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総則(通則 1条~2条) - 解答モード
権利濫用禁止の原則と不法行為 大判大正8年3月3日
概要
判例
判旨:「權利ノ行使ト雖モ法律ニ於テ認メラレタル適當ノ範圍内ニ於テ之ヲ爲スコトヲ要スルモノナレハ權利ヲ行使スル場合ニ於テ故意又ハ過失ニ因リ其擔當ナル範圍ヲ超越シ失當ナル方法ヲ行ヒタルカ爲メ他人ノ權利ヲ侵害シタルトキハ侵害ノ程度ニ於テ不法行爲成立スルコトハ當院判例ノ認ムル所ナリ(大正5年(オ)第718號大正6年1月22日言渡當院判決參照)然ラハ其適當ナル範圍トハ如何凡ソ社會的共同生活ヲ爲ス者ノ間ニ於テハ1人ノ行爲カ他人ニ不利益ヲ及ホスコトアルハ免ルヘカラサル所ニシテ此場合ニ於テ常ニ權利ノ侵害アルモノト爲スヘカラス其他人ハ共同生活ノ必要上之ヲ認容セサルヘカラサルナリ然レトモ其行爲カ社會觀念上被害者ニ於テ認容スヘカラサルモノト一般ニ認メラルル程度ヲ越ヘタルトキハ權利行使ノ適當ナル範圍ニアルモノト云フコトヲ得サルヲ以テ不法行爲ト爲ルモノト解スルヲ相當トス抑モ汽車ノ運轉ハ音響及ヒ職動ヲ近傍ニ傳ヘ又之ヲ運轉スルニ當リテハ石炭ヲ燃燒スルノ必要上煤煙ヲ附近ニ飛散セシムルハ已ムヲ得サル所ニシテ注意シテ汽車ヲ操縱シ石炭ヲ燃燒スルモ避クヘカラサル所ナレハ鐵道業者トシテノ權利ノ行使ニ當然伴フヘキモノト謂フヘク蒸汽鐵道カ交通上缺クヘカラサルモノトシテ認メラルル以上ハ沿道ノ住民ハ共同生活ノ必要上之ヲ認容セサルヘカラス即チ此等ハ權利行使ノ適當ナル範圍ニ屬スルヲ以テ住民ニ害ヲ及ホスコトアルモ不法ニ權利ヲ侵害シタルニアラサレハ不法行爲成立セス從テ汽車進行中附近ノ草木等ニ普通飛散スヘキ煤煙ニ因リ害ヲ被ラシムルモ被害者ハ其賠償ヲ請求スルコトヲ得サルモノトス然レトモ若シ汽車ノ運轉ニ際シ權利行使ノ適當ナル範圍ヲ超越シテ失當ナル方法ヲ行ヒ害ヲ及ホシタルトキハ不法ナル權利侵害トナルヲ以テ賠償ノ責ヲ免カルルコトヲ得サルナリ原院ノ認メタル事實ニ依レハ本件松樹ハ停車場ニ接近シ鐵道線路ヨリ僅ニ一間未滿ノ地點ニ生立シ其枝條ハ線路ノ方向ニ張リ常ニ汽鑵車ノ多大ナル煤煙ニ暴露セラレタル爲メ枯死ノ害ヲ被リタルモノニシテ其煤煙ヲ防クヘキ設備ヲ爲シ得ラレサルニアラサルコト第一點ニ説示シタルカ如クナルヲ以テ彼ノ鐵道沿線ノ到ル所ニ散在スル樹木カ普通ニ汽鑵車ヨリ吐出スル煤煙ノ害ヲ被ムリタルト同一ニ論スルコトヲ得サルモノトス即チ本件松樹ハ鐵道沿線ニ散在スル樹木ヨリモ甚シク煤煙ノ害ヲ被ムルヘキ位置ニアリテ且ツ其害ヲ豫防スヘキ方法ナキニアラサルモノナレハ討形人カ煤煙豫防ノ方法ヲ施サスシテ煙害ノ生スルニ任セ該松樹ヲ枯死セシメタルハ其營業タル汽車運轉ノ結果ナリトハ云ヘ社會觀念上一般ニ認容スヘキモノト認メラルル範圍ヲ超越シタルモノト謂フヘク權利行使ニ關スル適當ナル方法ヲ行ヒタルニアラサルモノト解スルヲ相當トス故ニ原院カ上告人ノ本件松樹ニ煙害ヲ被ラシメタルハ權利行使ノ範圍ニアラスト判斷シ過失ニ因リ之ヲ爲シタルヲ以テ不法行爲成立スル旨ヲ判示シタルハ相當ナリ。」
履行の提供と信義誠実の原則 大判大正14年12月3日
概要
判例
判旨:「上告人カ引渡ノ準備ヲ完了シ之ヲ被上告人ニ通知シ代金支払ヲ催告シタル際被上告人カ引渡場所ヲ知リ又ハ之ヲ知ルコトヲ得ヘカリシニ拘ラス之ニ応セサリシモノトスレハ固ヨリ遅滞ノ責ニ任セサルヘカラス而シテ本件ニ於テ上告人ハ引渡場所カ丸三倉庫ナルコトハ被上告人ノ了知スル所ナル旨主張スルモノナルコト原審ニ於ケル上告人弁論ノ全趣旨ニ徴シ之ヲ看取スルニ難カラサルノミナラス仮ニ被上告人カ之ヲ知ラサリシトスルモ被上告人ニ於テ誠実ニ取引スルノ意思アラハ相手方ニ対スル一片ノ問合セニ依リ直ニ之ヲ知ルコトヲ得ヘカリシモノニシテ斯カル場合ニハ信義ノ原則ニ依リ被上告人ハ右問合セヲ為スコトヲ要シ之ヲ怠リタルニ於テハ遅滞ノ責ヲ免ルルヲ得サルモノトス。」
