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実行の着手(窃盗罪) - 解答モード

窃盗の着手 大判大正2年3月17日

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概要
容器若しくは包装の占有者が開封してその内容物を自己の占有に移す行為に窃盗罪が成立する。
判例
事案:容器若しくは包装の占有者が開封してその内容物を自己の占有に移した事案において、窃盗罪の成否が問題となった。

判旨:「鎖鑰ヲ施セル容器内若クハ封緘ヲ為セル包裏内ニ存在セル他人ノ物ハ容器若クハ包裏ノ占有者カ自由ニ支配シ得ル状態ニ在ラサルヲ以テ其占有ハ依然所有者ニ存スルモノト謂ハサルヘカラス故ニ容器若クハ包裏ノ占有者カ鎖鑰又ハ封緘ヲ開披シ其内容物ヲ自己ノ占有ニ移スニ於テハ窃盗罪成立スルモノトス」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H24 共通 第1問 4)
甲に窃盗罪が成立するか。
甲は、乙から封かんされた現金10万円入りの封筒を渡されて丙に届けるように依頼され、丙方に向かって歩き始めたが、途中で封筒内の現金が欲しくなり、封を開いて封筒に入っていた現金のうち2万円を取り出してこれを自分のものにした後、残りの現金が入った封筒を丙に交付した。

(正答)

(解説)
判例(大判大2.3.17)は、本肢と同種の事案にいて、「容器若クハ包裏ノ占有者カ鎖鑰又ハ封緘ヲ開披シ其内容物ヲ自己ノ占有ニ移スニ於テハ窃盗罪成立スルモノトス」として、占有者が鍵又は封かんを開披し、その内容物を自己の占有に移した時点で窃盗罪が成立することを示している。
封かんされた現金10万円入りの封筒全体の占有は委託された甲にあるが、内容物の現金は委託者乙に占有があり、甲が封かんされた封筒内から現金2万円を抜き出して自分のものにする行為は窃盗罪の実行行為に当たる。
したがって、甲に窃盗罪が成立する。

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窃盗罪の実行の着手 大判大正6年10月11日

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概要
他人の財物を領得する意思に出た行為といえども未だ他人の事実上の支配を侵すにつき密接な程度に達していない場合は窃盗罪に着手したものということはできない。他人の財物がある衣装に手を差し入れ金品を窃取しようとしてそれを遂げなかったときは他人の事実上の支配を侵し窃盗行為に着手し遂げなかった事実に該当するものであるから窃盗未遂罪をもって論ずべきである。
判例
事案:他人の財物がある衣装に手を差し入れ金品を窃取しようとしてそれを遂げなかった事案において、窃盗罪の実行の着手が認められるかが問題となった。

判旨:「他人ノ財物ヲ領得スル意思ニ出ツル行為ト雖モ未タ他人ノ事実上ノ支配ヲ侵スニ付キ密接ノ程度ニ達セサル場合ハ窃盗罪ニ著手シタルモノト謂フヲ得ス
 他人ノ財物在中ノ衣嚢ニ手ヲ差入レ金品ヲ窃取セントシテ遂ケサリシトキハ他人ノ事実上ノ支配ヲ侵シ窃盗行為ニ著手シ遂ケサリシ事実ニ該当スルモノナレハ窃盗未遂罪ヲ以テ論スヘキモノトス」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H22 司法 第8問 イ)
甲の罪責について、判例の立場に従って検討し、窃盗罪が既遂になる場合には1を、未遂にとどまる場合には2を、既遂にも未遂にもならない場合には3を選びなさい。
甲は、乙方応接間で乙と雑談中、乙が部屋を出たすきに隣室にある金目の物を探して窃取しようと思い立ち、乙に対し、「お茶が欲しい。」と言って、乙を台所に行かせたが、乙の娘が応接間に入ってきたため、隣室に行くことができなかった。

