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犯人蔵匿及び証拠隠滅の罪 - 解答モード

「刑事被告事件」の意義 大判明治45年1月15日

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概要
証拠隠滅等罪にいういわゆる刑事被告事件とは現に裁判所に係属する刑事訴訟事件はもちろん、将来刑事訴訟事件となりうべきものも包含する。
判例
事案:証拠隠滅の事案において、証拠隠滅等罪の「刑事被告事件」が将来刑事訴訟事件となりうべきものも包含するかが問題となった。

判旨:「刑法第104条ニ所謂刑事被告事件トハ現ニ裁判所ニ繋属スル刑事訴訟事件ハ勿論将来刑事訴訟事件ト為リ得ヘキモノヲモ包含スルモノト解スヘキモノトス」
過去問・解説

(R3 司法 第14問 オ)
いまだ捜査が開始されていない段階で、他人の犯罪行為に関する証拠を隠滅した場合、証拠隠滅罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判明45.1.15)は、「刑法第104条ニ所謂刑事被告事件トハ現ニ裁判所ニ繋属スル刑事訴訟事件ハ勿論将来刑事訴訟事件ト為リ得ヘキモノヲモ包含スルモノト解スヘキモノトス」として、証拠隠滅罪は、将来刑事訴訟事件となりうるものについても成立することを示している。
したがって、いまだ捜査が開始されていない段階で、他人の犯罪行為に関する証拠を隠滅した場合にも、証拠隠滅罪が成立する。

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「他人の被告事件に関する証拠」の意義 大判昭和7年12月10日

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概要
①証拠偽造罪の「他人の刑事被告事件に関する証拠」とは親族でない者の刑事被告事件つき被告人の犯罪の成否・態様・刑の軽重に関係を及ぼすべき情状を判定する資料たるべき一切の証拠を指す。
②証拠の偽造が他人の刑事被告事件に関するものであるときに、同時に犯人もしくは親族の利益のためにされたりしても、その罪責を免れることはできない。
判例
事案:選挙法違反の証拠偽造を教唆したという事案において、①証拠偽造罪の「他人の被告事件に関する証拠」の意義、②犯人又は親族及び他人の刑事被告事件に関する証拠の偽造が証拠偽造罪に当たるかが問題となった。

判旨:①「刑法第104条ニ所謂他人ノ刑事被告事件ニ関スル証憑トハ親族ニアラサル者ノ刑事被告事件ニ付被告人ノ犯罪ノ成否、態様、刑ノ軽重ニ関係ヲ及スヘキ情状ヲ判定スル資料タルヘキ一切ノ証憑ヲ指称スルモノトス」
 ②「証憑ノ偽造カ他人ノ刑事被告事件ニ関スルモノナルトキハ縦令同時ニ犯人若ハ親族ノ利益ノ為ニ為サレタリトスルモ尚其ノ罪責ヲ免ルルヲ得ス」
過去問・解説

(H19 司法 第7問 オ)
甲は、自己が被告人となっている横領事件で有利な判決を得る目的から、事件と無関係のFに対し、被害を弁償していないのに、弁償金を受領した旨の被害者名義の領収証を作るように依頼し、これを作成させた。この場合、証拠偽造教唆罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判昭7.12.10)は、「刑法第104条ニ所謂他人ノ刑事被告事件ニ関スル証憑トハ親族ニアラサル者ノ刑事被告事件ニ付被告人ノ犯罪ノ成否、態様、刑ノ軽重ニ関係ヲ及スヘキ情状ヲ判定スル資料タルヘキ一切ノ証憑ヲ指称スルモノトス」として、証拠偽造罪における証拠について、親族でない者の刑事被告事件つき被告人の犯罪の成否・態様・刑の軽重に関係を及ぼすべき情状を判定する資料たるべき一切の証拠をいうことを示している。
甲は、自己が被告人となっている横領事件でより軽い有利な判決を得る目的で、弁償していないのに、事件と無関係のFに対し、弁償金を受領した旨の被害者名義の領収証の作成を依頼し作成させているから、刑の軽重に関係を及ぼすべき情状を判定する資料の偽造を教唆したといえる。
したがって、甲に証拠偽造教唆罪が成立する。

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犯人・犯人の親族に対する犯人隠避教唆罪の成否 大判昭和8年10月18日

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概要
①犯人の親族が人を教唆して犯人隠避罪を犯させたときは犯人隠避教唆罪が成立する。
②犯人が他人を教唆して自己を隠避させ犯人隠避罪を犯させたときは同教唆罪が成立する。
判例
事案:過失致死狩猟法違反で犯人隠避行為がなされた事案において、①犯人の親族に対する犯人隠避教唆罪の成否、②犯人に対する犯人隠避教唆罪の成否が問題となった。

判旨:①「刑法第105條ハ犯人ノ親族カ隱避ノ罪ヲ犯シタル場合ヲ罰セサル旨規定シ犯人自身カ犯シタル場合ヲ規定セスト雖勿論解釋ニ依リ犯人自身カ隱避教唆ノ罪ヲ犯シタル時ト雖之ヲ罰セサル趣旨ナリト斷セサル可カラス」
 ②「他人ヲ教唆シテ自己ヲ隱避セシメ刑法第103條ノ犯罪ヲ實行セシムルニ至リテハ防禦ノ濫用ニ屬シ法律ノ放任行爲トシテ干渉セサル防禦ノ範圍ヲ逸脱シタルモノト謂ハサルヲ得サルニヨリ被教唆者ニ對シ犯人隱避罪成立スル以上教唆者タル犯人ハ犯人隱避教唆ノ罪責ヲ負ハサルヘカラサルコト言ヲ俟タス」
過去問・解説

(H18 司法 第1問 オ)
判例の立場に従って次の【事例】の甲の罪責について検討し、【罪名】のうち、その罪名に係る犯罪が成立するか。
【事例】
 執行猶予中の甲は、居酒屋で飲食中、隣のテーブルの男Aと口論になり、Aの顔面をこぶしで殴打して鼻骨骨折等の傷害を負わせたが、店員らに現行犯逮捕され、K警察署の司法警察員に引き渡された。そして、甲は、司法警察員Xから取り調べを受けていた際に、Xに傷害事件の見通しを尋ねたところ、Xは「被害者の傷害の程度も重いので、軽く考えない方がいいかもしれない。」などと答えた。甲はXの話を聞き、実刑になり刑務所に収容されるかもしれないと思い、憤激のあまり、Xに対し「ばか野郎。お前らはうそつきだ。」などと怒号し、制止するために立ちふさがったXの顔面をこぶしで殴打して転倒させた。その後、甲はK警察署から逃げ出し、隣町に住む友人乙の居宅に逃げ込んだ。
 甲は乙に対し、Aが傷害を負ったことを隠し、単に暴行事件を起こして任意の取調べを受けている際に警察署から逃げ出してきたなどとうそを交えて話した上、かくまってくれるように頼んだところ、乙は甲の話を信じ、自宅の物置小屋に甲をかくまったが、その数時間後、警察官に発見された。
【罪名】
 犯人蔵匿教唆(刑法第103条・第61条第1項)

(正答)

