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正当防衛 - 解答モード
第一行為と第二行為による殺人 大判大正6年9月10日
概要
判例
判旨:「殺意ヲ以テ2箇ノ異ナレル殺害方法ヲ他人ニ施シタル處第1ノ方法ヲ以テシテハ殺害ノ結果ヲ惹起スルコト絶對ニ不能ニシテ單タ他人ヲ傷害シタルニ止マリ第2ノ方法ヲ用ヰ始メテ殺害ノ目的ヲ達シタルトキハ右2箇ノ行爲カ孰レモ同一ノ殺意ニ出テタリトスルモ第1ノ方法ニ依ル行爲カ殺人罪トシテ純然タル不能犯ニ屬スル場合ニ於テハ殺人罪ニ問擬スヘカラサルハ勿論ニシテ若シ又該行爲ノ結果カ傷害罪ニ該當スルニ於テハ殺人罪トシテハ不能犯ナルモ傷害罪ヲ以テ之ヲ處斷スヘク第2ノ方法ニ依ル殺人罪ノ既遂ト連續犯ノ關係ヲ有スル殺人罪ノ未遂ヲ以テ論スヘキニ非ス」
過去問・解説
(H28 司法 第13問 イ)
判例の立場に従って検討し、殺人罪が既遂になる場合には1を、未遂にとどまる場合には2を、既遂にも未遂にもならない場合には3を選びなさい。
甲は、Aを殺害しようと考え、Bから致死性の毒薬であると告げられて小瓶入りの液体を購入し、コーヒーに同液体を入れて、これをAに飲ませたものの、同液体は水であったため、Aは死亡しなかった。
(正答)3
(解説)
判例(大判大6.9.10)は、本肢と同種の事案において、「第1ノ方法ニ依ル行爲カ殺人罪トシテ純然タル不能犯ニ屬スル場合ニ於テハ殺人罪ニ問擬スヘカラサル」とした上で、「第2ノ方法ニ依ル殺人罪ノ既遂ト連續犯ノ關係ヲ有スル殺人罪ノ未遂ヲ以テ論スヘキニ非ス」として、第1行為によって結果を発生させることが絶対に不能な場合には、続く第2行為との連続性が認められることをもって第1行為に殺人未遂罪を成立させることはできないことを示している。
水を飲ませることにより人を殺すことができない以上、コーヒーに水を混ぜた行為は殺人の実行行為に当たらない。
したがって、甲の行為は不能犯であり、殺人罪は既遂にも未遂にもならない。
正当な行為に対する正当防衛の成否 大判昭和8年9月27日
概要
判例
判旨:「刑法第三十六條ニ所謂不正トハ違法ナルコトヲ指斥セル法意ナルカ故ニ被告人ノ甲ニ加ヘタル打撲挫傷ハ正當防衞ノ觀念ヲ以テ論スル限リニ非ス」
過去問・解説
(H20 司法 第3問 ア)
正当防衛は、不正の侵害に対して成立するから、正当防衛行為に対する正当防衛は成立し得ない。
(H20 司法 第3問 エ)
正当防衛は、不正の侵害に対して成立するから、加害者の過失行為に対しては正当防衛は成立し得ない。
(R3 共通 第17問 5)
刑法第36条第1項における「不正の侵害」というには、可罰的な行為であることを要しない。
喧嘩と正当防衛 最大判昭和23年7月7日
概要
判例
判旨:「互に暴行し合ういわゆる喧嘩は、闘争者双方が攻撃及び防禦を繰り返す一団の連続的闘争行為であるから、闘争の或る瞬間においては、闘争者の一方がもっぱら防禦に終始し、正当防衛を行う観を呈することがあっても、闘争の全般からみては、刑法第36条の正当防衛の観念を容れる余地がない場合がある。本件について、原判決の確定した事実によれば、被告人は井戸三郎と口論の末、互に殴り合となり、被告人はたちまち井戸のために殴られ乍ら後方へ押されて鉄条網に仰向けに押しつけられた上睾丸等を蹴られたので、憤激の余り所持していた小刀で井戸に斬りつけ創傷を負わせた結果、同人を左上膊動脉切断に因る失血のため、死亡するに至らしめたというのであるから、被告人の行為は全般の情況から見て、前記の場合に当るものと言わなければならない。従って刑法第36条を適用すべき余地はない。」
過去問・解説
(H24 予備 第2問 5)
けんか闘争において正当防衛が成立するかどうかを判断するに当たっては、闘争行為中の瞬間的な部分の攻防の態様のみに着眼するのではなく、けんか闘争を全般的に観察することが必要である。
防衛行為の対象となる「法益」の意義 最一小判昭和24年8月18日
概要
判例
判旨:「刑法37条にいわゆる『現在の危難』についても、刑法36条の『急迫の侵害』と同様のことが言い得るわけである。ここにおける防衛行為は個人的法益の防衛行為ではなく、国民の安全利福の防衛に関するものである。かかる公益ないし国家的法益の防衛が、正当防衛として認められ得るか否かについては、これを否定する学説見解もないではないが、公共の福祉を最高の指導原理とする新憲法の理念から言っても、公共の福祉をも含めてすべての法益は防衛させられるべきであるとする刑法の理念から言っても、国家的、国民的、公共的法益についても正当防衛の許さるべき場合が存することを認めるべきである。だがしかし、本来国家的、公共的法益を保全防衛することは、国家又は公共団体の公的機関の本来の任務に属する事柄であって、これをた易く自由に私人又は私的団体の行動に委すことは却って秩序を乱し事態を悪化させる危険を伴う虞がある。それ故、かかる公益のための正当防衛等は、国家公共の機関の有効な公的活動を期待し得ない極めて緊迫した場合においてのみ例外的に許容さるべきものと解するのが相当とする。刑法36条及び37条にいわゆる『已むことを得ざるに出でたる行為』という観点から眺めるならば、一層容易にかつ明白に同じ結論に達することが理解されるであろう。防衛行為が已むことを得ないとは、当該具体的事態の下において当時の社会通念が防衛行為として当然性、妥当性を認め得るものを言うのである。そして、殊に前述のごとく国家的、公共的法益に対する侵害等を私人が防衛する場合に、已むことを得ざるものとして当然許容さるべき範囲は、整備せる現代国家の機構組織の下においては、必然的に比較的極めて狭少な限局されたものたるべきことは国家理論の帰結として何人も承認しなければならぬところである。」