(正答)3

(解説)
判例(大判大6.10.11)は、「他人ノ財物ヲ領得スル意思ニ出ツル行為ト雖モ未タ他人ノ事実上ノ支配ヲ侵スニ付キ密接ノ程度ニ達セサル場合ハ窃盗罪ニ著手シタルモノト謂フヲ得ス」として、占有者の事実上の支配を侵すのに密接な行為を開始しなければ窃盗罪の実行の着手が認められないことを示している。
また、その後の判例(最決昭40.3.9)は、「窃盗罪が成立するには他人の事実上の支配内に在る他人の財物を自己の支配内に移すことを要する。したがって他人の財物を領得する意思に出たとしても行為が未だ他人の事実上の支配を侵すに付き密接に至る程度に達していない場合においては窃盗罪に着手したとはいえない。…他人の財物がある衣装に手を差し入れ金品を窃取しようとしてそれを遂げなかったときは他人の事実上の支配を侵し窃盗行為に着手し遂げなかった事実に該当するものであるから窃盗未遂罪をもって論ずべきである。」としている。
甲は、乙が応接間を離れたすきに、隣室で金目の物を盗ろうとしたが、応接間に乙の娘が入ってきたため、隣室に行くこと自体を断念しているから、他人の事実上の支配を侵すに付き密接に至る程度に達しておらず、いまだ結果発生の現実的危険が生じているとはいえない。
したがって、甲に窃盗の実行の着手は認められず、甲の窃盗罪は未遂にもならない。

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窃盗罪の実行の着手 大判大正8年4月4日

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概要
被告が領得した物件は所有者甲の事実上の支配を離脱したが甲が宿泊する旅館主乙の事実上の支配が及ぶ当該旅館屋内の便所にあり、乙がこのことを知っているか問わず当然乙の支配内に属するものとして、窃盗罪の成立を認めた。
判例
事案:旅館内に置き忘れられた財物を窃取したという事案において、窃盗罪の実行の着手が認められるかが問題になった。

判旨:「被告ノ領得シタル物件ハ所有者甲ノ事実上ノ支配ヲ離脱シタルモ甲ノ宿泊セル旅館主乙ノ事実上ノ支配ノ及フ該旅館屋内ノ便所ニ現在セルモノナルトキハ乙カ右事実ヲ認知セルト否トヲ問ハス当然乙ノ支配内ニ属スルヲ以テ遺失物ヲ以テ論スルヲ得ス」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H24 共通 第1問 2)
甲に窃盗罪が成立するか。
甲は、旅館に宿泊した際、旅館内にある共同浴場の脱衣場で、他の宿泊客が置き忘れた時計を見付けたので、脱衣場から持ち出し、これを自分のものにした。

(正答)

(解説)
判例(大判大8.4.4)は、本肢と同種の事案において、「被告ノ領得シタル物件ハ所有者甲ノ事実上ノ支配ヲ離脱シタルモ甲ノ宿泊セル旅館主乙ノ事実上ノ支配ノ及フ該旅館屋内ノ便所ニ現在セルモノナルトキハ乙カ右事実ヲ認知セルト否トヲ問ハス当然乙ノ支配内ニ属スルヲ以テ遺失物ヲ以テ論スルヲ得ス」として、所有者の事実上の支配を離れていても、旅館の主の事実上の支配が及んでいる物については、窃盗罪の客体となることを示している。
他の宿泊客が旅館内にある共同浴場の脱衣場で時計を置き忘れていたとしても、当該時計には旅館主の占有が認められ、遺失物には当たらず、これを脱衣場から持ち出すことは窃盗の実行行為に当たる。
したがって、甲には窃盗罪が成立する。

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窃盗罪の実行の着手 最一小決昭和29年5月6日

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概要
ズボンの尻ポケットから現金をすり取ろうとして手を差しのべその外側に触れた以上窃盗の実行に着手したものである。
判例
事案:ズボンの尻ポケットから現金をすり取ろうとして手を差しのべその外側に触れたという事案において、当該行為が窃盗の実行に着手にあたるかが問題となった。

判旨:「被害者のズボン右ポケットから現金をすり取ろうとして同ポケットに手を差しのべその外側に触れた以上窃盗の実行に着手したものと解すべきこというまでもない。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H22 司法 第3問 1)
甲は、乙がズボンのポケットに財布を入れるのを見て、同財布をすり取ろうとして同ポケットに手を差し伸べ、ポケットの外側に触れた。この場合、財布に触っていないので、窃盗罪の実行の着手は認められない。

(正答)

