現在お使いのブラウザのバージョンでは、本サービスの機能をご利用いただけない可能性があります
バージョンアップを試すか、Google ChromeやMozilla Firefoxなどの最新ブラウザをお試しください
文書偽造の罪 - 解答モード
写真コピーの文書性 東京地判昭和55年7月24日
概要
判例
判旨:「本件写真コピーの文書性
本件写真コピーの文書性を判断するに当っては、次の3点に留意する必要がある。すなわち、(1)写としての正確性を論ずるに際しては、まず、真正に作成されたコピーの場合を念頭に置き、偽造変造にかかるコピーについては二次的なものとして考察すること、(2)写としての正確性がどのような観点から要求されているかを明確に認識しておくこと、(3)私文書による取引等の当事者である一般通常人の認識を基礎とすべきこと、これである。
右(1)は、真正な写真コピーに対する公共的信用の保護を問題とする以上当然なことであり、当初から偽造、変造にかかる写真コピーを前提としていたのでは、その正確性を判断することは論外である。
そこで、真正な写真コピーを前提として考えれば、それは、「写ではあるが、複写した者の意識が介在する余地のない、機械的に正確な複写版であって、紙質等の点を除けば、その内容のみならず筆跡、形状にいたるまで、原本と全く同じく正確に再現されている」(前示第二小法廷判決)ものと言えよう。第一項に指摘したように、写真コピーの正確性には、機械そのものの能力による限界があることは事実である。ここで、右(2)に指摘した正確性の要求される観点の認識が重要性を帯びて来る。たとえば、通貨偽造罪や有価証券偽造罪においては、写真コピー程度の再現力では、たかだか模造の問題を生じ得るに止まるであろうし、また、印影の真否を鑑定するような場合には、数次の再複写を経たような写真コピーは不適当である。しかし、ここでは、私文書偽造罪における文書性を論じているのであり、さきに指摘したとおり、そこで問題となるのは、作成名義人の表示する意思又は観念の伝達手段として、写作成者の認証行為をまつまでもなく、写それ自体として原本との同一性が保証されているとみられる程度の再現力を有するか否かということであり、色彩の再現力の有無や顕微鏡的誤差の存在は、これを捨象して妨げないものと言うべきである。むしろ、写それ自体が作成される経過が純粋に機械的であって人為的な誤写の可能性が排除されているという性質が認められる限り、筆跡、形状に至るまで原本と合同又は相似であるということまでは必ずしも必要ではないとすら言えるのである(原本が作成名義人自身の手書きによるものである場合には、その筆跡、形状が再現されていることは、そこに表示されている意思又は観念が紛れもなく原本作成名義人自身のものであることを推認し易いが、つねにそれが必要である訳ではない。)写真コピーの性質として、筆跡、形状に至るまで原本と全く同様に正確に再現されるということは、最小限の必要を充たしてなお余りある正確性が担保されていることを意味しているのである。」
過去問・解説
(R1 予備 第6問 ア)
公文書に限らず、私文書であっても、その写しは、文書偽造罪の客体となり得る。
診断書の公文書性と教唆 最二小判昭和23年10月23日
概要
判例
判旨:「被告人は第1審相被告人乙と共謀して、医務課長Aを買収してBのため同人が勾留に堪えられない旨の虚偽の内容の診断書を作成さしてこれを入手しようと決め、乙がその任に当ることになったところ、乙は医務課長Aの買収が困難なのを知って、寧しろ医務課長A名義の診断書を偽造しようと決意し、第1審相被告人丙を教唆して本件診断書を作成偽造せしめたというのである。被告人の故意は、前記認定の如く、乙と共謀して医務課長Aをして虚偽の公文書を作成する罪(刑法第156条の罪)を犯させることを教唆するに在る。しかるに現実には前記のような公文書偽造の結果となったのであるから、事実の錯誤の問題である。かかる場合に乙の丙に対する本件公文書偽造教唆について、被告人が故意の責任を負うべきであるか否やは一の問題であるが、本件故意の内容は刑法第156条の罪の教唆であり、結果は同法第155条の罪の教唆である。そしてこの両者は犯罪の構成要件を異にするも、その罪質を同じくするものであり、且法定刑も同じである。而して右両者の動機目的は全く同一である。いづれもBの保釈の為めに必要な虚偽の診断書を取得する為めである。即ち被告人等は最初その目的を達する手段として刑法第156条の公文書無形偽造の罪を教唆することを共謀したが、結局共謀者の1人たるAが公文書有形偽造教唆の手段を選び、これによって遂に目的を達したものである。それであるから、乙の丙に対する本件公文書偽造の教唆行為は、被告人と乙との公文書無形偽造教唆の共謀と全然無関係に行われたものと云うことはできないのであって、矢張り右共謀に基づいてたまたまその具体的手段を変更したに過ぎないから、両者の間には相当因果関係があるものと認められる。然らば被告人は事実上本件公文書偽造教唆に直接に関与しなかったとしてもなお、その結果に対する責任を負わなければならないのである。即ち被告人は法律上本件公文書偽造教唆につき故意を阻却しないのである。而して原判決は、以上説明の如き趣旨によって、被告人が本件診断書の偽造を教唆したものと判断したのであって何等違法の点はない。」