過去問・解説
(H19 司法 第23問 ウ)
催告に当たり債権者が指定した履行の場所が不明確であったときは、この催告の効力が認められることはない。
(H20 司法 第1問 ウ)
動産売買における引渡場所について、買主が売主に問い合わせをすれば知ることが容易であった場合には、問い合わせを怠った買主は、権利濫用禁止の原則を根拠に遅滞の責任を免れない。
権利濫用禁止の原則 大判昭和10年10月5日
概要
判例
判旨:「所有権ニ対スル侵害又ハ其ノ危険ノ存スル以上所有者ハ斯ル状態ヲ除去又ハ禁止セシムル為メ裁判上ノ保護ヲ請求シ得ヘキヤ勿論ナレトモ該侵害ニ因ル損失云フニ足ラス而モ侵害ノ除去著シク困難ニシテ縦令之ヲ為シ得トスルモ莫大ナル費用ヲ要スヘキ場合ニ於テ第三者ニシテ斯ル事実アルヲ奇貨トシ不当ナル利益ヲ図リ殊更侵害ニ関係アル物件ヲ買収セル上一面ニ於テ侵害者ニ対シ侵害状態ノ除去ヲ迫リ他面ニ於テハ該物件其ノ他ノ自己所有物件ヲ不相当ニ巨額ナル代金ヲ以テ買取ラレタキ旨ノ要求ヲ提示シ他ノ一切ノ協調ニ応セスト主張スルカ如キニ於テハ該除去ノ請求ハ単ニ所有権ノ行使タル外形ヲ構フルニ止マリ真ニ権利ヲ救済セムトスルニアラス即チ如上ノ行為ハ全体ニ於テ専ラ不当ナル利益ノ掴得ヲ目的トシ所有権ヲ以テ其ノ具ニ供スルニ帰スルモノナレハ社会観念上所有権ノ目的ニ違背シ其ノ機能トシテ許サルヘキ範囲ヲ超脱スルモノニシテ権利ノ濫用ニ外ナラス従テ斯ル不当ナル目的ヲ追行スルノ手段トシテ裁判上侵害者ニ対シ当該侵害状態ノ除去並将来ニ於ケル侵害ノ禁止ヲ訴求スルニ於テハ該訴訟上ノ請求ハ外観ノ如何ニ拘ラス其ノ実体ニ於テハ保護ヲ与フヘキ正当ナル利益ヲ欠如スルヲ以テ此ノ理由ニ依リ直ニ之ヲ棄却スヘキモノト解スルヲ至当トス。」
過去問・解説
(H20 司法 第1問 エ)
「妨害により所有権が侵害されても、生じた損失が軽微であり、妨害を除去することが著しく困難で、多大の費用を要する場合には、不当な利益を獲得する目的で妨害の除去を求めることは許されない」という記述は、権利濫用禁止の原則について述べているものである。
長期間にわたって解除権を行使しなかった者による解除権の行使 最三小判昭和30年11月22日
概要
判例
判旨:「権利の行使は、信義誠実にこれをなすことを要し、その濫用の許されないことはいうまでもないので、解除権を有するものが、久しきに亘りこれを行使せず、相手方においてその権利はもはや行使せられないものと信頼すべき正当の事由を有するに至つたため、その後にこれを行使することが信義誠実に反すると認められるような特段の事由がある場合には、もはや右解除は許されないものと解するのを相当とする。」
過去問・解説
(H20 司法 第1問 イ)
「解除権を有する者が長期にわたりこれを行使せず、相手方においてその権利はもはや行使されないものと信頼すべき正当の事由を有するに至ったという特段の事情がある場合には、解除権の行使は許されない。」という記述は、権利濫用禁止の原則について述べたものである。
売買契約解除の前提としての催告が信義則に反し無効とされた事例 最一小判昭和43年5月30日
概要
判例
判旨:「被上告人Aらの被相続人Bは売買により本件土地等の所有権を取得し、その引渡をも受けたものである旨、および右のような状況にある土地につき、B不知の間に、上告人CはDのため根抵当権および地上権の設定登記をし、その後に本件売買の残代金の催告をしたものである旨の原審の認定は、挙示の証拠により是認できる。かかる事実関係の下においては、契約当事者は信義則に従い、相手方が契約所期の目的を達するよう努める義務があるものであるから、本件土地が右のような状態にある場合においては、Bが上告人Cの催告に応じて残代金を支払っても、右根抵当権および地上権が設定されているため、将来所有権を失う等不則の損害を蒙るおそれがあるので、本件契約解除の前提たる前記催告は、信義則に反する無効のものというべきである…。」