(解説)
判例(最決昭29.5.6)は、「被害者のズボン右ポケットから現金をすり取ろうとして同ポケットに手を差しのべその外側に触れた以上窃盗の実行に着手したものと解すべきこというまでもない。」としている。
甲は、財布をすり取ろうとしてポケットに手を差し伸べ、ポケットの外側に触れているから、財布自体に触っているかどうかに関係なく、実行の着手が認められる。
したがって、甲に窃盗罪の実行の着手が認められる。


全体の正答率 : 100%

(H28 司法 第13問 エ)
甲は、駅のホームのベンチで寝ているAの隣に座ったところ、Aのズボンのポケットに財布が入っていることに気付き、これを盗もうと考え、手を差し伸べて同ポケットの外側に触れたが、駅員が近付いてきたので、財布に触れることはできなかった。甲について、窃盗の実行の着手が認められるか。

(正答)

(解説)
判例(最決昭29.5.6)は、「被害者のズボン右ポケットから現金をすり取ろうとして同ポケットに手を差しのべその外側に触れた以上窃盗の実行に着手したものと解すべきこというまでもない。」としている。
甲は、Aの財布を盗む目的で手を差し伸べてAのポケットの外側に触れているから、窃盗罪の実行の着手が認められる。
したがって、甲に窃盗の実行の着手が認められる。

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窃盗罪の実行の着手 最三小決昭和31年10月2日

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概要
電柱に架設中の電話線を切断しようとした以上、窃盗の実行に着手したものである。
判例
事案:電柱に架設中の電話線を切断しようとした行為につき、窃盗の実行に着手したと認められるかが問題となった。

判旨:「被告人はA管理の電柱に架設中の電話線を切断窃取しようとしたが、巡査に発見逮捕されてその目的を遂げなかったというのであって、被告人は窃盗の目的で、他人の財物を切断しようとしたというのであるから、このときすでに窃盗の着手があったとみるのが相当である。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H22 司法 第3問 2)
甲は、電柱に架設されている電話線を盗もうと考え、電柱に登って切断用具を電話線に当て、その切断を始めたが、警察官に発見されたため、電話線の被膜を傷付けただけにとどまった。この場合、電話線を切断していなくても、窃盗罪の実行の着手が認められる。

(正答)

(解説)
判例(最決昭31.10.2)は、「被告人は窃盗の目的で、他人の財物を切断しようとしたというのであるから、このときすでに窃盗の着手があったとみるのが相当である。」としている。
したがって、甲が電柱に登って切断用具を電話線に当て、その切断を始めた時点で、電話線を切断していなくても、窃盗罪の実行の着手が認められる。


全体の正答率 : 100%

(H26 司法 第9問 1)
甲は、電話線を盗む目的で、電柱に架設されていた電話会社所有の電話線を切断しているところを警察官に発見された。甲には窃盗罪の実行の着手が認められる。

(正答)

(解説)
判例(最決昭31.10.2)は、「被告人は窃盗の目的で、他人の財物を切断しようとしたというのであるから、このときすでに窃盗の着手があったとみるのが相当である。」としている。
したがって、甲が電柱に架設されていた電話会社所有の電話線を切断し始めた時点で、甲には窃盗罪の実行の着手が認められる。

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窃盗罪の実行の着手時期 最二小決昭和40年3月9日

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概要
犯人が被害者方店舗内において所携の懐中電燈により真暗な店内を照らし、電気器具類の積んであることが分かったが、なるべく金を盗りたいので店内煙草売場の方に行きかけた、との事実があれば、窃盗の着手行為があったものと認めるのが相当である。
判例
事案:被害者方店舗内において、所携の懐中電燈により真暗な店内を照らしたところ、電気器具類が積んであることが分かったが、なるべく金を盗りたいので自己の左側に認めた煙草売場の方に行きかけたという事案において、窃盗罪の実行の着手が認められるかが問題になった。

判旨:「被告人は昭和38年11月27日午前0時40分頃電気器具商たる本件被害者方店舗内において、所携の懐中電燈により真暗な店内を照らしたところ、電気器具類が積んであることが判ったが、なるべく金を盗りたいので自己の左側に認めた煙草売場の方に行きかけた際、本件被害者らが帰宅した事実が認められるというのであるから、原判決が被告人に窃盗の着手行為があったものと認め、刑法238条の『窃盗』犯人にあたるものと判断したのは相当である。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H22 司法 第3問 4)
窃盗罪の実行の着手に関する甲の行為を判例の立場に従って検討し、正しいものを選びなさい。
甲は、金品を盗もうと考え、深夜、無人の店舗内において、懐中電灯で真っ暗な店内を照らしたところ、食品類が積んであることが分かったが、なるべく現金を盗みたいと思い、現金がある精算レジに近づいた。この場合、未だレジ内を物色していないので、窃盗罪の実行の着手は認められない。

