現在お使いのブラウザのバージョンでは、本サービスの機能をご利用いただけない可能性があります
バージョンアップを試すか、Google ChromeやMozilla Firefoxなどの最新ブラウザをお試しください
公務の執行を妨害する罪(客体) - 解答モード
職務の適法性 最二小判昭和27年3月28日
概要
判例
判旨:「所得税法63条は、収税官吏は、所得税に関する調査について必要があるときは、納税義務者その他同条各号所定の者に質問し又はその者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査することができると規定しているから、所得税の調査等に関する職務を担当する収税官吏は、所得調査という行政目的を達成するためには、同条所定の者に質問し、又は同条所定の物件を検査する権能を法律上認められているものといわなければならない。所得税法施行規則63条は収税官吏は所得税法63条の規定により帳簿書類その他の物件を検査するときは、大蔵大臣の定める検査章を携帯しなければならないと規定しているが、この規定は、専ら、物件検査の性質上、相手方の自由及び権利に及ぼす影響の少なからざるを顧慮し、収税官吏が右の検査を為すにあたり、自らの判断により又は相手方の要求があるときは、右検査章を相手方に呈示してその権限あるものであることを証することによって、相手方の危惧の念を除去し、検査の円滑な施行を図るため、特に検査章の携帯を命じたものであって、同条は単なる訓示規定と解すべきではなく、殊に相手方が検査章の呈示を求めたのに対し、収税官吏が之を携帯せず又は携帯するも呈示しなかった場合には、相手方はその検査を拒む正当の理由があるものと認むべきである。しかし、さればといって、収税官吏の前記検査権は右検査章の携帯によって始めて賦与されるものでないことは前記のとおりであるから、相手方が何等検査章の呈示を求めていないのに収税官吏において偶々これを携帯していなかったからといって直ちに収税官吏の検査行為をその権限外の行為であると解すべきではない。即ち、所得税に関する調査等をする職務を有する収税官吏が所得調査のため所得税法63条により同条所定の物件を検査するにあたって、検査章を携帯していなかったとしても、その一事を以て、右収税官吏の検査行為を公務の執行でないということはできない。従って、之に対して暴行又は脅迫を加えたときは公務執行妨害罪に該当するものといわなければならない。」
過去問・解説
(R2 司法 第8問 オ)
甲は、税務調査を免れるため、同調査のため甲方に来た所轄税務署職員乙の顔面を殴った。その際、乙は、規則により調査時に携帯が義務付けられている検査章を携帯していなかったが、甲がその呈示を求めることはなかった。乙に規則違反があった以上、乙の調査は職務の権限外の行為であり、甲に公務執行妨害罪は成立しない。
「職務を執行するにあたり」の時間的範囲 最三小判昭和45年12月22日
概要
判例
判旨:「95条1項の定める公務執行妨害罪の要件について考えるに、右条項の趣旨とするところは、公務員そのものについて、その身分ないし地位を特別に保護しようとするものではなく、公務員によって行なわれる公務の公共性にかんがみ、その適正な執行を保護しようとするものであるから、その保護の対象となるべき職務の執行というのは、漫然と抽象的・包括的に捉えられるべきものではなく、具体的・個別的に特定されていることを要するものと解すべきである。そして、右条項に『職務ヲ執行スルニ当り』と限定的に規定されている点からして、ただ漠然と公務員の勤務時間中の行為は、すべて右職務執行に該当し保護の対象となるものと解すべきではなく、右のように具体的・個別的に特定された職務の執行を開始してからこれを終了するまでの時間的範囲およびまさに当該職務の執行を開始しようとしている場合のように当該職務の執行と時間的に接着しこれと切り離し得ない一体的関係にあるとみることができる範囲内の職務行為にかぎって、公務執行妨害罪による保護の対象となるものと解するのが相当である。以上と異なり、職務の執行を抽象的・包括的に捉え、しかも『職務ヲ執行スルニ当り』を広く漫然と公務員の勤務時間中との意味に解するときは、公務の公共性にかんがみ、公務員の職務の執行を他の妨害から保護しようとする刑法95条1項の趣旨に反し、これを不当に拡張し、公務員そのものの身分ないし地位の保護の対象とする不合理な結果を招来することとなるを免れないからである。」
