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担保物権(抵当権①(総則) 369条~372条) - 解答モード
抵当建物が崩壊した場合における抵当権の範囲 大判大正5年6月28日
概要
判例
判旨:「抵当権ノ実行ニ着手スル以前ニ於テ抵当権ノ目的物タル家屋カ天災ノ為メ崩壊シ不動産タル性質ヲ失ヒテ動産ト為リタルトキハ家屋ヲ目的物トセル抵当権ハ之ニ依リ消滅シ崩壊ニ依リ生シタル動産ノ上ニ其効力ノ及ハサルコト勿論ナリトス而シテ民法第372条ニ依リ抵当権ニ準用セラルル民法第304条ノ規定ハ抵当権ノ効力ノ及フ範囲ヲ拡張シテ其目的物タル不動産ノ滅失又ハ毀損ニ因リテ抵当権設定者ノ受クヘキ金銭其他ノ物ニ対シテモ其払渡又ハ引渡前ニ差押ヲ為スコトニ依リ抵当権ノ効力ヲ保有セシムルコトヲ明ニシタリト雖モ同条ニ所謂其受クヘキ金銭其他ノ物トハ滅失若クハ毀損ニ依リ抵当権設定者カ第三者ヨリ受クヘキ損害賠償金若クハ保険金ノ如キ目的物ノ全部若クハ一部ヲ直接代表スヘキ物ヲ指称スルモノニシテ抵当権ノ目的物タル家屋ノ天災ノ為メニ崩壊シテ動産ニ変シタル如キ場合ヲ包含セサルモノト解スヘク従テ抵当権者ハ斯ル動産ニ対スル強制執行ニ因ル競売代金ノ上ニ其優先権ヲ主張スルコトヲ得サルモノトス。」
抵当権の抹消登記請求権 大判大正8年10月8日
概要
判例
判旨:「上告人ハ自己ノ抵当権設定登記ヲ抹消スルノ手続ヲ為サスト云フニ在リテ斯クノ如ク既ニ弁済ニ因リテ消滅ニ帰シタル本件抵当権ノ設定登記カ尚依然トシテ登記簿上ニ存在スルニ於テハ被上告人ノ如ク登記簿上次順位ニ在ル抵当権者ハ形式ニ於テ上告人ノ次位ニ在ルカ為メニ抵当権ノ行使其他諸般ノ取引上種々ナル障礙ヲ受クルコトヲ免カレサルハ当然ナルヲ以テ被上告人ハ上告人ニ対シテ其消滅セル抵当権ノ設定登記ノ抹消ヲ請求スルノ利益ヲ有シ又上告人ハ其請求ニ応シテ抹消手続ヲ為スノ義務ヲ有スルモノト云ハサル可カラス。」
過去問・解説
(H18 司法 第10問 3)
第1順位の抵当権の被担保債権が弁済されて消滅した場合、付従性に基づいて抵当権は当然に消滅するから、第2順位の抵当権者が第1順位の抵当権の登記の抹消を求める必要はなく、その登記の抹消を内容とする物権的請求権は生じない。
(正答)✕
(解説)
判例(大判大8.10.8)は、「上告人ハ自己ノ抵当権設定登記ヲ抹消スルノ手続ヲ為サスト云フニ在リテ斯クノ如ク既ニ弁済ニ因リテ消滅ニ帰シタル本件抵当権ノ設定登記カ尚依然トシテ登記簿上ニ存在スルニ於テハ被上告人ノ如ク登記簿上次順位ニ在ル抵当権者ハ形式ニ於テ上告人ノ次位ニ在ルカ為メニ抵当権ノ行使其他諸般ノ取引上種々ナル障礙ヲ受クルコトヲ免カレサルハ当然ナルヲ以テ被上告人ハ上告人ニ対シテ其消滅セル抵当権ノ設定登記ノ抹消ヲ請求スルノ利益ヲ有シ又上告人ハ其請求ニ応シテ抹消手続ヲ為スノ義務ヲ有スルモノト云ハサル可カラス。」と判示している。したがって、第2順位の抵当権者が第1順位の抵当権の登記の抹消を求める必要性はなお存在し、その登記の抹消を内容とする物権的請求権は生じる。
(H28 共通 第14問 4)
第1順位の抵当権者の被担保債権が弁済により消滅した場合、第2順位の抵当権者は、消滅した第1順位の抵当権の抹消登記手続を求めることができる。
(R2 予備 第3問 オ)
Aは、所有する甲土地につき、Bを第1順位とする抵当権及び、Cを第2順位とする抵当権をそれぞれ設定し、その旨の登記がされた。この場合において、甲土地のBの抵当権の被担保債権が消滅したときは、Cは、Bに対し、自己の抵当権に基づきBの抵当権設定登記の抹消を請求することができる。
(R3 共通 第6問 オ)
甲土地に設定された第1順位の抵当権の被担保債権が消滅したにもかかわらずその登記が抹消されていない場合、甲土地の第2順位の抵当権者は、第1順位の抵当権者に対してその登記の抹消を請求することができない。
抵当権の効力の及ぶ範囲 大判大正14年10月26日
概要
判例
判旨:「土地ニ定著シテ之ト一体ヲ為ス樹木ハ不動産タル性質ヲ有スルモノナリト雖立木ニ関スル法律ノ適用ヲ受クルモノニアラサレハ土地ト分離シ独立シテ抵当権ノ目的ト為スコトヲ得サルハ同法律第2条ノ規定ニヨリ明瞭ナルノミナラス抵当権ハ其ノ目的タル不動産ニ附加シ之ト一体ヲ成シタル物ニ及フ旨ヲ規定シタル民法第370条ニ於テ抵当地上ニ存スル建物ヲ除外シタルニ止リ其ノ地上ニ存スル樹木ヲ除外セサリシ趣旨ニ徴スルモ蓋疑ヲ容レサル所ナリトス故ニ山林ヲ抵当権ノ目的トナシタル場合ニ其ノ地上ニ生立スル樹木ニシテ立木ニ関スル法律ノ適用ヲ受ケサルモノナル以上ハ特ニ之ヲ除外スル旨ノ意思ヲ表示セサル限リ抵当権ハ単ニ地盤ノミニ止ラス之ト一体ヲ成ス樹木ニモ及フモノナリト解スルヲ相当トス。」
物権的請求権 大判昭和6年10月21日
概要
判例
判旨:「抵当権ニ基ク競売開始決定アリタル場合ニハ其ノ送達ニ因リ債権者ノ為メ差押ノ効力ヲ生スルカ故ニ爾後債務者ノ為ス法律行為ニ因ル処分行為ハ之ヲ以テ債権者ニ対抗スルコトヲ得ス従テ右差押ノ現存スル以上ハ更ニ判決ヲ以テ債務者ノ為ス法律行為ニ因ル処分行為ヲ禁止スルコトヲ要セサルハ勿論ナリト雖債務者カ滅失毀損等事実上ノ行為ヲ以テ抵当物ニ対スル侵害ヲ敢行スル場合ニ於テハ其ノ侵害行為カ抵当権者ノ有スル債権ノ弁済期後ナルト或ハ抵当権ノ実行ニ著手シタル後ナルト否トヲ問ハス抵当権者ハ物権タル抵当権ノ効力トシテ之カ妨害ノ排除ヲ訴求シ得ヘキハ当然ナリト云ハサルヲ得ス。」
過去問・解説
(R3 共通 第6問 エ)
Aが所有する甲土地にBのために抵当権が設定され、その登記がされた後、Cは、甲土地上にAが所有する樹木を何の権原もなく伐採し始めた。この場合、Bは、被担保債権の弁済期前であっても、Cに対して伐採の禁止を請求することができる。
将来債権である保証人の求償権を担保するための抵当権の設定 最二小判昭和33年5月9日