(正答)

(解説)
判例(最決昭40.3.9)は本肢と同種の事案において、「金を盗りたいので自己の左側に認めた煙草売場の方に行きかけた際、本件被害者らが帰宅した事実が認められるというのであるから、原判決が被告人に窃盗の着手行為があったものと認め、刑法238条の『窃盗』犯人にあたるものと判断したのは相当である。」としている。
したがって、甲が、現金がある精算レジに近づいた時点で、窃盗罪の実行の着手が認められる。


全体の正答率 : 100%

(H22 司法 第8問 イ)
甲の罪責について、判例の立場に従って検討し、窃盗罪が既遂になる場合には1を、未遂にとどまる場合には2を、既遂にも未遂にもならない場合には3を選びなさい。
甲は、乙方応接間で乙と雑談中、乙が部屋を出たすきに隣室にある金目の物を探して窃取しようと思い立ち、乙に対し、「お茶が欲しい。」と言って、乙を台所に行かせたが、乙の娘が応接間に入ってきたため、隣室に行くことができなかった。

(正答)3

(解説)
判例(最決昭40.3.9)は、「被告人は…店舗内において、所携の懐中電燈により真暗な店内を照らしたところ、電気器具類が積んであることが判ったが、なるべく金を盗りたいので自己の左側に認めた煙草売場の方に行きかけた際、本件被害者らが帰宅した事実が認められるというのであるから、原判決が被告人に窃盗の着手行為があったものと認め、刑法238条の『窃盗』犯人にあたるものと判断したのは相当である。」として、金のある烟草売場に行きかけた時点で、結果発生の現実的危険があるとして、窃盗罪の実行の着手を認めている。
甲は、乙が応接間を離れたすきに、隣室で金目の物を盗ろうとしたが、応接間に乙の娘が入ってきたため、隣室に行くこと自体断念しているから、他人の事実上の支配を侵すに付き密接に至る程度に達しておらず、いまだ結果発生の現実的危険が生じているとはいえない。
したがって、甲に窃盗の実行の着手は認められない。

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窃盗罪の実行の着手 東京地判平成2年11月15日

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概要
駐車中のA所有の普通乗用自動車内から金員を窃取すべく、助手席側ドアの鍵穴に所携のドライバーを差し込んで開ける行為に窃盗罪の実行の着手が認められる。
判例
事案:駐車中のA所有の普通乗用自動車内から金員を窃取すべく、助手席側ドアの鍵穴に所携のドライバーを差し込んで開け車内にある金員を窃取しようとした事案において、窃盗罪の実行の着手が認められるかが問題となった。

判旨:「被告人は、昭和59年6月20日下館簡易裁判所で窃盗罪等により懲役1年6月(3年間執行猶予、昭和60年8月9日取消)に、昭和60年8月6日水戸地方裁判所下妻支部で窃盗罪等により懲役1年に、昭和63年12月23日古河簡易裁判所で窃盗罪等により懲役1年10月にそれぞれ処せられ、いずれの刑も左記犯行前10年内に執行を受けたものであるが、更に、常習として、平成2年9月29日午後9時43分ころ、東京都文京区《番地略》先路上において、同所に駐車中のA所有の普通乗用自動車内から金員を窃取すべく、助手席側ドアの鍵穴に所携のドライバーを差し込んで開け、車内にある金員を窃取しようとしたが、その場で警察官に発見されて逮捕されたため、その目的をとげなかったものである。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H22 司法 第3問 3)
甲は、乙所有の自動車を運転して盗み出すため、不正に入手した同自動車のスペアキーを使い、駐車場に駐車してある同自動車の運転席のドアを開けた。この場合、運転席に乗り込む前でも、窃盗罪の実行の着手が認められる。

(正答)