(解説)
判例(大判昭8.10.18)は、「他人ヲ教唆シテ自己ヲ隱避セシメ刑法第103條ノ犯罪ヲ實行セシムルニ至リテハ防禦ノ濫用ニ屬シ法律ノ放任行爲トシテ干渉セサル防禦ノ範圍ヲ逸脱シタルモノト謂ハサルヲ得サルニヨリ被教唆者ニ對シ犯人隱避罪成立スル以上教唆者タル犯人ハ犯人隱避教唆ノ罪責ヲ負ハサルヘカラサル」として、他人を教唆して自己を蔵匿・隠避させることは防御権の範囲を逸脱することから、犯人隠避罪の教唆犯が成立することを示している。
甲は、乙に対して自分を匿うよう頼み、乙は自宅の物置小屋に甲をかくまっているから、甲に犯人蔵匿罪の教唆犯が成立する。


(H22 司法 第17問 5)
甲は、殺人事件の被疑者として警察に追われていたため、知人乙にその事情を打ち明けて同人所有の別荘に住まわせてくれるように依頼し、これを承諾した乙から同別荘の鍵を受け取って同別荘に身を隠した。犯人自身に逃げ隠れしないことを期待できないので、甲に犯人蔵匿教唆罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(大判昭8.10.18)は、「他人ヲ教唆シテ自己ヲ隱避セシメ刑法第103條ノ犯罪ヲ實行セシムルニ至リテハ防禦ノ濫用ニ屬シ法律ノ放任行爲トシテ干渉セサル防禦ノ範圍ヲ逸脱シタルモノト謂ハサルヲ得サルニヨリ被教唆者ニ對シ犯人隱避罪成立スル以上教唆者タル犯人ハ犯人隱避教唆ノ罪責ヲ負ハサルヘカラサル」として、他人を教唆して自己を蔵匿・隠避させることは防御権の範囲を逸脱することから、犯人隠避罪の教唆犯が成立することを示している。
甲は、乙に対して自分を匿うよう頼み、承諾した乙から乙所有の別荘の鍵を受け取って同別荘に身を隠しているから、甲に犯人蔵匿罪の教唆犯が成立する。


(H27 司法 第14問 2)
甲は、親族Aが犯した傷害被疑事件につき、他人を教唆してAの犯行に関わる証拠を隠滅させた。甲には、親族による犯罪に関する特例(刑法第105条)が適用され、証拠隠滅罪の教唆犯は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(大判昭8.10.18)は、「親族タル犯人ヲ庇護スル目的ニ出テタリトスルモ他人ヲ教唆シテ犯人隱避ノ罪ヲ犯サシムルカ如キハ所謂庇護ノ濫用ニシテ法律ノ認ムル庇護ノ範圍ヲ逸脱シタルモノト謂ハサルヲ得サル」として、親族が他人を教唆して犯人を蔵匿・隠避させることは庇護の濫用であるため犯人蔵匿・隠避罪が成立することを示している。
証拠隠滅罪に関しても、親族が同様の行為に出れば同様の判断となると考えられる。
甲は、親族Aが犯した傷害被疑事件につき、他人を教唆してAの犯行に関わる証拠を隠滅させているが、105条の適用はなく、証拠隠滅罪の教唆犯が成立する。

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「罰金以上の刑にあたる罪を犯した者」の意義 最三小判昭和24年8月9日

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概要
犯人蔵匿・隠避罪は司法に関係する国権の作用を妨害する書を処罰しようとするのであるから、「罪を犯した者」は犯罪の嫌疑によって捜査中の者をも含むと解釈すべきである。
判例
事案:恐喝の被疑者を匿ったという事案において、犯罪の嫌疑によって捜査中の者と犯人蔵匿・隠避罪の「罰金以上の刑にあたる罪を犯した者」の意義が問題となった。

判旨:「刑法第103条は蔵匿の対象者を『罰金以上ノ罪ヲ犯シタル者』と規定しているのであるから、その者が罪を犯したという事実が確定されるまでは犯人蔵匿は成立しない、と主張する。なるほどその趣旨の学説もないではないが、刑法第103条は司法に関する国権の作用を妨害する者を処罰しようとするのであるから、『罪ヲ犯シタル者』は犯罪の嫌疑によって捜査中の者をも含むと解釈しなくては、立法の目的を達し得ない。」
過去問・解説

(H19 司法 第7問 ア)
甲は、Aが被疑者として捜査の対象となっている殺人未遂事件に関し、Aの部下でAと被害者との関係について知っているBがいずれは参考人として警察の取調べを受けることを予期しつつ、Bを隠匿した。この場合、(a. 犯人隠避罪が成立する・b. 証拠隠滅罪が成立する)。

(正答)b

(解説)
判例(最判昭24.8.9)は、「『罪ヲ犯シタル者』は犯罪の嫌疑によって捜査中の者をも含む…。」としている。
また、別の判例(最決昭36.8.17)は、「104条の証憑湮滅罪は犯罪者に対する司法権の発動を阻害する行為を禁止しようとする法意に出ているものであるから、捜査段階における参考人に過ぎない者も右法条にいわゆる他人の刑事被告事件に関する証憑たるに妨げなく、これを隠匿すれば証憑湮滅罪が成立する…。」としている。
Bは、Aを被疑者とする殺人未遂事件の参考人であるから、Bは、「罪を犯した者」に当たらず、捜査段階における参考人について隠匿したことになる。
したがって、甲に証拠隠滅罪が成立する。


(H22 司法 第17問 1)
甲は、殺人事件の被疑者として逮捕状が発付されている乙が犯人ではないと信じ、乙に隠れ家を提供して同人をかくまったが、その後、発見逮捕された乙が真犯人であることが明らかとなり、同人に対する有罪判決が確定した。甲は乙が犯人ではないと誤信していたので、甲に犯人蔵匿罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭24.8.9)は、「『罪ヲ犯シタル者』は犯罪の嫌疑によって捜査中の者をも含む…。」としている。
乙は、殺人事件の被疑者として逮捕状が発付されていたから、「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」に当たり、甲もこの事実を認識し隠れ家を提供して同人をかくまった。
したがって、甲に犯人蔵匿罪が成立する。

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証言済み承認の威迫と証人威迫罪の成否 大阪高判昭和35年2月18日

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概要
1度証人として証言した後においても判決確定前においては、なお同人が再度証人として尋問を受けることも予測され得ることであり、又被告人において右証言を取消させる目的も希望も有しなかったとしても、その行為自体が刑事司法の適正な運用を阻害するものとして証人威迫罪が成立する。
判例
事案:証人としてすでに証言を終った者を威迫した事案において、証人威迫罪の成否が問題となった。

判旨:「所論は、原判示第3の事実について、刑法第105条の2は正しい証言の保護を目的としたもので、捜査又は裁判において証言の済んでいない者のみを客体とする趣旨で、文理解釈上証言の終った者は含まれないと解すべきである。してみれば被告人甲の本件所為はAがBに対する売春防止法違反被告事件の証人として証言を終った後になされたものであって、被告人甲において右Aを威迫してその証言を取消させる目的も希望も有していなかったのであり、審判を過まらせる虞は毫もない。然るに原判決は被告人のの本件所為が有元の証言をなした後の威迫であることを認めながら右所為に対し刑法第105条の2を適用したことは同法条の解釈適用を誤ったものであると主張するのである。よって案ずるに、原判決が、Bに対する売春防止法違反被告事件の公判廷においてAの証言の後に、被告人甲において、乙と共謀の上、右Aに対し本件威迫の所為に出でたものであると認定し、該事実に対し刑法第105条の2を適用したことは、所論指摘のとおりである。しかしながら、同方条は刑事被告事件の証人等の個人的平成穏を保護するとともに刑事司法の適正な運用を角に舗し、これを阻害する者を処罰する趣旨であって、当該事件が未確定状態にある間行われる本条所定の行為が処罰の対象となるものと解するのを相当とする。してみれば、たとえ本件のようにAが1度証人として証言した後においても判決確定前においては、なお同人が再度証人として尋問を受けることも予測され得ることであり、又被告人甲において右証言を取消させる目的も希望も有しなかったとしても、その行為自体が刑事司法の適正な運用を阻害するものとして同条処罰の対象となるものであって、右目的、希望の有無は本件犯罪の成否には影響はない。」
過去問・解説