概要
判例
判旨:「当事者間の合意によつて、…将来発生の可能性のある条件付債権を担保するため抵当権を設定することも、有効と解すべき…。」
過去問・解説
(H19 司法 第15問 ア)
将来発生するかどうか不確実な債権について根抵当権でない抵当権の設定登記がなされた場合、抵当権設定者は、被担保債権の不存在を理由として、抵当権者に対して、抵当権設定登記の抹消を求めることができる。
(H26 共通 第14問 ア)
保証人の求償権は、主たる債務者が弁済しないときに保証人が弁済することによって生じる将来の債権であるから、保証人の求償権を被担保債権として抵当権を設定することはできない。
抵当権の配当と不当利得返還請求 最二小判平成3年3月22日
概要
判例
判旨:「抵当権者は、不動産競売事件の配当期日において配当異議の申出をしなかつた場合であつても、債権又は優先権を有しないにもかかわらず配当を受けた債権者に対して、その者が配当を受けたことによつて自己が配当を受けることができなかつた金銭相当額の金員の返還を請求することができるものと解するのが相当である。けだし、抵当権者は抵当権の効力として抵当不動産の代金から優先弁済を受ける権利を有するのであるから、他の債権者が債権又は優先権を有しないにもかかわらず配当を受けたために、右優先弁済を受ける権利が害されたときは、右債権者は右抵当権者の取得すべき財産によって利益を受け、右抵当権者に損失を及ぼしたものであり、配当期日において配当異議の申出がされることなく配当表が作成され、この配当表に従って配当が実施された場合において、右配当の実施は係争配当金の帰属を確定するものではなく、したがって、右利得に法律上の原因があるとすることはできないからである。」
過去問・解説
(H28 司法 第28問 イ)
抵当権者は、自己の抵当権が設定された不動産について競売がされた場合には、不動産競売事件の配当期日において配当異議の申出をしなかったとしても、債権又は優先権を有しないにもかかわらず配当を受けた債権者に対し、その者が配当を受けたことによって自己が配当を受けることができなかった金銭相当額の金員について不当利得返還請求をすることができる。
(R5 司法 第29問 ア)
甲土地につき抵当権の設定を受け、その旨の登記をしたAは、甲土地についての不動産競売事件の配当期日において配当異議の申出をしなかった場合には、Aに対する優先権を有しないにもかかわらず配当を受けた一般債権者Bに対し、不当利得に基づく返還請求をすることができない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平3.3.22)は、「抵当権者は、不動産競売事件の配当期日において配当異議の申出をしなかった場合であっても、債権又は優先権を有しないにもかかわらず配当を受けた債権者に対して、その者が配当を受けたことによって自己が配当を受けることができなかった金銭相当額の金員の返還を請求することができるものと解するのが相当である。」と判示している。したがって、Aは、甲土地についての不動産競売事件の配当期日において配当異議の申出をしなかった場合においても、Aに対する優先権を有しないにもかかわらず配当を受けた一般債権者Bに対し、不当利得に基づく返還請求をすることができる。
価格割合に基づく抵当権の存続 最三小判平成6年1月25日
概要
判例
判旨:「互いに主従の関係にない甲、乙2棟の建物が、その間の隔壁を除去する等の工事により1棟の丙建物となった場合においても、これをもって、甲建物あるいは乙建物を目的として設定されていた抵当権が消滅することはなく、右抵当権は、丙建物のうちの甲建物又は乙建物の価格の割合に応じた持分を目的とするものとして存続すると解するのが相当である。けだし、右のような場合、甲建物又は乙建物の価値は、丙建物の価値の一部として存続しているものとみるべきであるから、不動産の価値を把握することを内容とする抵当権は、当然に消滅するものではなく、丙建物の価値の一部として存続している甲建物又は乙建物の価値に相当する各建物の価格の割合に応じた持分の上に存続するものと考えるべきだからである。」
過去問・解説
(R1 共通 第14問 イ)
1人の者が所有する互いに主従の関係にない甲乙2棟の建物が工事により1棟の丙建物となった場合において、甲建物と乙建物とにそれぞれ抵当権が設定されていたときは、それらの抵当権は、丙建物のうちの甲建物と乙建物の価格の割合に応じた持分を目的とするものとして存続する。
抵当権者の物上代位権と債権譲渡 最二小判平成10年1月30日
概要
判例
判旨:「1 民法372条において準用する304条1項ただし書が抵当権者が物上代位権を行使するには払渡し又は引渡しの前に差押えをすることを要するとした趣旨目的は、主として、抵当権の効力が物上代位の目的となる債権にも及ぶことから、右債権の債務者(以下「第三債務者」という。)は、右債権の債権者である抵当不動産の所有者(以下「抵当権設定者」という。)に弁済をしても弁済による目的債権の消滅の効果を抵当権者に対抗できないという不安定な地位に置かれる可能性があるため、差押えを物上代位権行使の要件とし、第三債務者は、差押命令の送達を受ける前には抵当権設定者に弁済をすれば足り、右弁済による目的債権消滅の効果を抵当権者にも対抗することができることにして、二重弁済を強いられる危険から第三債務者を保護するという点にあると解される。
2 右のような民法304条1項の趣旨目的に照らすと、同項の「払渡又ハ引渡」には債権譲渡は含まれず、抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後においても、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができるものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H18 司法 第19問 イ)