過去問・解説
(H22 司法 第15問 4)
市立病院に勤務する公務員である医師甲が、同病院の医師として同病院の患者が裁判所に提出するための診断書を作成するに当たり、同診断書に虚偽の病名を記載した。医師である甲には、虚偽診断書等作成罪が成立するので、虚偽公文書作成罪は成立しない。ただし、甲は、「行使の目的」又は「人の財産上の事務処理を誤らせる目的」を有するものとする。
(R2 共通 第5問 ウ)
甲及び乙が共謀して、公務員Aに虚偽の内容の公文書の作成を教唆することにしたが、乙はAを買収することに失敗したため、甲に無断で、Bに公文書を偽造することを教唆し、Bが公文書を偽造した場合、甲に虚偽公文書作成罪の教唆犯が成立する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭23.10.23)は、本肢と同種の事案において、「被告人の故意は、前記認定の如く、乙と共謀して医務課長Aをして虚偽の公文書を作成する罪(刑法第156条の罪)を犯させることを教唆するに在る。」とした上で、「乙の丙に対する本件公文書偽造の教唆行為は、被告人と乙との公文書無形偽造教唆の共謀と全然無関係に行われたものと云うことはできないのであって、矢張り右共謀に基づいてたまたまその具体的手段を変更したに過ぎないから、両者の間には相当因果関係があるものと認められる。」として、公文書偽造罪の教唆犯が成立することを示している。
乙は、甲との共謀とは異なり、Bに公文書を偽造させているものの、具体的な手段を変更したに過ぎないといえるから、甲には公文書偽造罪の教唆犯が成立する。
偽造公文書の意義 最二小判昭和28年2月20日
概要
判例
判旨:「偽造文書が一般人をして公務所または公務員の職務権限内において作成せられたものと信ぜしめるに足る形式外観を具えている以上は、その作成名義者たる公務所または公務員にその権限がない場合においても、刑法155条の偽造公文書というを妨げないものであることは、累次の大審院判例の示すところであって(昭和8年(れ)44号、同年3月31日判決、昭和8年(れ)1038号、同年10月2日判決、昭和11年(れ)1162号、同年9月11日判決、昭和16年(れ)388号、同年5月20日判決、昭和18年(れ)1063号、同19年2月22日判決)、当裁判所においても右の見解を変更するの要を認めない。そこで右文書について按ずるに、右文書の内容事項につきその作成名義者たるa県議会事務局の権限の有無に関しては、原判決に判示されていないところであるが、仮に所論のごとく同事務局にかかる文書を作成する権限が全くないことが事実であったとしても、右文書自体はa県議会事務局名義で作成されていて一般人をして同事務局がその権限内において作成したものと信ぜしめるに足る形式外観を具えていることは否定し得ないところであるから、原判決が右文書の偽造をa県議会事務局名義の公文書を偽造したものとして刑法155条の公文書偽造罪に問擬したことは少しも違法ではない。」
過去問・解説
(R3 共通 第6問 3)
行使の目的で、公務員の名義を冒用して公文書を作成したが、実際には当該公務員に当該文書の作成権限がなかった場合、当該文書が当該公務員の職務権限内で作成されたものと一般人が信じるに足る形式・外観を備えていれば、公文書偽造罪が成立する。
公文書の写真コピーと公文書偽造罪 最二小判昭和51年4月30日
概要
判例
