする相殺は、保証人が検索の抗弁権を有するときであっても、双方の債務が弁済期にあれば、することができる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭32.2.22)は、「催告並びに検索の抗弁権の附着する保証契約上の債権を自働債権として相殺することをみとめるときは、相殺者一方の意思表示をもつて、相手方の抗弁権行使の機会を喪失せしめる結果を生ずるのであるから、かかる相殺はこれを許さない…。」と判示している。したがって、債権者が保証人に対して有する保証契約上の債権を自働債権とする相殺は、保証人が検索の抗弁権を有するときは、双方の債務が弁済期にあったとしても、することができない。
総合メモ