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間接正犯 - 解答モード

医師の正当業務行為を利用して堕胎を遂行した者 大判大正10年5月7日

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概要
医師ではない被告人が、妊婦からの依頼を受けて堕胎手術を開始し、その最中に妊婦の生命が危険な状態に陥ったため、医師に依頼して、胎児を乙の母体外に排出させた場合、医師の正当業務行為を利用して堕胎をしたといえ、堕胎罪の間接正犯が成立する。
判例
事案:医師ではない被告人は、妊婦からの依頼を受けて堕胎手術を開始し、その最中に妊婦の生命が危険な状態に陥ったため、医師に依頼して、胎児を乙の母体外に排出させたという事案において、同意堕胎罪の間接正犯の成否が問題となった。

判旨:「姙婦ヨリ墮胎ノ囑託ヲ受ケタル者カ自ラ墮胎手段ヲ施シタル爲メ墮胎ノ結果ヲ生セサルニ先チ姙婦ノ身體ニ異状ヲ生シ醫術ニ因リ胎兒ヲ排出スルニアラサレハ姙婦ノ生命ニ危險ヲ及ホスヘキ虞アルニ至ラシメタルニ乘シ墮胎ヲ遂行センカ爲メ醫師ニ對シテ胎兒ノ排出ヲ求メ因テ醫師ヲシテ姙婦ノ生命ニ對スル緊急避難ノ必要上已ムコトヲ得スシテ胎兒排出スルニ至ラシメタル場合ニ於テハ醫師ニ對シテハ墮胎罪成立セサルコト勿論ナリト雖モ墮胎受託者ハ犯法行爲タル自己ノ墮胎手段ニ因リ叙上緊急危難ノ状態ヲ發生セシメ其發生ヲ機トシテ醫師ニ胎兒ノ排出ヲ求メタルモノニシテ其行爲ト胎兒ノ排出トノ間ニ因果關係アリ換言スレハ醫師ノ前記正當業務行爲ヲ利用シテ墮胎ヲ遂行シタル者ニ外ナラサルカ故ニ墮胎罪ノ間接正犯ヲ以テ論スヘキモノトス」
過去問・解説
全体の正答率 : 50%

(H28 司法 第17問 2)
甲に同意堕胎罪が成立するか。
医師ではない甲は、妊婦乙からの依頼を受けて乙への堕胎手術を開始したが、その最中に乙の生命が危険な状態に陥ったため、医師丙に依頼し、胎児を乙の母体外に排出させた。

(正答)

(解説)
判例(大判大10.5.7)は、「墮胎受託者ハ犯法行爲タル自己ノ墮胎手段ニ因リ叙上緊急危難ノ状態ヲ發生セシメ其發生ヲ機トシテ醫師ニ胎兒ノ排出ヲ求メタルモノニシテ其行爲ト胎兒ノ排出トノ間ニ因果關係アリ換言スレハ醫師ノ前記正當業務行爲ヲ利用シテ墮胎ヲ遂行シタル者ニ外ナラサルカ故ニ墮胎罪ノ間接正犯ヲ以テ論スヘキ」として、自己の堕胎行為によって危難の状態を発生させ、医師に胎児の排出を求めたのであれば、堕胎行為と胎児の排出との間に因果関係が認められ、堕胎罪の間接正犯が認められることを示している。
医師ではない甲は、妊婦乙からの依頼を受けて、医師丙の正当業務行為を利用して乙への堕胎を遂行したといえ、その行為と胎児の排出との間に因果関係が認められる。
したがって、甲には、同意堕胎罪の間接正犯が成立する。


