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逃走の罪 - 解答モード

逃亡者の一時的所在不明と単純逃走既遂罪の成否 福岡高判昭和29年1月12日

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概要
未決の囚人が裁判所構内の便所附近から逃走したのを看守巡査がただちに発見して追跡し、途中、1、2度姿を見失ったけれども、結局間もなく同所から約600数十米距てた地点で逮捕した場合、逃走者は未だ看守者の実力的支配を全く離脱したものということはできないから、単純逃走未遂罪が成立する。
判例
事案:逃亡者の一時的所在不明の事案において、逃走罪の既遂の成否が問題となった。

判旨:「被告人は窃盗罪により飯塚簡易裁判所に起訴され、尓来、未決囚としてa町警察署留置場内に勾留されていたところ、昭和28年5月28日第4回公判開廷のため看守巡査Aに看視されて同裁判所に出頭し、同公判終了後同日正午頃自分と一緒に手錠をかけられていた他の被告人の用便のため同行して同裁判所構内の便所に行った際逃走しようと決意し右乙巡査の隙に乗じて突如右手に手錠をはめたまま同便所附近から逃げ出したが、同巡査は直ちにこれを発見して追跡し、途中1、2度被告人の姿を見失ったけれども、通行人等の指示により被告人の逃走径路を辿って被告人を追いかけ結局間もなく同所から約600米距てたb町巡査派出所附近の丙杜宅内で被告人を逮捕した事実を認めることができるし、この事実によると、看守者たる右A巡査が逃走した被告人を追跡中、たとい一時被告人の所在を見失ったにしても被告人は未だ右看守者の実力的支配を全く脱したものということができないので、被告人の右所為は単純逃走罪の未遂にすぎないものといわねばならない。」
過去問・解説

(H30 司法 第14問 2)
確定判決によってA刑務所に収容されていた甲は、B刑務所への護送中、刑務官の隙を見て護送車から脱出し、刑務官の追跡を完全に振り切って民家の庭に隠れたが、しばらくして、付近の捜索を継続していた刑務官に発見されて護送車に連れ戻された。甲に逃走罪の既遂罪が成立する余地はない。

(正答)

(解説)
裁判例(福岡高判昭29.1.12)は、本肢と同種の事案において、「看守者たる右A巡査が逃走した被告人を追跡中、たとい一時被告人の所在を見失ったにしても被告人は未だ右看守者の実力的支配を全く脱したものということができないので、被告人の右所為は単純逃走罪の未遂にすぎないものといわねばならない。」としている。
したがって、刑務官の追跡を完全に振り切った甲は、看守者の実力的支配を全く脱したということができるから、逃走既遂罪が成立する。

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加重逃走罪の「損壊」の意義 広島高判昭和31年12月25日

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概要
加重逃走罪の「損壊」とは物の実質に対する物理的損壊を意味する。
判例
事案:護送中、看守の隙を窺い捕繩及び手錠を外し手錠を車外に投棄して、列車窓から飛降り逃走したという事案において、加重逃走罪の「損壊」の意義が問題となった。

判旨:「なる程損壊という観念については、物の実質を毀損破壊するとなす狭義の見解と、この外物の価値を滅滅することをも包含するという広義の見解とが存し、毀棄罪における損壊は広義に解されているところである。しかし、毀棄罪における損壊の保護法益が物の財産的価値であるのに反し、拘禁場又は械具な損壊して逃走する加重逃走罪における保護法益は公共法益であって、両者はその罪質を異にし、後者は逃走手段として叙上行為がなされた際逃走の態様を重視し、単純逃走罪に比し刑を加重したものと認むべきである。してみれば、この場合における損壊は右立法趣旨に照し前記狭義観念即ち物の実質に対する物理的損壊を意味するものと解すべく、従って列車で護送中の被告人が逃走に際し、その手段として手錠及び捕繩を外し、且つ手錠を車外に投棄したとしても、これら械具の実質に物理的損壞を加えない限り、右行為は刑法第98条にいう損壞にあたらないものというべきである。」
過去問・解説

