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刑法 ATMと窃盗の着手 京都地判平成18年5月12日 - 解答モード
概要
被害者名義のキャッシュカードを使用して各ATM機を操作して残高照会をした行為に窃盗罪の実行の着手が認められる。
判例
事案:被害者名義のキャッシュカードを使用して各ATM機を操作して残高照会をした事案において、窃盗罪の実行の着手が認められるかが問題となった。
判旨:「弁護人らは、C銀行D支店及びE郵便局での各ATM機の操作について、残高照会を行うことは金銭を確認するだけの準備行為にとどまり、本件では、残高照会後に引き出し手続に移行するつもりであったかどうかについては立証がなされていないことから、単なる準備行為として窃盗未遂罪は成立しない旨主張している。しかし、第三者が他人のキャッシュカードを使用して預金を引き出す場合、残高がどれくらいであるか認識している場合でもない限り、どの程度の金額を引き出すことができるか分からないのであるから、本件の行為者は、まず残高照会を行い、残高を確認した後に現金を引き出すのが合理的な行動であるといえ、さらに、不正に他人のキャッシュカードを使用する場合はもとより、自らのキャッシュカードを正当に使用してATM機を操作して現金を引き出す場合にも、残高照会を行い、残高を確認した上で必要な金額を引き出すということがしばしばなされているところである。本件の行為者は、C銀行D支店及びE郵便局でもV名義のキャッシュカードを使用して各ATM機を操作しているところ、他人のキャッシュカードを使用してATM機を操作する目的としては現金を引き出すということあるいはその預金引き出しの前提として残高の確認をしていること以外には想定し難い。本件の行為者は、本件直前にA信用金庫B支店において預金を引き出しているが、その際にもまず残高照会を行った上で甲野名義の口座から現金を引き出している。この同一人物が、Vの預金の残高照会をしているのであり、それはとりもなおさず、預金を引き出す前提で預金されている金額の確認をしていることは明らかであると認められる。そして、キャッシュカードをATM機に挿入し、残高照会を行った上で必要な金額を引き出そうとしている場合において、残高照会を預金の引き出しと全く別個の独立した行為であるととらえることは行為の実情を無視した形式的なものといわざるを得ないものであって、各行為は密接に関連した一連の行為ととらえるのが相当である。それ故、C銀行D支店及びE郵便局でV名義のキャッシュカードを使用して各ATM機を操作して残高照会をした行為は現金を引き出すための前提行為ととらえることができるのであって、すなわち窃盗罪の実行の着手行為として残高照会をしたものと認めることができると考える。」
判旨:「弁護人らは、C銀行D支店及びE郵便局での各ATM機の操作について、残高照会を行うことは金銭を確認するだけの準備行為にとどまり、本件では、残高照会後に引き出し手続に移行するつもりであったかどうかについては立証がなされていないことから、単なる準備行為として窃盗未遂罪は成立しない旨主張している。しかし、第三者が他人のキャッシュカードを使用して預金を引き出す場合、残高がどれくらいであるか認識している場合でもない限り、どの程度の金額を引き出すことができるか分からないのであるから、本件の行為者は、まず残高照会を行い、残高を確認した後に現金を引き出すのが合理的な行動であるといえ、さらに、不正に他人のキャッシュカードを使用する場合はもとより、自らのキャッシュカードを正当に使用してATM機を操作して現金を引き出す場合にも、残高照会を行い、残高を確認した上で必要な金額を引き出すということがしばしばなされているところである。本件の行為者は、C銀行D支店及びE郵便局でもV名義のキャッシュカードを使用して各ATM機を操作しているところ、他人のキャッシュカードを使用してATM機を操作する目的としては現金を引き出すということあるいはその預金引き出しの前提として残高の確認をしていること以外には想定し難い。本件の行為者は、本件直前にA信用金庫B支店において預金を引き出しているが、その際にもまず残高照会を行った上で甲野名義の口座から現金を引き出している。この同一人物が、Vの預金の残高照会をしているのであり、それはとりもなおさず、預金を引き出す前提で預金されている金額の確認をしていることは明らかであると認められる。そして、キャッシュカードをATM機に挿入し、残高照会を行った上で必要な金額を引き出そうとしている場合において、残高照会を預金の引き出しと全く別個の独立した行為であるととらえることは行為の実情を無視した形式的なものといわざるを得ないものであって、各行為は密接に関連した一連の行為ととらえるのが相当である。それ故、C銀行D支店及びE郵便局でV名義のキャッシュカードを使用して各ATM機を操作して残高照会をした行為は現金を引き出すための前提行為ととらえることができるのであって、すなわち窃盗罪の実行の着手行為として残高照会をしたものと認めることができると考える。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%
(H22 司法 第3問 5)
甲は、不正に取得した乙名義のキャッシュカードを使用して同人の預金口座から現金を引き出そうと考え、同カードを銀行の現金自動預払機に挿入し、暗証番号を入力した。甲は、同カードの正しい暗証番号を知っていたが、その入力を誤ったため払戻しを受けることができなかった場合でも、窃盗罪の実行の着手が認められる。