全体の正答率 : 100%

(R6 司法 第2問 オ)
医師ではない甲は、妊婦であるAから依頼を受けてAの堕胎手術を開始したが、医術により胎児を排出しなければAの生命に危険を及ぼすおそれが生じたため、医師であるBに胎児の排出を求めた。Bは、Aの生命に対する危険を避けるため胎児をAの母体外に排出させた。Bに緊急避難が成立する場合、甲に同意堕胎罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(大判大10.5.7)は、「墮胎受託者ハ犯法行爲タル自己ノ墮胎手段ニ因リ叙上緊急危難ノ状態ヲ發生セシメ其發生ヲ機トシテ醫師ニ胎兒ノ排出ヲ求メタルモノニシテ其行爲ト胎兒ノ排出トノ間ニ因果關係アリ換言スレハ醫師ノ前記正當業務行爲ヲ利用シテ墮胎ヲ遂行シタル者ニ外ナラサルカ故ニ墮胎罪ノ間接正犯ヲ以テ論スヘキ」として、自己の堕胎行為によって危難の状態を発生させ、医師に胎児の排出を求めたのであれば、堕胎行為と胎児の排出との間に因果関係が認められ、堕胎罪の間接正犯が認められることを示している。
医師ではない甲は、妊婦Aからの依頼を受けて、医師Bの緊急避難行為を利用してAへの堕胎を遂行したといえ、その行為と胎児の排出との間に因果関係が認められる。
したがって、甲には、同意堕胎罪の間接正犯が成立する。

該当する過去問がありません

窃盗罪と間接正犯 最三小判昭和31年7月3日

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概要
他人の所有管理にかかる物件につき、管理処分権なき者が、不法領得の意思をもってあたかも自己の所有物の如く装いこれを善意の第三者に売却搬出させた行為は、窃盗罪の間接正犯を構成する。
判例
事案:他人の管理する物を鉄くずとして善意の第三者である業者に買い取らせ、搬出させた事案において、窃盗罪の間接正犯の成否が問題となった。

判旨:「本件ドラグライン1基につき、何等管理処分権なき被告人が他人と売買契約を締結しても、ただそれだけの事実に止まるならば、所論の如く、被告人に窃盗罪の成立を認めることはできないけれども、…情を知らないAに、自己に処分権がある如く装い、屑鉄として、解体運搬費等を差引いた価額、即ち、買主において解体の上これを引き取る約定で売却し、その翌日頃右Aは情を知らない古鉄回収業Bに右物件を前同様古鉄として売却し、同人において、その翌日頃から数日を要して、ガス切断等の方法により、解体の上順次搬出したものであることが明らかであるから、右解体搬出された物件につき被告人は窃盗罪の刑事責任を免れることはできない…。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H25 共通 第17問 5)
甲は、乙所有の建材を自己の所有物であると偽って、事情を知らない丙に売却し、丙をして、乙の建材置場から当該建材を搬出させた。窃盗罪の間接正犯が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭31.7.3)は、本肢と同種の事案において、「被告人は屑鉄類を取扱っているその情を知らないAに、自己に処分権がある如く装い、売却し、Aは情を知らない古鉄回収業Bに右物件を前同様古鉄として売却し、同人において、解体の上、搬出したものであることが明らかであるから、右解体搬出された物件につき被告人は窃盗罪の刑事責任を免れることはできない…。」としている。
したがって、甲には、窃盗罪の間接正犯が成立する。


全体の正答率 : 100%

(R6 司法 第2問 エ)
甲は、Aに成り済ましてAの管理する資材置場に保管されていたA所有の建設機械を自己の所有物であるかのように装って中古機械業者Bに売却し、甲をAと思い込んでいたBが甲との約定に基づき同建設機械を同置場から搬出した。この場合、甲にAに対する窃盗罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭31.7.3)は、本肢と同種の事案において、「被告人は屑鉄類を取扱っているその情を知らないAに、自己に処分権がある如く装い、売却し、Aは情を知らない古鉄回収業Bに右物件を前同様古鉄として売却し、同人において、解体の上、搬出したものであることが明らかであるから、右解体搬出された物件につき被告人は窃盗罪の刑事責任を免れることはできない…。」としている。
甲は、Aに成り済ましてBに建設機械を売却し、事情を知らないBを道具として利用し、Bをして、Aの資材置場から同建設機械を搬出させている。
したがって、甲には、窃盗罪の間接正犯が成立する。

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刑事未成年者を利用した間接正犯 最一小判昭和58年9月21日

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概要
自己の日頃の言動に畏怖し意思を抑圧されている12歳の養女を利用して窃盗を行ったと認められる場合、たとえ同女が是非善悪の判断能力を有する者であったとしても、利用者につき窃盗の間接正犯が成立する。
判例
事案:12歳の養女に日頃から暴行し、意思を抑圧していたところ、被告人が養女に窃盗を命じて実行させたという事案において、窃盗罪の間接正犯の成否が問題となった。