過去問・解説
(H23 予備 第8問 2)
甲は、飲食店Aで無銭飲食した後、A店店員の通報を受けて同店に臨場した制服の警察官乙の姿を認めるや、乙から事情聴取を受ける前に、その場から逃走する目的で乙を1回殴り、乙がひるんだ隙に同店から逃げた。甲には公務執行妨害罪は成立しない。
(H28 司法 第10問 4)
甲は、警ら中の制服警察官乙が職務質問をしようとしてきたことから、これを免れるため、乙の職務質問開始前に乙に暴行を加え、乙がひるんだ隙に逃走した。乙が職務質問を開始する前に暴行を加えたにすぎないから、甲には公務執行妨害罪は成立しない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭45.12.22)は、「具体的・個別的に特定された職務の執行を開始してからこれを終了するまでの時間的範囲およびまさに当該職務の執行を開始しようとしている場合のように当該職務の執行と時間的に接着しこれと切り離し得ない一体的関係にあるとみることができる範囲内の職務行為にかぎって、公務執行妨害罪による保護の対象となる…。」としている。
甲は、警ら中の制服警察官乙が職務質問をしようとしてきたことから、その直後の職務質問開始前に乙に暴行を加えているから、職務の執行と時間的に接着しこれと切り離し得ない一体的関係にあるということができる。
したがって、甲には公務執行妨害罪が成立する。
「職務を執行する」の意義 最一小判昭和53年6月29日
概要
判例
判旨:「95条1項にいう『職務ヲ執行スルニ当リ』とは、具体的・個別的に特定された職務の執行を開始してからこれを終了するまでの時間的範囲及びまさに当該職務の執行を開始しようとしている場合のように当該職務の執行と時間的に接着しこれと切り離しえない一体的関係にあるとみることができる範囲内の職務行為をいうものと解すべきである(最高裁昭和42年(あ)第2037号同45年12月22日第三小法廷判決・刑集24巻13号1812頁)が、同項にいう職務には、ひろく公務員が取り扱う各種各様の事務のすべてが含まれるものである(大審院明治42年(れ)第1495号同年11月19日判決・刑録15輯26巻1641頁、同44年(れ)第527号同年4月17日判決・刑録17輯9巻601頁参照)から、職務の性質によっては、その内容、職務執行の過程を個別的に分断して部分的にそれぞれの開始、終了を論ずることが不自然かつ不可能であつて、ある程度継続した一連の職務として把握することが相当と考えられるものがあり、そのように解しても当該職務行為の具体性・個別性を失うものではないのである。」
過去問・解説
(H18 司法 第1問 ウ)
判例の立場に従って次の【事例】の甲の罪責について検討し、後記の【罪名】のうち、その罪名に係る犯罪が成立するか。
【事例】
執行猶予中の甲は、居酒屋で飲食中、隣のテーブルの男Aと口論になり、Aの顔面をこぶしで殴打して鼻骨骨折等の傷害を負わせたが、店員らに現行犯逮捕され、K警察署の司法警察員に引き渡された。そして、司法警察員Xから、犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げられ、弁解の機会を与えられた。その際、甲は単純な事件なので起訴されることはないと思い、事実関係を争わなかった。そこで、Xは「傷害事件を起こしたことは間違いありません。弁解はありません。」などと供述録取書に録取して読み聞かせたところ、甲は間違いない旨を申し立てて署名・指印した。そのとき、Xは上司から呼出しを受けたため、供述録取書にXの署名・押印及び契印をしないまま、取調室前の廊下にいた同僚の司法警察員Yに甲の監視を依頼して、取調室から出て行った。
