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刑法 防衛行為の対象となる「法益」の意義 最一小判昭和24年8月18日 - 解答モード
概要
正当防衛、緊急避難における防衛行為の対象となる「法益」には個人的法益のみならず、公共の福祉を最高の指導原理とする新憲法の理念から言っても、公共の福祉をも含めてすべての法益は防衛させられるべきであるとする刑法の理念から言っても、国家的、国民的、公共的法益も含まれる場合がある。
判例
事案:官公庁職員各労働組合総罷業を決行すべき旨のいわゆる二・一ゼネスト突入宣言をして、罷業の中止を勧告するため産別会議議長を訪れ傷害を加えたという事案において、正当防衛、緊急避難における防衛行為の対象となる「法益」に国家的法益が含まれるかが問題となった。
判旨:「刑法37条にいわゆる『現在の危難』についても、刑法36条の『急迫の侵害』と同様のことが言い得るわけである。ここにおける防衛行為は個人的法益の防衛行為ではなく、国民の安全利福の防衛に関するものである。かかる公益ないし国家的法益の防衛が、正当防衛として認められ得るか否かについては、これを否定する学説見解もないではないが、公共の福祉を最高の指導原理とする新憲法の理念から言っても、公共の福祉をも含めてすべての法益は防衛させられるべきであるとする刑法の理念から言っても、国家的、国民的、公共的法益についても正当防衛の許さるべき場合が存することを認めるべきである。だがしかし、本来国家的、公共的法益を保全防衛することは、国家又は公共団体の公的機関の本来の任務に属する事柄であって、これをた易く自由に私人又は私的団体の行動に委すことは却って秩序を乱し事態を悪化させる危険を伴う虞がある。それ故、かかる公益のための正当防衛等は、国家公共の機関の有効な公的活動を期待し得ない極めて緊迫した場合においてのみ例外的に許容さるべきものと解するのが相当とする。刑法36条及び37条にいわゆる『已むことを得ざるに出でたる行為』という観点から眺めるならば、一層容易にかつ明白に同じ結論に達することが理解されるであろう。防衛行為が已むことを得ないとは、当該具体的事態の下において当時の社会通念が防衛行為として当然性、妥当性を認め得るものを言うのである。そして、殊に前述のごとく国家的、公共的法益に対する侵害等を私人が防衛する場合に、已むことを得ざるものとして当然許容さるべき範囲は、整備せる現代国家の機構組織の下においては、必然的に比較的極めて狭少な限局されたものたるべきことは国家理論の帰結として何人も承認しなければならぬところである。」
判旨:「刑法37条にいわゆる『現在の危難』についても、刑法36条の『急迫の侵害』と同様のことが言い得るわけである。ここにおける防衛行為は個人的法益の防衛行為ではなく、国民の安全利福の防衛に関するものである。かかる公益ないし国家的法益の防衛が、正当防衛として認められ得るか否かについては、これを否定する学説見解もないではないが、公共の福祉を最高の指導原理とする新憲法の理念から言っても、公共の福祉をも含めてすべての法益は防衛させられるべきであるとする刑法の理念から言っても、国家的、国民的、公共的法益についても正当防衛の許さるべき場合が存することを認めるべきである。だがしかし、本来国家的、公共的法益を保全防衛することは、国家又は公共団体の公的機関の本来の任務に属する事柄であって、これをた易く自由に私人又は私的団体の行動に委すことは却って秩序を乱し事態を悪化させる危険を伴う虞がある。それ故、かかる公益のための正当防衛等は、国家公共の機関の有効な公的活動を期待し得ない極めて緊迫した場合においてのみ例外的に許容さるべきものと解するのが相当とする。刑法36条及び37条にいわゆる『已むことを得ざるに出でたる行為』という観点から眺めるならば、一層容易にかつ明白に同じ結論に達することが理解されるであろう。防衛行為が已むことを得ないとは、当該具体的事態の下において当時の社会通念が防衛行為として当然性、妥当性を認め得るものを言うのである。そして、殊に前述のごとく国家的、公共的法益に対する侵害等を私人が防衛する場合に、已むことを得ざるものとして当然許容さるべき範囲は、整備せる現代国家の機構組織の下においては、必然的に比較的極めて狭少な限局されたものたるべきことは国家理論の帰結として何人も承認しなければならぬところである。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%
(H24 予備 第2問 3)
刑法第36条にいう「権利」は個人的法益を指し、国家的法益や社会的法益は含まれない。
全体の正答率 : 100%
(H27 予備 第3問 ア)
国家的法益に対する現在の危難を避けるためにした行為については、緊急避難が成立することはない。
全体の正答率 : 100%
(H28 共通 第9問 1)
国家的法益を防衛するための正当防衛が成立する余地はない。
全体の正答率 : 100%
(R3 共通 第17問 4)
刑法第36条第1項にいう「権利」は、個人的法益に限られ、国家的・社会的法益は、これに含まれない。
全体の正答率 : 100%
(R5 司法 第12問 ア)
緊急避難は、自己又は他人の生命、身体、自由又は財産という個人的法益に対する現在の危難を避けるためにした行為に成立するものであるから、国家的法益に対する危難を避けるためにした行為に緊急避難が成立することはない。