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短答判例

相当広範囲に定着していた通称使用と私文書偽造 最二小判昭和59年2月17日

概要
他人の氏名が自己を指称する通称として社会生活上定着していた場合であっても、その名義で再入国許可申請書を作成すれば、私文書偽造罪が成立する。
判例
事案:密入国者が、20年以上にわたって他人の氏名を自己の氏名として公然使用し、その氏名が自己を指称する通称として相当広範囲に定着していた状況で、当該通称名義の再入国許可申請書を作成した場合に、私文書偽造罪が成立するかが問題となった。

判旨:「再入国許可申請書は、右のような再入国の許可という公の手続内において用いられる文書であり、また、再入国の許可は、申請人が適法に本邦に在留することを前提としているため、その審査にあたつては、申請人の地位、資格を確認することが必要、不可欠のこととされているのである。したがつて、再入国の許可を申請するにあたつては、ことがらの性質上、当然に、本名を用いて申請書を作成することが要求されているといわなければならない。
 被告人がXという名称を永年自己の氏名として公然使用した結果、それが相当広範囲に被告人を指称する名称として定着し、原判決のいう他人との混同を生ずるおそれのない高度の特定識別機能を有するに至つたとしても、右のように被告人が外国人登録の関係ではXになりすましていた事実を否定することはできない。
 本件文書に表示された金哲秀の氏名から認識される人格は、適法に本邦に在留することを許されているXであつて、密入国をし、なんらの在留資格をも有しない被告人とは別の人格であることが明らかであるから、そこに本件文書の名義人と作成者との人格の同一性に齟齬を生じているというべきである。したがつて、被告人は、本件再入国許可申請書の作成名義を偽り、他人の名義でこれを作成、行使したものであり、その所為は私文書偽造、同行使罪にあたると解するのが相当である。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(R8 共通 第9問 5)
本邦に密入国した甲が、外国人の新規登録申請をしていないにもかかわらず、X名義で発行された外国人登録証明書を他から取得し、X名義で登録事項確認申請を繰り返すことにより、自らが外国人登録証明書のXその人であるかのように装って本邦に在留を続け、Xという名称を永年自己の氏名として公然使用した結果、それが相当広範囲に甲を指称するものとして定着していた状況において、行使の目的で、X名義の再入国許可申請書を作成した場合、甲に私文書偽造罪は成立しない。

(正答)✕

(解説)
判例(最判昭59.2.17)は、本肢と同種の事案において、「再入国許可申請書は、…公の手続において用いられる文書であり、…再入国の許可を申請するにあたつては、ことがらの性質上、当然に、本名を用いて申請書を作成することが要求されているといわなければならない。」と判示している。
したがって、Xという名称が相当広範囲に甲を指称するものとして定着していたとしても、再入国許可申請書から認識される名義人は、適法に本邦に在留することを許されたXであり、密入国して在留資格を有しない甲とは別の人格である。
よって、文書の名義人と作成者との人格の同一性を偽っていることから「偽造」に当たり、甲に私文書偽造罪が成立する。

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