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不当利得(不法原因給付 708条) - 解答モード
不法原因給付と不法性の認識 大判大正8年9月15日
概要
判例
判旨:「民法第708条ニ於テ不法ノ原因ノ為メ給付ヲ為シタル者ハ其給付シタルモノノ返還ヲ請求スルコトヲ得ストナシタル所以ノモノハ若シ之ヲ許容スルトキハ公序良俗ニ反スル事項ヲ有効ト認ムルニ至リ為メニ法律ノ目的トスル所ニ反スルニ至レハナリ然ラハ其給付行為カ不法ノ原因ニ基ク以上ハ其不法カ受益者ニ付テノミ存スル場合ノ外ハ当事者カ其不法ナルコトヲ知ルト知ラサルトニ論ナク之カ返還ヲ請求スルコトヲ得サルモノト謂ハサルヘカラス。」
過去問・解説
(H19 司法 第28問 1)
不法原因給付というためには、当事者が給付の不法性を認識しているか又は認識の可能性があることが必要である。
不法原因給付と返還の特約 最一小判昭和28年1月22日
概要
判例
判旨:「元来同条(注:708条)が不法の原因のため給付をした者にその給付したものの返還を請求することを得ないものとしたのは、かかる給付者の返還請求に法律上の保護を与えないというだけであつて、受領者をしてその給付を受けたものを法律上正当の原因があつたものとして保留せしめる趣旨ではない。従つて、受領者においてその給付を受けたものをその給付を為した者に対し任意返還することは勿論、曩に給付を受けた不法原因契約を合意の上解除してその給付を返還する特約をすることは、同条の禁ずるところでないものと解するを相当とする。そして、かゝる特約が民法90条により無效であると解することのできないことも多言を要しない。」
過去問・解説
(H19 司法 第28問 5)
不法な原因により給付したものを返還する合意が締結された場合でも、給付者は、受益者に対して給付したものの返還を求めることはできない。
(H23 司法 第29問 4)
不法な原因のために、書面によって土地を贈与し、これを受贈者に引き渡した場合において、当事者間で当該贈与契約を解除して当該土地を贈与者に返還する旨の合意をしたときは、この合意は、無効である。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭28.1.22)は、不法原因給付(708条)の事案において、「受領者においてその給付を受けたものをその給付を為した者に対し任意返還することは勿論、曩に給付を受けた不法原因契約を合意の上解除してその給付を返還する特約をすることは、同条の禁ずるところでないものと解するを相当とする。そして、かゝる特約が民法90条により無效であると解することのできないことも多言を要しない。」と判示している。したがって、不法な原因のために、書面によって土地を贈与し、これを受贈者に引き渡した場合において、当事者間で当該贈与契約を解除して当該土地を贈与者に返還する旨の合意をしたときは、この合意は、有効である。
(R1 司法 第27問 エ)
不法原因給付の給付者と受領者との間において、その給付後に、その原因となった契約を合意の上解除してその給付を返還する特約をしたとしても、給付者は、その返還を請求することができない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭28.1.22)は、不法原因給付(708条)の事案において、「受領者においてその給付を受けたものをその給付を為した者に対し任意返還することは勿論、曩に給付を受けた不法原因契約を合意の上解除してその給付を返還する特約をすることは、同条の禁ずるところでないものと解するを相当とする。そして、かゝる特約が民法90条により無效であると解することのできないことも多言を要しない。」と判示している。したがって、不法原因給付の給付者と受領者との間において、その給付後に、その原因となった契約を合意の上解除してその給付を返還する特約をした場合、当該特約は有効であり、給付者は、その返還を請求することができる。
給付者及び受益者双方に不法な原因がある場合 最三小判昭和29年8月31日
概要
判例
判旨:「上告人が本件貸金を為すに至つた経路において多少の不法的分子があつたとしても、その不法的分子は甚だ微弱なもので、これを被上告人の不法に比すれば問題にならぬ程度のものである。殆ど不法は被上告人の一方にあるといつてもよい程のものであつて、かかる場合は既に交付された物の返還請求に関する限り民法第90条も第708条もその適用なきものと解するを相当とする。」
過去問・解説
(H19 司法 第28問 3)