過去問・解説
(H24 予備 第2問 3)
刑法第36条にいう「権利」は個人的法益を指し、国家的法益や社会的法益は含まれない。
(H27 予備 第3問 ア)
国家的法益に対する現在の危難を避けるためにした行為については、緊急避難が成立することはない。
(H28 共通 第9問 1)
国家的法益を防衛するための正当防衛が成立する余地はない。
(R3 共通 第17問 4)
刑法第36条第1項にいう「権利」は、個人的法益に限られ、国家的・社会的法益は、これに含まれない。
(R5 司法 第12問 ア)
緊急避難は、自己又は他人の生命、身体、自由又は財産という個人的法益に対する現在の危難を避けるためにした行為に成立するものであるから、国家的法益に対する危難を避けるためにした行為に緊急避難が成立することはない。
喧嘩と正当防衛 最三小判昭和32年1月22日
概要
判例
判旨:「いわゆる喧嘩は、闘争者双方が攻撃及び防禦を繰り返す一団の連続的闘争行為であるから、闘争のある瞬間においては、闘争者の一方がもっぱら防禦に終始し、正当防衛を行う観を呈することがあっても、闘争の全般からみては、刑法36条の正当防衛の観念を容れる余地がない場合があるというのであるから、法律判断として、まず喧嘩闘争はこれを全般的に観察することを要し、闘争行為中の瞬間的な部分の攻防の態様によって事を判断してはならないということと、喧嘩闘争においてもなお正当防衛が成立する場合があり得るという両面を含むものと解することができる。」
過去問・解説
(H22 司法 第4問 4)
いわゆるけんか闘争状態にある者が、相手方に対して加害行為をした場合、正当防衛が成立する余地はない。
自招侵害に対する正当防衛 最二小決平成20年5月20日
概要
判例
判旨:「被告人は、Aから攻撃されるに先立ち、Aに対して暴行を加えているのであって、Aの攻撃は、被告人の暴行に触発された、その直後における近接した場所での一連、一体の事態ということができ、被告人は不正の行為により自ら侵害を招いたものといえるから、Aの攻撃が被告人の前記暴行の程度を大きく超えるものでないなどの本件の事実関係の下においては、被告人の本件傷害行為は、被告人において何らかの反撃行為に出ることが正当とされる状況における行為とはいえないというべきである。そうすると、正当防衛の成立を否定した原判断は、結論において正当である。」
過去問・解説
(H22 司法 第4問 3)
相手方を挑発して相手方による侵害を自ら招いた者が、それに対し反撃した場合、正当防衛が成立する余地はない。
(正答)✕
(解説)
判例(最決平20.5.20)は、「Aの攻撃は、被告人の暴行に触発された、その直後における近接した場所での一連、一体の事態ということができ、被告人は不正の行為により自ら侵害を招いたものといえるから、Aの攻撃が被告人の前記暴行の程度を大きく超えるものでないなどの本件の事実関係の下においては、被告人の本件傷害行為は、被告人において何らかの反撃行為に出ることが正当とされる状況における行為とはいえないというべきである。」として、自招侵害に対する正当防衛の成立を否定している。
もっとも、この判例では、具体的な事実関係に着目して正当防衛の成立が否定されているにとどまるから、相手方を挑発して相手方による侵害を自ら招いた者が、それに対し反撃した場合にも、正当防衛が成立する余地はある。
(H25 共通 第13問 3)
相手からの侵害が、それに先立つ自らの攻撃によって触発されたものである場合には、不正の行為により自ら侵害を招いたことになるから、相手からの侵害が急迫性を欠く結果、これに対する反撃行為に正当防衛が認められることはない。
(正答)✕
(解説)
判例(最決平20.5.20)は、自招侵害の事案において、「Aの攻撃は、被告人の暴行に触発された、その直後における近接した場所での一連、一体の事態ということができ、被告人は不正の行為により自ら侵害を招いたものといえるから、Aの攻撃が被告人の前記暴行の程度を大きく超えるものでないなどの本件の事実関係の下においては、被告人の本件傷害行為は、被告人において何らかの反撃行為に出ることが正当とされる状況における行為とはいえないというべきである。」として、具体的な事実関係に着目した上で、「急迫不正の侵害」とは別の「被告人において何らかの反撃行為に出ることが正当とされる状況」という観点から、正当防衛の成立を否定している。
本肢は、自招侵害について、一律に正当防衛の成立が否定されるとしている点、及び侵害の急迫性を欠くことを理由にしている点において、誤っている。