判旨:「公文書偽造罪は、公文書に対する公共的信用を保護法益とし、公文書が証明手段としてもつ社会的機能を保護し、社会生活の安定を図ろうとするものであるから、公文書偽造罪の客体となる文書は、これを原本たる公文書そのものに限る根拠はなく、たとえ原本の写であっても、原本と同一の意識内容を保有し、証明文書としてこれと同様の社会的機能と信用性を有するものと認められる限り、これに含まれるものと解する…写真コピーは、そこに複写されている原本が右コピーどおりの内容、形状において存在していることにつき極めて強力な証明力をもちうるのであり、それゆえに、公文書の写真コピーが実生活上原本に代わるべき証明文書として一般に通用し、原本と同程度の社会的機能と信用性を有するものとされている場合が多いのである。右のような公文書の写真コピーの性質とその社会的機能に照らすときは、右コピーは、文書本来の性質上写真コピーが原本と同様の機能と信用性を有しえない場合を除き、公文書偽造罪の客体たりうるものであって、この場合においては、原本と同一の意識内容を保有する原本作成名義人作成名義の公文書と解すべきであり、また、右作成名義人の印章、署名の有無についても、写真コピーの上に印章、署名が複写されている以上、これを写真コピーの保有する意識内容の場合と別異に解する理由はないから、原本作成名義人の印章、署名のある文書として公文書偽造罪の客体たりうるものと認める…。
…本件写真コピーは、いずれも、認証文言の記載はなく、また、その作成者も明示されていないものであるが、公務員である供託官がその職務上作成すべき同供託官の職名及び記名押印のある供託金受領証を電子複写機で原形どおり正確に複写した形式、外観を有する写真コピーであるところ、そのうちの2通は、宅地建物取引業法25条に基づく宅地建物取引業者の営業保証金供託済届の添付資料として提出し異議なく受理されたものであり、また、その余の3通は、いずれも詐欺の犯行発覚を防ぐためその被害者に交付したものであるが、被交付者において、いずれもこれを原本と信じ或いは同一内容の原本の存在を信用して、これをそのまま受領したことが明らかであるから、本件写真コピーは、原本と同様の社会的機能と信用性を有する文書と解するのが相当である。してみると、本件写真コピーは、前記供託官作成名義の同供託官の印章、署名のある有印公文書に該当し、これらを前示の方法で作成行使した被告人の本件行為は、刑法155条1項、158条1項に該当するものというべきである。」
過去問・解説
(R2 共通 第6問 5)
甲は、消費者金融業者に提出する目的で、公文書である乙の国民健康保険被保険者証の氏名欄に自己の氏名が印刷された紙を貼り付けた上で、複写機を使用してこれをコピーし、一般人をして甲の国民健康保険被保険者証の真正なコピーであると誤信させるに足りる程度の形式・外観を備えたものを作成した。この場合、甲に有印公文書偽造罪が成立する。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭51.4.30)は、「被交付者において、いずれもこれを原本と信じ或いは同一内容の原本の存在を信用して、これをそのまま受領したことが明らかであるから、本件写真コピーは、原本と同様の社会的機能と信用性を有する文書と解するのが相当である。」としている。
甲は、乙の国民健康保険被保険者証の氏名欄に自己の氏名が印刷された紙を貼り付けた上で、複写機を使用してこれをコピーし、一般人をして甲の国民健康保険被保険者証の真正なコピーであると誤信させるに足りる程度の形式・外観を備えたものを作成しているから、同被保険者証は原本と同様の社会的機能と信用性を有する文書といえる。
したがって、甲に有印公文書偽造罪が成立する。
ファクシミリと有印公文書偽造罪 広島高岡山支判平成8年5月22日
概要
判例
判旨:「ファクシミリによる文書の写しの社会的機能と信用性についてみると、真正な原本を原形のまま正確に複写したかのような形式、外観を有するファクシミリによる文書の写しは、一般には、同一内容の原本が存在することを信用させ、原本作成者の意識内容が表示されているものと受け取られて、証明用文書としての社会的機能と信用性があることは否定できず、その信用性の程度については、文書の作成名義、文書の様式及び規格等の体裁、記載内容、文書を行使する人物等の要素によって異なるものである。もとより、文書の本来の性質上、その存在自体が法律上又は社会生活上重要な意味をもっている文書、或いは人の重要な権利の行使に関して必要な文書などにおいては、ファクシミリによる文書の写しを原本の代用としてまでは認められないとしても、その他の分野においては、隔地者間における即時性のある証明用文書として有用なものとして利用されていることは明らかである。この点においても、複写機械による写しとの間に格別の差異があるとはいえない。
本件の被告人が作成した通知書写しについても、岡山市の母子福祉担当課から被告人に対する支払金が振り込まれることを証明する原本文書の存在を信用させ、金融業者から借入れをするについて、保証書的役割を果たしたのである。
…以上のとおりであるので、本件通知書写しは、公文書偽造罪の客体としての文書としての要件を満たした公文書に当たるものというべきである。」
過去問・解説
(R1 予備 第6問 エ)
