現在お使いのブラウザのバージョンでは、本サービスの機能をご利用いただけない可能性があります
バージョンアップを試すか、Google ChromeやMozilla Firefoxなどの最新ブラウザをお試しください

引き続き問題が発生する場合は、 お問い合わせ までご連絡ください。

消費貸借

第587条

条文
第587条(消費貸借)
 消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。
過去問・解説
(H24 司法 第25問 1)
消費貸借は、金銭でない物を目的としてすることができる。

(正答)

(解説)
587条は、消費貸借の目的物として、「金銭その他の物」と規定している。したがって、消費貸借は、金銭でない物を目的としてすることができる。

(H24 司法 第25問 2)
無利息の金銭消費貸借は、書面でしなければ、その効力を生じない。

(正答)

(解説)
587条が規定する消費貸借契約は、「相手方から金銭その他の物を受け取ること」を成立要件の一つとする要物契約であるが、利息の約定の有無にかかわらず、書面性を要しない。
書面性が要求されるのは、587条の2が規定している諾成的消費貸借契約である。

(H27 司法 第23問 ア)
賃貸借契約において賃貸人が目的物の所有者である場合、その目的物の所有権は賃借人に移転しないが、消費貸借契約において貸主が目的物の所有者である場合、その目的物の所有権は借主に移転する。

(正答)

(解説)
賃貸借契約において賃貸人が目的物の所有者である場合、その目的物の所有権は賃借人に移転しない。このことは、601条が「引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還すること」と定めていることや、616条が用法遵守義務に関する594条1項の規定を準用していることなどからも、明らかである。
これに対し、消費貸借契約において貸主が目的物の所有者である場合、その目的物の所有権は借主に移転する。587条は、「種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすること」と定めているにとどまり、引渡しを受けた物自体の返還を必要としていないことや、使用貸借契約や賃貸借契約と異なり借主の用法遵守義務を定めていない(594条1項、616条対照)ことなどからも、明らかである。

(H30 共通 第23問 ア)
金銭消費貸借の予約は、書面によらなければならない。

(正答)

(解説)
平成29年改正民法は、消費貸借の予約に拘束力が認められることを前提としていた改正前民法589条を削除することで、「消費貸借の予約」の拘束力を否定している。したがって、金銭消費貸借の予約は、書面性の有無にかかわらず、認められない。
ない、平成29年改正前民法下では、旧民法589条が「消費貸借の予約は、その後に当事者の一方が破産手続開始の決定を受けたときは、その効力を失う。」として、消費貸借の予約に拘束力が認められることを前提とする規定をしていたが、書面性は要求されていなかった。

(R4 司法 第25問 ア)
書面によらない消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還することを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

(正答)

(解説)
587条は、「消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる」と規定している。
総合メモ

第587条の2

条文
第587条の2(書面でする消費貸借等)
① 前条の規定にかかわらず、書面でする消費貸借は、当事者の一方が金銭その他の物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
② 書面でする消費貸借の借主は、貸主から金銭その他の物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。この場合において、貸主は、その契約の解除によって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。
③ 書面でする消費貸借は、借主が貸主から金銭その他の物を受け取る前に当事者の一方が破産手続開始の決定を受けたときは、その効力を失う。
④ 消費貸借がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その消費貸借は、書面によってされたものとみなして、前3項の規定を適用する。
過去問・解説
(H19 司法 第15問 イ)
書面でする金銭消費貸借契約に基づく貸金債権について抵当権の設定登記がなされたが、結局元本が交付されなかった場合、抵当権設定者は、被担保債権の不存在を理由として、抵当権者に対して、抵当権設定登記の抹消を求めることができる。

(正答)

