現在お使いのブラウザのバージョンでは、本サービスの機能をご利用いただけない可能性があります
バージョンアップを試すか、Google ChromeやMozilla Firefoxなどの最新ブラウザをお試しください

引き続き問題が発生する場合は、 お問い合わせ までご連絡ください。

留置権

第295条

条文
第295条(留置権の内容)
① 他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
② 前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。
過去問・解説
(H18 司法 第16問 ア)
甲動産を所有するAが、これをBに売り、さらにBがCに譲渡したが、AがBから代金の支払を受けていない場合において、Aは、甲動産を占有するときは、Cからの甲動産の引渡請求に対し留置権を行使することができる。

(正答)  

(解説)
Aは、その所有する甲動産をBに売り、引き渡しを終えたことにより、Bに対して、代金支払請求権を被保全債権とする留置権(295条1項)を取得する。そして、留置権には、物権として絶対性があるから、Aは、Cからの甲動産の引渡請求に対し留置権を行使することができる。

(H21 司法 第12問 1)
留置権は、担保されるべき債権の債権者が目的物を占有していなければ成立せず、仮に占有していても、その占有が不法行為によって始まった場合には成立しない。

(正答)  

(解説)
留置権者は、「他人の物の占有者」(295条1項)に限られる。また、295条2項は、「前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。」と規定している。

(H21 司法 第12問 2)
留置権は、担保されるべき債権が弁済期にないときは、成立しない。

(正答)  

(解説)
295条1項は、本文において「他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。」と規定する一方で、但書において「ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない」と規定している。

(H23 共通 第12問 ア)
留置権によって拒絶できる給付の内容は、物の引渡しであるが、同時履行の抗弁権によって拒絶することができる給付の内容は、物の引渡しに限られない。

(正答)  

(解説)
留置権は、その名の通り、物を留置してその引渡しを拒む権利である(295条1項)。これに対し、同時履行(533条)の抗弁権によって拒絶することができる給付の内容は、物の引渡しに限られない。

(H26 司法 第27問 オ)
Aは、首輪の付いている飼い主不明の犬を発見したが、その犬が怪我をしていたから、獣医に治療を受けさせ、治療費を支払った。その後、飼い主が犬の返還を求めてきた場合、Aは、支払った治療費の償還を受けるまで、犬の引渡しを拒むことができる。

(正答)  

(解説)
犬も法律上は「物」に当たるから、飼い主が犬の返還を求めてきた場合、Aは、支払った治療費の償還請求権(697条、702条1項)を被担保債権とする留置権を行使して、支払った治療費の償還を受けるまで、犬の引渡しを拒むことができる。

(H30 予備 第5問 ア)
留置権は、債務者以外の者の物についても成立する。

(正答)  

(解説)
295条1項でいう「他人の物」は、被担保債権の債務者の所有物に限られない。したがって、留置権は、債務者以外の者の物についても成立する。

(R1 共通 第12問 イ)
他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権が弁済期にないときであっても、その物を留置することができる。

(正答)  

(解説)
295条1項は、本文において「他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。」と規定する一方で、但書において「ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない」と規定している。

(R4 共通 第11問 ア)
AがBの所有する甲建物を権原がないことを知りながら占有を開始した場合であっても、その後にAが甲に関して生じた債権を取得したときは、Aは、その債権の弁済を受けるまで、甲を留置することができる。

(正答)  

(解説)
295条2項は、「前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。」と規定している。そして、AがBの所有する甲建物を権原がないことを知りながら占有を開始したのだから、「占有が不法行為によって始まった場合」に当たる。したがって、Aは甲を留置することができない。
総合メモ

第296条

条文
第296条(留置権の不可分性)
 留置権者は、債権の全部の弁済を受けるまでは、留置物の全部についてその権利を行使することができる。
過去問・解説
(H19 司法 第13問 ア)
民法上の留置権者は、物に関して生じた債権の全部が弁済されるまでは、その物を留置することができる。