過去問・解説
(H25 司法 第1問 1)
土地の売買契約により、買主が所有権を取得し、その引渡しを受けた後に、売主がその土地に第三者のため地上権の設定登記をした場合には、売主が買主に対して残代金の支払を催告し、その不払を理由に売買契約を解除する旨の意思表示は公序良俗に違反するから、解除の効力は生じない。
国の国家公務員に対する安全配慮義務 最三小判昭和50年2月25日
概要
判例
判旨:「国と国家公務員(以下「公務員」という。)との間における主要な義務として、法は、公務員が職務に専念すべき義務(国家公務員法101条1項前段、自衛隊法60条1項等)並びに法令及び上司の命令に従うべき義務(国家公務員法98条1項、自衛隊法56条、57条等)を負い、国がこれに対応して公務員に対し給与支払義務(国家公務員法62条、防衛庁職員給与法4条以下等)を負うことを定めているが、国の義務は右の給付義務にとどまらず、国は、公務員に対し、国が公務遂行のために設置すべき場所、施設もしくは器具等の設置管理又は公務員が国もしくは上司の指示のもとに遂行する公務の管理にあたって、公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務(以下「安全配慮義務」という。)を負っているものと解すべきである。もとより、右の安全配慮義務の具体的内容は、公務員の職種、地位及び安全配慮義務が問題となる当該具体的状況等によって異なるべきものであり、自衛隊員の場合にあっては、更に当該勤務が通常の作業時、訓練時、防衛出動時(自衛隊法76条)、治安出動時(同法78条以下)又は災害派遣時(同法83条)のいずれにおけるものであるか等によっても異なりうべきものであるが、国が、不法行為規範のもとにおいて私人に対しその生命、健康等を保護すべき義務を負っているほかは、いかなる場合においても公務員に対し安全配慮義務を負うものではないと解することはできない。けだし、右のような安全配慮義務は、ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般的に認められるべきものであつて、国と公務員との間においても別異に解すべき論拠はなく、公務員が前記の義務を安んじて誠実に履行するためには、国が、公務員に対し安全配慮義務を負い、これを尽くすことが必要不可欠であり、また、国家公務員法93条ないし95条及びこれに基づく国家公務員災害補償法並びに防衛庁職員給与法27条等の災害補償制度も国が公務員に対し安全配慮義務を負うことを当然の前提とし、この義務が尽くされたとしてもなお発生すべき公務災害に対処するために設けられたものと解されるからである。」
過去問・解説
(H20 司法 第1問 ア)
「国は、公務員に対して、その生命及び健康等を危険から保護するように配慮すべき義務を負う。」という記述は、権利濫用禁止の原則について述べたものである。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭50.2.25)は、「国は、公務員に対し…公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務(以下「安全配慮義務」という。)を負」うと判示した上で、「右のような安全配慮義務は、ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般的に認められるべきものであって、国と公務員との間においても別異に解すべき論拠はなく、公務員が前記の義務を安んじて誠実に履行するためには、国が、公務員に対し安全配慮義務を負い、これを尽くすことが必要不可欠であ」ると判示している。このように、同判例は、安全配慮義務の根拠を、権利濫用禁止の原則ではなく、信義則に求めている。
