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故意(具体的事実の錯誤) - 解答モード

構成要件の重なり合い 最一小判昭和54年3月27日

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概要
①営利の目的で、麻薬であるジアセチルモルヒネの塩類粉末を覚せい剤と誤認して輸入した場合には、麻薬取締法64条2項、1項、12条1項の麻薬輸入罪が成立する。
②税関長の許可を受けないで、麻薬を覚せい剤と誤認して輸入した場合には、関税法111条1項の無許可輸入罪が成立する。
判例
事案:営利の目的で、麻薬であるジアセチルモルヒネの塩類である粉末を覚せい剤と誤認して、本邦内に持ち込み、もって右麻薬を輸入し、税関長の許可を受けないで、前記麻薬を覚せい剤と誤認して、輸入したとされる事案において、適用法令について問題となった。

判旨:「麻薬と覚せい剤とは、ともにその濫用による保健衛生上の危害を防止する必要上、麻薬取締法及び覚せい剤取締法による取締の対象とされているものであるところ、これらの取締は、実定法上は前記2つの取締法によって各別に行われているのであるが、両法は、その取締の目的において同一であり、かつ、取締の方式が極めて近似していて、輸入、輸出、製造、譲渡、譲受、所持等同じ態様の行為を犯罪としているうえ、それらが取締の対象とする麻薬と覚せい剤とは、ともに、その濫用によってこれに対する精神的ないし身体的依存(いわゆる慢性中毒)の状態を形成し、個人及び社会に対し重大な害悪をもたらすおそれのある薬物であって、外観上も類似したものが多いことなどにかんがみると、麻薬と覚せい剤との間には、実質的には同一の法律による規制に服しているとみうるような類似性があるというべきである。本件において、被告人は、営利の目的で、麻薬であるジアセチルモルヒネの塩類である粉末を覚せい剤と誤認して輸入したというのであるから、覚せい剤取締法41条2項、1項1号、13条の覚せい剤輸入罪を犯す意思で、麻薬取締法64条2項、1項、12条1項の麻薬輸入罪にあたる事実を実現したことになるが、両罪は、その目的物が覚せい剤か麻薬かの差異があるだけで、その余の犯罪構成要件要素は同一であり、その法定刑も全く同一であるところ、前記のような麻薬と覚せい剤との類似性にかんがみると、この場合、両罪の構成要件は実質的に全く重なり合っているものとみるのが相当であるから、麻薬を覚せい剤と誤認した錯誤は、生じた結果である麻薬輸入の罪についての故意を阻却するものではないと解すべきである。してみると、被告人の前者の行為については、麻薬取締法64条2項、1項、12条1項の麻薬輸入罪が成立し、これに対する刑も当然に同罪のそれによるものというべきである。次に、被告人の後者の行為についてみるに、関税法は、貨物の輸入に際し一般に通関手続の履行を義務づけているのであるが、右義務を履行しないで貨物を輸入した行為のうち、その貨物が関税定率法21条1項所定の輸入禁制品である場合には関税法109条1項によって、その余の一般輸入貨物である場合には同法111条1項によって処罰することとし、前者の場合には、その貨物が関税法上の輸入禁制品であるところから、特に後者に比し重い刑をもってのぞんでいるものであるところ、密輸入にかかる貨物が覚せい剤か麻薬かによって関税法上その罰則の適用を異にするのは、覚せい剤が輸入制限物件(関税法118条3項)であるのに対し麻薬が輸入禁制品とされているというだけの理由によるものに過ぎないことにかんがみると、覚せい剤を無許可で輸入する罪と輸入禁制品である麻薬を輸入する罪とは、ともに通関手続を履行しないでした類似する貨物の密輸入行為を処罰の対象とする限度において、その犯罪構成要件は重なり合っているものと解するのが相当である。本件において、被告人は、覚せい剤を無許可で輸入する罪を犯す意思であったというのであるから、輸入にかかる貨物が輸入禁制品たる麻薬であるという重い罪となるべき事実の認識がなく、輸入禁制品である麻薬を輸入する罪の故意を欠くものとして同罪の成立は認められないが、両罪の構成要件が重なり合う限度で軽い覚せい剤を無許可で輸入する罪の故意が成立し同罪が成立するものと解すべきである。」
過去問・解説
全体の正答率 : 0%

