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過失傷害の罪 - 解答モード
211条1項における「業務」の意味 最二小判昭和33年4月18日
概要
判例
判旨:「刑法211条にいわゆる業務とは、本来人が社会生活上の地位に基き反覆継続して行う行為であって(昭和25年(れ)146号同26年6月7日第一小法廷判決、集5巻7号1236頁参照)、かつその行為は他人の生命身体等に危害を加える虞あるものであることを必要とするけれども、行為者の目的がこれによって収入を得るにあるとその他の欲望を充たすにあるとは問わないと解すべきである。従って銃器を使用してなす狩猟行為の如き他人の生命、身体等に危害を及ぼす虞ある行為を、免許を受けて反覆継続してなすときは、たといその目的が娯楽のためであっても、なおこれを刑法211条にいわゆる業務と認むべきものといわねばならない。」
過去問・解説
(H25 司法 第15問 2)
業務上過失致死傷罪の「業務」とは、社会生活上の地位に基づいて反復継続して行われ、または、反復継続して行う意思をもって行われる行為であり、他人の生命・身体等に危害を加えるおそれがあるものをいう。
(R1 司法 第17問 オ)
業務上過失致死傷罪の「業務」とは、人が社会生活上の地位に基づき反復継続して行う行為であって、かつ、その行為が他人の生命身体等に危害を加えるおそれのあるものをいうため、他人の生命身体の危険を防止することを義務内容とする業務は、これに含まれない。
重過失の意義 東京高判昭和57年8月10日
概要
判例
判旨:「…刑法209条、210条が通常の過失により死傷の結果を発生させた場合の規定であるのに対し、同法211条後段は重大な過失により右と同じ死傷の結果を発生させた場合に前2条に比し刑を加重する規定であり、右にいう重大な過失とは、注意義務違反の程度が著しい場合、すなわち、わずかな注意を払うことにより結果の発生を容易に回避しえたのに、これを怠って結果を発生させた場合をいい、その要件として、発生した結果が重大であることあるいは結果の発生すべき可能性が大であったことは必ずしも必要としないと解するのが相当である。
…被告人は、車道上を時速約10キロメートルの速度で自転車をけんけん乗りで走行させ、交差点で信号待ちしていた約10名の歩行者が青色信号に従い一団となって横断歩道内を歩行し始めたところへ、赤色信号を見落し、歩行者との安全を何ら確認することなく、そのまま突込み、その結果当時69歳の老女に自車前部を衝突させて路上に転倒させ、加療約6か月間を要する傷害を負わせたのであり、本件では、証拠上、被告人が自己の対面信号を確認するに何らの支障もなかったところ、信号機による交通整理の行なわれている交差点ないしその直近の横断歩道内に進入するさい信号機の表示に従わなければ事故に至るべきことは当然のことであり、被告人は、わずかの注意を用いることにより赤色信号を確認しえたのは勿論、それを確認しておれば、直ちに停止措置を講ずるなどして横断中の歩行者との衝突も十分に回避しえたと認められるから、被告人に重大な過失のあったことは明らかである。」
過去問・解説
(H28 司法 第11問 2)
重過失とは、注意義務違反の程度が著しく、それによって発生した構成要件的結果が重大なものをいう。
211条1項における重過失 東京高判昭和62年10月6日
概要
判例
判旨:「重過失失火罪及び重過失致死傷罪における『重大なる過失』とは、建物等の焼燬や人の死傷の結果がその具体的な状況下において通常人として容易に予見できたのに、これを怠り、あるいは、結果を予見しながら、その回避の措置をとることが同様容易であったのに、これを怠ったというような注意義務の懈怠の著しい場合を指すものと解するのが相当であり、いわゆる認識のある過失をもって重過失であるとする所論の見解を採ることはできない。けだし、法が重過失の場合を通常の過失の場合よりも重く処罰すべきものとしているのは、前者の方が後者よりも過失の程度がより重く、責任の程度がより重いと評価されるからであると解されるところ、結果についての予見がある場合がそうでない場合に比べて、一般的に過失の程度が重いということはできず、予見のない場合においても予見すべき義務の懈怠の著しいことがあり、また、予見のある場合においても結果の回避が必ずしも容易でないことがありうるからである。