(正答)  

(解説)
296条は、「留置権者は、債権の全部の弁済を受けるまでは、留置物の全部についてその権利を行使することができる。」と規定している。これを、留置権の不可分性という。

(H20 司法 第12問 4)
留置権と質権は、不可分性により、いずれも被担保債権の一部の弁済を受けただけでは消滅しないが、留置権については、債務者が相当の担保を提供して留置権の消滅を請求することができる。

(正答)  

(解説)
296条は、「留置権者は、債権の全部の弁済を受けるまでは、留置物の全部についてその権利を行使することができる。」と規定しており、同条は質権にも準用される(350条)から、留置権と質権には不可分性がある。
留置権には、「債務者は、相当の担保を供して、留置権の消滅を請求することができる。」とする規定が存在するが、質権には、同条は準用されておらず、また、他に消滅請求を認める規定も存在しない。

(H25 共通 第13問 1)
留置権者は、債権の全部の弁済を受けるまでは、留置物の全部についてその権利を行使することができる。

(正答)  

(解説)
296条は、「留置権者は、債権の全部の弁済を受けるまでは、留置物の全部についてその権利を行使することができる。」と規定している。
総合メモ

第297条

条文
第297条(留置権者による果実の収取)
① 留置権者は、留置物から生ずる果実を収取し、他の債権者に先立って、これを自己の債権の弁済に充当することができる。
② 前項の果実は、まず債権の利息に充当し、なお残余があるときは元本に充当しなければならない。
過去問・解説
(H21 司法 第12問 3)
留置権者は、目的物から優先弁済を受けることはできないが、目的物から生じた果実からは優先弁済を受けることができる。

(正答)  

(解説)
留置権は、留置的効力を本質的内容とする担保物権であり、目的物の交換価値から他の債権者に優先して被担保債権の満足を受けるという優先弁済的効力を本質的内容とする抵当権とは異なる。
もっとも、297条1項は、「留置権者は、留置物から生ずる果実を収取し、他の債権者に先立って、これを自己の債権の弁済に充当することができる。」と規定しているから、留置権者は、目的物から優先弁済を受けることはできないが、目的物から生じた果実からは優先弁済を受けることができる。

(H27 司法 第36問 ア)
留置権者は、留置物から生ずる果実を収取し、他の債権者に先立って、これを自己の債権の弁済に充当することができるが、その果実は、被担保債権の利息に充当され、なお剰余があるときでも、元本に充当することはできない。

(正答)  

(解説)
297条は、1項において「留置権者は、留置物から生ずる果実を収取し、他の債権者に先立って、これを自己の債権の弁済に充当することができる。」と規定した上で、2項において「前項の果実は、まず債権の利息に充当し、なお残余があるときは元本に充当しなければならない。」と規定している。
総合メモ

第298条

条文
第298条(留置権者による留置物の保管等)
① 留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなければならない。
② 留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を使用し、賃貸し、又は担保に供することができない。ただし、その物の保存に必要な使用をすることは、この限りでない。
③ 留置権者が前2項の規定に違反したときは、債務者は、留置権の消滅を請求することができる。
過去問・解説
(H20 司法 第12問 5)
留置権者は債務者の同意があれば、また、質権者は質権設定者の同意があれば、いずれもそれぞれ担保物を賃貸することができる。

(正答)  

(解説)
298条2項本文は、「留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を…賃貸…することができない。」と規定しており、これは質権にも準用される(350条)。
したがって、留置権者は債務者の同意があれば、また、質権者は質権設定者の同意があれば、いずれもそれぞれ担保物を賃貸することができる。

(H26 司法 第13問 ウ)
留置権者が債務者の承諾を得ずに留置物を賃貸した場合、債務者は、留置権の消滅を請求することができる。

(正答)  

(解説)
298条は、2項本文において「留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を…賃貸…することができない。」と規定しており、3項において「留置権者が前2項の規定に違反したときは、債務者は、留置権の消滅を請求することができる。」と規定している。

