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刑法 身代わり犯人と犯人隠避教唆罪の成否 最一小決平成元年5月1日 - 解答モード

概要
犯人が逮捕勾留された後であっても、他の者を教唆して身代わり犯人として警察署に出頭させ、自己が犯人である旨の虚偽の陳述をさせた行為は、犯人隠避教唆罪を構成する。
判例
事案:逮捕勾留中の犯人の身代わりを出頭させた事案において、犯人隠避教唆罪の成否が問題となった。

判旨:「刑法103条は、捜査、審判及び刑の執行等広義における刑事司法の作用を妨害する者を処罰しようとする趣旨の規定であって(最高裁昭和24年(れ)第1566号同年8月9日第三小法廷判決・刑集3巻9号1440頁参照)、同条にいう『罪ヲ犯シタル者』には、犯人として逮捕勾留されている者も含まれ、かかる者をして現になされている身柄の拘束を免れさせるような性質の行為も同条にいう『隠避』に当たると解すべきである。そうすると、犯人が殺人未遂事件で逮捕勾留された後、被告人が他の者を教唆して右事件の身代り犯人として警察署に出頭させ、自己が犯人である旨の虚偽の陳述をさせた行為を犯人隠避教唆罪に当たるとした原判断は、正当である。」
過去問・解説

(H19 司法 第7問 ウ)
暴力団幹部である甲は、自己の犯した業務上過失致死事件について、配下の組員Dに命じて、Dを自己の身代わり犯人として警察に出頭させた。この場合、犯人隠避教唆罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決平元.5.1)は、本肢と同種の事案において、「『罪ヲ犯シタル者』には、犯人として逮捕勾留されている者も含まれ、かかる者をして現になされている身柄の拘束を免れさせるような性質の行為も同条にいう『隠避』に当たる…。…犯人が殺人未遂事件で逮捕勾留された後、被告人が他の者を教唆して右事件の身代り犯人として警察署に出頭させ、自己が犯人である旨の虚偽の陳述をさせた行為を犯人隠避教唆罪に当たるとした原判断は、正当である。」としている。
また、別の判例(最決昭35.7.18)は、「犯人が他人を教唆して自己を隠避させたときは、犯人隠避罪の教唆犯が成立する…。」としている。
犯人である甲は、自己の犯した業務上過失致死事件について、第三者Dに命じて、Dを自己の身代わり犯人として警察に出頭させているから、甲に犯人隠避罪の教唆犯が成立する。


(H22 司法 第17問 2)
甲は、傷害事件で勾留されている乙の起訴を免れさせるために、丙に対し、乙の身代わり犯人となるように唆し、これにより丙は、警察に出頭して上記傷害事件の真犯人は自分である旨虚偽の事実を申告した。乙は既に拘束されているので、甲に犯人隠避教唆罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最決平元.5.1)は、本肢と同種の事案において、「『罪ヲ犯シタル者』には、犯人として逮捕勾留されている者も含まれ、かかる者をして現になされている身柄の拘束を免れさせるような性質の行為も同条にいう『隠避』に当たる…。…犯人が殺人未遂事件で逮捕勾留された後、被告人が他の者を教唆して右事件の身代り犯人として警察署に出頭させ、自己が犯人である旨の虚偽の陳述をさせた行為を犯人隠避教唆罪に当たる…。」としている。
甲は、勾留されている乙の起訴を免れさせるために、丙に対し、乙の身代わり犯人となるように唆し、これにより丙は、警察に出頭して真犯人は自分である旨虚偽の事実を申告している。
したがって、乙が既に拘束されているとしても、身柄の拘束を免れさせるような性質の行為であるとして、甲に犯人隠避罪の教唆犯が成立する。