(R1 司法 第18問 1)
証人等威迫罪は、判決確定前であれば、その事件で証人として証言を終えた者を威迫した場合でも、成立する。

(正答)

(解説)
裁判例(大阪高判昭35.2.18)は、「1度証人として証言した後においても判決確定前においては、なお同人が再度証人として尋問を受けることも予測され得ることであり、又被告人甲において右証言を取消させる目的も希望も有しなかったとしても、その行為自体が刑事司法の適正な運用を阻害するものとして同条処罰の対象となるものであって、右目的、希望の有無は本件犯罪の成否には影響はない。」としている。

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捜査段階における参考人の隠匿と証拠隠滅罪の成否 最一小決昭和36年8月17日

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概要
捜査段階における参考人も証拠隠滅罪の「他人の刑事被告事件に関する証拠」に該当する。
判例
事案:殺人未遂事件の証人を隠匿したという事案において、捜査段階における参考人の隠匿と証拠隠滅罪の成否が問題となった。

判旨:「104条の証憑湮滅罪は犯罪者に対する司法権の発動を阻害する行為を禁止しようとする法意に出ているものであるから、捜査段階における参考人に過ぎない者も右法条にいわゆる他人の刑事被告事件に関する証憑たるに妨げなく、これを隠匿すれば証憑湮滅が成立するものと解すべき…。」
過去問・解説
全体の正答率 : 0%

(H27 司法 第14問 3)
甲は、Aが犯した殺人被疑事件につき、目撃者Bが捜査機関から事情聴取の要請を受けたことを知り、その聴取を妨害するため、Bを甲方に2か月間監禁した。甲には証拠隠滅罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決昭36.8.17)は、「捜査段階における参考人に過ぎない者も右法条にいわゆる他人の刑事被告事件に関する証憑たるに妨げなく、これを隠匿すれば証憑湮滅が成立する…。」としている。
甲は、参考人である目撃者Bを甲方に2か月間監禁し隠匿しているから、甲に証拠隠滅罪が成立する。


(R6 司法 第18問 エ)
甲は、Aを被疑者とする殺人未遂事件につき、Bが必要な知識を有する参考人として警察官の取調べを受ける可能性があることを察知し、知人宅にBをかくまった。この場合、Bが捜査段階における参考人であったとしても、甲に証拠隠滅罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決昭36.8.17)は、「捜査段階における参考人に過ぎない者も右法条にいわゆる他人の刑事被告事件に関する証憑たるに妨げなく、これを隠匿すれば証憑湮滅が成立する…。」としている。
甲は、捜査段階における参考人であるBを知人宅にかくまっているから、甲に証拠隠滅罪が成立する。

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犯人に対する犯人隠避教唆罪の成否 最一小決昭和60年7月3日

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概要
犯人が他人を教唆して自己を隠避させたときは、犯人隠避罪の教唆犯が成立する。
判例
事案:配下の組員をして被告人の身代わり犯人に仕組み、犯人が他人を教唆して自己を隠避させたという事案において、犯人隠避教唆罪の成否が問題となった。

判旨:「犯人が他人を教唆して自己を隠避させたときに、刑法103条の犯人隠避罪の教唆犯の成立を認めることは、当裁判所の判例とするところであり(最高裁昭和35年(あ)第98号同年7月18日第二小法廷決定・刑集14巻9号1189頁参照)、原判決の是認する第一審判決が被告人について犯人隠避教唆罪の成立を認めたのは相当である。」
過去問・解説

(H24 共通 第10問 エ)
甲は、強盗罪を犯した後、友人乙に事情を話して唆し、自己を隠避させた。甲には犯人隠避罪の教唆犯は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最決昭60.7.3)は、「犯人が他人を教唆して自己を隠避させたときに、刑法103条の犯人隠避罪の教唆犯の成立を認める…。」としている。
犯人甲は、他人である友人乙を教唆して自己を隠避させている。
したがって、甲に犯人隠避罪の教唆犯が成立する。

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虚偽供述による供述調書作成と証拠偽造罪 千葉地判平成7年6月2日

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概要
他人の刑事被疑事件について、参考人として検察官に虚偽の供述をし、その旨の供述調書を作成させた行為について、証拠偽造罪は成立しない。
判例
事案:他人の刑事被疑事件について、参考人として検察官に虚偽の供述をし、その旨の供述調書を作成させたという事案において、証拠偽造罪の成否が問題となった。

判旨:「参考人が捜査官に対して虚偽の供述をすることは、それが犯人隠避罪に当たり得ることは別として、証憑偽造罪には当たらないものと解するのが相当である…。それでは、参考人が捜査官に対して虚偽の供述をしたにとどまらず、その虚偽供述が録取されて供述調書が作成されるに至った場合、すなわち、本件のような場合は、どうであろうか。この場合、形式的には、捜査官を利用して同人をして供述調書という証憑を偽造させたものと解することができるようにも思われる。しかし、この供述調書は、参考人の捜査官に対する供述を録取したにすぎないものであるから(供述調書は、これを供述者に読み聞かせるなどして、供述者がそれに誤りのないことを申し立てたときは、これに署名押印することを求めることができるところ、本件にあっても、被告人が供述調書を読み聞かされて誤りのないことを申し立て署名指印しているが)、参考人が捜査官に対して虚偽の供述をすることそれ自体が、証憑偽造罪に当たらないと同様に、供述調書が作成されるに至った場合であっても、やはり、それが証憑偽造罪を構成することはあり得ないものと解すべきである。」
過去問・解説

(H27 司法 第14問 4)
甲は、Aの強盗被告事件に証人として出廷し、法律により宣誓の上、自己の記憶と異なる偽りの事実を証言し、これに基づく証人尋問調書が作成された。甲には証拠偽造罪が成立する。

(正答)

(解説)
裁判例(千葉地判平7.6.2)は、「参考人が捜査官に対して虚偽の供述をしたにとどまらず、その虚偽供述が録取されて供述調書が作成されるに至った場合、…それが証憑偽造罪を構成することはあり得ない…。」としている。
また、判例(最決昭28.10.19)は、「刑法104条の証憑の偽造というのは証拠自体の偽造を指称し証人の偽証を包含しない…。」としている。
甲は、Aの強盗被告事件に証人として出廷し、法律により宣誓の上、自己の記憶と異なる偽りの事実を証言していることから、偽証罪は成立しうるものの、証拠偽造罪は成立しない。

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「証拠を隠滅し」と証人・参考人の隠匿 大判明治44年3月21日