公文書の内容を改ざんし、これを原稿としてファクシミリで相手方に送信した場合、送信に供した当該原稿が公文書偽造罪の客体であって、受信書面は同罪の客体とならない。
入学選抜試験の答案と「事実証明に関する文書」 最三小決平成6年11月29日
概要
判例
判旨:「本件入学選抜試験の答案は、試験問題に対し、志願者が正解と判断した内容を所定の用紙の解答欄に記載する文書であり、それ自体で志願者の学力が明らかになるものではないが、それが採点されて、その結果が志願者学力を示す資料となり、これを基に合否の判定が行われ、合格の判定を受けた志願者が入学を許可されるのであるから、志願者の学力の証明に関するものであって、『社会生活に交渉を有する事項』を証明する文書(最高裁昭和33年(あ)第890号同年9月16日第三小法廷決定・刑集12巻13号3031頁参照)に当たると解するのが相当である。したがって、本件答案が刑法159条1項にいう事実証明に関する文書に当たるとした原判断は、正当である。」
過去問・解説
(H20 司法 第8問 1)
甲は、乙から、乙がA大学の入学試験を受けるに当たり、いわゆる替え玉になって受験してほしい旨依頼されてこれを引き受け、乙に成り済ましてA大学の入学試験を受け、乙名義で答案を作成して提出した。大学の入学試験の答案は、私文書偽造罪の客体になるが、甲は作成名義人乙に依頼されて乙名義で答案を作成したのであるから、甲には有印私文書偽造罪は成立しない。
(正答)✕
(解説)
判例(最決平6.11.29)は、「本件入学選抜試験の答案は、試験問題に対し、志願者が正解と判断した内容を所定の用紙の解答欄に記載する文書であり、それ自体で志願者の学力が明らかになるものではないが、それが採点されて、その結果が志願者学力を示す資料となり、これを基に合否の判定が行われ、合格の判定を受けた志願者が入学を許可されるのであるから、志願者の学力の証明に関するものであって、『社会生活に交渉を有する事項』を証明する文書…に当たる…。」としている。
そして、大学の入学試験の答案は作成名義人以外の者の作成が許容されるものではないから、作成名義人の承諾があっても、偽造に当たる。
したがって、甲に有印私文書偽造罪が成立する。
(R2 共通 第6問 1)
甲は、乙から、大学の入学試験を代わりに受けてほしいと頼まれてこれを引き受け、乙に成り済まして入学試験を受け、乙名義で答案を作成して提出した。この場合、甲に有印私文書偽造罪が成立する。
(正答)〇
(解説)
判例(最決平6.11.29)は、「本件入学選抜試験の答案は、試験問題に対し、志願者が正解と判断した内容を所定の用紙の解答欄に記載する文書であり、それ自体で志願者の学力が明らかになるものではないが、それが採点されて、その結果が志願者学力を示す資料となり、これを基に合否の判定が行われ、合格の判定を受けた志願者が入学を許可されるのであるから、志願者の学力の証明に関するものであって、『社会生活に交渉を有する事項』を証明する文書…に当たる…。」としている。
そして、大学の入学試験の答案は作成名義人以外の者の作成が許容されるものではないから、作成名義人の承諾があっても、偽造に当たる。
したがって、甲に有印私文書偽造罪が成立する。
(R6 司法 第10問 ウ)
甲は、乙から、乙の代わりにA大学の入学試験を受けてほしいと頼まれ、これを引き受け、乙に成り済まして同入学試験を受け、氏名欄に乙の氏名を記載し、乙名義で答案を作成した。この場合、甲に有印私文書偽造罪が成立する。
(正答)〇
(解説)
判例(最決平6.11.29)は、「本件入学選抜試験の答案は、試験問題に対し、志願者が正解と判断した内容を所定の用紙の解答欄に記載する文書であり、それ自体で志願者の学力が明らかになるものではないが、それが採点されて、その結果が志願者学力を示す資料となり、これを基に合否の判定が行われ、合格の判定を受けた志願者が入学を許可されるのであるから、志願者の学力の証明に関するものであって、『社会生活に交渉を有する事項』を証明する文書…に当たる…。」としている。
そして、大学の入学試験の答案は作成名義人以外の者の作成が許容されるものではないから、作成名義人の承諾があっても、偽造に当たる。
したがって、甲に有印私文書偽造罪が成立する。
同姓同名と私文書偽造罪 最一小決平成5年10月5日
概要
判例