Aのために抵当権設定登記がされた後にCに対する賃料債権がBからEに譲渡されてその第三者対抗要件が具備された場合、Aは、同じ賃料債権を差し押さえて優先弁済を受けることができる。
(H19 司法 第14問 3)
抵当権に基づく物上代位の目的債権が譲渡され、第三者に対する対抗要件が備えられた場合であっても、それより前に抵当権が設定され、第三者に対する対抗要件が備えられていたならば、抵当権者は、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平10.1.30)は、304条1項但書の「払渡し又は引渡し」の要件の解釈について、「債権譲渡は含まれず、抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後においても、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができるものと解するのが相当である。」と判示している。したがって、抵当権に基づく物上代位の目的債権が譲渡され、第三者に対する対抗要件が備えられた場合であっても、それより前に抵当権が設定され、第三者に対する対抗要件が備えられていたならば、抵当権者は、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。
(H23 司法 第14問 5)
抵当権者は、物上代位権行使の目的となる債権が譲渡され、第三者に対する対抗要件が備えられた後であっても、自らその目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。
(H29 司法 第12問 ア)
抵当権者は、抵当権設定登記がされた後に物上代位の目的債権が譲渡されて第三者に対する対抗要件が備えられた場合においても、目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。
一般債権者の差押えと抵当権者の差押えの優劣 最一小判平成10年3月26日
概要
判例
判旨:「債権について一般債権者の差押えと抵当権者の物上代位権に基づく差押えが競合した場合には、両者の優劣は一般債権者の申立てによる差押命令の第三債務者への送達と抵当権設定登記の先後によって決せられ、右の差押命令の第三債務者への送達が抵当権者の抵当権設定登記より先であれば、抵当権者は配当を受けることができないと解すべきである。」
過去問・解説
(H18 司法 第19問 ア)
AのBに対する金銭債権を担保するために、BがCに賃貸している建物を目的とする抵当権が設定された。この登記が、Bの一般債権者DがBのCに対する賃料債権を差し押さえた後にされた場合、Aは、同じ賃料債権を差し押さえて優先弁済を受けることができる。
(R3 共通 第11問 オ)
AがBに賃貸しているA所有の甲建物にCのための抵当権が設定され、その登記がされている。この登記が、AのBに対する賃料債権をAの一般債権者Eが差し押さえ、その差押命令がBに送達された後にされた場合、Cは、同一の債権を差し押さえて物上代位権を行使してEに対抗することができない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平10.3.26)は、「債権について一般債権者の差押えと抵当権者の物上代位権に基づく差押えが競合した場合には、両者の優劣は一般債権者の申立てによる差押命令の第三債務者への送達と抵当権設定登記の先後によって決せられ、右の差押命令の第三債務者への送達が抵当権者の抵当権設定登記より先であれば、抵当権者は配当を受けることができないと解すべきである。」と判示している。したがって、Cの抵当権設定登記が、AのBに対する賃料債権をAの一般債権者Eが差し押さえ、その差押命令がBに送達された後にされた場合、Cは、同一の債権を差し押さえて物上代位権を行使してEに対抗することができない。
賃借人の転貸賃料債権と抵当権者の物上代位権 最二小決平成12年4月14日
概要
判例
判旨:「民法372条によって抵当権に準用される同法304条1項に規定する「債務者」には、原則として、抵当不動産の賃借人(転貸人)は含まれないものと解すべきである。けだし、所有者は被担保債権の履行について抵当不動産をもって物的責任を負担するものであるのに対し、抵当不動産の賃借人は、このような責任を負担するものではなく、自己に属する債権を被担保債権の弁済に供されるべき立場にはないからである。同項の文言に照らしても、これを「債務者」に含めることはできない。また、転貸賃料債権を物上代位の目的とすることができるとすると、正常な取引により成立した抵当不動産の転貸借関係における賃借人(転貸人)の利益を不当に害することにもなる。もっとも、所有者の取得すべき賃料を減少させ、又は抵当権の行使を妨げるために、法人格を濫用し、又は賃貸借を仮装した上で、転貸借関係を作出したものであるなど、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合には、その賃借人が取得すべき転貸賃料債権に対して抵当権に基づく物上代位権を行使することを許すべきものである。
以上のとおり、抵当権者は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き、右賃借人が取得すべき転貸賃料債権について物上代位権を行使することができないと解すべきであ…る。」
過去問・解説
(H18 司法 第19問 オ)
AのBに対する金銭債権を担保するために、BがCに賃貸している建物を目的とする抵当権が設定された。Bの承諾を得てCがGに建物を転貸した場合、Aは、建物の賃貸借により生ずる果実であるCのGに対する賃料の債権を差し押さえることができる。
