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刑法 職務執行妨害罪の「暴行又は脅迫」の程度 最一小判平成元年3月9日 - 解答モード
概要
罵声を浴びせながら一方的に抗議する過程において、丸めた紙を相手方の顔面付近に突きつけてその先端をあごに触れさせ、相手方の座っているいすを揺さぶった行為及び相手方がいすから立ち上がるのを阻止するためその手首を握った行為は、いずれも公務執行妨害罪にいう「暴行」に当たる。
判例
事案:丸めた紙を相手方の顔面付近に突きつけてその先端をあごに触れさせ、相手方の座っているいすを揺さぶり、相手方がいすから立ち上がるのを阻止するためその手首を握ったという事案において、公務執行妨害罪にいう「暴行」に当たるかが問題となった。
判旨:「被告人甲は、新運用方式の内容の説明を聞くため、また、被告人乙は、右融資制度に基づく融資申込みをするため、それぞれ右県民サロン室に赴き、融資申込みの受付事務の職務に従事していた兵庫県同和局企画調整課企画調整係長A(当時45年)から、新運用方式に基づく融資手続などの説明を受けているうち、やがてその説明に対する不満をあらわにして、同人に対し、こもごも『ぼけ』『どあほ』などと罵声を浴びせながら一方的に抗議し、同日午後2時ないし3時ころ、被告人甲は、激高した態度で所携のパンフレットを丸めてAの座っていたいすのメモ台部分を数回たたいた上、丸めた右パンフレットを同人の顔面付近に2、3回突きつけ、少なくとも1回その先端をあごに触れさせ、更に、約2回にわたり、同人が座っていたいすのメモ台部分を両手で持って右いすの前脚を床から持ち上げては落とすことによりその身体を揺さぶり、また、被告人乙は、Aがいすのメモ台部分に両手をついて立ち上がりかけたところ、これを阻止するため、その右手首を握ったというのである。 右事実を前提として、原判決における法令の解釈適用について検討すると、原判決が認定した被告人両名の右各行為は、被告人らが罵声を浴びせながら一方的に抗議する過程でなされたものであることをも考慮すれば、いずれも公務執行妨害罪にいう暴行に当たるものというべきであるから、これらが同罪にいう暴行に当たらないとした原判断は、刑法95条1項の解釈適用を誤ったものといわざるを得ない。」
判旨:「被告人甲は、新運用方式の内容の説明を聞くため、また、被告人乙は、右融資制度に基づく融資申込みをするため、それぞれ右県民サロン室に赴き、融資申込みの受付事務の職務に従事していた兵庫県同和局企画調整課企画調整係長A(当時45年)から、新運用方式に基づく融資手続などの説明を受けているうち、やがてその説明に対する不満をあらわにして、同人に対し、こもごも『ぼけ』『どあほ』などと罵声を浴びせながら一方的に抗議し、同日午後2時ないし3時ころ、被告人甲は、激高した態度で所携のパンフレットを丸めてAの座っていたいすのメモ台部分を数回たたいた上、丸めた右パンフレットを同人の顔面付近に2、3回突きつけ、少なくとも1回その先端をあごに触れさせ、更に、約2回にわたり、同人が座っていたいすのメモ台部分を両手で持って右いすの前脚を床から持ち上げては落とすことによりその身体を揺さぶり、また、被告人乙は、Aがいすのメモ台部分に両手をついて立ち上がりかけたところ、これを阻止するため、その右手首を握ったというのである。 右事実を前提として、原判決における法令の解釈適用について検討すると、原判決が認定した被告人両名の右各行為は、被告人らが罵声を浴びせながら一方的に抗議する過程でなされたものであることをも考慮すれば、いずれも公務執行妨害罪にいう暴行に当たるものというべきであるから、これらが同罪にいう暴行に当たらないとした原判断は、刑法95条1項の解釈適用を誤ったものといわざるを得ない。」
過去問・解説
(R2 司法 第8問 ア)
甲は、市役所の生活保護係職員乙による生活保護に関する説明に不満を抱き、同人に罵声を浴びせながら抗議するとともに、丸めたパンフレットを同人の顔面付近に2、3回突き付け、そのうち1回はパンフレットの先端が同人の顎に触れ、さらに、約2回にわたり、乙が座っている椅子を両手で持って椅子の前脚を床から持ち上げては落とすことによりその身体を揺さぶった。甲の行為は、公務執行妨害罪にいう「暴行」に当たらないので、甲に公務執行妨害罪は成立しない。