不当利得返還請求訴訟において不当利得返還請求権の成立要件である「損失」が発生していないと主張して請求を争うことが信義誠実の原則に反するとされた事例 最三小判平成16年10月26日
概要
判例
判旨:「(1)上告人は、本件各金融機関から被上告人相続分の預金について自ら受領権限があるものとして払戻しを受けておきながら、被上告人から提起された本件訴訟において、一転して、本件各金融機関に過失があるとして、自らが受けた上記払戻しが無効であるなどと主張するに至ったものであること、(2)仮に、上告人が、本件各金融機関がした上記払戻しの民法478条の弁済としての有効性を争って、被上告人の本訴請求の棄却を求めることができるとすると、被上告人は、本件各金融機関が上記払戻しをするに当たり善意無過失であったか否かという、自らが関与していない問題についての判断をした上で訴訟の相手方を選択しなければならないということになるが、何ら非のない被上告人が上告人との関係でこのような訴訟上の負担を受忍しなければならない理由はないことなどの諸点にかんがみると、上告人が上記のような主張をして被上告人の本訴請求を争うことは、信義誠実の原則に反し許されないものというべきである。」
過去問・解説
(R2 司法 第28問 エ)
債務者が債権の受領権限がない者に対し弁済をした場合において、真の債権者がその受領者に対して不当利得返還請求をしたときは、その受領者は、弁済をした債務者に過失があったことを主張して、請求を拒絶することができる。
貸金業者において、特約に基づき借主が期限の利益を喪失した旨主張することが信義則に反し許されないとされた事例 最二小判平成21年9月11日
概要
判例
判旨:「…上告人の対応は…被上告人に期限の利益を喪失していないとの誤信を生じさせかねないものであって、被上告人において、約定の支払期日より支払が遅れることがあっても期限の利益を喪失することはないと誤信したことには無理からぬものがあるというべきである。」
「上告人は、被上告人が期限の利益を喪失していないと誤信していることを知りながら、この誤信を解くことなく…金員等を受領し続けたにもかかわらず、被上告人から過払金の返還を求められるや、被上告人は第5回目の支払期日における支払が遅れたことにより既に期限の利益を喪失しており、その後に発生したのはすべて利息ではなく遅延損害金であったから、利息の制限利率ではなく遅延損害金の制限利率によって過払金の元本への充当計算をすべきであると主張するものであって、このような上告人の期限の利益喪失の主張は、誤信を招くような上告人の対応のために、期限の利益を喪失していないものと信じて支払を継続してきた被上告人の信頼を裏切るものであり、信義則に反し許されないものというべきである。」
過去問・解説
(H25 司法 第1問 3)
消費貸借契約の貸主が積極的に借主の誤信を招くような対応をしたため、借主が期限の利益を喪失していないものと信じて各期の支払を継続し、貸主も借主が誤信していることを知りながらその誤信を解くことなく弁済金を受領し続けたという事情がある場合、貸主は、借主に対し、期限の利益を喪失した旨の主張は、公序良俗に違反することから、することができない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平21.9.11)は、本肢と同種の事案において、「上告人は、被上告人