(R3 共通 第20問 ア)
乙が甲の胸部を拳で強打した行為については、甲からの侵害が、乙が甲に因縁を付けたことにより招かれたものである以上、正当防衛又は過剰防衛が成立することはない。
(正答)✕
(解説)
判例(最決平20.5.20)は、「Aの攻撃は、被告人の暴行に触発された、その直後における近接した場所での一連、一体の事態ということができ、被告人は不正の行為により自ら侵害を招いたものといえるから、Aの攻撃が被告人の前記暴行の程度を大きく超えるものでないなどの本件の事実関係の下においては、被告人の本件傷害行為は、被告人において何らかの反撃行為に出ることが正当とされる状況における行為とはいえないというべきである。」として、自招侵害に対する正当防衛の成立を否定している。
もっとも、この判例では、具体的な事実関係に着目して正当防衛の成立が否定されているにとどまるから、相手方を挑発して相手方による侵害を自ら招いた者が、それに対し反撃した場合にも、正当防衛が成立する余地はある。
したがって、乙が甲の胸部を拳で強打した行為についても、正当防衛又は過剰防衛が成立し得る。
財産権への侵害に対する正当防衛 最一小判平成21年7月16日
概要
判例
判旨:「Bらが立入禁止等と記載した本件看板を本件建物に設置することは、被告人らの本件建物に対する共有持分権、賃借権等を侵害するとともに、F宅建の業務を妨害し、被告人らの名誉を害するものといわなければならない。そして、Bの依頼を受けたCらは、本件建物のすぐ前において本件看板を取り付ける作業を開始し、被告人がこれを取り上げて踏み付けた後も、Bがこれを持ち上げ、付けてくれと言ってCに渡そうとしていたのであるから、本件暴行の際、Bらはなおも本件看板を本件建物に取り付けようとしていたものと認められ、その行為は、被告人らの上記権利や業務、名誉に対する急迫不正の侵害に当たるというべきである。そして、被告人は、BがCに対して本件看板を渡そうとしたのに対し、これを阻止しようとして本件暴行に及び、Bを本件建物から遠ざける方向に押したのであるから、Bらによる上記侵害から被告人らの利等を防衛するために本件暴行を行ったものと認められる。さらに、Bらは、本件建物のガラスを割ったり作業員を威圧したりすることによって被告人らが請け負わせた本件建物の原状回復等の工事を中止に追い込んだ上、本件建物への第三者の出入りを妨害し、同(3)の即時抗告棄却決定の後においても、立入禁止等と記載した看板を本件建物に設置するなど、本件以前から継続的に被告人らの本件建物に対する権利等を実力で侵害する行為を繰り返しており、本件における上記不正の侵害はその一環をなすものである。一方、被告人とBとの間には体格差等があることや、Bが後退して転倒したのは被告人の力のみによるものとは認め難いことなどからすれば、本件暴行の程度は軽微なものであったというべきである。そうすると、本件暴行は、被告人らの主として財産的権利を防衛するためにBの身体の安全を侵害したものであることを考慮しても、いまだBらによる上記侵害に対する防衛手段としての相当性の範囲を超えたものということはできない。以上によれば、本件暴行については、刑法36条1項の正当防衛として違法性が阻却される。」
過去問・解説
(H25 共通 第13問 4)
刑法第36条にいう「権利」には、生命、身体、自由のみならず名誉や財産といった個人的法益が含まれるので、自己の財産権への侵害に対して相手の身体の安全を侵害する反撃行為に及んでも正当防衛となり得る。
(R1 共通 第15問 5)
財産的権利を防衛するために相手方の身体に暴行を加えて傷害を負わせた場合、その暴行行為については、正当防衛が成立する余地はない。
(R5 司法 第18問 1)
刑法第36条第1項における「権利」には、個人の生命、身体、自由のみならず、財産も含まれる。
刑法36、37条の「急迫の侵害」と「現在の危難」の意義 最一小判昭和24年8月18日
概要
②37条にいう「現在の危難」についても、ほぼ①と同様である。
判例
判旨:「刑法36条にいわゆる急追の侵害における『急迫』とは、法益の侵害が間近に押し迫ったことすなわち法益侵害の危険が緊迫したことを意味するのであって、被害の現在性を意味するものではない。けだし、被害の緊迫した危険にある者は、加害者が現に被害を与えるに至るまで、正当防衛することを待たねばならぬ道理はないからである。また刑法37条にいわゆる『現在の危難』についても、ほぼこれと同様のことが言い得るわけである。」
過去問・解説
(H24 予備 第2問 1)
刑法第36条にいう「急迫」とは、法益が侵害される危険が切迫していることをいい、被害の現在性を意味するものではない。
(H29 司法 第5問 1)
正当防衛は、法益の侵害が現に存在している場合のほか、法益の侵害が間近に差し迫っている場合にも成立する余地があるが、緊急避難は、危難が間近に差し迫っている場合に成立する余地はない。
(R5 司法 第12問 ウ)
緊急避難における現在の危難は、危難が現に存在している場合のみならず、間近に押し迫っている場合も含む。
刑法36条にいう「急迫」の意義 最三小判昭和46年11月16日
概要