判旨:「被告人は、当時12歳の養女Aを連れて四国88ケ所札所等を巡礼中、日頃被告人の言動に逆らう素振りを見せる都度顔面にタバコの火を押しつけたりドライバーで顔をこすったりするなどの暴行を加えて自己の意のままに従わせていた同女Aに対し、本件各窃盗を命じてこれを行わせたというのであり、これによれば、被告人が、自己の日頃の言動に畏怖し意思を抑圧されている同女Aを利用して右各窃盗を行ったと認められるのであるから、たとえ所論のように同女が是非善悪の判断能力を有する者であったとしても、被告人については本件各窃盗の間接正犯が成立すると認めるべきである。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H21 司法 第4問 1)
甲は、日ごろから暴行を加えて自己の意のままに従わせていた12歳の乙に対し、寺院のさい銭箱から現金を盗んでくるように指示したところ、乙は、是非善悪の判断能力を有していたものの、甲の日ごろの言動に畏怖してその意思が抑圧されていたため、甲の指示どおりに窃盗を行った。この場合、乙に是非善悪の判断能力があると認められる以上、甲には窃盗罪の共同正犯が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭58.9.21)は、本肢と同種の事案において、「被告人が、自己の日頃の言動に畏怖し意思を抑圧されている同女を利用して右各窃盗を行ったと認められるのであるから、たとえ所論のように同女が是非善悪の判断能力を有する者であったとしても、被告人については本件各窃盗の間接正犯が成立すると認めるべきである。」としている。
12歳の乙は是非善悪の判断能力を有する者であるが、甲は乙に日ごろから暴行を加えて自己の意のままに従わせ、乙はその意思が抑圧されていたのであるから、乙を道具として甲による賽銭泥棒の指示通りに窃盗をさせたといえる。
したがって、甲には窃盗罪の間接正犯が成立する。


全体の正答率 : 100%

(H24 共通 第2問 ウ)
判例の立場に従って検討し、甲に窃盗罪の共同正犯が成立する場合には1を、教唆犯又は幇助犯が成立する場合には2を、間接正犯が成立する場合には3を選びなさい。
甲は、常日頃暴行を加えて自己の意のままに従わせていた実子の乙(13歳)に対し、Vが管理するさい銭箱から現金を盗んでくるように命じ、乙は、是非善悪の識別能力及び識別に従って行動を制御する能力を有していたが、甲の命令に従わなければまた暴力を振るわれると畏怖し、意思を抑圧された状態で、前記さい銭箱から現金を盗んだ。

(正答)3

(解説)
判例(最判昭58.9.21)は、本肢と同種の事案において、「被告人が、自己の日頃の言動に畏怖し意思を抑圧されている同女を利用して右各窃盗を行ったと認められるのであるから、たとえ所論のように同女が是非善悪の判断能力を有する者であったとしても、被告人については本件各窃盗の間接正犯が成立すると認めるべきである。」としている。
13歳の乙は是非善悪の判断能力を有する者であるが、甲は乙に常日頃暴行を加えて自己の意のままに従わせ、乙は甲の命令に従わなければまた暴力を振るわれると畏怖し、その意思が抑圧されていたのであるから、乙を道具として甲による賽銭泥棒の指示通りに窃盗をさせたといえる。
したがって、甲には窃盗罪の間接正犯が成立する。


全体の正答率 : 100%

(H25 共通 第17問 1)
甲は、生活費欲しさから強盗を計画し、12歳の長男乙に対し、Vから現金を強取するよう指示した。乙は、甲の指示に従い、Vに刃物を突き付けて現金を強取した。乙が是非善悪の判断能力を有していたか否か、甲の指示により意思を抑圧されていたか否かにかかわらず、甲には強盗罪の間接正犯が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭58.9.21)は、「被告人が、自己の日頃の言動に畏怖し意思を抑圧されている同女を利用して右各窃盗を行ったと認められるのであるから、たとえ所論のように同女が是非善悪の判断能力を有する者であったとしても、被告人については本件各窃盗の間接正犯が成立すると認めるべきである。」としている。
乙は、甲の指示に従い、Vに刃物を突き付けて現金を強取しているが、意思を抑圧されていたか否かにかかわらず、強盗罪の間接正犯が成立するわけではない。
したがって、乙が是非善悪の判断能力を有していたか否か、甲の指示により意思を抑圧されていたか否かにかかわらず、甲には強盗罪の間接正犯が成立するとはいえない。