(H19 司法 第14問 4)
抵当権者は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き、その賃借人が取得する転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない。
(H29 予備 第6問 イ)
AのBに対する債権を被担保債権として、C所有の甲土地について抵当権が設定され、その旨の登記がされている。Cが甲土地をDに賃貸し、さらにDが甲土地をEに転貸したときは、DをCと同視することを相当とする場合を除き、Aは、Dが取得する転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない。
(R3 共通 第11問 ウ)
AがBに賃貸しているA所有の甲建物にCのための抵当権が設定され、その登記がされている。Bが甲建物をDに転貸した場合、Cは、BをAと同視することが相当であるときを除き、BのDに対する転貸賃料債権について物上代位権を行使することができる。
抵当権設定登記と賃料債権の相殺と物上代位権 最三小判平成13年3月13日
概要
判例
判旨:「抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は、抵当不動産の賃借人は、抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって、抵当権者に対抗することはできないと解するのが相当である。けだし、物上代位権の行使としての差押えのされる前においては、賃借人のする相殺は何ら制限されるものではないが、上記の差押えがされた後においては、抵当権の効力が物上代位の目的となった賃料債権にも及ぶところ、物上代位により抵当権の効力が賃料債権に及ぶことは抵当権設定登記により公示されているとみることができるから、抵当権設定登記の後に取得した賃貸人に対する債権と物上代位の目的となった賃料債権とを相殺することに対する賃借人の期待を物上代位権の行使により賃料債権に及んでいる抵当権の効力に優先させる理由はないというべきであるからである。」
過去問・解説
(H18 司法 第19問 エ)
Aのために抵当権設定登記がされるより前にCがBに対して金銭を貸し付けていた場合、Aが賃料債権を差し押さえたときは、Cは、その貸金債権の弁済期が差押え後に到来するものであっても、当該貸金債権と賃料債権との相殺をもってAに対抗することができる。
(H29 司法 第12問 エ)
抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は、抵当不動産の賃借人は、抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とし、賃料債権を受働債権とする相殺をもって抵当権者に対抗することはできない。
(R3 共通 第11問 ア)
AがBに賃貸しているA所有の甲建物にCのための抵当権が設定され、その登記がされている。Cのための抵当権の設定登記がされた後にBがAに対して金銭を貸し付け、その貸金債権の弁済期が到来した場合、AのBに対する賃料債権についてCが物上代位権を行使して差押えをした後であっても、Bは、Aに対する貸金債権を自働債権とし、Aの賃料債権を受働債権とする相殺をもって、Cに対抗することができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平13.3.13)は、「抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は、抵当不動産の賃借人は、抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって、抵当権者に対抗することはできないと解するのが相当である。」と判示している。したがって、Cのための抵当権の設定登記がされた後にBがAに対して金銭を貸し付け、その貸金債権の弁済期が到来した場合、AのBに対する賃料債権についてCが物上代位権を行使して差押えをした後は、Bは、Aに対する貸金債権を自働債権とし、Aの賃料債権を受働債権とする相殺をもって、Cに対抗することができない。
一般債権者による差押えと物上代位権の行使 最三小判平成14年3月12日
概要
判例
判旨:「転付命令に係る金銭債権(以下「被転付債権」という。)が抵当権の物上代位の目的となり得る場合においても、転付命令が第三債務者に送達される時までに抵当権者が被転付債権の差押えをしなかったときは、転付命令の効力を妨げることはできず、差押命令及び転付命令が確定したときには、転付命令が第三債務者に送達された時に被転付債権は差押債権者の債権及び執行費用の弁済に充当されたものとみなされ、抵当権者が被転付債権について抵当権の効力を主張することはできないものと解すべきである。けだし、転付命令は、金銭債権の実現のために差し押さえられた債権を換価するための一方法として、被転付債権を差押債権者に移転させるという法形式を採用したものであって、転付命令が第三債務者に送達された時に他の債権者が民事執行法159条3項に規定する差押等をしていないことを条件として、差押債権者に独占的満足を与えるものであり(民事執行法159条3項、160条)、他方、抵当権者が物上代位により被転付債権に対し抵当権の効力を及ぼすためには、自ら被転付債権を差し押さえることを要し(最高裁平成13年(受)第91号同年10月25日第一小法廷判決・民集55巻6号975頁)、この差押えは債権執行における差押えと同様の規律に服すべきものであり(同法193条1項後段、2項、194条)、同法159条3項に規定する差押えに物上代位による差押えが含まれることは文理上明らかであることに照らせば、抵当権の物上代位としての差押えについて強制執行における差押えと異なる取扱いをすべき理由はなく、これを反対に解するときは、転付命令を規定した趣旨に反することになるからである。」