が期限の利益を喪失していないと誤信していることを知りながら、この誤信を解くことなく…金員等を受領し続けたにもかかわらず、被上告人から過払金の返還を求められるや、被上告人は第5回目の支払期日における支払が遅れたことにより既に期限の利益を喪失しており、その後に発生したのはすべて利息ではなく遅延損害金であったから、利息の制限利率ではなく遅延損害金の制限利率によって過払金の元本への充当計算をすべきであると主張するものであって、このような上告人の期限の利益喪失の主張は、誤信を招くような上告人の対応のために、期限の利益を喪失していないものと信じて支払を継続してきた被上告人の信頼を裏切るものであり、信義則に反し許されないものというべきである。」と判示している。このように、同判例は、本肢と同種の事案において、期限の利益を喪失した旨の主張を退ける法的根拠を、公序良俗(90条)に違反することではなく、信義則に求めている。
抹消登記手続と信義則違反 最二小判昭和42年4月7日
概要
判例
判旨:「原判決の確定したところによれば、上告人は、本件田について、共同相続によつて持分しか取得しなかつたにもかかわらず、自己が単独相続したとして、その旨の所有権移転登記を経由し、これを前提として、被上告人との間において右抵当権設定契約を締結し、その旨の登記を経由したというのであるから、上告人が、被上告人に対し、その分割前に取得していた本件田の持分をこえる持分についての右抵当権が無効であると主張して、その抹消(更正)登記手続を請求することは、信義則に照して許されないというべきである。」
過去問・解説
(H25 司法 第1問 4)
次の記述は、公序良俗に違反することを根拠とするか。
不動産の共同相続人の1人が、単独相続の登記をして、これに抵当権を設定し、その設定登記をしながら、自己の持分を超える部分の抵当権の無効を主張して、その抹消登記手続を請求することはできない。
対抗力を具備しない土地賃借権者に対し建物収去土地明渡しを求めることが権利の濫用となるとされた事例 最三小判昭和43年9月3日
概要
判例
判旨:「原審は、…「被控訴人(上告人)は、単に控訴人(被上告人)…が本件…土地を賃借し、同地上に建物を所有して営業している事実を知つて本件土地を買受けたものであるに止らず、時価よりも著しく低廉な、しかも賃借権付評価で取得した土地につき、たまたま控訴人(被上告人)…の賃借権が対抗力を欠如していることを発見し、これを奇貨として予想外の新たな利益を収めようとするものであり、その方法としては事前に何らの交渉もしないで抜打的に本訴を提起し、その反面に、相手方に予期しない不利益を与えるもの、即ち正当な賃借権に基き地上に建物を所有して平穏に営業し来つた控訴人(被上告人)…側の営業ならびに生活に多大の損失と脅威を与えることを意に介せず、敢えて彼我の利益の均衡を破壊して巨利を博する結果を招来せんとするものと認めなければならない」とし、上告人の被上告人…に対する本件建物収去・土地明渡の請求は権利の濫用として許されないと判断したのである。そして、原判決挙示の証拠によれば、原審の前記事実の認定は是認することができ、当該事実関係のもとにおいては、上告人の被上告人…に対する本件建物収去・土地明渡の請求を権利の濫用にあたるとした原審の判断は正当である。」
過去問・解説
(H18 司法 第18問 3)
AがBに土地を賃貸し、Bが同土地上に建物を建築して所有している。AがCに同土地を譲渡した。Bが土地の賃貸借の登記と建物の所有権の登記のいずれもしていなかったが、Cは、Bの賃借人としての土地利用を知っており、借地権の存在を前提とする低廉な価格で土地を買い、所有権移転登記を経た。この場合、CのBに対する建物収去土地明渡請求は認められる。