判旨:「私文書偽造の本質は、文書の名義人と作成者との間の人格の同一性を偽る点にあると解されるところ(最高裁昭和58年(あ)第257号同59年2月17日第二小法廷判決・刑集38巻3号336頁参照)、前示のとおり、被告人は、自己の氏名がA弁護士会所属の弁護士Bと同姓同名であることを利用して、同弁護士になりすまし、『弁護士B』の名義で本件各文書を作成したものであって、たとえ名義人として表示された者の氏名が被告人の氏名と同一であったとしても、本件各文書が弁護士としての業務に関連して弁護士資格を有する者が作成した形式、内容のものである以上、本件各文書に表示された名義人は、A弁護士会に所属する弁護士Bであって、弁護士資格を有しない被告人とは別人格の者であることが明らかであるから、本件各文書の名義人と作成者の人格の同一性にそごを生じさせたものというべきである。したがって、被告人は右の同一性を偽ったものであって、その各所為について私文書偽造罪、同行使罪が成立するとした原判断は、正当である。」
過去問・解説
(H29 司法 第4問 5)
弁護士資格のない甲は、X弁護士会に実在する自己と同姓同名の弁護士を装い、これを信じた乙から依頼を受けて弁護士としての業務を行った後、乙から報酬を得るために、「X弁護士会所属弁護士甲」名義の弁護士報酬金請求書を作成した。甲には私文書偽造罪が成立しない。
(R5 司法 第15問 5)
甲は、同姓同名の弁護士がいることを利用して弁護士を装い、不動産業者Aから土地調査の依頼を受け、行使の目的で、作成名義人として「弁護士甲」と記載した土地調査に関する書面を作成しAに交付した。この場合、甲に私文書偽造罪は成立しない。
国際運転免許証と私文書偽造罪 最二小決平成15年10月6日
概要
判例
判旨:「私文書偽造の本質は、文書の名義人と作成者との間の人格の同一性を偽る点にあると解される(最高裁昭和58年(あ)第257号同59年2月17日第二小法廷判決・刑集38巻3号336頁、最高裁平成5年(あ)第135号同年10月5日第一小法廷決定・刑集47巻8号7頁参照)。本件についてこれをみるに、…本件文書の記載内容、性質などに照らすと、ジュネーブ条約に基づく国際運転免許証の発給権限を有する団体により作成されているということが、正に本件文書の社会的信用性を基礎付けるものといえるから、本件文書の名義人は、『ジュネーブ条約に基づく国際運転免許証の発給権限を有する団体である国際旅行連盟』であると解すべきである。そうすると、国際旅行連盟が同条約に基づきその締約国等から国際運転免許証の発給権限を与えられた事実はないのであるから、所論のように、国際旅行連盟が実在の団体であり、被告人に本件文書の作成を委託していたとの前提に立ったとしても、被告人が国際旅行連盟の名称を用いて本件文書を作成する行為は、文書の名義人と作成者との間の人格の同一性を偽るものであるといわねばならない。したがって、被告人に対し有印私文書偽造罪の成立を認めた原判決の判断は、正当である。」
過去問・解説
(H25 共通 第6問 5)
甲は、行使の目的で、正規の国際運転免許証を発給する権限のない民間団体乙名義で、外観が正規の国際運転免許証に酷似する文書を作成した。甲は、乙からその文書の作成権限を与えられていたが、乙に正規の国際運転免許証を発給する権限がないことは知っていた。甲には私文書偽造罪は成立しない。
(R5 司法 第15問 4)
甲は、民間団体Aから国際運転免許証の作成を委託され、行使の目的で、外観が正規の国際運転免許証に酷似するA名義の文書を作成したが、Aに正規の国際運転免許証を発給する権限はなく、甲もそのことを知っていた。この場合、甲に私文書偽造罪は成立しない。
偽造の本質 最一小決平成11年12月20日
概要
判例
判旨:「私文書偽造の本質は、文書の名義人と作成者との間の人格の同一性を偽る点にあると解されるところ(最高裁昭和58年(あ)第257号同59年2月17日第二小法廷判決・刑集38巻3号336頁、最高裁平成5年(あ)第135号同年10月5日第一小法廷決定・刑集47巻8号7頁)、原判決の認定によれば、被告人は、Aの偽名を用いて就職しようと考え、虚偽の氏名、生年月日、住所、経歴等を記載し、被告人の顔写真をはり付けた押印のあるA名義の履歴書及び虚偽の氏名等を記載した押印のあるA名義の雇用契約書等を作成して提出行使したものであって、これらの文書の性質、機能等に照らすと、たとえ被告人の顔写真がはり付けられ、あるいは被告人が右各文書から生ずる責任を免れようとする意思を有していなかったとしても、これらの文書に表示された名義人は、被告人とは別人格の者であることが明らかであるから、名義人と作成者との人格の同一性にそごを生じさせたものというべきである。したがって、被告人の各行為について有印私文書偽造、同行使罪が成立するとした原判断は、正当である。」
過去問・解説
(H21 司法 第9問 2)
甲は、氏名を隠してA会社に就職しようと考え、同社に提出する目的で、履歴書用紙に、架空の氏名として「乙」などと記載し、その氏名の横に「乙」と刻した印鑑を押した上、甲自身の顔写真をはり付けた履歴書を作成した。甲がA会社に就職して勤務する意思を有していた場合でも、履歴書の作成名義人と作成者との人格の同一性にそごがあるので、甲には有印私文書偽造罪が成立する。