給付者に不法な原因がある場合には、受益者により大きい不法な原因があるときでも、給付者から受益者に対する給付物返還請求が認められることはない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭29.8.31)は、「上告人が本件貸金を為すに至つた経路において多少の不法的分子があつたとしても、その不法的分子は甚だ微弱なもので、これを被上告人の不法に比すれば問題にならぬ程度のものである。殆ど不法は被上告人の一方にあるといつてもよい程のものであつて、かかる場合は既に交付された物の返還請求に関する限り民法第90条も第708条もその適用なきものと解するを相当とする。」と判示している。したがって、給付者に不法な原因がある場合においても、受益者により大きい不法な原因があるときは、給付者から受益者に対する給付物返還請求が認められることがありうる。
(R1 司法 第27問 オ)
消費貸借が、その成立の経緯において、貸主の側に少しでも不法があったときは、借主の側に多大の不法があったとしても、貸主は貸金の返還を請求することができない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭29.8.31)は、「上告人が本件貸金を為すに至つた経路において多少の不法的分子があつたとしても、その不法的分子は甚だ微弱なもので、これを被上告人の不法に比すれば問題にならぬ程度のものである。殆ど不法は被上告人の一方にあるといつてもよい程のものであつて、かかる場合は既に交付された物の返還請求に関する限り民法第90条も第708条もその適用なきものと解するを相当とする。」と判示している。したがって、消費貸借が、その成立の経緯において、貸主の側に少しの不法があるにすぎず、借主の側に多大の不法があったときには、708条が適用されず、貸主が貸金の返還を請求することができる場合がある。
不法原因給付の意義 最一小判昭和37年3月8日
概要
判例
判旨:「民法708条にいう不法の原因のための給付とは、その原因となる行為が、強行法規に違反した不適法なものであるのみならず、更にそれが、その社会において要求せられる倫理、道徳を無視した醜悪なものであることを必要とし、そして、その行為が不法原因給付に当るかどうかは、その行為の実質に即し、当時の社会生活および社会感情に照らし、真に倫理、道徳に反する醜悪なものと認められるか否かによつて決せらるべきものといわなければならない。」
過去問・解説
(H19 司法 第28問 2)
強行法規に違反してされた給付は、不法原因給付である。
(H22 司法 第28問 5)
判例によれば、強行法規に違反する給付は、不法な原因のために給付をしたものとして、返還を請求することができない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭37.3.8)は、「民法708条にいう不法の原因のための給付とは、その原因となる行為が、強行法規に違反した不適法なものであるのみならず、更にそれが、その社会において要求せられる倫理、道徳を無視した醜悪なものであることを必要とし、そして、その行為が不法原因給付に当るかどうかは、その行為の実質に即し、当時の社会生活および社会感情に照らし、真に倫理、道徳に反する醜悪なものと認められるか否かによつて決せらるべきものといわなければならない。」と判示している。したがって、強行法規に違反する給付であっても、必ずしも不法な原因のために給付をしたものといえるわけではないから、708条が適用されず、返還を請求することができる場合がある。
(R1 司法 第27問 ア)
強行法規に違反してされた給付であっても、不法原因給付に該当しないことがある。
不法原因給付と未登記建物の贈与 最大判昭和45年10月21日
概要
②贈与契約に基づき物を引き渡した行為が不法原因給付に当たる場合には、贈与者において給付した目的物の返還を請求できないことの反射的効果として、当該目的物の所有権は、受贈者に帰属するから、贈与者は、当該目的物の所有権が自己にあることを理由として、当該目的物の返還を請求することはできない。
判例
②贈与契約に基づき物を引き渡した行為が法原因給付に当たる場合において、贈与者が、目的物の所有権が自己にあることを理由として、当該目的物の返還を請求することができるかが問題となった。
判旨:①「原判決によれば、原審は、Aは、別紙目録記載の建物(以下、本件建物という。)を新築してその所有権を取得した後、昭和29年8月これをBに贈与し、当時未登記であつた右建物を同人に引き渡したが、右贈与は、Aがその妾であるBとの間に原判決判示のような不倫の関係を継続する目的でBに住居を与えその希望する理髪業を営ませるために行なつたもので、BもAのかような意図を察知しながらその贈与を受けたものであるとの事実を認定し、右贈与は公の秩序または善良の風俗に反するものとして無効であり、また、Aが、右贈与の履行行為として、本件建物をBに引き渡したことは、いわゆる不法原因給付に当たると判断しているのである。原審の右事実認定は、原判決の挙示する証拠関係に照らし、首肯できないものではなく、原審の認定した右事実関係のもとにおいては、右贈与は公序良俗に反し無効であり、また、右建物の引渡しは不法の原因に基づくものというのを相当とするのみならず、本件贈与の目的である建物は未登記のものであつて、その引渡しにより贈与者の債務は履行を完了したものと解されるから、右引渡しが民法708条本文にいわゆる給付に当たる旨の原審の前示判断も、正当として是認することができる。」