全体の正答率 : 100%

(R2 共通 第1問 4)
甲は、日頃から暴行を加えて自己の意のままに従わせて万引きをさせていた満12歳の実子Xに対し、これまでと同様に万引きを命じて実行させた。この場合、Xが是非善悪の判断能力を有する者であれば、甲に、窃盗罪の間接正犯は成立せず、Xとの間で同罪の共同正犯が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭58.9.21)は、本肢と同種の事案において、「被告人が、自己の日頃の言動に畏怖し意思を抑圧されている同女を利用して右各窃盗を行ったと認められるのであるから、たとえ所論のように同女が是非善悪の判断能力を有する者であったとしても、被告人については本件各窃盗の間接正犯が成立すると認めるべきである。」としている。
甲は、Xに日頃から暴行を加えて自己の意のままに従わせこれまでと同様に万引きを命じて実行させているが、Xが是非善悪の判断能力を有する者であった場合でも、意思抑圧の存在が認められれば、甲に窃盗罪の間接正犯が成立する余地がある。
したがって、甲に、窃盗罪の間接正犯は成立しないとは限らない。

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刑事未成年を利用した間接正犯 最一小判平成13年10月25日

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概要
被告人が生活費欲しさから強盗を計画し、12歳10か月の長男に指示命令して強盗を実行させた場合においても、当時長男には是非弁別の能力があり、被告人の指示命令は長男の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、長男は自らの意思によりその実行を決意した上、臨機応変に対処して強盗を完遂し、長男が奪ってきた金品をすべて被告人が領得したなど判示の事実関係の下では、被告人につき強盗の共同正犯が成立する。
判例
事案:甲が生活費欲しさから強盗を計画し、12歳10か月の長男乙に指示命令して強盗を実行させた事案において、強盗の教唆犯、強盗の間接正犯又は強盗の共同正犯のいずれが成立するかが問題となった。

判旨:「本件当時乙には是非弁別の能力があり、被告人甲の指示命令は乙の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、乙は自らの意思により本件強盗の実行を決意した上、臨機応変に対処して本件強盗を完遂したことなどが明らかである。これらの事情に照らすと、所論のように被告人につき本件強盗の間接正犯が成立するものとは、認められない。そして、被告人甲は、生活費欲しさから本件強盗を計画し、乙に対し犯行方法を教示するとともに犯行道具を与えるなどして本件強盗の実行を指示命令した上、乙が奪ってきた金品をすべて自ら領得したことなどからすると、被告人については本件強盗の教唆犯ではなく共同正犯が成立するものと認められる。したがって、これと同旨の第1審判決を維持した原判決の判断は、正当である。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H21 司法 第4問 3)
甲は、12歳の乙に対し、丙から現金を強取してくるように指示したところ、乙は、是非善悪の判断能力を有していたものの、甲の指示どおりに強盗を実行した。この場合、甲の指示は、乙の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、乙が自らの意思により前記強盗の実行を決意した上、臨機応変に対処して強盗を遂げたとしても、乙が刑事未成年である以上は、甲には強盗罪の間接正犯が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判平13.10.25)は、本肢と同種の事案において、「本件当時乙(12歳)には是非弁別の能力があり、被告人甲の指示命令は乙の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、乙は自らの意思により本件強盗の実行を決意した上、臨機応変に対処して本件強盗を完遂したことなどが明らかである。これらの事情に照らすと、所論のように被告人につき本件強盗の間接正犯が成立するものとは、認められない。」として、強盗罪の共同正犯が成立することを認めている。
甲の指示は、乙の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、乙が自らの意思により前記強盗の実行を決意した上、臨機応変に対処して強盗を遂げており、甲が乙を道具として支配し利用したとはいえない。
したがって、乙が刑事未成年であっても、甲に強盗罪の共同正犯が成立する。


全体の正答率 : 100%

(H22 司法 第12問 3)
成人が刑事未成年者に指示して犯罪を行わせた場合、成人と刑事未成年者との間で共同正犯が成立することはなく、成人に間接正犯が成立するにすぎない。

(正答)