(解説)
裁判例(東京地判平2.11.15)は、本肢と同種の事案において、「被告人は、…常習として、…駐車中のA所有の普通乗用自動車内から金員を窃取すべく、助手席側ドアの鍵穴に所携のドライバーを差し込んで開け、車内にある金員を窃取しようとしたが、その場で警察官に発見されて逮捕されたため、その目的をとげなかったものである。」とした上で、ドライバーの差込行為の時点で実行の着手を認めている。
甲は、スペアキーを使い、自動車の運転席のドアを開けているところ、この時点で、上記裁判例のドライバー差込行為以上に結果発生の現実的危険が生じているといえる。
したがって、甲が運転席に乗り込む前でも、窃盗罪の実行の着手が認められる。

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ATMと窃盗の着手 京都地判平成18年5月12日

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概要
被害者名義のキャッシュカードを使用して各ATM機を操作して残高照会をした行為に窃盗罪の実行の着手が認められる。
判例
事案:被害者名義のキャッシュカードを使用して各ATM機を操作して残高照会をした事案において、窃盗罪の実行の着手が認められるかが問題となった。

判旨:「弁護人らは、C銀行D支店及びE郵便局での各ATM機の操作について、残高照会を行うことは金銭を確認するだけの準備行為にとどまり、本件では、残高照会後に引き出し手続に移行するつもりであったかどうかについては立証がなされていないことから、単なる準備行為として窃盗未遂罪は成立しない旨主張している。しかし、第三者が他人のキャッシュカードを使用して預金を引き出す場合、残高がどれくらいであるか認識している場合でもない限り、どの程度の金額を引き出すことができるか分からないのであるから、本件の行為者は、まず残高照会を行い、残高を確認した後に現金を引き出すのが合理的な行動であるといえ、さらに、不正に他人のキャッシュカードを使用する場合はもとより、自らのキャッシュカードを正当に使用してATM機を操作して現金を引き出す場合にも、残高照会を行い、残高を確認した上で必要な金額を引き出すということがしばしばなされているところである。本件の行為者は、C銀行D支店及びE郵便局でもV名義のキャッシュカードを使用して各ATM機を操作しているところ、他人のキャッシュカードを使用してATM機を操作する目的としては現金を引き出すということあるいはその預金引き出しの前提として残高の確認をしていること以外には想定し難い。本件の行為者は、本件直前にA信用金庫B支店において預金を引き出しているが、その際にもまず残高照会を行った上で甲野名義の口座から現金を引き出している。この同一人物が、Vの預金の残高照会をしているのであり、それはとりもなおさず、預金を引き出す前提で預金されている金額の確認をしていることは明らかであると認められる。そして、キャッシュカードをATM機に挿入し、残高照会を行った上で必要な金額を引き出そうとしている場合において、残高照会を預金の引き出しと全く別個の独立した行為であるととらえることは行為の実情を無視した形式的なものといわざるを得ないものであって、各行為は密接に関連した一連の行為ととらえるのが相当である。それ故、C銀行D支店及びE郵便局でV名義のキャッシュカードを使用して各ATM機を操作して残高照会をした行為は現金を引き出すための前提行為ととらえることができるのであって、すなわち窃盗罪の実行の着手行為として残高照会をしたものと認めることができると考える。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H22 司法 第3問 5)
甲は、不正に取得した乙名義のキャッシュカードを使用して同人の預金口座から現金を引き出そうと考え、同カードを銀行の現金自動預払機に挿入し、暗証番号を入力した。甲は、同カードの正しい暗証番号を知っていたが、その入力を誤ったため払戻しを受けることができなかった場合でも、窃盗罪の実行の着手が認められる。

(正答)

(解説)
裁判例(京都地判平18.5.12)は、本肢と同種の事案において、「C銀行D支店及びE郵便局でV名義のキャッシュカードを使用して各ATM機を操作して残高照会をした行為は現金を引き出すための前提行為ととらえることができるのであって、すなわち窃盗罪の実行の着手行為として残高照会をしたものと認めることができると考える。」としている。
したがって、甲が不正に取得した乙名義のキャッシュカードを使用して同人の預金口座から現金を引き出そうと考え、同カードを銀行の現金自動預払機に挿入し、暗証番号を入力した時点で、窃盗罪の実行の着手が認められる。

該当する過去問がありません

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