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概要
証拠隠滅罪に「証拠を隠滅し」とあるのは証拠である物件を隠滅することのほか、証人または参考人として刑事被告事件の証拠となるべき者を隠匿する場合をも包含する。
判例
事案:証人または参考人として刑事被告事件の証拠となるべき者を隠匿した事案において、証拠隠滅罪の「証拠を隠滅し」に当たるかが問題となった。

要旨:刑法第百四条ニ証憑ヲ湮滅シトアルハ証憑タルヘキ物件ヲ湮滅スルコトノ外証人又ハ参考人トシテ刑事被告事件ノ証憑ト為ルヘキ者ヲ隠匿スル場合ヲモ包含ス
(※原文を確認できないため、要旨のみを掲載)
過去問・解説

(H22 司法 第17問 3)
甲は、被告人乙の刑事裁判を有利に運ぶために、同人に不利益な事実を知っている証人予定者の丙を人里離れた山中の別荘に監禁した。人的証拠も「証拠」に該当するので、甲に証拠隠滅罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判明44.3.21)は、証拠隠滅罪は、承認又は参考人とし刑事訴訟事件の証拠となるべきものを隠匿する場合も含まれることを示している。
甲は、被告人乙の刑事裁判を有利に運ぶために、同人に不利益な事実を知っている証人予定者の丙を人里離れた山中の別荘に監禁しているが、刑事被告事件の証拠となるべき者を隠匿する場合として、証拠を隠滅しているといえる。
したがって、甲に証拠隠滅罪が成立する。

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証人に偽証させる行為と証拠隠滅罪の成否 大判大正3年6月23日

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概要
証拠隠滅の罪の「証拠を…偽造」とは証拠自体の偽造を指し、証人の偽造を包含しない。
判例
事案:証人に偽証させた事案において、証拠隠滅罪の成否が問題となった。

要旨:証憑湮滅ノ罪ニ付キ所謂証憑ノ偽造トハ証拠自体ノ偽造ヲ指称シ証人ノ偽証ヲ包含セサルモノトス
(※原文を確認できないため、要旨のみを掲載)
過去問・解説

(R3 司法 第14問 エ)
被告人の友人が、被告人の犯罪行為に関する偽証を証人に教唆し実行させた場合、証拠偽造罪の教唆犯は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(大判大3.6.23)は、証拠の偽造は証拠自体の偽造を指し、証人の偽造は含まれないことを示している。
したがって、宣誓した証人が偽証した場合、より重い偽証罪が成立し、証拠隠滅罪は成立しない。


(R5 予備 第12問 1)
自己が被告人となっている窃盗被告事件につき、知人を教唆して偽証行為を行わせた場合、他人の行為を利用して自ら虚偽を述べたに等しく、被告人が自己の刑事事件につき虚偽を述べても罪にならないから、偽証罪の教唆犯は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(大判大3.6.23)は、証拠の偽造は証拠自体の偽造を指し、証人の偽造は含まれないことを示している。
また、別の判例(最決昭28.10.19)は、「被告人が右証人を教唆して偽証させたときは偽証教唆の責を免れない…。」としている。
したがって、自己が被告人となっている窃盗被告事件につき、知人を教唆して偽証行為を行わせた場合、偽証罪の教唆犯が成立する。

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逃避の便宜を与える行為と犯人隠避罪 大判昭和5年9月18日

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概要
逃走中の罰金以上の刑にあたる犯人の依頼に応じその留守宅の状況及び官憲捜査の形勢を探索して犯人に知らせ、逃避の便宜を与える行為は犯人隠避罪を構成する。
判例
事案:逃走中の罰金以上の刑にあたる犯人の依頼に応じその留守宅の状況及び官憲捜査の形勢を探索して犯人に知らせたという事案において、犯人隠避罪の成否が問題となった。

判旨:「刑法第103條ニ所謂藏匿トハ官憲ノ發見逮捕ヲ免ルヘキ隱匿場ヲ供給スルコトヲ指稱シ隱避トハ藏匿以外ノ方法ニ依リ官憲ノ發見逮捕ヲ免レシムヘキ一切ノ行爲ヲ包含スルモノナルヲ以テ逃避者ニ逃避ノ便宜ヲ與フルカ如キ行爲モ亦同條ノ所謂犯人隱避罪ヲ構成スルモノト解スルヲ妥當トス」
過去問・解説

(H19 司法 第7問 イ)
甲は、汚職の罪で逃走中の友人Cから頼まれて、Cに対し、Cの留守宅の様子や家族の安否のほか、警察の捜査状況を教えた。この場合、犯人隠避罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判昭5.9.18)は、本肢と同種の事案において、「刑法第103條ニ所謂藏匿トハ官憲ノ發見逮捕ヲ免ルヘキ隱匿場ヲ供給スルコトヲ指稱シ隱避トハ藏匿以外ノ方法ニ依リ官憲ノ發見逮捕ヲ免レシムヘキ一切ノ行爲ヲ包含スルモノナルヲ以テ逃避者ニ逃避ノ便宜ヲ與フルカ如キ行爲モ亦同條ノ所謂犯人隱避罪ヲ構成スルモノト解スルヲ妥當トス」として、犯人隠避罪は、逃避者に逃避の便宜を与えることによっても成立することを示している。
したがって、甲がCに対して警察の捜査状況等を教えた行為は、Cに逃避のための便宜を与える行為であるとして、「隠避」に当たり、甲に犯人隠避罪が成立する。

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証人が虚偽の陳述をする行為、証人をして虚偽の陳述をさせる行為についての証拠偽造罪の成否(R6) 大判昭和9年8月4日

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概要
証人が虚偽の陳述をする行為、証人をして虚偽の陳述をさせる行為には、証拠偽造罪は成立しない。
判例
事案:証人が虚偽の陳述をし、又は証人をして虚偽の陳述をさせたという事案において、証拠偽造罪の成否が問題となった。

要旨:証人カ法律ニ依リ宣誓ヲ為シタルト否トヲ問ハス判事ニ対シ虚偽ノ陳述ヲ為シタル行為ハ勿論証人ヲシテ虚偽ノ陳述ヲ為サシメタル行為ハ孰レモ刑法第104条ノ罪ヲ構成セサルモノトス
(※原文を確認できないため、要旨のみを掲載)
過去問・解説

(R6 司法 第18問 ウ)
甲は、Aを被疑者とする覚醒剤取締法違反事件の参考人として警察官の取調べを受け、真実はAが覚醒剤を所持したことがなかったのに、それを警察官に隠してAが覚醒剤を所持していたとの虚偽の内容の供述をして、それを信じた警察官に同内容の供述調書を作成させ、同調書に署名押印した。この場合、甲が虚偽の供述調書を作成させた以上、甲に証拠偽造罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判昭9.8.4)は、証人が宣誓の上で虚偽の陳述をした場合や、証人をして虚偽の陳述をさせる行為には、証拠偽造罪は成立しないことを示している。
また、別の判例(最決平28.3.31)は、「虚偽の供述内容が供述調書に録取される…などして,書面を含む記録媒体上に記録された場合であっても,そのことだけをもって,同罪に当たるということはできない…。」としている。
したがって、甲が参考人として、取調官に対して虚偽の陳述する行為について、甲に証拠偽造罪は成立しない。

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身代わり犯人と犯人隠避教唆罪の成否 最一小決平成元年5月1日

