現在お使いのブラウザのバージョンでは、本サービスの機能をご利用いただけない可能性があります
バージョンアップを試すか、Google ChromeやMozilla Firefoxなどの最新ブラウザをお試しください

引き続き問題が発生する場合は、 お問い合わせ までご連絡ください。

民法 第561条

条文
第561条(他人の権利の売買における売主の義務)
 他人の権利(権利の一部が他人に属する場合におけるその権利の一部を含む。)を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。
過去問・解説
(H23 司法 第26問 2)
他人の土地を買主に移転するという債務が売主の責めに帰すことができる事由により履行不能となった場合、目的物である土地を売主が所有していないことを知って売買契約を締結した買主は、売主に対して損害賠償を請求することができる。

(正答)  

(解説)
561条は、「他人の権利…を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。」と規定しているから、他人物売買の場合、売主は、売買契約に基づく財産権移転債務(555条)の内容として、その権利を取得してこれを買主に移転する権利供与義務を負う。そして、他人の土地を買主に移転するという債務が売主の責めに帰すことができる事由により履行不能となった場合、売買契約締結時において買主が目的物である土地を売主が所有していないことを知っていたか否かにかかわらず、415条1項本文の要件を満たすから、買主は、415条1項に基づき、売主に対して損害賠償を請求することができる。なお、平成29年改正前民法下では、「前条の場合において、売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の時においてその権利が売主に属しないことを知っていたときは、損害賠償の請求をすることができない。」(旧561条)と定められていたため、目的物である土地を売主が所有していないことを知って売買契約を締結した買主は、売主に対して損害賠償を請求することができない。

(H25 共通 第24問 ア)
他人の土地の売買において、売主がその土地を取得して買主に移転することができない場合であっても、契約の時に売主がその土地が自己に属しないことを知らなかったときは、売主は、契約の解除をすることができる。

(正答)  

(解説)
561条は、「他人の権利…を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。」と規定しているから、他人物売買の場合、売主は、売買契約に基づく財産権移転債務(555条)の内容として、その権利を取得してこれを買主に移転する権利供与義務を負う。そして、他人の土地の売買において、売主がその土地を取得して買主に移転することができない場合であっても、契約の時に売主がその土地が自己に属しないことを知らなかったか否かにかかわらず、権利供与義務の履行不能により「債務の全部の履行が不能であるとき」(542条1項1号)という無催告での全部解除の要件を満たす。したがって、売主は、契約を解除することができる。
なお、平成29年改正前民法下では、「売主が契約の時においてその売却した権利が自己に属しないことを知らなかった場合において、その権利を取得して買主に移転することができないときは、売主は、損害を賠償して、契約の解除をすることができる。」と定められていた(旧562条1項)。

(H26 司法 第8問 エ)
Aは、BからC所有の土地を買う旨の契約をした場合、その土地についてCを登記名義人とする登記がされていても、Bに対し、売買契約に基づき、その土地についてBからAへの所有権移転登記手続を請求することができる。

(正答)  

(解説)
売主は、財産権移転債務の内容として、「買主に対し、登記、登録その他の売買の目的物である権利の移転についての対抗要件を備えさせる義務」を負う(560条)。そして、561条は、「他人の権利…を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。」と規定しているから、他人物売買の場合、売主は、売買契約に基づく財産権移転債務(555条)の内容として、その権利を取得してこれを買主に移転する権利供与義務を負う。そのため、他人物売買の場合であっても、売主は、上記の権利供与義務として、「買主に対し、登記、登録その他の売買の目的物である権利の移転についての対抗要件を備えさせる義務」を負う。
したがって、他人物売買における売主であるBは、買主であるAに対し、売買契約に基づき、目的物であるC所有の土地について、所有権移転登記を備えさせる義務を負う。
よって、Aは、Bに対し、売買契約に基づき、上記土地についてBからAへの所有権移転登記手続を請求することができる。

(H28 司法 第7問 イ)
AがBとの間の売買契約に基づき買い受けた甲土地がBの所有でなかった場合、Aは、Bに対し、甲土地の所有権移転登記手続を請求することができない。

(正答)  

(解説)
売主は、財産権移転債務の内容として、「買主に対し、登記、登録その他の売買の目的物である権利の移転についての対抗要件を備えさせる義務」を負う(560条)。そして、561条は、「他人の権利…を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。」と規定しているから、他人物売買の場合、売主は、売買契約に基づく財産権移転債務(555条)の内容として、その権利を取得してこれを買主に移転する権利供与義務を負う。そのため、他人物売買の場合であっても、売主は、上記の権利供与義務として、「買主に対し、登記、登録その他の売買の目的物である権利の移転についての対抗要件を備えさせる義務」を負う。
したがって、他人物売買における売主であるBは、買主であるAに対し、売買契約に基づき、甲土地について、所有権移転登記を備えさせる義務を負う。
よって、Aは、Bに対し、甲土地の所有権移転登記手続を請求することができる。