②「しかしながら、前述のように右贈与が無効であり、したがつて、右贈与による所有権の移転は認められない場合であつても、Aがした該贈与に基づく履行行為が民法708条本文にいわゆる不法原因給付に当たるときは、本件建物の所有権はBに帰属するにいたつたものと解するのが相当である。けだし、同条は、みずから反社会的な行為をした者に対しては、その行為の結果の復旧を訴求することを許さない趣旨を規定したものと認められるから、給付者は、不当利得に基づく返還請求をすることが許されないばかりでなく、目的物の所有権が自己にあることを理由として、給付した物の返還を請求することも許されない筋合であるというべきである。かように、贈与者において給付した物の返還を請求できなくなつたときは、その反射的効果として、目的物の所有権は贈与者の手を離れて受贈者に帰属するにいたつたものと解するのが、最も事柄の実質に適合し、かつ、法律関係を明確ならしめる所以と考えられるからである。」
過去問・解説
(H26 司法 第28問 オ)
AがBに不法な原因のために土地を譲渡し、所有権移転登記をした場合、Aは、Bに対し、不当利得に基づきその返還を請求することができないときであっても、土地の所有権に基づき、所有権移転登記の抹消を請求することができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最大判昭45.10.21)は、贈与契約に基づき物を引き渡した行為が不法原因給付に当たる場合には、贈与者において給付した目的物の返還を請求できないことの反射的効果として、当該目的物の所有権は、受贈者に帰属するから、贈与者は、当該目的物の所有権が自己にあることを理由として、当該目的物の返還を請求することはできない旨判示している。したがって、AがBに不法な原因のために土地を譲渡し、所有権移転登記をした場合において、Aが、Bに対し、不当利得に基づきその返還を請求することができないときは、当該土地の所有権は、その反射的効果としてBに帰属するから、Aは、土地の所有権に基づき、所有権移転登記の抹消を請求することができない。
(R1 司法 第27問 ウ)
贈与に基づく動産の引渡しが不法原因給付に該当し、不当利得に基づく動産の返還請求をすることができない場合、贈与者は、受贈者に対し、所有権に基づく動産の返還請求をすることができない。
(R5 司法 第29問 ウ)
未登記の建物が不倫関係の維持を目的として贈与され、その建物の引渡しがされたときは、贈与者は、受贈者に対し、不当利得に基づいてその建物の返還を請求することができない。
(正答)〇
(解説)
判例(最大判昭45.10.21)は、本肢と同種の事案において、不法な原因による贈与の目的物が未登記建物である場合においては、その引渡しにより贈与者の債務は履行を完了したといえるから、引渡しをもって708条本文にいう「給付」に当たるといえる旨判示している。そして、同条本文は、「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。」と規定している。
したがって、未登記の建物が不倫関係の維持を目的として贈与され、その建物の引渡しがされたときは、同本文にいう「給付」がなされたといえ、同本文が適用されるから、贈与者は、受贈者に対し、不当利得に基づいてその建物の返還を請求することができない。
(R5 司法 第29問 オ)
Aがその所有する動産をBに贈与し、その引渡しをしたことが不法原因給付に該当し、不当利得に基づく動産の返還請求をすることができないときは、Aは、Bに対し、所有権に基づく動産の返還請求をすることもできない。
不法原因給付と抵当権設定登記の抹消請求 最二小判昭和40年12月17日
概要
判例
判旨:「按ずるに、このような事実関係のもとにおいては、被上告人が右抵当権設定登記の抹消を求めることは、一見民法708条の適用を受けて許されないようであるが、他面、上告人が右抵当権を実行しようとすれば、被上告人において賭博行為が民法90条に違反することを理由としてその行為の無効、したがつて被担保債権の不存在を主張し、その実行を阻止できるものというべきであり、被担保債権の存在しない抵当権の存続は法律上許されないのであるから、このような場合には、結局、民法708条の適用はなく、被上告人において右抵当権設定登記の抹消を上告人に対して請求できるものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H19 司法 第15問 ウ)