②36条の防衛行為は、防衛の意思をもってなされることが必要であるが、相手の加害行為に対し憤激または逆上して反撃を加えたからといって、ただちに防衛の意思を欠くものと解すべきではない。
判例
判旨:①「刑法36条にいう『急迫』とは、法益の侵害が現に存在しているか、または間近に押し迫っていることを意味し、その侵害があらかじめ予期されていたものであるとしても、そのことからただちに急迫性を失うものと解すべきではない。」
②「刑法36条の防衛行為は、防衛の意思をもってなされることが必要であるが、相手の加害行為に対し憤激または逆上して反撃を加えたからといって、ただちに防衛の意思を欠くものと解すべきではない。…かねてから被告人がVに対し憎悪の念をもち攻撃を受けたのに乗じ積極的な加害行為に出たなどの特別な事情が認められないかぎり、被告人の反撃行為は防衛の意思をもってなされたものと認めるのが相当である。」
過去問・解説
(H23 予備 第1問 1)
甲は、乙が甲所有の自動車を盗むのを目撃し、これを追跡したものの見失い、その翌日、窃取された場所から約2キロメートル離れた路上で、乙がその自動車から降りて立ち去ったのを認めた。甲は、乙がすぐに戻って来る様子であったので、直ちにその自動車を運転し、自宅に戻った。この場合、甲には正当防衛が成立する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭46.11.16)は、「刑法36条にいう『急迫』とは、法益の侵害が現に存在しているか、または間近に押し迫っていることを意味し、その侵害があらかじめ予期されていたものであるとしても、そのことからただちに急迫性を失うものと解すべきではない。」としている。
窃盗は状態犯であり、盗んだ時点で犯罪が成立し、同時に終了するところ、甲は、翌日、窃取された場所から約2キロメートル離れた路上で発見したにすぎず、自転車を取り返した段階では既に窃取行為は終了しているから、法益の侵害が現に存在しているか、または間近に押し迫っているとはいえず、急迫性の要件を満たさない。
したがって、甲には正当防衛が成立しない。
(H23 予備 第1問 3)
甲は、乙ら数名の男によって監禁されたが、監禁されて2週間後、たまたま見張りが乙1人になったので、監禁場所から脱出するため、乙の顔面を1回殴打して乙がひるんだ隙にそこから逃げた。この場合、甲には正当防衛が成立する。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭46.11.16)は、「刑法36条にいう『急迫』とは、法益の侵害が現に存在しているか、または間近に押し迫っていることを意味し、その侵害があらかじめ予期されていたものであるとしても、そのことからただちに急迫性を失うものと解すべきではない。」としている。
監禁罪は、継続犯であるから、監禁行為が継続している間は、急迫不正の侵害が継続しているといえるところ、たまたま見張りが乙1人になった時点においても、法益の侵害が現に存在しているといえる。
また、甲は乙の顔面を1回殴打したに過ぎないから防衛行為の相当性も認められ、「やむを得ずにした行為」に当たる。
したがって、甲には正当防衛が成立する。
(H25 共通 第13問 2)
憎悪や怒りの念を抱いて侵害者に対する反撃行為に及んだ場合には、防衛の意思を欠く結果、防衛のための行為と認められることはない。
(R3 司法 第17問 1)
刑法第36条第1項における「急迫」というには、法益の侵害が現に存在していることを要する。
36条における侵害の急迫性 最一小決昭和52年7月21日
概要
判例
判旨:「刑法36条が正当防衛について侵害の急迫性を要件としているのは、予期された侵害を避けるべき義務を課する趣旨ではないから、当然又はほとんど確実に侵害が予期されたとしても、そのことからただちに侵害の急迫性が失われるわけではないと解するのが相当である。しかし、同条が侵害の急迫性を要件としている趣旨から考えて、単に予期された侵害を避けなかったというにとどまらず、その機会を利用し積極的に相手に対して加害行為をする意思で侵害に臨んだときは、もはや侵害の急迫性の要件を充たさないものと解するのが相当である。そうして、原判決によると、被告人は、相手の攻撃を当然に予想しながら、単なる防衛の意図ではなく、積極的攻撃、闘争、加害の意図をもって臨んだというのであるから、これを前提とする限り、侵害の急迫性の要件を充たさないものというべきであって、その旨の原判断は、結論において正当である。」
過去問・解説
(H20 司法 第3問 イ)
正当防衛は、急迫の侵害に対して成立するから、反撃行為を行った者が侵害を予期していた場合には正当防衛は成立し得ない。
(H22 司法 第4問 2)
相手方による侵害を予期していた者が、それを避けずにその侵害に臨み、予期された侵害に対し反撃した場合、正当防衛が成立する余地はない。
(H25 共通 第13問 1)
正当防衛について侵害の急迫性を要件としているのは、予期された侵害を避けるべき義務を課する趣旨ではないが、単に予期された侵害を避けなかったというにとどまらず、その機会を利用し積極的に相手に対して加害行為をする意思で侵害に臨んだときは、侵害の急迫性の要件を欠く結果、そのような侵害に対する反撃行為に正当防衛が認められることはない。