(R1 司法 第11問 ア)
留置権者は、債務者の承諾を得なくても、目的不動産を賃貸することができる。

(正答)  

(解説)
298条2項本文は、「留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を…賃貸…することができない。」と規定している。

(R3 司法 第10問 ウ)
留置権者は、債務者の承諾を得て留置物を第三者に賃貸してその賃料を自己の債権の弁済に充当することができる。

(正答)  

(解説)
298条2項本文は、「留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を…賃貸…することができない。」と規定しており、297条1項本文は、「留置権者は、留置物から生ずる果実を収取し、他の債権者に先立って、これを自己の債権の弁済に充当することができる。」と規定している。
したがって、留置権者は、債務者の承諾を得て留置物を第三者に賃貸してその賃料を自己の債権の弁済に充当することができる。

(R6 予備 第6問 オ)
A所有の時計を留置権に基づいて留置しているBが、その時計をAの承諾を得ずにCに賃貸したときは、Aは、留置権の消滅を請求することができる。

(正答)  

(解説)
298条は、2項本文において「留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を…賃貸…することができない。」と規定しており、3項において「留置権者が前2項の規定に違反したときは、債務者は、留置権の消滅を請求することができる。」と規定している。
総合メモ

第299条

条文
第299条(留置権者による費用の償還請求)
① 留置権者は、留置物について必要費を支出したときは、所有者にその償還をさせることができる。
② 留置権者は、留置物について有益費を支出したときは、これによる価格の増加が現存する場合に限り、所有者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、裁判所は、所有者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
過去問・解説
(H23 司法 第11問 イ)
留置権者は、留置物について必要費を支出したときは、所有者に対し、その償還を請求することができる。

(正答)  

(解説)
299条1項は、「留置権者は、留置物について必要費を支出したときは、所有者にその償還をさせることができる。」と規定している。

(H26 共通 第36問 エ)
留置権者は、留置物について通常の必要費を支出した場合には、所有者にその償還をさせることができる。

(正答)  

(解説)
299条1項は、「留置権者は、留置物について必要費を支出したときは、所有者にその償還をさせることができる。」と規定している。

(R3 司法 第10問 オ)
建物の賃借人が、賃貸借終了後、有益費の償還請求権を被担保債権として留置権を行使している場合において、賃貸人の請求により裁判所がその償還について期限を許与したときは、留置権は消滅する。

(正答)  

(解説)
299条2項は、本文において「留置権者は、留置物について有益費を支出したときは、これによる価格の増加が現存する場合に限り、所有者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。」と規定する一方で、但書において「ただし、裁判所は、所有者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。」と規定している。そして、裁判所が、有益費の償還について相当の期限を許与した場合、有益費の償還請求権の弁済期は裁判所の設定した「相当の期限」を経過するまでの間、到来しないこととなる。したがって、有益費の償還請求権を被担保債権とする留置権は、事後的に「その債権が弁済期にないとき」(295条1項但書)に当たることとなり、消滅する。
総合メモ

第300条

条文
第300条(留置権の行使と債権の消滅時効)
 留置権の行使は、債権の消滅時効の進行を妨げない。
過去問・解説
(H19 司法 第6問 オ)
留置権者が留置物の占有を継続している間であっても、その被担保債権についての消滅時効は進行する。

(正答)  

(解説)
300条は、「留置権の行使は、債権の消滅時効の進行を妨げない。」と規定している。
したがって、留置権者が留置物の占有を継続している間であっても、その被担保債権についての消滅時効は進行する。

(H20 司法 第12問 1)
留置権者が留置物の占有を継続していても、その被担保債権の消滅時効は進行するが、質権者が質物の占有を継続していれば、その被担保債権の消滅時効は完成猶予又は更新される。

(正答)  