過去問・解説
(H18 司法 第19問 ウ)
Aのために抵当権設定登記がされた後にBの一般債権者FがCに対する既発生の賃料債権を差し押さえ、その債権をFに転付する旨の命令が効力を生じた場合、Aは、同じ賃料債権を差し押さえて優先弁済を受けることができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平14.3.12)は、「転付命令に係る金銭債権(以下「被転付債権」という。)が抵当権の物上代位の目的となり得る場合においても、転付命令が第三債務者に送達される時までに抵当権者が被転付債権の差押えをしなかったときは、転付命令の効力を妨げることはできず、差押命令及び転付命令が確定したときには、転付命令が第三債務者に送達された時に被転付債権は差押債権者の債権及び執行費用の弁済に充当されたものとみなされ、抵当権者が被転付債権について抵当権の効力を主張することはできないものと解すべきである。」と判示している。したがって、Aのために抵当権設定登記がされた後にBの一般債権者FがCに対する既発生の賃料債権を差し押さえ、その債権をFに転付する旨の命令が効力を生じた場合、Aは、同じ賃料債権を差し押さえて優先弁済を受けることができない。
(H23 司法 第14問 4)
抵当権者は、一般債権者が物上代位権行使の目的となる債権を差し押さえて転付命令が第三債務者に送達された後であっても、自らその目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。
(H29 司法 第12問 ウ)
抵当権者は、抵当権設定登記がされた後に物上代位の目的債権が転付命令の確定により差押債権者に移転した場合においても、目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。
(R3 共通 第11問 エ)
AがBに賃貸しているA所有の甲建物にCのための抵当権が設定され、その登記がされている。AのBに対する賃料債権をAの一般債権者Eが差し押さえて転付命令を取得し、その転付命令がBに送達された後は、Cは、同一の債権を差し押さえて物上代位権を行使してEに対抗することができない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平14.3.12)は、「転付命令に係る金銭債権(以下「被転付債権」という。)が抵当権の物上代位の目的となり得る場合においても、転付命令が第三債務者に送達される時までに抵当権者が被転付債権の差押えをしなかったときは、転付命令の効力を妨げることはできず、差押命令及び転付命令が確定したときには、転付命令が第三債務者に送達された時に被転付債権は差押債権者の債権及び執行費用の弁済に充当されたものとみなされ、抵当権者が被転付債権について抵当権の効力を主張することはできないものと解すべきである。」と判示している。したがって、AのBに対する賃料債権をAの一般債権者Eが差し押さえて転付命令を取得し、その転付命令がBに送達された後は、Cは、同一の債権を差し押さえて物上代位権を行使してEに対抗することができない。
建物に設定した抵当権と土地の賃借権 最三小判昭和40年5月4日
概要
判例
判旨:「土地賃借人の所有する地上建物に設定された抵当権の実行により、競落人が該建物の所有権を取得した場合には、民法612条の適用上賃貸人たる土地所有者に対する対抗の問題はしばらくおき、従前の建物所有者との間においては、右建物が取毀しを前提とする価格で競落された等特段の事情がないかぎり、右建物の所有に必要な敷地の賃借権も競落人に移転するものと解するのが相当である…。けだし、建物を所有するために必要な敷地の賃借権は、右建物所有権に付随し、これと一体となつて一の財産的価値を形成しているものであるから、建物に抵当権が設定されたときは敷地の賃借権も原則としてその効力の及ぶ目的物に包含されるものと解すべきであるからである。」
過去問・解説
(H24 司法 第15問 2)
借地上の建物が抵当権の目的となっている場合、建物の敷地利用権である借地権にも抵当権の効力が及ぶ。
(H25 司法 第16問 2)
AがBから建物所有目的で土地を賃借し、その上にAが建てた甲建物にCのために抵当権を設定した場合、その抵当権の効力は甲建物の従たる権利である当該土地賃借権にも及び、抵当権実行としての競売がされた時に当該土地賃借権も甲建物の買受人Dに移転するから、Dは、Bの承諾がなくても、Bに対し、当該土地賃借権を甲建物の占有権原として主張することができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭40.5.4)は、借地上の建物が抵当権の目的となっている場合、原則として、建物の敷地利用権である借地権にも抵当権の効力が及ぶ旨判示している。したがって、AがBから建物所有目的で土地を賃借し、その上にAが建てた甲建物にCのために抵当権を設定した場合、その抵当権の効力は甲建物の従たる権利である当該土地賃借権にも及び、抵当権実行としての競売がされた時に当該土地賃借権も甲建物の買受人Dに移転する。
しかし、612条1項は、「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。」と規定しているところ、本肢におけるAからDへの土地賃借権の移転は、賃借権の譲渡に当たる。したがって、Dは、Bの承諾がなければ、Bに対し、当該土地賃借権を甲建物の占有権原として主張することができない。