(H27 司法 第9問 5)
【事例】
Aは、外国へ旅行に行った際、旅行先で知り合ったBから、荷物を預けるので手荷物として日本まで運んでほしいと依頼され、これを了承し、その荷物を日本に持ち込んだが、荷物の中身は覚せい剤であった。
なお、覚せい剤をみだりに日本に持ち込んだ場合には覚せい剤取締法の輸入罪が成立し、麻薬をみだりに日本に持ち込んだ場合には麻薬及び向精神薬取締法の輸入罪が成立するものとする。
【記述】
Aは、Bから預かった荷物の中身は「覚せい剤ではないが、麻薬である。」と思ってこれを日本に持ち込んだ場合、覚せい剤取締法の輸入罪の法定刑と麻薬及び向精神薬取締法の輸入罪の法定刑が同じときには、Aには覚せい剤取締法の輸入罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭54.3.27)は、「麻薬と覚せい剤との類似性にかんがみると、この場合、両罪の構成要件は実質的に全く重なり合っているものとみるのが相当であるから、麻薬を覚せい剤と誤認した錯誤は、生じた結果である麻薬輸入の罪についての故意を阻却するものではないと解すべきである。」として、両罪の構成要件が実質的に同じで、認識していた犯罪事実と発生した犯罪事実の法定刑が同じ場合、発生した犯罪事実について故意を認めている。
Aは、Bから預かった荷物の中身は「覚せい剤ではないが、麻薬である。」と思ってこれを日本に持ち込んでいるが、覚醒剤取締法の輸入罪の法定刑と麻薬及び向精神薬取締法の輸入罪の法定刑が同じで両罪の構成要件は実質的に全く重なり合っているから、発生した犯罪事実である覚醒剤取締法の輸入罪の故意が認められる。
したがって、Aには覚醒剤取締法の輸入罪が成立する。


全体の正答率 : 0%

(R4 司法 第1問 1)
甲は、麻薬であるヘロインの粉末を覚醒剤と誤信して営利目的で輸入した。ヘロインの営利目的輸入罪と覚醒剤の営利目的輸入罪の法定刑は同一であった。この場合、甲には、覚醒剤の営利目的輸入罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭54.3.27)は、「麻薬と覚せい剤との類似性にかんがみると、この場合、両罪の構成要件は実質的に全く重なり合っているものとみるのが相当であるから、麻薬を覚せい剤と誤認した錯誤は、生じた結果である麻薬輸入の罪についての故意を阻却するものではないと解すべきである。」として、両罪の構成要件が実質的に同じで、認識していた犯罪事実と発生した犯罪事実の法定刑が同じ場合、発生した犯罪事実について故意を認めている。
甲は、麻薬であるヘロインの粉末を覚醒剤と誤信して営利目的で輸入しているが、ヘロインの営利目的輸入罪と覚醒剤の営利目的輸入罪の法定刑が同じで両罪の構成要件は実質的に全く重なり合っているから、発生した犯罪事実であるヘロインの営利目的輸入罪の故意が認められる。
したがって、甲にはヘロインの営利目的輸入罪が成立する。

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方法の錯誤 大判昭和8年8月30日

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概要
殺意をもって暴行を加えた際、目的とした人とは別の他の人を殺害するに至ったときは、別の他人に対する殺人罪の成立を認めるべきである。
判例
事案:殺意をもって暴行したものの、実際に暴行した者は殺害しようとした者と異なっていた事案において、殺人罪が成立するかが問題となった。