(H24 共通 第10問 ウ)
甲は、殺人罪を犯して逮捕勾留された乙に依頼され、乙の身代わり犯人として警察署に出頭し、自己が犯人であるという嘘の申告をした。甲には犯人隠避罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決平元.5.1)は、本肢と同種の事案において、「『罪ヲ犯シタル者』には、犯人として逮捕勾留されている者も含まれ、かかる者をして現になされている身柄の拘束を免れさせるような性質の行為も同条にいう『隠避』に当たる…。…犯人が殺人未遂事件で逮捕勾留された後、被告人が他の者を教唆して右事件の身代り犯人として警察署に出頭させ、自己が犯人である旨の虚偽の陳述をさせた行為を犯人隠避教唆罪に当たる…。」としている。
甲は、殺人罪を犯して逮捕勾留された乙に依頼され、乙の身代わり犯人として警察署に出頭し、自己が犯人であるという嘘の申告をしているから、甲に犯人隠避罪が成立する。


(H29 共通 第14問 イ)
犯人隠避罪の「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」には、犯人として既に逮捕・勾留されている者は含まれない。

(正答)

(解説)
判例(最決平元.5.1)は、本肢と同種の事案において、「『罪ヲ犯シタル者』には、犯人として逮捕勾留されている者も含まれ、かかる者をして現になされている身柄の拘束を免れさせるような性質の行為も同条にいう『隠避』に当たる…。…犯人が殺人未遂事件で逮捕勾留された後、被告人が他の者を教唆して右事件の身代り犯人として警察署に出頭させ、自己が犯人である旨の虚偽の陳述をさせた行為を犯人隠避教唆罪に当たる…。」としている。


(R4 共通 第20問 オ)
【事例】
 甲(女性、16歳)は、高校の同級生A(女性、16歳)が非行グループと交際し、飲酒喫煙を繰り返していることを知り、それらのAの具体的行動を、特に口止めもせずに同級生2名に告げたところ、同人らを介して、Aの同行動がクラスの全生徒30名の知るところとなった。甲のせいで自己の行状に関するうわさが広まったことを知ったAは、甲を呼び出して暴行を加えた。そのことを知った甲の兄乙は、Aに報復しようと考え、ある日の深夜、A宅付近に自己の車を停め、Aを待ち伏せていたところ、Aの姉B(20歳)がA宅に入ろうとするのを見て、BをAと誤信し、Bを無理やり同車のトランクに押し込んで数キロメートル走行した上、郊外の廃工場に連行した。乙は、上記廃工場において、Bの顔面を数発殴打するとともに、はさみを使ってBの頭髪を10センチメートル程度切断した。乙は、Bが泣き出したのを見て満足し、その場から立ち去ることにしたが、その際、Bのバッグの中から財布を抜き取り、これを持ち去った。乙は、上記財布内にB名義の運転免許証やキャッシュカードが入っていたため、BをAと間違えたことに気付いたが、同カードを不正に使用し、Bの預金で乙の友人Cへの借金を返済しようと考えた。乙は、コンビニエンスストアの現金自動預払機に同カードを挿入し、暗証番号としてBの誕生日を入力したところ、取引ができる状態になったので、その場で、同現金自動預払機を操作し、B名義口座から直接C名義口座へ50万円を送金した。その後、甲の交際相手丙は、乙が警察に逮捕されるのではないかと不安に思った甲からの依頼に応じ、乙の上記一連の犯行について、乙の身代わり犯人として警察に出頭した。

【記述】
丙が乙の身代わり犯人として警察に出頭した行為は、犯人の特定を誤らせることを通じて間接的に犯人の身柄確保を妨げるものにすぎないから、犯人隠避罪は成立せず、証拠偽造罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決平元.5.1)は、本肢と同種の事案において、「『罪ヲ犯シタル者』には、犯人として逮捕勾留されている者も含まれ、かかる者をして現になされている身柄の拘束を免れさせるような性質の行為も同条にいう『隠避』に当たる…。…犯人が殺人未遂事件で逮捕勾留された後、被告人が他の者を教唆して右事件の身代り犯人として警察署に出頭させ、自己が犯人である旨の虚偽の陳述をさせた行為を犯人隠避教唆罪に当たる…。」としている。乙は、暴行罪等の「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」に当たるから、丙が乙の身代わりとして出頭したことは、「隠避」に当たる。
したがって、犯人の特定を誤らせることを通じて間接的に犯人の身柄確保を妨げるものにすぎないとしても、丙に犯人隠避罪が成立する。

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