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横領の罪(主体) - 解答モード
横領罪における「占有」の意義 大判大正4年4月9日
概要
横領罪の規定にいう占有とは、必ずしも物の握持のみを指すものではなく、事実上及び法律上物に対する支配力を有する状態をも含む。
判例
事案:取締役が会社の財産を横領した事案において、業務上横領罪にいう占有の意義が問題となった。
判旨:「刑法第252条及ヒ同法第253条ニ所謂占有トハ必スシモ物ノ握持ノ意義ノミニ解スヘキニ非ス事実上及ヒ法律上物ニ対スル支配力ヲ有スル状態ヲ汎称スルモノニシテ株式会社ノ取締役ハ其業務上会社ノ財産ヲ事実上及ヒ法律上自由ニ支配シ得ル地位ニ在ルヲ以テ通例ト為スカ故ニ原判決ニ於テ被告カ自己ノ取締役タル職責上保管セル株式会社扶桑銀行ノ金員ヲ引出シ自己ノ用途ニ費消シタリト判示セルハ被告カ取締役トシテ事実上及ヒ法律上支配力ヲ及ホシ得ヘキ状態ニ在ル即チ其占有ニ属スル会社ノ金円ヲ自己ニ領得シタル事実ヲ説示セルモノニ外ナラサレハ被告ノ行為ニ対シテ刑法第253条ヲ適用処断シタルハ相当ナリ」
判旨:「刑法第252条及ヒ同法第253条ニ所謂占有トハ必スシモ物ノ握持ノ意義ノミニ解スヘキニ非ス事実上及ヒ法律上物ニ対スル支配力ヲ有スル状態ヲ汎称スルモノニシテ株式会社ノ取締役ハ其業務上会社ノ財産ヲ事実上及ヒ法律上自由ニ支配シ得ル地位ニ在ルヲ以テ通例ト為スカ故ニ原判決ニ於テ被告カ自己ノ取締役タル職責上保管セル株式会社扶桑銀行ノ金員ヲ引出シ自己ノ用途ニ費消シタリト判示セルハ被告カ取締役トシテ事実上及ヒ法律上支配力ヲ及ホシ得ヘキ状態ニ在ル即チ其占有ニ属スル会社ノ金円ヲ自己ニ領得シタル事実ヲ説示セルモノニ外ナラサレハ被告ノ行為ニ対シテ刑法第253条ヲ適用処断シタルハ相当ナリ」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%
(H25 共通 第18問 2)
株式会社の代表取締役には、会社の所有物について、横領罪の「占有」は認められない。
民法上の金銭の占有と横領罪の成否 大判大正11年1月17日
概要
商業使用人が主人のために売掛代金の取り立てするときは金銭の所有権は主人に所属し、その保管中これを自己の用途に費消したときは横領罪を構成する。自己の占有する他人の金銭を費消する者が後日これを賠償する意思あるか否かは横領罪の成立に影響を及ぼさない。
判例
事案:会社に雇われ集金事務を行う者が同社の売り掛金を取立て自己の用途に費消したという事案において、民法上の金銭は占有と所有が一致することから、横領罪の成否が問題となった。
判旨:「商業使用人カ主人ノ為ニ売掛代金ノ取立ヲ為シタルトキハ金銭ノ所有権ハ主人ニ帰属シ其ノ保管中擅ニ之ヲ自己ノ用途ニ費消シタルトキハ横領罪ヲ構成ス
自己ノ占有スル他人ノ金銭ヲ費消スル者カ後日之ヲ弁償スルノ意思アリタリヤ否ハ横領罪ノ成立ニ影響ヲ及ホサス
刑法第253条ニ所謂業務ニハ特定人ノ委託ヲ受ケテ一定ノ事務ヲ行フモノト不特定ナル多数人ノ委託ヲ受ケテ之ヲ行フモノトニ依リ区別アルコトナシ」
判旨:「商業使用人カ主人ノ為ニ売掛代金ノ取立ヲ為シタルトキハ金銭ノ所有権ハ主人ニ帰属シ其ノ保管中擅ニ之ヲ自己ノ用途ニ費消シタルトキハ横領罪ヲ構成ス
自己ノ占有スル他人ノ金銭ヲ費消スル者カ後日之ヲ弁償スルノ意思アリタリヤ否ハ横領罪ノ成立ニ影響ヲ及ホサス
刑法第253条ニ所謂業務ニハ特定人ノ委託ヲ受ケテ一定ノ事務ヲ行フモノト不特定ナル多数人ノ委託ヲ受ケテ之ヲ行フモノトニ依リ区別アルコトナシ」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%
(H22 司法 第11問 ウ)
甲は、乙社に勤務し、同社の取引先からの集金業務に従事していたところ、取引先から現金50万円を集金した後、これを自己の借金の返済に充てようと思い付き、上司に「集金の途中でひったくりに遭った。」と嘘の報告をし、50万円を同社に納めるのを免れた。甲に業務上横領罪が成立する。
(正答)〇
(解説)
判例(大判大11.1.17)は、本肢と同種の事案において、「商業使用人カ主人ノ為ニ売掛代金ノ取立ヲ為シタルトキハ金銭ノ所有権ハ主人ニ帰属シ其ノ保管中擅ニ之ヲ自己ノ用途ニ費消シタルトキハ横領罪ヲ構成ス」とした上で、「自己ノ占有スル他人ノ金銭ヲ費消スル者カ後日之ヲ弁償スルノ意思アリタリヤ否ハ横領罪ノ成立ニ影響ヲ及ホサス」として、被用者が売掛金の取立をした場合にも金銭の所有権は使用者に帰属し、その金銭を費消した場合には、後に弁償する意思があっても業務上横領罪が成立することを示している。
甲が集金した50万円の所有権は、刑事上委託者である乙社に認められるから、当該金銭は他人の物に当たり、50万円を同社に納めるのを免れる行為は横領罪の実行行為に当たる。
したがって、甲には業務上横領罪が成立する。