本件についてみると、本件火災は前記1ないし5のような経過で発生するに至ったものであるところ、被告人は、当時本件ストーブのつまみを消火位置に回しても直ちに炎が消えないことを知っていたのであるから(被告人の検察官に対する昭和52年1月8日付供述調書)、給油にかかるときに、まだ右炎が残っていることを予見することが極めて容易であったうえ、本件サイフォンを使って本件灯油缶から三角カートリッジに灯油を給油するにあたり、適時にサイフォンの電源を切らなければ灯油が三角カートリッジから溢れ出て、その灯油に本件ストーブ内の残炎が何らかの経路を経て着火し、建物の焼燬、ひいては人の死傷等の大事に至ることになるかもしれないことを通常人として容易に予見することができ、また、サイフォンを引き抜くにあたっても、急激にこれをすればサイフォン内の灯油が飛び散り、これに本件ストーブ内の残炎が着火し、周囲の可燃物の状況のいかんによっては同様の大事に至ることになるかもしれないことも同様容易に予見することができたと考えられる。そして、そのような重大な結果を回避するためには、被告人として、本件ストーブが完全に消火したのを確認した後に給油作業をするか、あるいは、三角カートリッジへの給油中はこれを見守り、万が一にも灯油が床面に溢れ出るようなことのないように適時にサイフォンの電源を切り、これができなかったときは、内部の灯油が飛び散らないようにサイフォンを止めるべきであり、そのいずれもが極めて容易であったことが明らかである。そうすると、本件に際し、被告人が本件ストーブ内からの火気が消失したことを確認せずに、その付近で給油を始めたうえ、三角カートリッジへの給油中その監視を怠り床面に灯油を溢出させ、あまつさえそのような危険な状況下においてサイフォンを急激に引き抜いたため、本件ストーブ内の残炎がサイフォンから落ちた灯油を介して床面の灯油に着火するに至ったのであるから、この間の被告人の行為は全体として重過失に当たるということができる。」
過去問・解説
(H25 司法 第15問 3)
重過失致死傷罪の「重過失」とは、行為者としてわずかな注意を払えば、結果発生を予見することができ、結果の発生を回避できた場合をいう。
他人の行為が介在した場合における因果関係 最三小判昭和42年10月24日
概要
判例
判旨:「同乗者が進行中の自動車の屋根の上から被害者をさかさまに引きずり降ろし、アスファルト舖装道路上に転落させるというがごときことは、経験上、普通、予想しえられるところではなく、ことに、本件においては、被害者の死因となった頭部の傷害が最初の被告人の自動車との衝突の際に生じたものか、同乗者が被害者を自動車の屋根から引きずり降ろし路上に転落させた際に生じたものか確定しがたいというのであって、このような場合に被告人の前記過失行為から被害者の前記死の結果の発生することが、われわれの経験則上当然予想しえられるところであるとは到底いえない。したがって、原判決が右のような判断のもとに被告人の業務上過失致死の罪責を肯定したのは、刑法上の因果関係の判断をあやまった結果、法令の適用をあやまったものというべきである。」
過去問・解説
(H19 司法 第12問 5)
甲が自動車を運転中、自転車に乗ったVを跳ね飛ばして自動車の屋根に跳ね上げ意識を喪失させたが、Vに気付かないまま自動車の運転を続けるうち、自動車の同乗者がVに気付き、走行中の自動車の屋根からVを引きずり降ろして路上に転倒させた。その結果、Vは頭部に傷害を負って死亡したが、Vの死因である傷害が自動車との衝突の際に生じたものか、路上へ転落した際に生じたものかは不明であった。この場合、同乗者の行為は経験上普通に予想できるところではないから、甲の行為とVの死亡の結果との間に因果関係を肯定することはできない。
(H29 予備 第1問 3)
甲は、自動車を運転中、過って同車をVに衝突させてVを同車の屋根に跳ね上げ、その意識を喪失させたが、Vに気付かないまま同車の運転を続けるうち、同車の助手席に同乗していた乙がVに気付き、走行中の同車の屋根からVを引きずり降ろして路上に転落させた。Vは、頭部打撲傷に基づくくも膜下出血により死亡したところ、同傷害は、自動車と衝突した際に生じたものか、路上に転落した際に生じたものかは不明であった。この場合、甲の衝突行為とVの死亡との間には、因果関係がある。