土地賃貸借契約の合意解除と第三者に対する対抗要件 大判大正14年7月18日
概要
判例
判旨:「建物ノ抵當權設定者カ元他人ノ土地ニ付適法ニ賃借權ヲ有セシカ爲其ノ地上ニ建物ヲ建設シ之ヲ抵當ト爲シタル場合ニ於テ其ノ後賃貸人タル土地所有者ト合意シ以テ賃貸借契約ヲ解除シタリトスルモ右賃貸借ノ終了ハ抵當權者ニ對抗スルヲ得サルモノト解スヘク從テ抵當權ノ實行ニ依リ該建物ノ競落シタル者ハ建物ノ所有權ヲ取得スルト同時ニ土地ノ所有者ニ對シ賃借人トシテ其ノ儘土地ヲ占有使用シ得ル權利アルモノト解スヘキナリ蓋シ斯ノ如ク解スルニ非サレハ土地ト建物ト其所有者ヲ異ニセル場合ニ建物ヲ抵當ト爲スコトハ實際上行ハレ難キニ至ルヘク我法制上建物ノミノ抵當ヲ認メタル立法ノ趣旨ニ副ハサルコトトナルヘケレハナリ尚此ノ事實タルヤ民法第388條第398條ノ規定ノ趣旨ヨリ推スモ察スルニ難カラス。」
過去問・解説
(H20 司法 第14問 ア)
Aが土地所有者Bから賃借した土地上に所有している甲建物についてCのために抵当権を設定した。A及びBは、土地賃貸借契約を合意解除した。この合意解除に基づいて土地賃貸借契約が終了したことを、BはCに対抗することができない。
(H26 共通 第14問 イ)
土地を賃借し、その土地上に建物を所有している者が、その建物に抵当権を設定した場合であっても、土地の賃貸人が賃借人との合意により賃貸借契約を解除したときは、土地の賃貸人は、その解除による賃借権の消滅を抵当権者に対抗することができる。
抵当権に基づく妨害排除請求権の行使 最一小判平成17年3月10日
概要
②抵当不動産の占有者に対する抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり、抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には、抵当権者は、当該占有者に対し、直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができる。
判例
②抵当不動産の占有者に対する抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり、抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合において、抵当権者が、当該占有者に対し、直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができるかが問題となった。
判旨:①「所有者以外の第三者が抵当不動産を不法占有することにより、抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ、抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権者は、占有者に対し、抵当権に基づく妨害排除請求として、上記状態の排除を求めることができる(最高裁平成8年(オ)第1697号同11年11月24日大法廷判決・民集53巻8号1899頁)。そして、抵当権設定登記後に抵当不動産の所有者から占有権原の設定を受けてこれを占有する者についても、その占有権原の設定に抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められ、その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権者は、当該占有者に対し、抵当権に基づく妨害排除請求として、上記状態の排除を求めることができるものというべきである。なぜなら、抵当不動産の所有者は、抵当不動産を使用又は収益するに当たり、抵当不動産を適切に維持管理することが予定されており、抵当権の実行としての競売手続を妨害するような占有権原を設定することは許されないからである。」
②「また、抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり、抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には、抵当権者は、占有者に対し、直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができるものというべきである。」
過去問・解説
(H18 司法 第10問 5)
抵当権の設定された土地が不法に占有されている場合、抵当権者は、その占有者に対し、抵当権に基づいて妨害の排除を求めることができるばかりでなく、自己に明渡しを求めることもできる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平17.3.10)は、「所有者以外の第三者が抵当不動産を不法占有することにより、抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ、抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権者は、占有者に対し、抵当権に基づく妨害排除請求として、上記状態の排除を求めることができる。」と判示している。したがって、本肢前段は正しい。
もっとも、同判例は、「抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり、抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には、抵当権者は、占有者に対し、直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができるものというべきである。」と判示している。したがって、抵当権者が、抵当権に基づいて自己に明渡しを求めることができるのは、抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合に限定され、無条件で明渡しを求めることはできない。よって、本肢後段は誤っている。