甲がYに傷害事件の見通しを尋ねたところ、Yは「被害者の傷害の程度も重いので、軽く考えない方がいいかもしれない。」などと答えた。甲はYの話を聞き、実刑になり刑務所に収容されるかもしれないと思い、憤激のあまり、Yに対し「ばか野郎。お前らはうそつきだ。」などと怒号し、前記の供述録取書を破り捨てた上、制止するために立ちふさがったYの顔面をこぶしで殴打して転倒させた。その後、甲はK警察署から逃げ出し、隣町に住む友人乙の居宅に逃げ込んだ。
甲は乙に対し、Aが傷害を負ったことを隠し、単に暴行事件を起こして任意の取調べを受けている際に警察署から逃げ出してきたなどとうそを交えて話した上、かくまってくれるように頼んだところ、乙は甲の話を信じ、自宅の物置小屋に甲をかくまったが、その数時間後、警察官に発見された。
【罪名】
公務執行妨害(刑法第95条第1項)
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭53.6.29)は、「95条1項にいう『職務ヲ執行スルニ当リ』とは、具体的・個別的に特定された職務の執行を開始してからこれを終了するまでの時間的範囲及びまさに当該職務の執行を開始しようとしている場合のように当該職務の執行と時間的に接着しこれと切り離しえない一体的関係にあるとみることができる範囲内の職務行為をいうものと解すべきである…が、同項にいう職務には、ひろく公務員が取り扱う各種各様の事務のすべてが含まれるものである…。」としている。
Yの甲を監視する職務は、広く警察官という公務員が取り扱う職務であるから、「職務を執行する」に当たる。
したがって、Yの顔面をこぶしで殴打して転倒させた甲には、公務執行妨害罪が成立する。
「職務を執行するにあたり」の意義 最一小決平成元年3月10日
概要
判例
判旨:「公務執行妨害罪の成否に関する所論にかんがみ検討すると、原判決の認定によれば、熊本県議会公害対策特別委員会委員長Aは、同委員会の議事を整理し、秩序を保持する職責を有するものであるが、昭和50年9月25日同委員会室で開催された委員会において、水俣病認定申請患者協議会代表者から陳情を受け、その事項に関して同委員会の回答文を取りまとめ、これを朗読したうえ、昼食のための休憩を宣するとともに、右陳情に関する審議の打切りを告げて席を離れ同委員会室西側出入口に向かおうとしたところ、同協議会構成員らが右打切りに抗議し、そのうちの1名が、同委員長を引きとめるべく、その右腕などをつかんで引っ張る暴行を加え、同委員長がこれを振り切って右の出入口から廊下に出ると、右構成員らの一部や室外で待機していた同協議会構成員らも加わつて合計約2、30名が、同委員長の退去を阻止すべく、同委員長を取り囲み、同委員会室前廊下などにおいて、同委員長に対し、押す、引くなどしたばかりか、体当たりし、足蹴りにするなどの暴行を加えたというのである。右の事実関係のもとにおいては、A委員長は、休憩宣言により職務の執行を終えたものではなく、休憩宣言後も、前記職責に基づき、委員会の秩序を保持し、右紛議に対処するための職務を現に執行していたものと認めるのが相当であるから、同委員長に対して加えられた前記暴行が公務執行妨害罪を構成することは明らかであり、これと同旨の原判断は正当である…。」
過去問・解説
(H25 共通 第16問 ア)
甲は、県議会の議事が紛糾し、議長乙が休憩を宣言して壇上から降りようとした際、乙の顔面をげんこつで殴った。甲に公務執行妨害罪が成立する。
(正答)〇
(解説)
判例(最決元.3.10)は、本肢と同種の事案において、「委員会において、…昼食のための休憩を宣するとともに、…出入口に向かおうとしたところ、…暴行を加えたという…事実関係のもとにおいては、A委員長は、休憩宣言により職務の執行を終えたものではなく、休憩宣言後も、前記職責に基づき、委員会の秩序を保持し、右紛議に対処するための職務を現に執行していたものと認めるのが相当であるから、同委員長に対して加えられた前記暴行が公務執行妨害罪を構成する…。」としている。
議長乙が休憩を宣言していたとしても、乙は秩序維持のための職務を現に執行していたものといえる。
したがって、議長乙が休憩を宣言して壇上から降りようとした際、乙の顔面をげんこつで殴った甲には、公務執行妨害罪が成立する。