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刑法 威力業務妨害罪にいう「威力」 最二小決平成4年11月27日 - 解答モード
概要
執務に際して目にすることが予想される場所に猫の死がいなどを入れておき、被害者にこれを発見させ、畏怖させるに足りる状態においた一連の行為は、被害者の行為を利用する形態でその意思を制圧するような勢力を用いたものということができるから、234条にいう「威力を用い」た場合に当たる。
判例
事案:消防長の業務を妨害しようと企て、同人のロッカー内の作業服ポケットに犬のふんを、事務机中央引き出し内に赤く染めた猫の死がいをそれぞれ入れておき、消防長に、犬のふん及び猫の死がいを順次発見させ、よって恐怖感や嫌悪感を抱かせて同人を畏怖させ、執務を不可能にさせたという事案において、威力業務妨害罪にいう「威力」に当たるかが問題となった。
判旨:「被告人は、部下の消防署職員と共謀の上、町消防本部消防長の業務を妨害しようと企て、ひそかに、消防本部消防長室にある同人のロッカー内の作業服ポケットに犬のふんを、事務机中央引き出し内にマーキュロクロム液で赤く染めた猫の死がいをそれぞれ入れておき、翌朝執務のため消防長室に入った消防長をして、右犬のふん及び猫の死がいを順次発見させ、よって恐怖感や嫌悪感を抱かせて同人を畏怖させ、当日の朝行われる予定であった部下職員からの報告の受理、各種決裁事務の執務を不可能にさせたというのである。右のように、被害者が執務に際して目にすることが予想される場所に猫の死がいなどを入れておき、被害者にこれを発見させ、畏怖させるに足りる状態においた一連の行為は、被害者の行為を利用する形態でその意思を制圧するような勢力を用いたものということができるから、刑法234条にいう『威力ヲ用ヒ』た場合に当たると解するのが相当であり、被告人の本件行為につき威力業務妨害罪が成立するとした第一審判決を是認した原判断は、正当である。」
判旨:「被告人は、部下の消防署職員と共謀の上、町消防本部消防長の業務を妨害しようと企て、ひそかに、消防本部消防長室にある同人のロッカー内の作業服ポケットに犬のふんを、事務机中央引き出し内にマーキュロクロム液で赤く染めた猫の死がいをそれぞれ入れておき、翌朝執務のため消防長室に入った消防長をして、右犬のふん及び猫の死がいを順次発見させ、よって恐怖感や嫌悪感を抱かせて同人を畏怖させ、当日の朝行われる予定であった部下職員からの報告の受理、各種決裁事務の執務を不可能にさせたというのである。右のように、被害者が執務に際して目にすることが予想される場所に猫の死がいなどを入れておき、被害者にこれを発見させ、畏怖させるに足りる状態においた一連の行為は、被害者の行為を利用する形態でその意思を制圧するような勢力を用いたものということができるから、刑法234条にいう『威力ヲ用ヒ』た場合に当たると解するのが相当であり、被告人の本件行為につき威力業務妨害罪が成立するとした第一審判決を是認した原判断は、正当である。」
過去問・解説
(H19 司法 第11問 5)
自己の勤務する会社の上司に恨みを持ち、同人の事務机の引き出し内に犬の死がいを入れておいて同人にこれを発見させ、畏怖させた行為は、これにより同人の当日の各種決裁事務等の執行が不可能になったとしても、「威力を用いた」とはいえないから、威力業務妨害罪には当たらない。
(正答)✕
(解説)
判例(最決平4.11.27)は、本肢と同種の事案において、「被害者が執務に際して目にすることが予想される場所に猫の死がいなどを入れておき、被害者にこれを発見させ、畏怖させるに足りる状態においた一連の行為は、被害者の行為を利用する形態でその意思を制圧するような勢力を用いたものということができるから、刑法234条にいう『威力ヲ用ヒ』た場合に当たる…。」としている。
したがって、上司の事務机の引き出し内に犬の死がいを入れておいてこれを発見させ、上司を畏怖させた結果、これにより同人の当日の各種決裁事務等の執行が不可能となったのであれば、被害者の行為を利用した形態の威力を用いて業務を妨害したとして、威力業務妨害罪が成立する。
(R4 共通 第4問 5)
威力業務妨害罪における「威力」は、被害者の面前で行使される必要があるので、被害者が執務のために日頃使っている机の引き出しに猫の死骸をひそかに入れた場合、後に被害者がこれを発見するに至ったとしても、威力業務妨害罪は成立しない。