(R3 予備 第11問 オ)
甲は、自動車を運転中、路上で過失により通行人Vに同車を衝突させてVを同車の屋根に跳ね上げ、意識を喪失したVに気付かないまま、同車の運転を続けていたところ、同乗者がVに気付き、走行中の同車の屋根からVを引きずり降ろして路上に転落させ、Vは、頭部打撲に基づく脳くも膜下出血により死亡したが、これが同車との衝突の際に生じたものか、路上に転落した際に生じたものかは不明であった。この場合、甲の上記衝突行為とVの死亡との間に、因果関係はない。
被害者側の落度が介在した場合における因果関係 最一小判昭和63年5月11日
概要
判例
判旨:「被告人は、県知事の免許を受けて柔道整復業を営む一方、風邪等の症状を訴える患者に対しては、医師の資格がないにもかかわらず反復継続して治療としての施術等を行っていたものであるが、本件被害者から風邪ぎみであるとして診察治療を依頼されるや、これを承諾し、熱が上がれば体温により雑菌を殺す効果があって風邪は治るとの誤った考えから、熱を上げること、水分や食事を控えること、閉め切った部屋で布団をしっかり掛け汗を出すことなどを指示し、その後被害者の病状が次第に悪化しても、格別医師の診察治療を受けるよう勧めもしないまま、再三往診するなどして引き続き前同様の指示を繰り返していたところ、被害者は、これに忠実に従ったためその病状が悪化の一途をたどり、当初37度前後だった体温が5日目には42度にも昇ってけいれんを起こすなどし、その時点で初めて医師の手当てを受けたものの、既に脱水症状に陥って危篤状態にあり、まもなく気管支肺炎に起因する心不全により死亡するに至ったというのである。右事実関係のもとにおいては、被告人の行為は、それ自体が被害者の病状を悪化させ、ひいては死亡の結果をも引き起こしかねない危険性を有していたものであるから、医師の診察治療を受けることなく被告人だけに依存した被害者側にも落度があったことは否定できないとしても、被告人の行為と被害者の死亡との間には因果関係があるというべきであり、これと同旨の見解のもとに、被告人につき業務上過失致死罪の成立を肯定した原判断は、正当である。」
過去問・解説
(R3 予備 第11問 エ)
甲は、医師資格のない柔道整復師であるところ、自己に全幅の信頼を寄せるVから、風邪の治療について相談を持ち掛けられた際に、Vに対し、食事や水分補給を控える一方、発汗を促すという医学的に明らかに誤った治療法を繰り返して指示し、これに忠実に従ったVが症状を悪化させ、脱水症状に陥り、死亡した。この場合、甲の上記指示行為とVの死亡との間に、因果関係はない。
交通事故により生じた死傷との因果関係 最三小判平成16年10月19日
概要
判例
判旨:「Aに文句を言い謝罪させるため、夜明け前の暗い高速道路の第3通行帯上に自車及びA車を停止させたという被告人の本件過失行為は、それ自体において後続車の追突等による人身事故につながる重大な危険性を有していたというべきである。そして、本件事故は、被告人の上記過失行為の後、Aが、自らエンジンキーをズボンのポケットに入れたことを失念し周囲を捜すなどして、被告人車が本件現場を走り去ってから7、8分後まで、危険な本件現場に自車を停止させ続けたことなど、少なからぬ他人の行動等が介在して発生したものであるが、それらは被告人の上記過失行為及びこれと密接に関連してされた一連の暴行等に誘発されたものであったといえる。そうすると、被告人の過失行為と被害者らの死傷との間には因果関係があるというべきである…。」
過去問・解説
(H23 司法 第2問 ア)
甲の行為とVの死亡との間に因果関係が認められるか。
甲は、深夜、高速道路上で自動車(甲車)を運転中、大型トレーラー(乙車)を運転中の乙とトラブルになり、乙車の進路を妨害した上、追越車線上に乙車を停止させた。甲は、甲車から降り、乙を降車させた上、路上で乙に暴行を加えた後、甲車を運転して立ち去った。乙は、甲が立ち去った後、甲に奪われないためにズボンのポケットにエンジンキーを入れていたのを失念し、乙車を追越車線上に停車させたまま、エンジンキーを探していた。甲が立ち去ってから約5分後、後方から自動車を運転してきたVは、乙車を発見するのが遅れて自車を追突させ、Vはそれにより死亡した。