(R1 共通 第15問 1)
当然又はほとんど確実に侵害が予期された場合において、単に予期された侵害を避けなかったにとどまらず、その機会を利用して積極的に相手方に対し加害行為をする意思で暴行に及んだときは、その暴行行為については、正当防衛が成立する余地はない。
侵害の急迫性 最決平成29年4月26日
概要
判例
判旨:「刑法36条は、急迫不正の侵害という緊急状況の下で公的機関による法的保護を求めることが期待できないときに、侵害を排除するための私人による対抗行為を例外的に許容したものである。したがって、行為者が侵害を予期した上で対抗行為に及んだ場合、侵害の急迫性の要件については、侵害を予期していたことから、直ちにこれが失われると解すべきではなく、対抗行為に先行する事情を含めた行為全般の状況に照らして検討すべきである。具体的には、事案に応じ、行為者と相手方との従前の関係、予期された侵害の内容、侵害の予期の程度、侵害回避の容易性、侵害場所に出向く必要性、侵害場所にとどまる相当性、対抗行為の準備の状況(特に、凶器の準備の有無や準備した凶器の性状等)、実際の侵害行為の内容と予期された侵害との異同、行為者が侵害に臨んだ状況及びその際の意思内容等を考慮し、行為者がその機会を利用し積極的に相手方に対して加害行為をする意思で侵害に臨んだときなど、前記のような刑法36条の趣旨に照らし許容されるものとはいえない場合には、侵害の急迫性の要件を充たさないものというべきである。」
過去問・解説
(R3 共通 第20問 エ)
甲が果物ナイフで乙の腹部を突き刺した行為については、乙から襲撃を受けることを予期し、凶器ともいえるナイフを準備している以上、その予期の程度にかかわらず、侵害の急迫性を欠くものといえ、正当防衛又は過剰防衛は成立しない。
(正答)✕
(解説)
判例(最決平29.4.26)は、「侵害の急迫性の要件については、対抗行為に先行する事情を含めた行為全般の状況に照らして検討すべきであり、事案に応じ、行為者と相手方との従前の関係、予期された侵害の内容、侵害の予期の程度、侵害回避の容易性、侵害場所に出向く必要性、侵害場所にとどまる相当性、対抗行為の準備の状況(特に、凶器の準備の有無や準備した凶器の性状等)、実際の侵害行為の内容と予期された侵害との異同、行為者が侵害に臨んだ状況及びその際の意思内容等を考慮し、緊急状況の下で公的機関による法的保護を求めることが期待できないときに私人による対抗行為を許容した刑法36条の趣旨に照らし許容されるものとはいえない場合には、侵害の急迫性の要件を充たさない。」としており、単に侵害行為をを予期していたことのみをもって正当防衛の成立が認められなくなるわけではない。
したがって、甲については、「対抗行為に先行する事情を含めた行為全般の状況」によっては、侵害の急迫性が認められ、正当防衛又は過剰防衛が成立し得る。
正当防衛における防衛の意思 最三小判昭和50年11月28日
概要
判例
判旨:「急迫不正の侵害に対し自己又は他人の権利を防衛するためにした行為と認められる限り、その行為は、同時に侵害者に対する攻撃的な意思に出たものであっても、正当防衛のためにした行為にあたると判断するのが、相当である。すなわち、防衛に名を借りて侵害者に対し積極的に攻撃を加える行為は、防衛の意思を欠く結果、正当防衛のための行為と認めることはできないが、防衛の意思と攻撃の意思とが併存している場合の行為は、防衛の意思を欠くものではないので、これを正当防衛のための行為と評価することができるからである。」
防衛手段として相当性 最二小判平成元年11月13日
概要
判例
判旨:「被告人がAに対し本件菜切包丁を示した行為は、今にも身体に対し危害を加えようとする言動をもって被告人の目前に迫ってきたAからの急迫不正の侵害に対し、自己の身体を防衛する意思に出たものとみるのが相当であり、この点の原判断は正当である。しかし、原判決が、素手で殴打しあるいは足蹴りの動作を示していたにすぎないAに対し、被告人が殺傷能力のある菜切包丁を構えて脅迫したのは、防衛手段としての相当性の範囲を逸脱したものであると判断したのは、刑法36条1項の『巳ムコトヲ得サルニ出テタル行為』の解釈適用を誤ったものといわざるを得ない。すなわち、右の認定事実によれば、被告人は、年齢も若く体力にも優れたAから、『お前、殴られたいのか。』と言って手拳を前に突き出し、足を蹴り上げる動作を示されながら近づかれ、さらに後ずさりするのを追いかけられて目前に迫られたため、その接近を防ぎ、同人からの危害を免れるため、やむなく本件菜切包丁を手に取ったうえ腰のあたりに構え、『切られたいんか。』などと言ったというものであって、Aからの危害を避けるための防御的な行動に終始していたものであるから、その行為をもって防衛手段としての相当性の範囲を超えたものということはできない。そうすると、被告人の第1の所為は刑法36条1項の正当防衛として違法性が阻却される。」
過去問・解説
(R1 共通 第15問 3)