(正答)〇
(解説)
判例(最決平11.12.20)は、本肢と同種の事案において、「たとえ被告人の顔写真がはり付けられ、あるいは被告人が右各文書から生ずる責任を免れようとする意思を有していなかったとしても、これらの文書に表示された名義人は、被告人とは別人格の者であることが明らかであるから、名義人と作成者との人格の同一性にそごを生じさせたものというべきである。したがって、被告人の各行為について有印私文書偽造、同行使罪が成立するとした原判断は、正当である。」としている。
甲は、A社に提出する目的で、履歴書用紙に、架空の氏名として「乙」などと記載し、その氏名の横に「乙」と刻した印鑑を押した上、甲自身の顔写真をはり付けた履歴書を作成しているから、作成名義人と作成者との人格の同一性を偽っているといえる。
したがって、甲に有印私文書偽造罪が成立する。
(H30 共通 第4問 3)
甲は、偽名を用いて会社に就職しようと考え、同会社に提出する目的で、履歴書用紙に、架空人Aの氏名を記載し、その氏名の横にAと刻した印鑑を押印するとともに、自己の顔写真を貼り付けて履歴書を作成した。同履歴書の作成名義人と作成者との人格の同一性にそごを生じさせるものとは認められないから、甲には有印私文書偽造罪は成立しない。
(正答)✕
(解説)
判例(最決平11.12.20)は、本肢と同種の事案において、「たとえ被告人の顔写真がはり付けられ、あるいは被告人が右各文書から生ずる責任を免れようとする意思を有していなかったとしても、これらの文書に表示された名義人は、被告人とは別人格の者であることが明らかであるから、名義人と作成者との人格の同一性にそごを生じさせたものというべきである。したがって、被告人の各行為について有印私文書偽造、同行使罪が成立するとした原判断は、正当である。」としている。
甲は、会社に提出する目的で、履歴書用紙に、架空人Aの氏名を記載し、その氏名の横にAと刻した印鑑を押印するとともに、自己の顔写真を貼り付けて履歴書を作成しているから、作成名義人と作成者との人格の同一性を偽っているといえる。
したがって、甲に有印私文書偽造罪が成立する。
(R4 共通 第13問 エ)
指名手配され逃走中の甲は、本名を隠してA会社に正社員として就職しようと考え、同社に提出する目的で、履歴書用紙の氏名欄にBという架空の氏名を記載し、その横にBの姓を刻した印鑑を押印した上、真実と異なる生年月日、住所及び経歴を記載して履歴書を作成したが、その顔写真欄には甲自身の顔写真を貼付していた。この場合、甲には、有印私文書偽造罪が成立する。
(正答)〇
(解説)
判例(最決平11.12.20)は、本肢と同種の事案において、「たとえ被告人の顔写真がはり付けられ、あるいは被告人が右各文書から生ずる責任を免れようとする意思を有していなかったとしても、これらの文書に表示された名義人は、被告人とは別人格の者であることが明らかであるから、名義人と作成者との人格の同一性にそごを生じさせたものというべきである。したがって、被告人の各行為について有印私文書偽造、同行使罪が成立するとした原判断は、正当である。」としている。
甲は、A会社に提出する目的で、履歴書用紙に、架空人Bの氏名を記載し、その氏名の横にBと刻した印鑑を押印するとともに、自己の顔写真を貼り付けて履歴書を作成しているから、作成名義人と作成者との人格の同一性を偽っているといえる。
したがって、甲に有印私文書偽造罪が成立する。
欺罔行為と文書偽造罪 大判明治44年5月8日
概要
判例
要旨:文書偽造罪ニ於ケル文書ハ必スシモ偽造者若クハ情ヲ知ラサル第三者ニ於テ之ヲ作成スルヲ要セス署名者ヲシテ他ノ文書ナリト誤信セシメ又ハ其内容ヲ知悉セシメスシテ之ヲ作成スル場合ニ於テモ文書偽造罪ノ成立ヲ妨ケス
(※原文を確認できないため、要旨のみを掲載)
過去問・解説
虚偽公文書作成罪と間接正犯 最二小判昭和32年10月4日
概要
判例
判旨:「156条の虚偽公文書作成罪は、公文書の作成権限者たる公務員を主体とする身分犯ではあるが、作成権限者たる公務員の職務を補佐して公文書の起案を担当する職員が、その地位を利用し行使の目的をもってその職務上起案を担当する文書につき内容虚偽のものを起案し、これを情を知らない右上司に提出し上司をして右起案文書の内容を真実なものと誤信して署名若しくは記名、捺印せしめ、もって内容虚偽の公文書を作らせた場合の如きも、なお、虚偽公文書作成罪の間接正犯の成立あるものと解すべきである。けだし、この場合においては、右職員は、その職務に関し内容虚偽の文書を起案し情を知らない作成権限者たる公務員を利用して虚偽の公文書を完成したものとみるを相当とするからである…。」