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概要
犯人が逮捕勾留された後であっても、他の者を教唆して身代わり犯人として警察署に出頭させ、自己が犯人である旨の虚偽の陳述をさせた行為は、犯人隠避教唆罪を構成する。
判例
事案:逮捕勾留中の犯人の身代わりを出頭させた事案において、犯人隠避教唆罪の成否が問題となった。

判旨:「刑法103条は、捜査、審判及び刑の執行等広義における刑事司法の作用を妨害する者を処罰しようとする趣旨の規定であって(最高裁昭和24年(れ)第1566号同年8月9日第三小法廷判決・刑集3巻9号1440頁参照)、同条にいう『罪ヲ犯シタル者』には、犯人として逮捕勾留されている者も含まれ、かかる者をして現になされている身柄の拘束を免れさせるような性質の行為も同条にいう『隠避』に当たると解すべきである。そうすると、犯人が殺人未遂事件で逮捕勾留された後、被告人が他の者を教唆して右事件の身代り犯人として警察署に出頭させ、自己が犯人である旨の虚偽の陳述をさせた行為を犯人隠避教唆罪に当たるとした原判断は、正当である。」
過去問・解説

(H19 司法 第7問 ウ)
暴力団幹部である甲は、自己の犯した業務上過失致死事件について、配下の組員Dに命じて、Dを自己の身代わり犯人として警察に出頭させた。この場合、犯人隠避教唆罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決平元.5.1)は、本肢と同種の事案において、「『罪ヲ犯シタル者』には、犯人として逮捕勾留されている者も含まれ、かかる者をして現になされている身柄の拘束を免れさせるような性質の行為も同条にいう『隠避』に当たる…。…犯人が殺人未遂事件で逮捕勾留された後、被告人が他の者を教唆して右事件の身代り犯人として警察署に出頭させ、自己が犯人である旨の虚偽の陳述をさせた行為を犯人隠避教唆罪に当たるとした原判断は、正当である。」としている。
また、別の判例(最決昭35.7.18)は、「犯人が他人を教唆して自己を隠避させたときは、犯人隠避罪の教唆犯が成立する…。」としている。
犯人である甲は、自己の犯した業務上過失致死事件について、第三者Dに命じて、Dを自己の身代わり犯人として警察に出頭させているから、甲に犯人隠避罪の教唆犯が成立する。


(H22 司法 第17問 2)
甲は、傷害事件で勾留されている乙の起訴を免れさせるために、丙に対し、乙の身代わり犯人となるように唆し、これにより丙は、警察に出頭して上記傷害事件の真犯人は自分である旨虚偽の事実を申告した。乙は既に拘束されているので、甲に犯人隠避教唆罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最決平元.5.1)は、本肢と同種の事案において、「『罪ヲ犯シタル者』には、犯人として逮捕勾留されている者も含まれ、かかる者をして現になされている身柄の拘束を免れさせるような性質の行為も同条にいう『隠避』に当たる…。…犯人が殺人未遂事件で逮捕勾留された後、被告人が他の者を教唆して右事件の身代り犯人として警察署に出頭させ、自己が犯人である旨の虚偽の陳述をさせた行為を犯人隠避教唆罪に当たる…。」としている。
甲は、勾留されている乙の起訴を免れさせるために、丙に対し、乙の身代わり犯人となるように唆し、これにより丙は、警察に出頭して真犯人は自分である旨虚偽の事実を申告している。
したがって、乙が既に拘束されているとしても、身柄の拘束を免れさせるような性質の行為であるとして、甲に犯人隠避罪の教唆犯が成立する。


(H24 共通 第10問 ウ)
甲は、殺人罪を犯して逮捕勾留された乙に依頼され、乙の身代わり犯人として警察署に出頭し、自己が犯人であるという嘘の申告をした。甲には犯人隠避罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決平元.5.1)は、本肢と同種の事案において、「『罪ヲ犯シタル者』には、犯人として逮捕勾留されている者も含まれ、かかる者をして現になされている身柄の拘束を免れさせるような性質の行為も同条にいう『隠避』に当たる…。…犯人が殺人未遂事件で逮捕勾留された後、被告人が他の者を教唆して右事件の身代り犯人として警察署に出頭させ、自己が犯人である旨の虚偽の陳述をさせた行為を犯人隠避教唆罪に当たる…。」としている。
甲は、殺人罪を犯して逮捕勾留された乙に依頼され、乙の身代わり犯人として警察署に出頭し、自己が犯人であるという嘘の申告をしているから、甲に犯人隠避罪が成立する。


(H29 共通 第14問 イ)
犯人隠避罪の「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」には、犯人として既に逮捕・勾留されている者は含まれない。

(正答)

(解説)
判例(最決平元.5.1)は、本肢と同種の事案において、「『罪ヲ犯シタル者』には、犯人として逮捕勾留されている者も含まれ、かかる者をして現になされている身柄の拘束を免れさせるような性質の行為も同条にいう『隠避』に当たる…。…犯人が殺人未遂事件で逮捕勾留された後、被告人が他の者を教唆して右事件の身代り犯人として警察署に出頭させ、自己が犯人である旨の虚偽の陳述をさせた行為を犯人隠避教唆罪に当たる…。」としている。


(R4 共通 第20問 オ)
【事例】
 甲(女性、16歳)は、高校の同級生A(女性、16歳)が非行グループと交際し、飲酒喫煙を繰り返していることを知り、それらのAの具体的行動を、特に口止めもせずに同級生2名に告げたところ、同人らを介して、Aの同行動がクラスの全生徒30名の知るところとなった。甲のせいで自己の行状に関するうわさが広まったことを知ったAは、甲を呼び出して暴行を加えた。そのことを知った甲の兄乙は、Aに報復しようと考え、ある日の深夜、A宅付近に自己の車を停め、Aを待ち伏せていたところ、Aの姉B(20歳)がA宅に入ろうとするのを見て、BをAと誤信し、Bを無理やり同車のトランクに押し込んで数キロメートル走行した上、郊外の廃工場に連行した。乙は、上記廃工場において、Bの顔面を数発殴打するとともに、はさみを使ってBの頭髪を10センチメートル程度切断した。乙は、Bが泣き出したのを見て満足し、その場から立ち去ることにしたが、その際、Bのバッグの中から財布を抜き取り、これを持ち去った。乙は、上記財布内にB名義の運転免許証やキャッシュカードが入っていたため、BをAと間違えたことに気付いたが、同カードを不正に使用し、Bの預金で乙の友人Cへの借金を返済しようと考えた。乙は、コンビニエンスストアの現金自動預払機に同カードを挿入し、暗証番号としてBの誕生日を入力したところ、取引ができる状態になったので、その場で、同現金自動預払機を操作し、B名義口座から直接C名義口座へ50万円を送金した。その後、甲の交際相手丙は、乙が警察に逮捕されるのではないかと不安に思った甲からの依頼に応じ、乙の上記一連の犯行について、乙の身代わり犯人として警察に出頭した。