手拳で殴る素振りをしながら「お前殴られたいのか。」と言って近付いてきた相手方を、殺傷能力のある刃物を構えて脅した場合、その脅迫行為については、正当防衛が成立する余地はない。
「やむを得ずにした行為」の意義 最大判昭和24年5月18日
概要
判例
判旨:「緊急避難とは『自己又ハ他人ノ生命身体自由若クハ財産ニ対スル現在ノ危難ヲ避クル為メ已ムコトヲ得ザルニ出デタル行為』をいうのであり、右所謂『現在ノ危難』とは現に危難の切迫していることを意味し、又『已ムコトヲ得ザルニ出デタル』というのは当該避難行為をする以外には他に方法がなく、かかる行動に出たことが条理上肯定し得る場合を意味するのである。又自救行為とは一定の権利を有するものが、これを保全するため官憲の手を待つに遑なく自ら直ちに必要の限度において適当なる行為をすること、例えば盗犯の現場において被害者が賍物を取還すが如きをいうのである。」
過去問・解説
(H27 予備 第3問 ウ)
「やむを得ずにした行為」とは、その避難行為をする以外には現在の危難を避けるための他の方法がなく、その避難行為に出たことが条理上肯定できる場合をいう。
(R5 共通 第12問 オ)
緊急避難におけるやむを得ずにした行為とは、正当防衛におけるのと同様に、手段として必要最小限度のものであること、すなわち相当性を有するものであれば足りる。
(正答)✕
(解説)
緊急避難について、判例(最大判昭24.5.18)は、「『已ムコトヲ得ザルニ出デタル』というのは当該避難行為をする以外には他に方法がなく、かかる行動に出たことが条理上肯定し得る場合を意味するのである。」としている。
他方、正当防衛について、その後の判例(最判昭44.12.4)は、「刑法36条1項にいう『已ムコトヲ得サルニ出テタル行為』とは、急迫不正の侵害に対する反撃行為が、自己または他人の権利を防衛する手段として必要最小限度のものであること、すなわち反撃行為が侵害に対する防衛手段として相当性を有するものであることを意味する…。」としている。
したがって、緊急避難におけるやむを得ずした行為は、正当防衛のやむを得ずした行為とは異なり、当該避難行為をする以外には他に方法がなく、かかる行動に出たことが条理上肯定し得ることを意味する。
刑法36条1項の「已ムコトヲ得サルニ出テタル行為」の意義 最一小判昭和44年12月4日
概要
判例
判旨:「刑法36条1項にいう『已ムコトヲ得サルニ出テタル行為』とは、急迫不正の侵害に対する反撃行為が、自己または他人の権利を防衛する手段として必要最小限度のものであること、すなわち反撃行為が侵害に対する防衛手段として相当性を有するものであることを意味するのであって、反撃行為が右の限度を超えず、したがって侵害に対する防衛手段として相当性を有する以上、その反撃行為により生じた結果がたまたま侵害されようとした法益より大であっても、その反撃行為が正当防衛行為でなくなるものではないと解すべきである。…たまたま生じた右傷害の結果にとらわれ、たやすく被告人の本件行為をもって、そのよって生じた傷害の結果の大きさにかんがみ防衛の程度を超えたいわゆる過剰防衛であるとした原判決は、法令の解釈適用をあやまったものである。」
過去問・解説
(H20 司法 第3問 ウ)
やむを得ずにした行為として正当防衛が成立するには、防衛行為が侵害に対する防衛手段として相当性を有するものであることを要するから、防衛行為によって生じた害が避けようとした害の程度を超えた場合には正当防衛は成立し得ない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭44.12.4)は、「『已ムコトヲ得サルニ出テタル行為』とは、急迫不正の侵害に対する反撃行為が、自己または他人の権利を防衛する手段として必要最小限度のものであること、すなわち反撃行為が侵害に対する防衛手段として相当性を有するものであることを意味するのであって、反撃行為が右の限度を超えず、したがって侵害に対する防衛手段として相当性を有する以上、その反撃行為により生じた結果がたまたま侵害されようとした法益より大であっても、その反撃行為が正当防衛行為でなくなるものではないと解すべき…。」としている。
したがって、行為の相当性であり、結果の相当性ではないため、防衛行為によって生じた害が避けようとした害の程度を超えた場合であっても、正当防衛が認められることがある。
(H22 司法 第4問 オ)
相手方による侵害に対し反撃した者が、その侵害から予想された被害よりも大きい被害を相手方に与えた場合、正当防衛が成立する余地はない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭44.12.4)は、「『已ムコトヲ得サルニ出テタル行為』とは、急迫不正の侵害に対する反撃行為が、自己または他人の権利を防衛する手段として必要最小限度のものであること、すなわち反撃行為が侵害に対する防衛手段として相当性を有するものであることを意味するのであって、反撃行為が右の限度を超えず、したがって侵害に対する防衛手段として相当性を有する以上、その反撃行為により生じた結果がたまたま侵害されようとした法益より大であっても、その反撃行為が正当防衛行為でなくなるものではないと解すべき…。」としている。