(解説)
抵当権設定契約及びこれに基づき抵当権が有効に成立するためには、被担保債権の存在する必要であるところ、書面でする金銭消費貸借契約に基づき元本が交付されていない場合、貸主の貸す債務が発生しているにとどまり、未だ借主の返還債務は発生していない。
もっとも、将来の債権・条件付の債権についても、債権発生の基礎となる具体的法律関係が存する限り、被担保債権と独立した抵当権独自の経済的価値を認めることにならないから、抵当権を設定できると解されている(道垣内弘人「担保物権法」第4版131頁)。
本肢の事例では、書面でする金銭消費貸借契約(587条の2)が締結されており、被担保権発生の基礎となる具体的法律関係が存するといえるから、抵当権の設定が認められる。したがって、抵当権設定者は、被担保債権の不存在を理由として、抵当権者に対して、抵当権設定登記の抹消を求めることはできない。

(R3 司法 第37問 エ)
金銭消費貸借契約は、書面によってされた場合であっても、借主が貸主から合意した金銭を受け取るまでは、その効力を生じない。

(正答)

(解説)
587条の2第1項は、書面による諾成的消費貸借契約を認めている。したがって、金銭消費貸借契約は、書面によってされた場合には、借主が貸主から合意した金銭を受け取る前であっても、その効力を生じる。

(R4 司法 第25問 イ)
書面でする消費貸借は、借主が貸主から目的物を受け取るまで、各当事者が解除をすることができる。

(正答)

(解説)
587条の2は、第1項において書面による諾成的消費貸借契約について規定した上で、第2項前段において、「書面でする消費貸借の借主は、貸主から金銭その他の物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。」と規定している。同条2項前段において、解除権が認められているのは「借主」のみであるから、本肢は、「各当事者が解除をすることができる」とする点において誤っている。
総合メモ

第588条

条文
第588条(準消費貸借)
 金銭その他の物を給付する義務を負う者がある場合において、当事者がその物を消費貸借の目的とすることを約したときは、消費貸借は、これによって成立したものとみなす。
過去問・解説
(H20 司法 第23問 4)
既存の消費貸借契約上の債務を旧債務とした場合、準消費貸借契約は成立しない。

(正答)

(解説)
平成29年改正民法588条は、「消費貸借によらないで」という旧民法588条の文言を削除することで、既存債務は消費貸借契約上の債務でもよいことを明文化した。したがって、既存の消費貸借契約上の債務を旧債務とした場合であっても、準消費貸借契約は成立する。
なお、平成29年改正前民法下においても、旧民法588条における「消費貸借によらないで」という文言にもかかわらず、既存の消費貸借契約上の債務を旧債務とする準消費貸借契約も認められると解されていた。

(H24 司法 第25問 4)
消費貸借により貸し渡された金銭の返還義務を目的として準消費貸借をすることは許されない。

(正答)

(解説)
平成29年改正民法588条は、「消費貸借によらないで」という旧民法588条の文言を削除することで、既存債務は消費貸借契約上の債務でもよいことを明文化した。したがって、既存の消費貸借契約上の債務を旧債務とした場合であっても、準消費貸借契約は成立する。
なお、平成29年改正前民法下においても、旧民法588条における「消費貸借によらないで」という文言にもかかわらず、既存の消費貸借契約上の債務を旧債務とする準消費貸借契約も認められると解されていた。

(R1 共通 第23問 2)
準消費貸借は、目的物の引渡しがなければ成立しない。

(正答)

(解説)
準消費貸借契約は、目的物の引渡しを要することなく成立する諾成契約である。なお、既存債務の存在が587条の消費貸借契約における要物性が代替するものであると理解されている。
総合メモ

第589条

条文
第589条(利息)
① 貸主は、特約がなければ、借主に対して利息を請求することができない。
② 前項の特約があるときは、貸主は、借主が金銭その他の物を受け取った日以後の利息を請求することができる。
過去問・解説
(H26 司法 第25問 1)
利息付きの消費貸借において、借主は、特約のない限り、元本を受け取った日を含めた利息を支払わなければならない。

(正答)

(解説)
589条2項は、利息付きの消費貸借について、「貸主は、借主が金銭その他の物を受け取った日以後の利息を請求することができる。」と規定している。

(H26 司法 第25問 2)
民法上の消費貸借は、利息に関する約定をしなかった場合、無利息の消費貸借となる。

(正答)