【記述】
丙が乙の身代わり犯人として警察に出頭した行為は、犯人の特定を誤らせることを通じて間接的に犯人の身柄確保を妨げるものにすぎないから、犯人隠避罪は成立せず、証拠偽造罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決平元.5.1)は、本肢と同種の事案において、「『罪ヲ犯シタル者』には、犯人として逮捕勾留されている者も含まれ、かかる者をして現になされている身柄の拘束を免れさせるような性質の行為も同条にいう『隠避』に当たる…。…犯人が殺人未遂事件で逮捕勾留された後、被告人が他の者を教唆して右事件の身代り犯人として警察署に出頭させ、自己が犯人である旨の虚偽の陳述をさせた行為を犯人隠避教唆罪に当たる…。」としている。乙は、暴行罪等の「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」に当たるから、丙が乙の身代わりとして出頭したことは、「隠避」に当たる。
したがって、犯人の特定を誤らせることを通じて間接的に犯人の身柄確保を妨げるものにすぎないとしても、丙に犯人隠避罪が成立する。

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「威迫」の方法 最三小決平成19年11月13日

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概要
証人威迫罪の「威迫」には、不安、困惑の念を生じさせる文言を記載した文書を送付して相手にその内容を了知させる方法による場合が含まれる。
判例
事案:証人を威圧した事案において、証人威迫罪の「威迫」の方法が問題となった。

判旨:「105条の2にいう『威迫』には、不安、困惑の念を生じさせる文言を記載した文書を送付して相手にその内容を了知させる方法による場合が含まれ、直接相手と相対する場合に限られるものではない…。」
過去問・解説

(H29 共通 第14問 エ)
証人等威迫罪の「威迫」は、相手と面会して直接なされる場合に限られ、文書を送付して相手にその内容を了知させる方法によりなされる場合を含まない。

(正答)

(解説)
判例(最決平19.11.13)は、「105条の2にいう『威迫』には、不安、困惑の念を生じさせる文言を記載した文書を送付して相手にその内容を了知させる方法による場合が含まれ、直接相手と相対する場合に限られるものではない…。」としている。


(R6 司法 第18問 オ)
甲は、Aを被告人とする恐喝事件の公判に証人として出廷したBの証言後、Bに対し、同公判係属中、同証言をしたことに対して報復する旨の脅迫文言を記載した文書を郵送して閲読させた。この場合、Bが証言を終えているから、甲に証人威迫罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最決平19.11.13)は、「105条の2にいう『威迫』には、不安、困惑の念を生じさせる文言を記載した文書を送付して相手にその内容を了知させる方法による場合が含まれ、直接相手と相対する場合に限られるものではない…。」としている。
また、証人威迫罪の保護法益は、国の刑事司法作用の円滑な運用のほか、証人、参考人らの私生活の平穏も含まれる。
Bが、公判に証人として出廷して証言をした後も、これらの法益が害されるおそれがあるため、証言を終えたことは同罪の成否に影響しない。
したがって、証言後のBに対して文書を郵送して閲読させる方法も、「威迫」に当たるから、甲に証人威迫罪が成立する。

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口裏合わせと「隠避させた」 最二小決平成29年3月27日

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概要
道路交通法違反、自動車運転過失致死の各罪の犯人がAであると知りながら、Aとの間で、事故車両が盗まれたことにする旨口裏合わせをした上、参考人として警察官に対して前記口裏合わせに基づいた虚偽の供述をした本件行為は、犯人隠避罪にいう「隠避させた」に当たる。
判例
事案:参考人として警察官に対して犯人との間の口裏合わせに基づいた虚偽の供述をしたという事案において、犯人隠避罪にいう「隠避させた」に当たるかが問題となった。

判旨:「被告人は、前記道路交通法違反及び自動車運転過失致死の各罪の犯人がAであると知りながら、同人との間で、A車が盗まれたことにするという、Aを前記各罪の犯人として身柄の拘束を継続することに疑念を生じさせる内容の口裏合わせをした上、参考人として警察官に対して前記口裏合わせに基づいた虚偽の供述をしたものである。このような被告人の行為は、刑法103条にいう『罪を犯した者』をして現にされている身柄の拘束を免れさせるような性質の行為と認められるのであって、同条にいう『隠避させた』に当たると解するのが相当である(最高裁昭和63年(あ)第247号平成元年5月1日第一小法廷決定・刑集43巻5号405頁参照)。
 隠避行為とは、法廷意見が説示するとおり、『犯人の身柄拘束を免れさせる性質の行為』をいうものと解するのが相当である。そして、虚偽供述がそのような行為に該当するというためには、客観的に刑事司法作用を誤らせる危険性を有するものであること、すなわち、当該虚偽供述が犯人の身柄拘束の継続に疑義を生じさせる性質のものであることを要するというべきである。
 まず、『犯人の身柄拘束を免れさせる性質の行為』といえるためには、単に身柄拘束の可否を判断することに何らかの関連を有する供述というだけでは広範なものが含まれ、処罰の範囲を画することができないので、その可否判断に直接ないし密接に関連した供述内容でなければならない。
 …本件は、虚偽供述にとどまるものではなく、Aと口裏合わせをした上で、前記虚偽供述をした事案である。参考人の供述は、関係者の供述や客観的証拠と整合性があるかどうかを確認して信用性判断がされるものであるが、口裏合わせはその有力な確認方法の1つをあらかじめ奪って、信用性チェックを困難にし、場合によっては虚偽供述の真実らしさを増幅させ、捜査の方向を誤らせる可能性もあり、客観的に刑事司法作用を誤らせる危険性を有するものということができる。その程度は、実務上犯人隠避罪に当たるとすることに異論をみない身代わり自白と差がないものと評価できよう。このような意味で、口裏合わせの事実は、虚偽供述が隠避に該当するというための重要な考慮要素というべきである。
 以上によれば、口裏合わせを伴う本件虚偽供述は、『犯人の身柄の拘束を免れさせる性質の行為』とみることができ、刑法103条の隠避に該当する。」
過去問・解説

(R3 共通 第20問 オ)
【事例】
 暴力団A組の組員甲は、クラブで飲酒していた際、たまたま入店してきた旧知の暴力団B組の組員乙に因縁を付けられて口論になり、乙に拳で殴りかかった。乙は、これを避けた上、更に殴りかかろうとしてきた甲の胸部を拳で数回強打した。その数分後、B組の組員丙は、乙と待ち合わせをしていた上記クラブに到着し、その直後に甲の態度に激高し、いきなり甲の胸部を拳で数回強打した。甲は、全治約1か月間を要する肋骨骨折の傷害を負ったが、同傷害が乙と丙のいずれの暴行によって生じたのかは不明であった。甲は、一旦帰宅したものの怒りが収まらず、何か嫌がらせをしてやろうと考え、金属バットを持ち、覆面で顔を隠してB組事務所に行き、その玄関ドアを同バットでたたいて凹損させた。その直後、甲は、A組事務所に行き、A組の組員丁に対し、B組組員から殴られた腹いせにB組事務所の玄関ドアを凹損させたことを話した。丁は、B組との関係悪化を避けるとともに、甲の刑事責任を免れさせるため、甲との間で、犯行時間帯に甲がA組事務所にいたことにする旨の口裏合わせをした。また、丁は、B組組員複数名による襲撃を受ける可能性もあると考え、万が一に備えて、着衣のポケットに護身用として果物ナイフを入れた。他方、乙及び丙は、上記ドアが凹損させられたとの連絡を受け、甲の仕業だろうと考え、A組事務所へ向かった。乙は、応対に出た丁に対し、「甲を出せ。」と言った。丁は、「何の話だ。」と応じたが、乙は、その態度に憤激し、「しらばっくれるな。」と言い、持っていた拳銃を取り出して丁に突き付けた。丁は、自己の身を守るため、上記ナイフで乙の腹部を1回突き刺し、乙に全治約1か月間を要する腹部刺創の傷害を負わせた。丁は、駆けつけた警察官に逮捕され、その後、逃走していた甲も上記ドアを凹損させた事実で逮捕された。丁は、甲の身柄拘束中、甲の犯行に関する参考人として取調べを受けた際、上記口裏合わせに従い、上記ドアが凹損させられた時間帯に甲がA組事務所にいた旨のうその供述をした。