(H29 司法 第27問 ア)
A所有の甲土地をBがCに対して売り渡す旨の契約(以下「本件売買契約」という。)が締結された。本件売買契約が締結された時に、Aが甲土地を他の者に譲渡する意思がなく、BがAから甲土地の所有権を取得することができない場合であっても、本件売買契約は有効に成立する。

(正答)  

(解説)
561条は、「他人の権利…を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。」として、他人の権利を目的とする売買契約も有効に成立することを前提とした規定をしている。そして、平成29年改正前民法下では、原始的不能の場合について、契約の成立を否定すると理解されていたが(伝統的見解)、改正民法下では、「契約に基づく債務の履行がその契約の成立の時に不能であったことは、第415条の規定によりその履行の不能によって生じた損害の賠償を請求することを妨げない。」と定める412条の2第2項を根拠として、原始的不能の場合であっても契約は有効であると理解されている。したがって、本件売買契約は他人Aの権利を目的とする他人物売買であり、かつ、契約締結時に、Aが甲土地を他の者に譲渡する意思がなく、BがAから甲土地の所有権を取得することができないために売主Bの権利供与義務が原始的不能である場合であるが、本件売買契約は有効に成立する。

(H29 司法 第27問 エ)
A所有の甲土地をBがCに対して売り渡す旨の契約(以下「本件売買契約」という。)が締結された。本件売買契約が締結された時にBが甲土地の所有権がBに属しないことを知らず、Cが甲土地の所有権がBに属しないことを知っていた場合において、Bが甲土地の所有権を取得してCに移転することができないときは、Bは、Cに対し、甲土地の所有権を移転することができない旨を通知して、本件売買契約を解除することができる。

(正答)  

(解説)
確かに、平成29年改正前民法下では、「売主が契約の時においてその売却した権利が自己に属しないことを知らなかった場合において、その権利を取得して買主に移転することができないときは、売主は、損害を賠償して、契約の解除をすることができる。」と定められていた(旧562条1項)。この規定によれば、本件売買契約が締結された時にBが甲土地の所有権がBに属しないことを知らず、Bが甲土地の所有権を取得してCに移転することができないときは、Bは、損害を賠償して、本件売買契約を解除することができる。
しかし、平成29年改正民法下では、他人物売買における処理は、売主が売買契約の内容に適合した権利の移転をすべき義務を負うことを前提として、契約不適合を理由とする債務不履行責任として一元的に規律されるに至った(契約責任説の採用)。
そして、本件売買契約が締結された時にBが甲土地の所有権がBに属しないことを知らない一方で、Cが甲土地の所有権がBに属しないことを知っていた場合であっても、Cについて解除事由(541条、542条参照)が認められない以上、Bは、本件売買契約を一方的に解除することはできない。

(R2 司法 第24問 ア)
売主が他人の権利を取得して買主に移転することができない場合、買主は、契約時にその権利が売主に属しないことを知っていたとしても、それにより損害賠償の請求を妨げられない。

(正答)  

(解説)
561条は、「他人の権利…を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。」と規定しているから、他人物売買の場合、売主は、売買契約に基づく財産権移転債務(555条)の内容として、その権利を取得してこれを買主に移転する権利供与義務を負う。そして、他人の土地を買主に移転するという債務が売主の責めに帰すことができる事由により履行不能となった場合、売買契約締結時において買主が目的物である土地を売主が所有していないことを知っていたか否かにかかわらず、415条1項本文の要件を満たすから、買主は、415条1項に基づき、売主に対して損害賠償を請求することができる。なお、平成29年改正前民法下では、「前条の場合において、売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の時においてその権利が売主に属しないことを知っていたときは、損害賠償の請求をすることができない。」(旧561条)と定められていたため、買主は、契約時にその権利が売主に属しないことを知っていたときは、それにより損害賠償の請求を妨げられる。

(R2 司法 第24問 エ)
売主が他人の権利を取得して買主に移転することができない場合、買主は、契約時にその権利が売主に属しないことを知っていたときは、契約を解除することができない。

(正答)  

(解説)
561条は、「他人の権利…を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。」と規定しているから、他人物売買の場合、売主は、売買契約に基づく財産権移転債務(555条)の内容として、その権利を取得してこれを買主に移転する権利供与義務を負う。そして、売主が他人の権利を取得して買主に移転することができない場合、「債務の全部の履行が不能であるとき」(542条1項1号)に当たるから、買主は、契約時にその権利が売主に属しないことを知っていたときであっても、売買契約を無催告で解除することができる(なお、買主が契約時にその権利が売主に属しないことを知っていたからといって、「債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものである」(543条)とはいえない。)。
なお、平成29年改正前民法下では、「前条の場合において、売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の時においてその権利が売主に属しないことを知っていたときは、損害賠償の請求をすることができない。」(旧561条)と定められていたため、買主は、契約時にその権利が売主に属しないことを知っていたときは、それにより損害賠償の請求を妨げられるが、解除権までは否定されていなかった。
総合メモ
前の条文 次の条文