(解説)
300条は、「留置権の行使は、債権の消滅時効の進行を妨げない。」と規定ており、同条は質権にも準用される(350条)。
したがって、留置権者が留置物の占有を継続している間であっても、質権者が質物の占有を継続している間であっても、その被担保債権の消滅時効は進行する。

(H24 共通 第14問 オ)
留置権においては、目的物の留置自体により被担保債権の権利行使がされていることになるから、債権者が目的物を占有している限り、被担保債権が時効消滅することはない。

(正答)  

(解説)
300条は、「留置権の行使は、債権の消滅時効の進行を妨げない。」と規定している。
したがって、留置権者が留置物の占有を継続している間であっても、その被担保債権についての消滅時効は進行する。

(H26 司法 第13問 エ)
請負人が、注文者に対する報酬債権を被担保債権として、留置権に基づき仕事の目的物の引渡しを拒んでいる場合、その報酬債権の消滅時効の進行は妨げられない。

(正答)  

(解説)
300条は、「留置権の行使は、債権の消滅時効の進行を妨げない。」と規定している。
したがって、留置権者が留置物の占有を継続している間であっても、その被担保債権についての消滅時効は進行する。

(R3 司法 第10問 ア)
留置権者が留置権を行使して目的物を留置している間は、留置権の被担保債権の消滅時効は、進行しない。

(正答)  

(解説)
300条は、「留置権の行使は、債権の消滅時効の進行を妨げない。」と規定している。
したがって、留置権者が留置物の占有を継続している間であっても、その被担保債権についての消滅時効は進行する。
総合メモ

第301条

条文
第301条(担保の供与による留置権の消滅)
 債務者は、相当の担保を供して、留置権の消滅を請求することができる。
過去問・解説
(H23 共通 第12問 ウ)
留置権を行使されている者は、相当の担保を供してその消滅を請求することができるが、同時履行の抗弁権を行使されている者は、相当の担保を供してその消滅を請求することができない。

(正答)  

(解説)
301条は、「債務者は、相当の担保を供して、留置権の消滅を請求することができる。」と規定している。これに対し、同時履行の抗弁権(533条)については、301条のような規定は存在しない。

(R1 共通 第12問 ウ)
債務者は、相当の担保を供して、留置権の消滅を請求することができる。

(正答)  

(解説)
301条は、「債務者は、相当の担保を供して、留置権の消滅を請求することができる。」と規定している。
総合メモ

第302条

条文
第302条(占有の喪失による留置権の消滅)
 留置権は、留置権者が留置物の占有を失うことによって、消滅する。ただし、第298条第2項の規定により留置物を賃貸し、又は質権の目的としたときは、この限りでない。
過去問・解説
(H24 共通 第14問 ア)
留置権は、他人の物の占有者に認められる権利であるから、留置権者が目的物を第三者に賃貸した場合には、目的物の賃貸について所有者の同意を得ていても、留置権は消滅する。

(正答)  

(解説)
302条は、本文において「留置権は、留置権者が留置物の占有を失うことによって、消滅する。」と規定する一方で、但書において「ただし、第298条第2項の規定により留置物を賃貸し、又は質権の目的としたときは、この限りでない、」と規定している。そして、298条2項本文は、「留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を…賃貸…することができない」と規定している。
したがって、留置権者が目的物を第三者に賃貸した場合において、目的物の賃貸について所有者の同意を得ていたときは、留置権は消滅しない。

(H28 共通 第11問 3)
留置権は、占有を第三者に奪われた場合も消滅しないが、その場合には、第三者に対抗することができない。

(正答)  

(解説)
302条本文は、「留置権は、留置権者が留置物の占有を失うことによって、消滅する。」と規定している。
したがって、留置権は、占有を第三者に奪われた場合には消滅する。

(R1 共通 第12問 ア)
留置権者が目的物を紛失したときは、留置権は消滅する。

(正答)  

(解説)
302条本文は、「留置権は、留置権者が留置物の占有を失うことによって、消滅する。」と規定している。
総合メモ