判旨:「人ヲ殺害スル意思ヲ以テ之ニ暴行ヲ加ヘ因テ人ヲ殺害シタル結果ヲ惹起シタル以上ハ縱令其ノ殺害ノ結果カ犯人ニ於テ毫モ意識セサリシ客體ノ上ニ生シタルトキト雖暴行ト殺害トノ間ニ因果ノ關係存スルコト明白ナル以上犯人ニ於テ殺人既遂ノ罪責ヲ負フヘキコト勿論ニシテ過失致死罪ヲ以テ論スヘキニ非ス」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H20 司法 第7問 ウ)
甲は、乙に対する殺意をもって、乙の背後からけん銃を発射したところ、乙は赤ん坊の丙を抱いており、銃弾が乙の身体を貫通した後、丙にも命中して、乙及び丙の両名を死亡させた。甲が、乙に抱かれている丙の存在を認識していなかった場合でも、甲には乙及び丙に対する殺人罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判昭8.8.30)は、「人ヲ殺害スル意思ヲ以テ之ニ暴行ヲ加ヘ因テ人ヲ殺害シタル結果ヲ惹起シタル以上ハ縱令其ノ殺害ノ結果カ犯人ニ於テ毫モ意識セサリシ客體ノ上ニ生シタルトキト雖暴行ト殺害トノ間ニ因果ノ關係存スルコト明白ナル以上犯人ニ於テ殺人既遂ノ罪責ヲ負フヘキコト勿論ニシテ過失致死罪ヲ以テ論スヘキニ非ス」として、行為のときに少しも認識していなかった客体に結果が生じたとしても、殺害行為と結果との間に因果関係が認められることが明白ならば、殺人罪が成立しうることを示している。
甲は、乙に抱かれている丙の存在を認識していなかったが、人を殺す意思のもとで、拳銃を発射し銃弾が乙の身体を貫通した後、丙にも命中しているから、甲の殺害行為と乙及び丙の死亡結果との間に因果関係が認められることが明白であるといえる。
したがって、甲には乙及び丙に対する殺人罪が成立する。

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方法の錯誤と故意の個数 最三小判昭和53年7月28日

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概要
犯人が強盗の手段として人を殺害する意思のもとに銃弾を発射して殺害行為に出た結果、犯人の意図した者に対して右側胸部貫通銃創を負わせたほか、犯人の予期しなかった者に対しても腹部貫通銃創を負わせたときは、後者に対する関係でも強盗未遂罪が成立する。
判例
事案:いわゆる具体的事実の錯誤の事案において、認識した罪となるべき事実と現実に発生した事実とがどの程度一致していれば故意が認められるか問題となった。

判旨:「犯罪の故意があるとするには、罪となるべき事実の認識を必要とするものであるが、犯人が認識した罪となるべき事実と現実に発生した事実とが必ずしも具体的に一致することを要するものではなく、両者が法定の範囲内において一致することをもって足りるものと解すべきであるから、人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」
過去問・解説
全体の正答率 : 75%

(H20 司法 第7問 エ)
甲は、公務員乙がその法令上の職務Aを執行するに当たり、乙が執行している職務がそれとは別の法令上の乙の職務Bであると誤信して乙の顔面を手拳で殴る暴行を加えた。乙の執行する職務が職務Bでなく職務Aであると分かっていれば、甲は上記暴行には及ばなかったという事情があった場合でも、甲には公務執行妨害罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
甲は、職務Aを職務Bと誤信しているものの、いずれの事実も公務執行妨害罪の構成要件の範囲内である。
したがって、甲には公務執行妨害罪の故意が認められ、同罪が成立する。


全体の正答率 : 75%

(H22 司法 第6問 1)
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し、誤っているものを2個選びなさい。
甲が、Aを脅迫する意図でA宅に宛てて「お前の家に火をつけてやる。」と記載した手紙を郵送したところ、同手紙が誤ってA宅の隣のB宅に配達され、Bがこの手紙を読んで畏怖した。甲には、Bに対する脅迫罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
甲は、Aを脅迫する意図で、誤ってBを脅迫しているから、具体的事実の錯誤のうち、本来意図した者とは別の客体に対して侵害したという客体の錯誤があるといえる。
脅迫罪の構成要件上の客体は「人」であり、甲が認識していたAと現実に畏怖したBは「人」であるという点で、両者は構成要件の範囲内で一致する。
したがって、甲には、Bに対する脅迫罪が成立する。