過去問・解説
(R3 共通 第6問 5)
上司である公文書の作成権限のある公務員を補佐して公文書の起案を担当する公務員が、その地位を利用し、行使の目的で、その職務上起案を担当する公文書に内容虚偽の記載をした上、情を知らない上司に、当該文書の内容が真実であると誤信させ、これに署名押印させた場合、虚偽公文書作成罪は成立しない。
公文書の書換と公文書偽造罪 最二小判昭和24年4月9日
概要
判例
判旨:「被告人はa村々長Aの記名捺印ある世帯主被告人の家庭用米穀配給通帳中に、『世帯主、C』と記載してあったその『C』の部分を指先ですり消し、其処にインキ等を使って、亡弟の名『B』の字を書き込み、恰も世帯主Bに交付せられた通帳のように改竄したというのである。およそ、家庭用米穀配給通帳は各世帯毎に交付せられるものであって、右通帳における世帯主の氏名の記載はその通帳を特定するためには極めて重要な記載であって、世帯主甲名義の通帳と、同乙名義の通帳とは、たとえ、通帳自体は同一物が利用せられ従ってその通帳の作成名義者は同一であっても、全く別個の通帳と認めざるを得ない。されば原判決が前示被告人の所為を以て村長Aの作成にかかる世帯主被告人名義の通帳を利用して世帯主B名義の新なる通帳を作成したものと解し、これを公文書偽造罪に問擬したのは正当であって、右は公交書変造の罪にあたるものであると主張する論旨はあやまりである…。」
過去問・解説
(H27 共通 第20問 ア)
【事例】
借金の返済に苦しんでいた甲とその内縁の妻乙は、A市が発行した乙を被保険者とする国民健康保険被保険者証の氏名を乙から実在しない丙に改変し、丙になりすまして消費者金融会社から借入れをして現金を手に入れることを相談した。甲と相談したとおり、乙は、上記国民健康保険被保険者証の被保険者氏名欄に乙とあるのを丙と書き換えた。そして、乙は、消費者金融会社の無人借入手続コーナーにおいて、借入申込書に丙の氏名を記載し、丙と刻した印鑑を押捺するなどして丙名義の借入申込書1通を完成させた上、同申込書及び氏名を丙に改変した上記国民健康保険被保険者証の内容を、同コーナーに設置された機械を使用し、同機械に接続されている同社本店の端末機に送信し、同社の貸付手続担当者に対し、丙であるかのように装って100万円の借入れを申し込んだ。同担当者は、当該申込みをした者が真実丙であり、かつ、貸付金は約定のとおりに返済されるものと誤信し、同社の貸付システムに従って丙名義の借入カードを上記コーナーに設置された機械から発券した。乙は、その場で同カードを入手し、同カードを現金自動入出機に挿入して同機から現金100万円を引き出した。その後、乙は、上記行為に及んだことを後悔し、自宅で、甲に一緒に自首をしようと持ち掛けた。甲は、これを聞いて激高し、乙を窒息死させようと考え、その首を絞めたところ、乙は首を絞められたことによるショックで心不全になり死亡した。甲は、乙の死亡から約30分後、死亡して横たわっている乙の指に時価20万円相当の乙の指輪がはめてあることに気が付き、同指輪を奪って逃走した。
【記述】
乙が国民健康保険被保険者証の被保険者氏名欄を丙と書き換えた行為については、単に文書の内容を書き換えたにすぎないから、甲と乙には、公文書偽造罪ではなく、公文書変造罪が成立する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭24.4.9)は、「家庭用米穀配給通帳は各世帯毎に交付せられるものであって、右通帳における世帯主の氏名の記載はその通帳を特定するためには極めて重要な記載であって、世帯主甲名義の通帳と、同乙名義の通帳とは、たとえ、通帳自体は同一物が利用せられ従ってその通帳の作成名義者は同一であっても、全く別個の通帳と認めざるを得ない。されば原判決が前示被告人の所為を以て村長Aの作成にかかる世帯主被告人名義の通帳を利用して世帯主B名義の新なる通帳を作成したものと解し、これを公文書偽造罪に問擬したのは正当…。」として、文書の本質的部分へ変更を加えている場合、新たな証明力ある文書を作成したとして変造ではなく偽造に当たるとしている。
そして、国民健康保険被保険者証の被保険者氏名もその文書の被保険者を示す本質的部分として、これを書き換える行為は偽造に当たる。
したがって、乙には公文書偽造罪が成立する。
写真の貼り代え等による公文書偽造罪の成否 最三小決昭和35年1月12日
概要
判例