(解説)
判例(最判平13.10.25)は、「本件当時乙(12歳)には是非弁別の能力があり、被告人甲の指示命令は乙の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、乙は自らの意思により本件強盗の実行を決意した上、臨機応変に対処して本件強盗を完遂したことなどが明らかである。これらの事情に照らすと、所論のように被告人につき本件強盗の間接正犯が成立するものとは、認められない。」として、強盗罪の共同正犯が成立することを認めている。
したがって、成人が刑事未成年者に指示して犯罪を行わせた場合、成人に間接正犯が成立する場合だけでなく、成人と刑事未成年者との間で共同正犯が成立することもあり得る。


全体の正答率 : 100%

(H28 司法 第17問 1)
甲は、是非弁別能力を有する12歳の長男乙に対し、強盗の犯行方法を教示し、その際に使う凶器を提供して強盗を実行するよう指示したが、その指示は乙の意思を抑圧するものではなく、乙は、自らの意思により強盗の犯行を決意し、甲から提供された凶器を使って、状況によって臨機応変に対処して強盗を実行した。甲に強盗罪の間接正犯が成立するか。

(正答)

(解説)
判例(最判平13.10.25)は、本肢と同種の事案において、「本件当時乙(12歳)には是非弁別の能力があり、被告人甲の指示命令は乙の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、乙は自らの意思により本件強盗の実行を決意した上、臨機応変に対処して本件強盗を完遂したことなどが明らかである。これらの事情に照らすと、所論のように被告人につき本件強盗の間接正犯が成立するものとは、認められない。」として、強盗罪の共同正犯が成立することを認めている。
甲の指示は乙の意思を抑圧するものではなく、乙は、自らの意思により強盗の犯行を決意し、甲から提供された凶器を使って、状況によって臨機応変に対処して強盗を実行しており、甲が乙を道具として支配し利用したとはいえない。
したがって、甲には、強盗罪の間接正犯ではなく、共同正犯が成立する。


全体の正答率 : 100%

(H30 司法 第17問 1)
次の【事例】における甲の罪責について、判例の立場に従って検討した場合、正しいものは、後記1から5までのうちどれか。
【事例】
甲は、バーの経営者Aから現金を強取しようと考え、12歳の長男乙に、「Aのバーに行ってお金をとってきて。覆面を付けて、『金だ。』とか言ってモデルガンを見せなさい。」と言い聞かせた。乙は、当初警察に捕まることを恐れて嫌がっていたが、結局小遣い欲しさから承諾し、甲から覆面とモデルガンを受け取った。
乙は、Aのバーまで行き、甲から指示された方法に従って、覆面を付けモデルガンを拳銃のように見せ掛け、Aを脅迫してその反抗を抑圧した。さらに、乙は、自己の判断により、外から人が来ないようにするためバーの出入口ドアの鍵を掛け、Aを店内のトイレに閉じ込めた。その後、乙は、レジ内の現金を強取し、外に出ようとしたところ、トイレから脱出して乙に向かってきたAから腕をつかまれたため、これを激しく振り払った。その結果、Aは転倒して負傷した。
乙は、逃走して自宅に戻り、強取した現金を全て甲に渡した。甲はその現金の中から乙に小遣いを与え、その余を生活費等に費消した。
1.強盗致傷罪の教唆犯が成立する。
2.強盗罪の間接正犯が成立する。
3.強盗致傷罪の間接正犯が成立する。
4.強盗罪の共同正犯が成立する。
5.強盗致傷罪の共同正犯が成立する。

(正答)5

(解説)
判例(最判平13.10.25)は、本肢と同種の事案において、「本件当時乙(12歳)には是非弁別の能力があり、被告人甲の指示命令は乙の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、乙は自らの意思により本件強盗の実行を決意した上、臨機応変に対処して本件強盗を完遂したことなどが明らかである。これらの事情に照らすと、所論のように被告人につき本件強盗の間接正犯が成立するものとは、認められない。」として、強盗罪の共同正犯が成立することを認めている。
甲は12歳の長男乙に対して強盗罪の実行を指示しているところ、乙は、犯行現場で自己の判断により、外から人が来ないようにするためバーの出入口ドアの鍵を掛け、Aを店内のトイレに閉じ込めていて、自らの意思により臨機応変に対処して完遂したといえる。
乙は、レジ内の現金を強取し、外に出ようとしたところ、トイレから脱出して乙に向かってきたAから腕をつかまれたため、これを激しく振り払った。このように乙は逃走の際に強取行為に続いて暴行に及び、Aは転倒して負傷したという結果は生じたとして、乙に強盗致傷罪が成立する。
また、判例(最判昭24.7.2)は、「既に強盗について共謀のある以上他の共犯者がその強盗の機会において、被害者に傷害を与へたときは、たとえ、被告人が…、現実にその傷害の原因たる暴行について、認識がなかったとしても被告人もまた、強盗傷人罪の責任を負はなければならない…。」としている。
甲乙間には基本犯である強盗の共謀が成立し、乙が強盗した結果Aは負傷している。
したがって、甲には、強盗致傷罪の共同正犯が成立する。