全体の正答率 : 0%

(H22 司法 第6問 5)
甲は、Aが甲に射殺されることに同意したため、Aに対し、殺意をもってけん銃を発射したが、銃弾は、Aに当たらずにAの頭部をかすめ、Aの背後にいて甲がその存在を認識しておらず、甲に射殺されることに同意していなかったBに命中して同人を死亡させた。甲には、Aに対する同意殺人未遂罪とBに対する殺人既遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
同意殺人罪と殺人罪では、より軽い同意殺人罪の限度で重なり合いが認められる。
したがって、Aに対しては同意殺人罪の故意が認められ、実行行為に及んだものの結果発生に至らなかったことから、同意殺人未遂罪が成立する。
また、Bに対しては、客観的には殺人罪の実行行為をしているが、同意殺人罪の限度でしか故意が認められないため、同意殺人罪の既遂が成立する。
よって、甲には、Aに対する同意殺人未遂罪とBに対する同意殺人既遂罪が成立する。


全体の正答率 : 75%

(H23 共通 第18問 4)
甲は、パチンコ店の従業員乙が運搬していた同店の売上金の入ったかばんを強取するため、乙の後方から、乙の頭部を狙い、殺意をもってけん銃の弾丸を発射したところ、同弾丸は乙の肩を貫通した上、甲が認識していなかった通行人丙の腹部に命中し、乙と丙にそれぞれ傷害を負わせた。この場合、甲には、乙に対する強盗殺人未遂罪、丙に対する強盗殺人未遂罪がそれぞれ成立し、両罪は観念的競合となる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
甲は、かばんを強奪する目的で、「人」を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった「人」に対してその結果が発生した場合にも、強盗殺人罪の構成要件の範囲内といえ、その結果について強盗殺人罪の故意があるものといえる。そして、拳銃発射という実行行為を行ったものの結果が発生していないから、強盗殺人未遂罪が成立する。
また、乙に対する1発の拳銃発射という1個の行為によって、乙丙のそれぞれに傷害という2つの結果が発生しているから、観念的競合となる。
したがって、甲には、乙に対する強盗殺人未遂罪、丙に対する強盗殺人未遂罪がそれぞれ成立し、両罪は観念的競合となる。


全体の正答率 : 75%

(H24 共通 第7問 2)
甲は、乙に対し、Aを殺害するよう唆したところ、乙は、その旨決意し、夜道で待ち伏せした上、歩いてきた男をAだと思って包丁で刺し殺したが、実際には、その男はBであった。甲には殺人既遂罪の教唆犯が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
甲は、乙にA対する殺人を教唆しているところ、乙はAと誤信してBを殺害している。
また、甲は、乙に対して「人」の殺害を教唆している以上、構成要件の重なりが認められ、殺人罪の故意が認められる。
したがって、甲には、Bに対する殺人既遂罪の教唆犯が成立する。


全体の正答率 : 75%

(H24 共通 第7問 4)
甲は、駐車場に駐車中のA所有の自動車を見て、Aに対する腹いせに傷つけてやろうと思って石を投げたが、狙いがそれて、その隣に駐車中のB所有の自動車に石が当たってフロントガラスが割れた。甲には器物損壊罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
甲は、Aの車に対する器物損壊の意思で投石し、Bの車に対する器物損壊の結果を生じさせている。
これらは、「他人の物」という器物損壊罪の構成要件の範囲内で重なり合いが認められる。
したがって、甲には器物損壊罪が成立する。


全体の正答率 : 75%

(H25 予備 第7問 5)
甲は、Aを殺害しようと考え、Aに向けてけん銃を発射し、弾丸をAに命中させ、Aを死亡させたが、同弾丸は、Aの身体を貫通し、甲が認識していなかったBにも命中し、Bも死亡した。甲にはA及びBに対する殺人罪の故意が認められる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
甲は、Aに対する殺人の意図のもと、拳銃発射という実行行為を行い、A及びBを殺害している。
また、AとBに対する殺人は、「人を殺した」という殺人罪の構成要件の範囲内で重なり合いが認められる。
したがって、甲にはA及びBに対する殺人罪の故意が認められる。