(解説)
589条1項は、「貸主は、特約がなければ、借主に対して利息を請求することができない。」と規定している。したがって、民法上の消費貸借は、利息に関する約定をしなかった場合、無利息の消費貸借となる。
なお、商法513条1項は、「商人間において金銭の消費貸借をしたときは、貸主は、法定利息を請求することができる。」と規定しているから、商人間における金銭消費貸借では、利息に関する約定がない場合であっても、貸主は、法定利息を請求することができる。

(H30 共通 第23問 ウ)
金銭消費貸借において、反対の意思の表示がない限り、貸主は法定利率による利息を請求することができる。

(正答)

(解説)
589条1項は、「貸主は、特約がなければ、借主に対して利息を請求することができない。」と規定している。したがって、金銭消費貸借において、利息に関する約定がない以上、反対の意思の表示の有無にかかわらず、貸主は法定利率による利息を請求することはできない。

(H30 共通 第23問 エ)
金銭消費貸借において貸主が利息を請求することができる場合、借主は、特約のない限り、元本を受け取った日を含めて利息を支払わなければならない。

(正答)

(解説)
589条2項は、利息付きの消費貸借について、「貸主は、借主が金銭その他の物を受け取った日以後の利息を請求することができる。」と規定している。

(R4 司法 第25問 ウ)
貸主は、特約がなければ、借主に対して利息を請求することができない。

(正答)

(解説)
589条1項は、「貸主は、特約がなければ、借主に対して利息を請求することができない。」と規定している。
総合メモ

第590条

条文
第590条(貸主の引渡義務等)
① 第551条の規定は、前条第1項の特約のない消費貸借について準用する。
② 前条第1項の特約の有無にかかわらず、貸主から引き渡された物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないものであるときは、借主は、その物の価額を返還することができる。
過去問・解説
(R4 司法 第25問 オ)
貸主から引き渡された物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないものであるときは、借主は、その物の価額を返還することができる。

(正答)

(解説)
590条2項は、「貸主から引き渡された物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないものであるときは、借主は、その物の価額を返還することができる。」と規定している。
総合メモ

第591条

条文
第591条(返還の時期)
① 当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は、相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。
② 借主は、返還の時期の定めの有無にかかわらず、いつでも返還をすることができる。
③ 当事者が返還の時期を定めた場合において、貸主は、借主がその時期の前に返還をしたことによって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。
過去問・解説
(H24 司法 第28問 1)
無利息の金銭消費貸借において、当事者が返還の時期を定めなかったときは、借主は、いつでも貸金を返還して契約を終了させることができる。

(正答)

(解説)
591条2項は、「借主は、返還の時期の定めの有無にかかわらず、いつでも返還をすることができる。」と規定している。

(H26 司法 第25問 5)
消費貸借契約について、借主は、契約に定めた時期に先立って返還することができるが、貸主の利益を害することはできない。

(正答)

(解説)
591条は、2項において「借主は、返還の時期の定めの有無にかかわらず、いつでも返還をすることができる」と規定する一方で、3項において「当事者が返還の時期を定めた場合において、貸主は、借主がその時期の前に返還をしたことによって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。」と規定している。

(H27 司法 第23問 オ)
賃貸借契約において当事者が期間を定めなかった場合、借主はいつでも解約の申入れをすることができるが、消費貸借契約において当事者が返還の時期を定めなかった場合、無利息の消費貸借契約のときに限り、借主はいつでも解約の申入れをすることができる。

(正答)

(解説)
617条1項柱書前段は、賃貸借契約について、「当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。」と規定している。したがって、本肢前段は正しい。
これに対し、591条2項は、消費貸借契約について、利息の約定の有無により区別することなく、「借主は、返還の時期の定めの有無にかかわらず、いつでも返還をすることができる。」と規定している。したがって、本肢後段は誤っている。

(R4 司法 第25問 エ)
当事者が返還の時期を定めたときは、借主は、その時期の前に返還をすることができない。

(正答)

(解説)
591条2項は、「借主は、返還の時期の定めの有無にかかわらず、いつでも返還をすることができる。」と規定している。
総合メモ