該当する過去問がありません

強盗の間接正犯 最一小判平成13年10月25日

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概要
被告人が生活費欲しさから強盗を計画し、12歳10か月の長男に指示命令して強盗を実行させた場合においても、当時長男には是非弁別の能力があり、被告人の指示命令は長男の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、長男は自らの意思によりその実行を決意した上、臨機応変に対処して強盗を完遂し、長男が奪ってきた金品をすべて被告人が領得したなど判示の事実関係の下では、被告人につき強盗の共同正犯が成立する。
判例
事案:甲が生活費欲しさから強盗を計画し、12歳10か月の長男乙に指示命令して強盗を実行させた場合においても、当時乙には是非弁別の能力があり、甲の指示命令は乙の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、乙は自らの意思によりその実行を決意した上、臨機応変に対処して強盗を完遂し、乙が奪ってきた金品をすべて甲が領得したという事案において、強盗の教唆犯、強盗の間接正犯又は強盗の共同正犯のいずれが成立するかが問題となった。

判旨:「本件当時乙には是非弁別の能力があり、被告人甲の指示命令は乙の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、乙は自らの意思により本件強盗の実行を決意した上、臨機応変に対処して本件強盗を完遂したことなどが明らかである。これらの事情に照らすと、所論のように被告人につき本件強盗の間接正犯が成立するものとは、認められない。そして、被告人甲は、生活費欲しさから本件強盗を計画し、乙に対し犯行方法を教示するとともに犯行道具を与えるなどして本件強盗の実行を指示命令した上、乙が奪ってきた金品をすべて自ら領得したことなどからすると、被告人については本件強盗の教唆犯ではなく共同正犯が成立するものと認められる。したがって、これと同旨の第一審判決を維持した原判決の判断は、正当である。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H21 司法 第4問 3)
甲は、12歳の乙に対し、丙から現金を強取してくるように指示したところ、乙は、是非善悪の判断能力を有していたものの、甲の指示どおりに強盗を実行した。この場合、甲の指示は、乙の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、乙が自らの意思により前記強盗の実行を決意した上、臨機応変に対処して強盗を遂げたとしても、乙が刑事未成年である以上は、甲には強盗罪の間接正犯が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判平13.10.25)は、「本件当時乙(12歳)には是非弁別の能力があり、被告人甲の指示命令は乙の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、乙は自らの意思により本件強盗の実行を決意した上、臨機応変に対処して本件強盗を完遂したことなどが明らかである。これらの事情に照らすと、所論のように被告人につき本件強盗の間接正犯が成立するものとは、認められない。」として、甲乙間で強盗の共同正犯が成立するとしている。
本肢では、甲が12歳の乙に対し、丙から現金を強取してくるように指示したところ、乙は、是非善悪の判断能力を有していたものの、強盗を実行している。
意思抑圧がなく、臨機応変に対処して強盗を遂げたといえるならば、甲が乙を道具として支配し利用したとはいえない。
したがって、乙が刑事未成年であっても、甲に強盗罪の共同正犯が成立する。


全体の正答率 : 100%

(H22 司法 第12問 3)
成人が刑事未成年者に指示して犯罪を行わせた場合、成人と刑事未成年者との間で共同正犯が成立することはなく、成人に間接正犯が成立するにすぎない。

(正答)

(解説)
判例(最判平13.10.25)は、「本件当時乙(12歳)には是非弁別の能力があり、被告人甲の指示命令は乙の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、乙は自らの意思により本件強盗の実行を決意した上、臨機応変に対処して本件強盗を完遂したことなどが明らかである。これらの事情に照らすと、所論のように被告人につき本件強盗の間接正犯が成立するものとは、認められない。」として、被告人甲と乙との間で強盗の共同正犯が成立することを認めている。
したがって、成人が刑事未成年者に指示して犯罪を行わせた場合、成人と刑事未成年者との間で共同正犯が成立する場合に加え、成人に間接正犯が成立する場合がある。