(H20 司法 第14問 エ)
Aが土地所有者Bから賃借した土地上に所有している甲建物についてCのために抵当権を設定した。AがFに対して、抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的で甲建物を賃貸した場合、その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態のときでも、Cは抵当権に基づく妨害排除請求権を行使してFに対し直接自己に甲建物の明渡しを求めることはできない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平17.3.10)は、「抵当権設定登記後に抵当不動産の所有者から占有権原の設定を受けてこれを占有する者についても、その占有権原の設定に抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められ、その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権者は、当該占有者に対し、抵当権に基づく妨害排除請求として、上記状態の排除を求めることができるものというべきである。」と判示した上で、「抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり、抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には、抵当権者は、占有者に対し、直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができるものというべきである。」と判示している。
本肢においては、AがFに対して、抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的で甲建物を賃貸しているから、抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合に当たるといえる。したがって、その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態のときは、Cは抵当権に基づく妨害排除請求権を行使してFに対し直接自己に甲建物の明渡しを求めることができる。
(H28 司法 第7問 エ)
判例によれば、抵当不動産の所有者Aから占有権原の設定を受けてこれを占有するBに対し、抵当権者Cが抵当権に基づく妨害排除請求権を行使することができる場合、Aにおいて抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できないときには、Cは、Bに対し、直接自己への抵当不動産の明渡しを請求することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平17.3.10)は、「抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり、抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には、抵当権者は、占有者に対し、直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができるものというべきである。」と判示している。したがって、抵当権者Cが抵当権に基づく妨害排除請求権を行使することができる場合、Aにおいて抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できないときには、Cは、Bに対し、直接自己への抵当不動産の明渡しを請求することができる。
(H30 司法 第12問 オ)
抵当権者は、目的物が不法に占有された場合であっても、不法占有者に対して、抵当権に基づいて目的物を直接自己に明け渡すよう求めることはできない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平17.3.10)は、「所有者以外の第三者が抵当不動産を不法占有することにより、抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ、抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権者は、占有者に対し、抵当権に基づく妨害排除請求として、上記状態の排除を求めることができる…。」と判示した上で、「抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり、抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には、抵当権者は、占有者に対し、直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができるものというべきである。」と判示している。したがって、抵当権者は、目的物が不法に占有された場合、不法占有者に対して、抵当権に基づいて目的物を直接自己に明け渡すよう求めることができる場合がある。
抵当権設定登記の流用 大判昭和11年1月14日
概要
判例