したがって、予想された被害よりも大きい被害を与えたとしても、行為の相当性があれば正当防衛として認められることがある。
(H23 予備 第1問 4)
甲は、深夜、路上で、見知らぬ乙から、ナイフを胸元に突き付けられ現金を要求されたので、ナイフを避けるために乙の胸付近を手で押し、走って逃げ出した。甲の行為により、乙は転倒して後頭部を路面に打ち付け、全治約1か月間を要する頭部打撲の傷害を負った。この場合、甲には正当防衛は成立しない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭44.12.4)は、「『已ムコトヲ得サルニ出テタル行為』とは、急迫不正の侵害に対する反撃行為が、自己または他人の権利を防衛する手段として必要最小限度のものであること、すなわち反撃行為が侵害に対する防衛手段として相当性を有するものであることを意味するのであって、反撃行為が右の限度を超えず、したがって侵害に対する防衛手段として相当性を有する以上、その反撃行為により生じた結果がたまたま侵害されようとした法益より大であっても、その反撃行為が正当防衛行為でなくなるものではないと解すべき…。」としている。
甲は、乙によるナイフを人体の枢要部たる胸元に突き付けるという危険な行為に対し、乙の胸付近を手で押したにすぎず、結果として乙は転倒して後頭部を路面に打ち付け、全治約1か月間を要する頭部打撲の傷害を負ったとしても、ナイフを避けるための行為の相当性が認められ、甲の防衛行為は、「やむを得ずにした行為」に当たる。
したがって、正当防衛が成立する。
(H25 司法 第3問 5)
正当防衛における「やむを得ずにした」とは、急迫不正の侵害に対する反撃行為が、自己又は他人の権利を防衛する手段として必要最小限度のものであること、すなわち反撃行為が侵害に対する防衛手段として相当性を有するものであることを意味し、反撃行為が防衛手段として相当性を有する以上、その反撃行為により生じた結果がたまたま侵害されようとした法益より大であっても、その反撃行為が正当防衛でなくなるものではない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭44.12.4)は、「『已ムコトヲ得サルニ出テタル行為』とは、急迫不正の侵害に対する反撃行為が、自己または他人の権利を防衛する手段として必要最小限度のものであること、すなわち反撃行為が侵害に対する防衛手段として相当性を有するものであることを意味するのであって、反撃行為が右の限度を超えず、したがって侵害に対する防衛手段として相当性を有する以上、その反撃行為により生じた結果がたまたま侵害されようとした法益より大であっても、その反撃行為が正当防衛行為でなくなるものではないと解すべき…。」としている。
したがって、反撃行為により生じた結果がたまたま侵害されようとした法益より大であっても、行為の相当性があれば正当防衛として認められる。
(H29 司法 第5問 2)
正当防衛が成立するためには、防衛行為が侵害に対する防衛手段として相当性を有するものであることを要するから、防衛行為によって生じた害が避けようとした害の程度を超えた場合に正当防衛が成立する余地はない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭44.12.4)は、「『已ムコトヲ得サルニ出テタル行為』とは、急迫不正の侵害に対する反撃行為が、自己または他人の権利を防衛する手段として必要最小限度のものであること、すなわち反撃行為が侵害に対する防衛手段として相当性を有するものであることを意味するのであって、反撃行為が右の限度を超えず、したがって侵害に対する防衛手段として相当性を有する以上、その反撃行為により生じた結果がたまたま侵害されようとした法益より大であっても、その反撃行為が正当防衛行為でなくなるものではないと解すべき…。」としている。
したがって、反撃行為により生じた結果がたまたま侵害されようとした法益より大であっても、行為の相当性があれば正当防衛として認められることがある。
(R3 共通 第17問 2)
刑法第36条第1項における「やむを得ずにした行為」というには、反撃行為が権利を防衛する手段として必要最小限度のものであること、すなわち侵害に対する防衛手段として相当性を有するものであることを要する。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭44.12.4)は、「『已ムコトヲ得サルニ出テタル行為』とは、急迫不正の侵害に対する反撃行為が、自己または他人の権利を防衛する手段として必要最小限度のものであること、すなわち反撃行為が侵害に対する防衛手段として相当性を有するものであることを意味するのであって、反撃行為が右の限度を超えず、したがって侵害に対する防衛手段として相当性を有する以上、その反撃行為により生じた結果がたまたま侵害されようとした法益より大であっても、その反撃行為が正当防衛行為でなくなるものではないと解すべき…。」としている。