【記述】
丁が、甲の犯行に関する参考人として取調べを受けた際、B組事務所の玄関ドアが凹損させられた時間帯に甲がA組事務所にいた旨のうその供述をした行為については、犯人隠避罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決平29.3.27)は、「身柄の拘束を継続することに疑念を生じさせる内容の口裏合わせをした上、参考人として警察官に対して前記口裏合わせに基づいた虚偽の供述をした…行為は、103条にいう『罪を犯した者』をして現にされている身柄の拘束を免れさせるような性質の行為と認められるのであって、同条にいう『隠避させた』に当たる…。」としている。
B組事務所の玄関ドアが凹損させられた時間帯に甲がA組事務所にいた旨のうその供述は、甲のアリバイを示し犯人ではないことを内容とするから、身柄の拘束を免れさせるような性質の行為といえ、「隠避させた」に当たる。
したがって、丁に犯人隠避罪が成立する。

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捜査の存否と犯人蔵匿罪の成否 最二小判昭和28年10月2日

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概要
直に罰金以上の刑にあたる罪を犯した者であることを知りながら、官憲の発見、逮捕を免れるように、その者をかくまった場合には、その犯罪がすでに捜査官憲に発覚して捜査が始っているかどうかに関係なく、犯人蔵匿罪が成立する。
判例
事案:真に罰金以上の刑にあたる罪を犯した者であることを知りながら、官憲の発見、逮捕を免れるように、これをかくまったという事案において、捜査の存否と犯人蔵匿罪の成否の関係について問題となった。

判旨:「真に罰金以上の刑にあたる罪を犯した者であることを知りながら、官憲の発見、逮捕を免れるように、これをかくまった場合には、その犯罪がすでに捜査官憲に発覚して捜査が始まっているかどうかに関係なく、犯人蔵匿罪が成立するものと解すべきである…。」
過去問・解説

(H24 共通 第10問 ア)
甲は、窃盗罪を犯して逃走中の友人乙及び丙をその事情を知りながら自宅にかくまった。その時点で、警察は、乙に対する捜査を開始していたが、丙が乙の共犯であることについては把握していなかった。甲には、乙をかくまったことについて犯人蔵匿罪が成立するが、丙をかくまったことについて同罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭28.10.2)は、「真に罰金以上の刑にあたる罪を犯した者であることを知りながら、官憲の発見、逮捕を免れるように、これをかくまった場合には、その犯罪がすでに捜査官憲に発覚して捜査が始まっているかどうかに関係なく、犯人蔵匿罪が成立する。」としている。
丙が乙の共犯であることについて警察は把握していなかったが、甲は、丙が窃盗罪という罰金以上の刑に当たる罪を犯した者であることを知りながらかくまっている。
したがって、甲に、丙をかくまったことについて犯人蔵匿罪が成立する。

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証人威迫罪の成立要件 東京高判昭和35年11月29日

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概要
証人威迫罪の成立には、証人らが公判審理の段階において威迫された後に証拠調を受ける可能性のあることまたは公判の結果に影響を及ぼそうとの目的があることを必要としない。
判例
事案:器物損壊罪で起訴されていた者が、証人らや証人の父親、証人の妻に対し、控訴人の犯行ではない旨の証言や、告訴の取下げ、証言の取消し等を強要し、強談威迫の行為をしたという事案において、証人威迫罪の成立要件につき、公判の結果に影響を及ぼそうとする目的が必要であるかが問題となった。

判旨:「105条の2所定のいわゆる証人威迫罪は、いやしくも自己若しくは他人の刑事被告事件の捜査若しくは審判に必要な知識を有するものと認められる者、またはその親族に対し当該事件に関し故なく面会を強請し、または強談威迫の行為をすることによって成立するものであって、本罪はもとより証拠湮滅罪の一類型として犯罪者に対する国家権力の捜査権及び裁判権を妨害する行為を禁止し、もって司法に関する国権の作用を保全するにあるものと解すべきであるから、当該事件がいまだ起訴前の捜査段階にあると、すでに起訴され公判審理の段階にあるとにより犯罪の成否に消長を来すべきいわれがなく、したがって本罪が成立するためには、必ずしも所論のごとく、証人らが公判審理の段階において威迫された後に証拠調を受ける可能性のあることを必要とせず、また本罪が成立するために要する犯意としては、自己若しくは他人の刑事被告事件(起訴前の事件を含む)の捜査若しくは審判に必要な知識を有する者又はその親族であることを認識し、かつ、これに対し当該事件に関し故なく面会を強請し又は強談威迫の行為をなすことの認識かあれば足り、必ずしも所論のごとき公判の結果に何らかの影響を及ぼそうとの積極的な目的意識を必要としないものといわなければならない。」
過去問・解説

(R1 司法 第18問 2)
証人等威迫罪は、公判の結果に何らかの影響を及ぼそうとする意図がなければ、成立しない。

(正答)

(解説)
裁判例(東京高判昭35.11.29)は、「本罪が成立するために要する犯意としては、自己若しくは他人の刑事被告事件(起訴前の事件を含む)の捜査若しくは審判に必要な知識を有する者又はその親族であることを認識し、かつ、これに対し当該事件に関し故なく面会を強請し又は強談威迫の行為をなすことの認識かあれば足り、必ずしも所論のごとき公判の結果に何らかの影響を及ぼそうとの積極的な目的意識を必要としない…。」としている。

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不起訴処分と犯人隠避罪の成否 東京高判昭和37年4月18日

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概要
罰金以上の刑に係る罪を犯したものとして逮捕状が発布されている者であることを知りながら、その逮捕を免れしめる意図の下に、犯人を隠避せしめた以上、その後犯人が不起訴処分を受けたとしても、犯人隠避罪の成立に影響はない。
判例
事案:後に犯人が不起訴処分を受けた事案において、犯人隠避罪の成否が問題となった。

判旨:「論旨は右Aが前記殺人未遂被疑事件について不起訴となった事実を捉えて本件犯罪の不成立を主張するが、およそ刑法第103条の規定は司法に関する国権の作用を妨害する者を処罰する趣旨であるから(最高裁判所刑事判例集第3巻第9号1440頁参照)現に捜査が行われている被疑事件に関連して罰金以上の刑に該る罪を犯したものとして逮捕状が発布されている者であることを知りながらその逮捕を免れしめる意図の下に犯人を隠避せしめれば直ちに犯人隠避の罪が成立し、よしんばその後犯人が当該被疑事件につき不起訴処分を受けたとしても、一旦成立した犯人隠避罪に何ら消長を来すものではないと解するのが相当であつて、被告人が前記Aをして逮捕を免れしめるため、同人に逃走のための資金を供与した当時、Aに対する逮捕状が発布されていて、所論のB株式会社社長Cに対する殺人未遂被疑事件が現に捜査中のものであったことは証拠上疑いのないところであるから、所論のように被告人が本件で起訴された後、何らかの事由で右Aが不起訴処分を受けたとしても、そのために被告人の本件刑事責任が解消される理由は少しもないのである。」
過去問・解説