全体の正答率 : 66.6%

(H29 司法 第3問 ア)
甲は、乙を殺害する目的で、乙を含む複数の者の飲用に供されているペットボトル内のお茶に致死量の劇薬を投入した。その結果、そのお茶を飲用した複数の者全員が死亡した。この場合、甲には、前記お茶を飲用して死亡した者の数に応じた殺人罪の故意が認められる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
甲は、乙に対する殺人の意図で複数人が飲用するボトルに劇薬を投入し、乙だけでなく、そのお茶を飲用した複数の者を殺害しているから、「人を殺した」という殺人罪の構成要件の範囲内で重なり合いが認められる。
したがって、甲には、お茶を飲用して死亡した者の数に応じた殺人罪の故意が認められる。


全体の正答率 : 0%

(R1 司法 第11問 5)
甲は、乙を殺害しようと考え、乙の背部を狙って拳銃の弾丸を発射したところ、同弾丸が乙ではなく、乙の隣にいた丙の腹部に当たり、丙を死亡させた。この場合、甲には、乙に対する殺人未遂罪と丙に対する重過失致死罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
甲は、乙に対する殺人の意図で拳銃発射という実行行為を行い、丙に被弾し殺害しているから、「人を殺した」という殺人罪の構成要件の範囲内で重なり合いが認められ、丙に対するものについても殺人罪の故意が認められる。
したがって、甲には、乙に対する殺人未遂罪と丙に対する殺人罪が成立する。


全体の正答率 : 66.6%

(R4 司法 第1問 3)
甲は、殺意をもってAに向けて拳銃を発射したところ、その弾丸がAを貫通し、その背後にいて甲がその存在を認識していなかったBにも命中し、その結果、Aが死亡し、Bが重傷を負った。この場合、甲には、Aに対する殺人罪が成立するが、Bに対する殺人未遂罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
故意の内容を構成要件の範囲内で抽象化する以上、故意の個数は問題にならないこととなる。
甲は、Aに対する殺人の意図でBに重傷を負わせており、「人を殺した」という殺人罪の構成要件の範囲内で重なり合いが認められるから、Bに対しても殺人罪の故意が認められ、Bに対する殺人未遂罪が成立する。
したがって、甲には、Aに対する殺人罪のほかに、Bに対する殺人未遂罪も成立する。

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教唆犯と具体的事実の錯誤 最三小判昭和25年7月11日

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概要
教唆犯の故意があるというためには、必ずしも犯人が認識した事実と、現実に発生した事実とが、具体的に一致することを要するものではなく、両者が犯罪の類型として規定している範囲において一致することをもって足りる。
判例
事案:住居侵入窃盜を教唆した場合において、被教唆者がこれと異る他の被害者に対して住居侵入強盜をしたという事案において、教唆者の罪責が問題となった。

判旨:「原判決によれば、被告人甲は乙に対して判示A方に侵入して金品を盗取することを使嗾し、以て窃盗を教唆したものであって、判示B商会に侵入して窃盗をすることを教唆したものでないことは正に所論の通りであり、しかも、右乙は、判示丙等三名と共謀して判示B商会に侵入して強盗をしたものである。しかし、犯罪の故意ありとなすには、必ずしも犯人が認識した事実と、現に発生した事実とが、具体的に一致(符合)することを要するものではなく、右両者が犯罪の類型(定型)として規定している範囲において一致(符合)することを以て足るものと解すべきものであるから、いやしくも右乙の判示住居侵人強盗の所為が、被告人甲の教唆に基いてなされたものと認められる限り、被告人甲は住居侵入窃盗の範囲において、右乙の強盗の所為について教唆犯としての責任を負うべきは当然であって、被告人甲の教唆行為において指示した犯罪の被害者と、本犯たる乙のなした犯罪の被害者とが異る一事を以て、直ちに被告人甲に判示乙の犯罪について何等の責任なきものと速断することを得ないものと言わなければならない。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(R5 司法 第1問 エ)
甲は、乙に対し、A方に侵入して金品を窃取するように唆したところ、乙は、犯行を決意し、A方に侵入しようとしたが、施錠を解錠できず、犯行を断念した。帰路において、乙は、B方に侵入し、Bから金品を強取した。甲の教唆行為と乙のB方における住居侵入及び強盗との間に因果関係が認められない場合であっても、甲に住居侵入罪及び窃盗罪の教唆犯が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭25.7.11)は、「犯罪の故意ありとなすには、必ずしも犯人が認識した事実と、現に発生した事実とが、具体的に一致(符合)することを要するものではなく、右両者が犯罪の類型(定型)として規定している範囲において一致(符合)することを以て足るものと解すべきものであるから、いやしくも右乙の判示住居侵人強盗の所為が、被告人甲の教唆に基いてなされたものと認められる限り、被告人Aは住居侵入窃盗の範囲において、右乙の強盗の所為について教唆犯としての責任を負う…。」として、教唆行為と実行した犯罪との因果関係が必要となることを示している。
甲の教唆行為と、乙のB方における住居侵入及び強盗との間には、因果関係が認められないから、教唆行為と実行した犯罪との因果関係は認められない。
したがって、甲に住居侵入罪及び窃盗罪の教唆犯は成立しない。