したがって、侵害に対する防衛手段として相当性を有するものであることを要する。
誤想過剰防衛 最一小判昭和62年3月26日
概要
判例
判旨:「本件回し蹴り行為は、被告人が誤信したBによる急迫不正の侵害に対する防衛手段として相当性を逸脱していることが明らかであるとし、被告人の所為について傷害致死罪が成立し、いわゆる誤想過剰防衛に当たるとして刑法36条2項により刑を減軽した原判断は、正当である。」
過去問・解説
(H20 司法 第7問 イ)
甲は、男性の乙が、酩酊して暴れ回る女性の丙を取り押さえているのを目撃し、乙が丙に対し無理矢理わいせつ行為に及ぼうとしているものと誤信し、丙を助けるため、乙の腹部をゴルフクラブで数回強く殴打するなどの暴行を加えて重傷を負わせた。甲の暴行の程度が、甲が認識した急迫不正の侵害に対する防衛行為としての相当性を超えていた場合、甲には傷害罪は成立しない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭62.3.26)は、誤想過剰防衛の事案において、「回し蹴り行為は、被告人が誤信したBによる急迫不正の侵害に対する防衛手段として相当性を逸脱していることが明らかであるとし、被告人の所為について傷害致死罪が成立し、いわゆる誤想過剰防衛に当たるとして刑法36条2項により刑を減軽した原判断は、正当である。」としている。
甲は、乙が丙に対し無理矢理わいせつ行為に及ぼうとしているものと誤信し、乙の腹部をゴルフクラブで数回強く殴打するなどの暴行を加えて重傷を負わせており、誤想防衛の事案に当たる。
したがって、甲が認識した急迫不正の侵害に対する防衛行為としての相当性を超えていた場合、誤想過剰防衛として、傷害罪が成立する。
(R5 司法 第1問 ウ)
甲は、男性Aが、酩酊して暴れ回る女性Bを介抱するために取り押さえているのを見て、AがBに対し無理矢理わいせつ行為に及ぼうとしていると誤信し、Bを助けるため、自己の暴行の内容を認識しつつAに暴行を加え、傷害を負わせた。甲の暴行の程度が、甲が認識した急迫不正の侵害に対する防衛手段としての相当性を超えていた場合であっても、甲に傷害罪は成立しない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭62.3.26)は、誤想過剰防衛の事案において、「回し蹴り行為は、被告人が誤信したBによる急迫不正の侵害に対する防衛手段として相当性を逸脱していることが明らかであるとし、被告人の所為について傷害致死罪が成立し、いわゆる誤想過剰防衛に当たるとして刑法36条2項により刑を減軽した原判断は、正当である。」としている。
本肢において、Aは、酩酊しているBを取り押さえているだけであるところ、甲は、AがBに対し無理矢理わいせつ行為に及ぼうとしているものと誤信しているから、誤想防衛であるといえる。
したがって、甲の暴行の程度が、甲が認識した急迫不正の侵害に対する防衛手段としての相当性を超えていた場合、誤想過剰防衛として、甲に傷害罪が成立する。
正当防衛の共同実行後における量的過剰防衛 最三小判平成6年12月6日
概要
判例
判旨:「本件のように、相手方の侵害行為に対し、複数人が共同して防衛行為として暴行に及び、相手方からの侵害が終了した後に、なおも一部の者が暴行を続けた場合において、後の暴行を加えていない者について正当防衛の成否を検討するに当たっては、侵害実現時と侵害終了後とに分けて考察するのが相当であり、侵害現在時における暴行が正当防衛と認められる場合には、侵害終了後の暴行については、侵害現在時及び侵害終了後の一連の行為を全体として考察し、防衛行為としての相当性を検討すべきである。」
過去問・解説
(R4 司法 第7問 2)
甲と乙は、友人丙がVから暴行を受けているのを発見し、丙を助けるために意思を通じ、正当防衛としてVに暴行を加えた。これにより、攻撃の意思を失い攻撃をやめたVが現場から逃走したため、甲は、暴行をやめたが、乙は、Vを追いかけて更にVに暴行を加えて傷害を負わせた。その間、甲は、乙の行動に驚き、乙が暴行を加えるのを傍観していた。この場合、甲には、傷害罪の共同正犯が成立する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平6.12.6)は、「本件のように、相手方の侵害行為に対し、複数人が共同して防衛行為として暴行に及び、相手方からの侵害が終了した後に、なおも一部の者が暴行を続けた場合において、後の暴行を加えていない者について正当防衛の成否を検討するに当たっては、侵害実現時と侵害終了後とに分けて考察するのが相当であり、侵害現在時における暴行が正当防衛と認められる場合には、侵害終了後の暴行については、侵害現在時及び侵害終了後の一連の行為を全体として考察し、防衛行為としての相当性を検討すべきである。」としている。
甲乙間の当初の共謀の内容は、丙を助けるためであったことから、乙がVを追いかけて追撃し、傷害を負わせたことは当初の意思連絡の範囲外であるといえる。
したがって、甲乙間に正当防衛後の新たな意思連絡はなく、甲に傷害罪の共同正犯は成立しない。