全体の正答率 : 100%

(H28 司法 第17問 1)
甲は、是非弁別能力を有する12歳の長男乙に対し、強盗の犯行方法を教示し、その際に使う凶器を提供して強盗を実行するよう指示したが、その指示は乙の意思を抑圧するものではなく、乙は、自らの意思により強盗の犯行を決意し、甲から提供された凶器を使って、状況によって臨機応変に対処して強盗を実行した。甲に強盗罪の間接正犯が成立するか。

(正答)

(解説)
判例(最判平13.10.25)は、「本件当時乙(12歳)には是非弁別の能力があり、被告人甲の指示命令は乙の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、乙は自らの意思により本件強盗の実行を決意した上、臨機応変に対処して本件強盗を完遂したことなどが明らかである。これらの事情に照らすと、所論のように被告人につき本件強盗の間接正犯が成立するものとは、認められない。」として、被告人甲と乙との間で強盗の共同正犯が成立することを認めている。
本肢では、甲が12歳の乙に対し、凶器を提供して強盗を実行するよう指示しているものの、その指示は乙の意思を抑圧するものではなく、乙は、自らの意思により強盗の犯行を決意し、甲から提供された凶器を使って、状況によって臨機応変に対処して強盗を実行している。
そうすると、意思抑圧がなく、臨機応変に対処して強盗を遂げたといえる。
したがって、甲に強盗罪の共同正犯が成立する。

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インスリンの不投与による間接正犯の成否(R6) 最二小決令和2年8月24日

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概要
不保護の故意のある父親と共謀の上、母親を介して被害者の生命維持に必要なインスリンを投与せず、被害者を死亡させた被告人には殺人罪が成立する。
判例
事案:生命維持のためにインスリンの投与が必要な1型糖尿病にり患した幼年の被害者の治療をその両親から依頼された者が、両親に指示してインスリンの投与をさせず被害者が死亡したという事案において、殺人罪の成否が問題となった。

判旨:「母親は、被害者が難治性疾患の1型糖尿病にり患したことに強い精神的衝撃を受けていたところ、被告人による上記のような働きかけを受け、被害者を何とか完治させたいとの必死な思いとあいまって、被害者の生命を救い、1型糖尿病を完治させるためには、インスリンの不投与等の被告人の指導に従う以外にないと一途に考えるなどして、本件当時、被害者へのインスリンの投与という期待された作為に出ることができない精神状態に陥っていたものであり、被告人もこれを認識していたと認められる。また、被告人は、被告人の治療法に半信半疑の状態ながらこれに従っていた父親との間で、母親を介し、被害者へのインスリンの不投与について相互に意思を通じていたものと認められる。 
 以上のような本件の事実関係に照らすと、被告人は、未必的な殺意をもって、母親を道具として利用するとともに、不保護の故意のある父親と共謀の上、被害者の生命維持に必要なインスリンを投与せず、被害者を死亡させたものと認められ、被告人には殺人罪が成立する。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(R6 司法 第2問 イ)
非科学的な力による難病治療を標ぼうしていた甲は、小児Aがインスリンを定期的に摂取しなければ死亡する現実的な危険性がある重度の糖尿病患者であることを認識しながら、甲を信頼するAの母親Bに対し、Aへのインスリンの不投与を執ようかつ強度に働き掛けた。Bは、Aを完治させるためには甲の指導に従う以外に方法はないといちずに考え、Aへのインスリンの投与という期待された作為に出ることができない精神状態に陥り、甲から言われるがままAへのインスリン投与を中止したため、Aはその後間もなく死亡した。この場合、甲に殺人罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決令2.8.24)は、本肢と同種の事案において、「被告人は、未必的な殺意をもって、母親を道具として利用するとともに、不保護の故意のある父親と共謀の上、被害者の生命維持に必要なインスリンを投与せず、被害者を死亡させたものと認められ,被告人には殺人罪が成立する。」としている。
甲は、Bに働きかけることで、Bが自分の意思で母親として期待された作為に出れない精神状態に陥らせることで、甲がBを道具として支配しており、Aへのインスリン投与の中止により、Aはその後間もなく死亡している。
したがって、甲に殺人罪の間接正犯が成立する。

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