金銭消費貸借契約に基づく貸金債権について抵当権の設定登記がなされたが、その金銭消費貸借契約が公序良俗に違反するとともに、貸金の交付が不法原因給付に当たる場合、抵当権設定者は、抵当権者に対して、抵当権設定登記の抹消を求めることができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭40.12.17)は、賭博行為によって生じた金銭債権の担保のために、債務者所有の不動産に抵当権が設定され、その登記がされた場合において、債務者が当該抵当権設定登記の抹消を請求する行為には、708条は適用されない旨判示している。したがって、金銭消費貸借契約に基づく貸金債権について抵当権の設定登記がなされたが、その金銭消費貸借契約が公序良俗に違反するとともに、貸金の交付が不法原因給付に当たる場合においては、抵当権設定者が抵当権者に対して抵当権設定登記の抹消を請求する行為について、708条は適用されないため、抵当権設定者は、抵当権者に対して、抵当権設定登記の抹消を求めることができる。
不法原因給付と既登記建物の贈与に基づく引渡 最一小判昭和46年10月28日
概要
判例
判旨:「贈与が有効な場合、特段の事情のないかぎり、所有権の移転のために登記を経ることを要しないことは、所論のとおりであるが、贈与が不法の原因に基づくものであり、同条にいう給付があつたとして贈与者の返還請求を拒みうるとするためには、本件のような既登記の建物にあつては、その占有の移転のみでは足りず、所有権移転登記手続が履践されていることをも要するものと解するのが妥当と認められる。」
過去問・解説
(H19 司法 第28問 4)
登記された建物の所有者がその建物を不法な原因によって贈与し、引き渡した場合であっても、当該贈与契約に基づく所有権移転登記を経由していないときは、受贈者は贈与者からの当該建物の明渡請求を拒むことができない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭46.10.28)は、不法の原因により贈与した物が既登記の不動産である場合に、708条本文にいう「給付」が認められるためには、その引渡により占有を移転することのみでは足りず、所有権移転登記手続が履践されていることも必要である判示している。そして、同本文は、「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。」と規定している。
したがって、登記された建物の所有者がその建物を不法な原因によって贈与し、引き渡した場合であっても、当該贈与契約に基づく所有権移転登記を経由していないときは、708条本文にいう「給付」があったといえないから、同本文は適用されず、受贈者は贈与者からの当該建物の明渡請求を拒むことができない。
(H23 司法 第29問 3)
大麻の密売人Aは、Bに対し、Aが売るための大麻をAの所有する土地でBに栽培させるために、その土地を書面によってBに贈与し、Bに引き渡したが、登記名義はAのままであった。その後、Aが大麻を売るのをやめ、Bに対して当該土地の引渡請求をした場合には、Aの請求は認められる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭46.10.28)は、不法の原因により贈与した物が既登記の不動産である場合に、708条本文にいう「給付」が認められるためには、その引渡により占有を移転することのみでは足りず、所有権移転登記手続が履践されていることも必要である旨判示している。そして、同本文は、「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。」と規定している。
本肢においては、大麻の密売人Aは、Bに対し、Aが売るための大麻をAの所有する土地でBに栽培させるために、その土地を書面によってBに贈与し、Bに引き渡しているから、当該贈与には「不法な原因」があったといえる。しかし、登記名義はAのままであったのだから、「給付」があったとはいえず、同本文は適用されない。したがって、その後、Aが大麻を売るのをやめ、Bに対して当該土地の引渡請求をした場合には、Aの請求は認められる。
(R1 司法 第27問 イ)
登記された建物が不倫関係の維持を目的として贈与され、受贈者に引き渡されたが、所有権移転登記手続はされていない場合、贈与者は、受贈者に対し、建物の明渡請求をすることができない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭46.10.28)は、不法の原因により贈与した物が既登記の不動産である場合に、708条本文にいう「給付」が認められるためには、その引渡により占有を移転することのみでは足りず、所有権移転登記手続が履践されていることも必要である旨判示している。そして、同本文は、「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。」と規定している。
本肢においては、登記された建物が不倫関係の維持を目的として贈与され、受贈者に引き渡されているから、当該贈与には「不法な原因」があったといえる。しかし、所有権移転登記手続はされていないから、「給付」があったとはいえず、同本文は適用されない。したがって、贈与者は、受贈者に対し、建物の明渡請求をすることができる。