(H24 共通 第10問 オ)
甲は、乙につき、傷害罪で逮捕状が発付されていることを知りながら、乙をかくまった。その後、乙は犯罪の嫌疑が不十分であるという理由で不起訴処分となった場合、甲には犯人蔵匿罪は成立しない。

(正答)

(解説)
裁判例(東京高判昭37.4.18)は、「その後犯人が当該被疑事件につき不起訴処分を受けたとしても、一旦成立した犯人隠避罪に何ら消長を来すものではない…。」としている。
乙は、犯罪の嫌疑が不十分であるという理由で不起訴処分となっているが、一旦成立した犯人隠避罪に影響はない。
したがって、甲に犯人蔵匿罪が成立する。


(R5 司法 第20問 オ)
【事 例】
甲は、高齢女性Aから同人名義のキャッシュカード(以下「カード」という。)を不正に入手するため、甲が警察官を装いAに電話をかけ、これからA方を訪れる警察官の確認を受けながらカードを封筒に入れ、同封筒をA方において保管する必要があるとうそを言い、警察官に成り済ました乙(25歳、男性)がA方を訪れ、隙を見て同封筒を別の封筒とすり替えて持ち去り、カードを丙に渡して甲に届けさせる計画(以下「本件計画」という。)を考え、乙に本件計画の実行を指示し、乙はこれを承諾した。某日午前9時頃、本件計画に基づき、甲がAに電話をかけて上記うそを言い、乙は、同日午前9時15分頃、A方を訪ね、Aにカードを封筒に入れるよう求めた。しかし、乙の態度を不審に思ったAが、乙に身分証の提示を求めたので、乙は、逮捕を免れるとともに本件計画どおりにカードを手に入れるため、Aを手拳で多数回殴り、恐怖で抵抗できないAからカードを奪って持ち去った。同日午前9時20分頃、乙は、甲に電話で、本件計画どおりカードを入手したと伝えた。同日午前9時30分頃、甲は、丙に電話をかけ、本件計画の内容を初めて説明し、乙からカードを受け取って甲に届けるよう依頼し、丙はこれを承諾した。丙は、同日午前11時頃、乙と合流し、カードを受け取って乙と別れ、自動車でA方から約50キロメートル離れた甲方に向かったが、同日午後0時30分頃、甲方付近で降車した際、制服警察官BからA方での事件とは関係なく職務質問を受けた。その際、丙は、Bを殴り、Bに全治2週間を要する打撲傷を負わせ、その隙に上記自動車で逃走し、同日午後1時頃、甲と合流して甲にカードを届けた。その後、丙の交際相手丁は、丙が上記一連の犯行を行い、警察から捜査されていることを認識しつつ、丙を丁の自宅にかくまった。

【記 述】
丙のいずれの行為についても、証拠上、犯罪の嫌疑が不十分として不起訴となった場合、丁が丙をかくまった行為について犯人蔵匿罪は成立しない。

(正答)

(解説)
裁判例(東京高判昭37.4.18)は、「その後犯人が当該被疑事件につき不起訴処分を受けたとしても、一旦成立した犯人隠避罪に何ら消長を来すものではない…。」としている。
丙は犯罪の嫌疑が不十分であるという理由で不起訴処分となっているが、一旦成立した犯人隠避罪に影響はない。
したがって、丁に犯人蔵匿罪が成立する。

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犯人でないと信じて罰金以上の刑に当たる犯罪の被疑者として逮捕状が発せられている者をかくまった場合の犯人隠匿罪の成否(R6) 大判大正4年3月4日

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概要
罰金以上の刑に当たる犯罪の被疑者として逮捕状が発せられている者も「罪を犯した者」に当たり、このことの認識で故意として足り、犯人であると認識することは不要である。
判例
事案:罰金以上の刑に当たる犯罪の被疑者として逮捕状が発せられている者をかくまった事案において、犯人隠避罪の成否が問題となった。

判旨:「犯人ヲ隠避セシムルノ罪ハ罰金以上ノ刑ニ該ル犯人ナルコトヲ認識シ之ヲ隠避セシムルノ行為アルニ因リテ成立シ其犯人カ如何ナル罪ヲ犯シタル者ナリヤ又犯人カ行為者ノ親族ニ非サル限リ其何某ナリヤノ認識ヲ要セサルモノトス」
過去問・解説

(R6 司法 第18問 ア)
甲は、恐喝事件の被疑者としてAに逮捕状が発せられていると知りながら、Aが犯人ではないと信じてAを自宅にかくまったが、その後、Aが逮捕され、Aに対する有罪判決が確定した。 この場合、Aが犯人蔵匿罪の「罪を犯した者」ではないと甲が誤信していたから、甲に同罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭24.8.9)は、本肢と同種の事案において、「刑法第103条は司法に関する国権の作用を防害する者を処罰しようとするのであるから、『罪ヲ犯シタル者』は犯罪の嫌疑によって捜査中の者をも含む…。」としている。
甲は、Aが犯人ではないと信じていたものの、Aは、恐喝事件の被疑者として逮捕状が発せられているのであるから、「罪を犯した者」に当たる。
また、甲も逮捕状が発付されていることを認識していたのであるから、故意に欠けるところもない。
したがって、甲に犯人隠避罪が成立する。

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犯人蔵匿罪と法廷刑が罰金以上の刑であることの認識の要否 最一小決昭和29年9月30日

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概要
被告人において被蔵匿者が密入国者であることを認識してこれを蔵匿した以上、その刑が罰金以上であることの認識がなくても、犯人蔵匿罪が成立する。
判例
事案:密入国者らを自己の所有する船舶に乗船させて蔵匿したという事案において、法廷刑が罰金以上の刑であることの認識の要否が問題となった。

判旨:「被告人において被蔵匿者が密入国者であることを認識してこれを蔵匿した以上、その刑が罰金以上であることの認識がなくても、犯人蔵匿罪が成立する。」
過去問・解説

(H24 共通 第10問 イ)
甲は、乙が強制執行妨害目的財産損壊罪を犯したことを認識した上で乙をかくまったが、同罪の刑が罰金以上であることを知らなかった。甲には犯人蔵匿罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決昭29.9.30)は、本肢と同種の事案において、「刑が罰金以上であることの認識がなくても、犯人蔵匿罪が成立する。」としている。
したがって、甲が、強制執行妨害目的財産損壊罪の法定刑が罰金以上の刑であることを認識していなくても、甲に犯人蔵匿罪が成立する。


(R6 司法 第18問 イ)
甲は、Aが窃盗事件の犯人であると知りながら、甲が所有する船舶にAを乗船させてかくまった。この場合、甲が窃盗罪の法定刑が罰金以上の刑であることを認識していなくても、甲に犯人蔵匿罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決昭29.9.30)は、本肢と同種の事案において、「刑が罰金以上であることの認識がなくても、犯人蔵匿罪が成立する。」としている。
したがって、甲が、窃盗罪の法定刑が罰金以上の刑であることを認識していなくても、甲に犯人蔵匿罪が成立する。

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