(H28 司法 第18問 1)
勾留状によって拘置所に勾留されていた甲は、面会者から密かに差し入れられた合い鍵を用いて房の扉を開け、拘置所から逃走した。甲には加重逃走罪の既遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
裁判例(広島高判昭31.12.25)は、「損壊は右立法趣旨に照し前記狭義観念即ち物の実質に対する物理的損壊を意味する…。」としている。
甲は、面会者からひそかに差し入れられた合い鍵を用いて扉を開けているため、物の実質に対する物理的損壊はなく、「損壊」に当たらない。
したがって、甲に加重逃走罪は成立しない。

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加重逃走罪における実行の着手 最三小判昭和54年12月25日

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概要
①拘禁場又は械具の損壊による加重逃走罪については、逃走の手段としての損壊が開始されたときには、逃走行為自体に着手した事実がなくとも、実行の着手がある。
②未決の囚人が、逃走の目的をもって、拘禁場である木造舎房の房壁に設置された換気孔の周辺のモルタル部分を削り取り損壊したが、脱出可能な穴を開けることができず、逃走の目的を遂げなかった場合には、加重逃走罪の実行の着手があったといえる。
判例
事案:拘置所から逃走したが未遂に終わった事案において、拘禁場又は械具の損壊による加重逃走罪における実行の着手が問題となった。

判旨:「98条のいわゆる加重逃走罪のうち拘禁場又は械具の損壊によるものについては、逃走の手段としての損壊が開始されたときには、逃走行為自体に着手した事実がなくとも、右加重逃走罪の実行の着手があるものと解するのが相当である。これを本件についてみると、原判決の認定によれば、被告人ほか3名は、いずれも未決の囚人としてa拘置支所第3舎第31房に収容されていたところ、共謀のうえ、逃走の目的をもって、右第31房の一隅にある便所の外部中庭側が下見板張りで内側がモルタル塗りの木造の房壁(厚さ約14.2センチメートル)に設置されている換気孔(縦横各約13センチメートルで、パンチングメタルが張られている。)の周辺のモルタル部分(厚さ約1.2センチメートル)3か所を、ドライバー状に研いだ鉄製の蝶番の芯棒で、最大幅約5センチメートル、最長約13センチメートルにわたって削り取り損壊したが、右房壁の芯部に木の間柱があったため、脱出可能な穴を開けることができず、逃走の目的を遂げなかった、というのであり、右の事実関係のもとにおいて刑法98条のいわゆる加重逃走罪の実行の着手があったものとした原審の判断は、正当である。」
過去問・解説

(H23 共通 第10問 エ)
甲は、勾留状の執行により拘禁されている未決の被告人であったところ、逃走の目的で拘禁場の換気孔の周辺の壁部分を削り取って損壊したが、いまだ脱出可能な穴を開けるに至らず、逃走行為自体に及ばないうちに検挙された。この場合、甲には加重逃走未遂罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭54.12.25)は、「拘禁場又は械具の損壊によるものについては、逃走の手段としての損壊が開始されたときには、逃走行為自体に着手した事実がなくとも、右加重逃走罪の実行の着手があるものと解するのが相当である。」としている。
したがって、甲が逃走の目的で拘禁場の換気孔の周辺の壁部分を削り取って損壊した時点で、加重逃走罪の実行の着手が認められる。
よって、甲に加重逃走未遂罪が成立する。


(H30 司法 第14問 1)
拘置所に未決勾留中の甲は、逃走しようと考え、房内の換気孔周辺の壁を削って損壊したものの、脱出可能な穴を開けられなかった。甲に加重逃走罪の未遂罪が成立する余地はない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭54.12.25)は、本肢と同種の事案において、「拘禁場又は械具の損壊によるものについては、逃走の手段としての損壊が開始されたときには、逃走行為自体に着手した事実がなくとも、右加重逃走罪の実行の着手があるものと解するのが相当である。」とした上で、加重逃走未遂罪の成立を肯定している。
甲は、逃走しようと考え、房内の換気孔周辺の壁を削って損壊しているため、実行の着手は認められるが、脱出可能な穴を開けられなかったため未遂にとどまる。
したがって、甲に加重逃走罪の未遂罪が成立する。

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