全体の正答率 : 0%

(R5 司法 第20問 イ)
【事 例】
甲は、高齢女性Aから同人名義のキャッシュカード(以下「カード」という。)を不正に入手するため、甲が警察官を装いAに電話をかけ、これからA方を訪れる警察官の確認を受けながらカードを封筒に入れ、同封筒をA方において保管する必要があるとうそを言い、警察官に成り済ました乙(25歳、男性)がA方を訪れ、隙を見て同封筒を別の封筒とすり替えて持ち去り、カードを丙に渡して甲に届けさせる計画(以下「本件計画」という。)を考え、乙に本件計画の実行を指示し、乙はこれを承諾した。某日午前9時頃、本件計画に基づき、甲がAに電話をかけて上記うそを言い、乙は、同日午前9時15分頃、A方を訪ね、Aにカードを封筒に入れるよう求めた。しかし、乙の態度を不審に思ったAが、乙に身分証の提示を求めたので、乙は、逮捕を免れるとともに本件計画どおりにカードを手に入れるため、Aを手拳で多数回殴り、恐怖で抵抗できないAからカードを奪って持ち去った。同日午前9時20分頃、乙は、甲に電話で、本件計画どおりカードを入手したと伝えた。同日午前9時30分頃、甲は、丙に電話をかけ、本件計画の内容を初めて説明し、乙からカードを受け取って甲に届けるよう依頼し、丙はこれを承諾した。丙は、同日午前11時頃、乙と合流し、カードを受け取って乙と別れ、自動車でA方から約50キロメートル離れた甲方に向かったが、同日午後0時30分頃、甲方付近で降車した際、制服警察官BからA方での事件とは関係なく職務質問を受けた。その際、丙は、Bを殴り、Bに全治2週間を要する打撲傷を負わせ、その隙に上記自動車で逃走し、同日午後1時頃、甲と合流して甲にカードを届けた。その後、丙の交際相手丁は、丙が上記一連の犯行を行い、警察から捜査されていることを認識しつつ、丙を丁の自宅にかくまった。

【記 述】
甲が乙のAに対する暴行・脅迫を認識も予見もしていなかった場合、乙がAからカードを奪取した行為について、甲に窃盗未遂罪の共同正犯が成立するにとどまる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭25.7.11)は、「犯罪の故意ありとなすには、必ずしも犯人が認識した事実と、現に発生した事実とが、具体的に一致(符合)することを要するものではなく、右両者が犯罪の類型(定型)として規定している範囲において一致(符合)することを以て足るものと解すべきものであるから、いやしくも右乙の判示住居侵人強盗の所為が、被告人甲の教唆に基いてなされたものと認められる限り、被告人Aは住居侵入窃盗の範囲において、右乙の強盗の所為について教唆犯としての責任を負う…。」としている。
構成要件が重なり合う限度で軽い共同正犯が成立することから、窃盗の共謀に基いて実行行為者が強盗に及んだ場合、これに加わらなかった共犯者は共謀の限度で窃盗罪の共同正犯が成立するにとどまる。
甲は、本件計画を考え、乙に本件計画の実行を指示し、乙はこれを承諾したことにより窃盗の共謀が成立し、乙はAからカードを奪って持ち去ったとあるから、甲が乙のAに対する暴行・脅迫を認識も予見もしていなかったとしても、窃盗既遂罪の共同正犯が成立することになる。
したがって、窃盗未遂罪の共同正犯は成立しない。

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