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刑法 情報の財物性 東京地判昭和59年6月28日 - 解答モード

概要
情報そのものは「財物」(235条)と認められない。
判例
事案:製薬の研究資料が編綴されたファイル1冊を窃取したという事案において、情報が「財物」に当たるかが問題となった。

判旨:「情報ないし思想、観念等(以下『情報』という。)の化体(記載・入力等。以下同様)された用紙などの媒体(以下『媒体』という。)が刑法235条にいう財物に該当するか否かを判断するに当たって、弁護人主張のように情報と媒体を分離して判定するのは相当でない。けだし、媒体を離れた情報は客観性、存続性に劣り、情報の内容が高度・複雑であればあるほど、その価値は減弱している。媒体に化体されていてこそ情報は、管理可能であり、本来の価値を有しているといって過言ではない。情報の化体された媒体の財物性は、情報の切り離された媒体の素材だけについてではなく、情報と媒体が合体したものの全体について判断すべきであり、ただその財物としての価値は、主として媒体に化体された情報の価値に負うものということができる。そして、この価値は情報が権利者(正当に管理・利用できる者を含む。以下同様)において独占的・排他的に利用されることによって維持されることが多い。また、権利者において複製を許諾することにより、一層の価値を生み出すことも可能である。情報の化体された媒体は、こうした価値も内蔵しているものといえる。以上のことは、判示窃盗にかかる本件ファイルについても同様であって、本件ファイルは、判示医薬品に関する情報が媒体に化体され、これが編綴されたものとして、財物としての評価を受けるものといわなければならない。
 …不法領得の意思の有無について検討する。まず、本件ファイルの財物としての価値は、前示のように情報が化体されているところにあるとともに、権利者以外の者の利用が排除されていることにより維持されているのであるから、複写という方法によりこの情報を他の媒体に転記・化体して、この媒体を手許に残すことは、原媒体ともいうべき本件ファイルそのものを窃かに権利者と共有し、ひいては自己の所有物とするのと同様の効果を挙げることができる。これは正に権利者でなければ許容されないことである。しかも、本件ファイルが権利者に返還されるとしても、同様のものが他に存在することにより、権利者の独占的・排他的利用は阻害され、本件ファイルの財物としての価値は大きく減耗するといわなければならない。
 …『窃盗罪の成立に必要な不法領得の意思とは、権利者を排除し、他人の財物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用又は処分する意思をいい、永久的にその物の経済的利益を保持する意思であることを必要としない』と解するのを相当とするところ、本件窃盗は、判示にもあるように、本件ファイルを複写して、これに化体された情報を自らのものとし、前示のような効果を狙う意図と目的のために持ち出したものであるから、これは正に被告人らにおいて、権利者を排除し、本件ファイルを自己の所有物と同様にその経済的用法に従い利用又は処分する意思であったと認められるのが相当である。
 そして、こうした意思で本件ファイルを持ち出すことは、たとえ複写後すみやかに返還し、その間の権利者の利用を妨げない意思であり、かつ物理的損耗を何ら伴わないものであっても、…不法領得の意思があったものと認めざるを得ない。」
過去問・解説

(H19 司法 第17問 オ)
自己が勤務する会社のパソコンのハードディスクに記録されていたデータを自分の趣味に利用しようとし、会社内で、自己の所有するフロッピーディスクに同データをコピーした行為に窃盗罪が成立するか。

(正答)

(解説)
裁判例(東京地判昭59.6.28)は、薬剤の情報の記載されたファイルが窃取された事案において、「媒体を離れた情報は客観性、存続性に劣り、情報の内容が高度・複雑であればあるほど、その価値は減弱している。媒体に化体されていてこそ情報は、管理可能であり、本来の価値を有しているといって過言ではない。情報の化体された媒体の財物性は、情報の切り離された媒体の素材だけについてではなく、情報と媒体が合体したものの全体について判断すべき…。」として、情報そのものを財物と認めていない。
したがって、会社内でデータをコピーしたに過ぎず、フロッピーディスクも自己所有である場合、コピー行為に窃盗罪は成立しない。

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