判旨:「上告理由ハ原判決ハ「成立ニ争ナキ乙第一号証ノ二ニ原審ニ於ケル証人住田清人及被控訴本人各訊問ノ結果ヲ綜合スレハ訴外住田清人ハ右五百五十円ノ債務ニ充当セムカ為昭和六年八月三日新ニ本件不動産ニ抵当権ヲ設定シ被控訴人ヨリ金五百五十円ヲ借受ケ其ノ中金百十円ヲ木谷春一ニ交付シ以テ同人ニ対スル昭和四年十一月二十八日成立ニ係ル前記金五百五十円ノ債務及抵当権全部ヲ消滅セシメタルカ被控訴人及木谷春一、住田清人ハ該抵当権設定登記ヲ抹消シ新ニ被控訴人ノ為抵当権設定登記ヲ為スノ手数ト登記料ヲ節約スルノ目的ヲ以テ木谷春一、住田清人間ノ既存ノ抵当権設定登記ヲ新ニ為スヘキ被控訴人住田清人間ノ抵当権設定登記ニ流用スヘキ旨特約シ同日被控訴人ハ木谷春一ヨリ既ニ弁済ニ因リ消滅シタル同人住田清人間ノ前記債権及抵当権ヲ譲受ケタルカ如ク形式ヲ整ヘ以テ同月六日前段認定ニ係ル広島区裁判所可部出張所受附第二五四八号ヲ以テ其ノ旨ノ登記ヲ為シタル事実ヲ認メ得ヘク被控訴人ノ立証ニ依リテハ未タ右認定ヲ覆スニ足ラス」ト判示シ被上告人ノ主張事実ノミニ付判断ヲ為シ被上告人主張事実ヲ肯認セラレタリ然レトモ上告人ハ原判決事実摘示ニ記載アルカ如ク上告人ハ昭和六年八月三日住田清人ヨリ金五百五十円借用方ノ申込ヲ受ケタルヲ以テ右金員ヲ同人ニ貸与シタルカ其ノ際上告人及木谷春一ハ昭和四年十一月二十八日住田清人、木谷春一間ノ設定ニ係ル抵当権ノミヲ上告人ノ右五百五十円ノ債権ノ為譲渡シ住田清人ハ該抵当権ヲ以テ上告人対同人間ノ債権全部ヲ担保スルコトトナシタルヲ以テ本来ナラハ上告人ノ右債権ノ為該抵当権ノ譲渡アリタル旨ノ登記ヲ為スヘキトコロ木谷、住田間ノ債権額ト上告人住田間ノ債権額トカ彼此同一ナリシヲ以テ形式上木谷春一ヨリ同人カ住田清人ニ対シテ有スル昭和四年十一月二十八日成立ニ係ル金五百五十円ノ債権ト共ニ右抵当権ノ譲渡ヲ受ケタルモノトシ昭和六年八月六日其ノ旨ノ登記ヲ為シタルニ過キス而シテ其ノ後住田清人ハ上告人ヨリ借受ケタル金員中ヨリ木谷春一ニ対シ残債務百十円ヲ弁済シタルヲ以テ木谷春一ニ対スル債務ハ消滅シタルモ上告人ハ住田清人ニ対シ金五百五十円ノ債権並抵当権ヲ有スルモノナルヲ以テ結局本件登記ハ事実ニ吻合スルモノト謂フヘク被上告人ヨリ之カ抹消ヲ請求セラルヘキ筋合ニ非スト抗弁シタルニ対シテハ原判決ハ何等ノ判断ヲ加ヘラレス然レトモ上告人ノ右抗弁事実ノ如シトスレハ本件抵当権ハ有効ニ存在スルモノニシテ被上告人ノ請求ハ当然排斥セラルヘキ筋合ナリ而シテ第一審証人住田清人ノ証言ニ拠レハ右抵当権譲渡ノ事実ヲ認ムルニ充分ナリ然ラハ右抗弁事実ニ対スル判断ハ判決ノ結果ニ重大ナル影響アルヤ勿論ナレハ右抗弁事実ニ対スル判断遺脱ハ理由不備ノ違法アルニ帰シ破毀ヲ免レサルモノナリト信スト云フニアリ」
過去問・解説
(H19 司法 第15問 エ)
債務者A所有の不動産上にYが第1順位、Xが第2順位の根抵当権でない抵当権の設定を受け、それぞれ設定登記を行った後、AがYに対する被担保債権をいったん弁済し、その後YがAに同額の新たな貸付を行い、抹消されていなかった第1順位の登記を合意の上新たな貸付債権の担保として流用することにした場合、Xは、Yの抵当権設定登記の抹消を求めることができない。
(正答)✕
(解説)
弁済等によって消滅した抵当権の登記を、当事者が合意により新たに設定した抵当権の登記として流用した場合、本来は無効な登記であるから、当事者間ではともかく、第三者との関係では原則として無効というべきである。もっとも、流用後に流用登記が有効であることを前提に出現した第三者との関係だけが問題となるときは、その利益を害するわけではないから、対抗力を認めてよい。古い判例(大判昭11.1.14)にもその旨判示したものがある(内田貴「民法Ⅲ 債権総論・担保物権」第4版404頁、道垣内弘人「担保物権法」第4版106頁)。したがって、AがYに対する被担保債権をいったん弁済し、その後YがAに同額の新たな貸付を行い、抹消されていなかった第1順位の登記を合意の上新たな貸付債権の担保として流用することにした場合、当該流用以前にすでに第2順位の抵当権の設定を受けていたXとの関係では、当該流用登記は無効であるから、Xは、Yの抵当権設定登記の抹消を求めることができる。
借地権の登記と借地上の建物を目的とする抵当権との関係 大判大正11年11月24日
概要
判例
判旨:「権利カ其ノ性質上抛棄スルヲ得サルモノニ非サル限リ権利者ニ於テ之ヲ抛棄スルコトハ原則トシテ自由ナリト雖今若シ此ノ権利ヲ基本トシテ始メテ存立シ得ラレ若クハ其ノ相当価額ヲ保有スルヲ得ル権利ヲ第三者カ有スル場合ニ於テモ亦抛棄ハ絶対ニ有効ナリトセムカ第三者ノ権利ハ其ノ基本ヲ失フ結果或ハ全ク存立スルヲ得サルニ至リ若クハ著シク其ノ価額ヲ減シ為ニ不測ノ損害ヲ第三者ニ蒙ラシムルニ至ルヘキヲ以テ斯ル場合ニハ権利者ノ為シタル抛棄ハ何人モ之ヲ以テ右ノ第三者ニ対抗スルヲ得サルモノト云ハサルヘカラス夫ノ民法第三百九十八条ノ如キハ畢竟是原則ノ一適用ニ外ナラス本件ニ於テ訴外八百板梅三ハ本件土地ニ対シ借地権ヲ有シ且同地上ニ建物ヲ所有シ此ノ建物ニ対シテ抵当権ヲ設定シタルモノナルカ故ニ同人ノ為シタル前記借地権ノ抛棄ハ抵当権者ニ対抗スルヲ得サルモノト云ハサルヘカラサルコトハ之ヲ以上ノ説示ニ照シ明白ナリ蓋借地権アレハコソ地上ノ建物ハ其ノ相当価額ヲ保有スルヲ得ルモノナルヲ以テ若シ此ノ借地権ノ抛棄ニシテ絶対ニ有効ナルモノトセムカ建物ノ価額ハ激落ヲ来シ抵当権ヲシテ殆ント有名無実ニ了ラシムルニ至ルヘケレハナリ果シハ然ラハ右ノ抛棄ハ抵当権実行ノ結果建物ノ競落人ト為リタル者ニモ亦之ヲ対抗スルヲ得サルコト疑ヲ容レサルカ故ニ之ト反対ノ見解ヲ前提トスル本訴請求ハ到底之ヲ是認スルヲ得サルコト多言ヲ俟タス」
過去問・解説
(H29 司法 第8問 オ)
A所有の甲土地についてBが建物所有目的で地上権の設定を受けてその旨の登記がされ、甲土地上にBが乙建物を建築して所有権保存登記がされた後に、乙建物にCのための抵当権が設定され、その旨の登記がされた。その後、Bは、Aに対し、その地上権を放棄する旨の意思表示をした。この抵当権が実行され、Dが乙建物を取得した場合、Dは、Aに対し、地上権を主張することができない。