判旨:「運転免許証の写真を貼り代え、その生年月日欄を改めただけであって、その作成名義を変更したものではないから、公文書変造罪を構成することはあっても公文書偽造罪を構成するものではないと主張するが、特定人に交付された自動車運転免許証に貼付しある写真及びその人の生年月日の記載は、当該免許証の内容にして重要事項に属するのであるから、右写真をほしいままに剥ぎとり、その特定人と異なる他人の写真を貼り代え、生年月日欄の数字を改ざんし、全く別個の新たな免許証としたるときは、公文書偽造罪が成立すると解すべきである。」
過去問・解説
(H23 司法 第19問 ア)
【事例】
甲は、求人広告を見て乙と会い、乙から、銀行で架空人名義の預金口座を開設し、その預金通帳とキャッシュカードを手に入れて乙に渡すというアルバイトを依頼され、これを引き受けた。その際、甲は、乙から、預金口座を開設する際に身分証明書として呈示するため、甲の顔写真が印刷された架空人A名義の運転免許証を作成する必要があると聞かされたので、甲の顔写真を乙に交付するとともに、甲の知人Bの住所をキャッシュカードの送付先として乙に教えた。乙は、不正に入手したC名義の真正な運転免許証の顔写真の上から甲の顔写真を貼り付け、氏名をA名義に、住所をBの住所にそれぞれ書き換えるなどの加工を施し、甲の顔写真が貼付されたA名義の運転免許証を作成した。同免許証は、一見すると真正なものと見分けがつかないような精巧なものであった。数日後、甲は、乙から、前記運転免許証とAの姓を刻した印鑑を受け取った。その後、甲は、銀行に行き、口座開設申込書にAの氏名及びBの住所等を書いてAの印鑑を押した上、同銀行窓口係丙に対し、Aを装い、同申込書を前記運転免許証と一緒に提出して口座開設を申し込んだ。丙は、甲がAであることを疑うこともなく、かつ、前記運転免許証及び前記口座開設申込書の記載内容が虚偽であると知っていれば口座開設をしなかったのに、これらの内容が真実であるものと誤信し、A名義の口座を開設する手続を行い、即日窓口で預金通帳を甲に交付し、キャッシュカードについては、Bの住所地宛てに郵送した。甲は、数日後に郵送されたキャッシュカードをBから受け取った後、しばらくの間、自宅に通帳とキャッシュカードを保管し、その後、報酬と引換えに、預金通帳とキャッシュカードを乙に交付した。
【罪名】
有印公文書変造・同行使罪
(正答)✕
(解説)
判例(最決昭35.1.12)は、「特定人に交付された自動車運転免許証に貼付しある写真及びその人の生年月日の記載は、当該免許証の内容にして重要事項に属するのであるから、右写真をほしいままに剥ぎとり、その特定人と異なる他人の写真を貼り代え、生年月日欄の数字を改ざんし、全く別個の新たな免許証としたるときは、公文書偽造罪が成立する…。」として、文書の本質的部分へ変更を加えている場合、新たな証明力ある文書を作成したとして、変造ではなく偽造に当たるとしている。
乙は、甲と共謀した上で、C名義の真正な運転免許証の顔写真の上から甲の顔写真を貼り付け、氏名をA名義に、住所をBの住所にそれぞれ書き換えているから、重要事項に属する本質的部分へ変更を加えたといえ、偽造に当たる。
したがって、甲に有印公文書偽造罪の共同正犯が成立する。
(H28 共通 第4問 エ)
Xは、身分証明書として使おうと考え、A県公安委員会が発行したYの自動車運転免許証の写真をXの写真に貼り替えた。有印公文書偽造罪が成立するか。
(正答)〇
(解説)
判例(最決昭35.1.12)は、「特定人に交付された自動車運転免許証に貼付しある写真及びその人の生年月日の記載は、当該免許証の内容にして重要事項に属するのであるから、右写真をほしいままに剥ぎとり、その特定人と異なる他人の写真を貼り代え、生年月日欄の数字を改ざんし、全く別個の新たな免許証としたるときは、公文書偽造罪が成立する…。」として、文書の本質的部分へ変更を加えている場合、新たな証明力ある文書を作成したとして、変造ではなく偽造に当たるとしている。
A県公安委員会が発行したYの自動車運転免許証の写真をXの写真に張り替えているから、重要事項に属する本質的部分へ変更を加えたといえ、偽造に当たる。そして、作成名義人たるA県公安委員会の印章を不正に利用しているとして有印である。
したがって、Xに有印公文書偽造罪が成立する。
偽造運転免許証の携帯運転と偽造公文書行使罪 最大判昭和44年6月18日
概要
判例
判旨:「本件偽造公文書行使の各事実は、前記のように、被告人が自動車を運転した際に偽造にかかる運転免許証を携帯していたというものであるところ、偽造公文書行使罪は公文書の真正に対する公共の信用か具体的に侵害されることを防止しようとするものであるから、同罪にいう行使にあたるためには、文書を真正に成立したものとして他人に交付、提示等して、その閲覧に供し、その内容を認識させまたはこれを認識しうる状態におくことを要するのである。したがって、たとい自動車を運転する際に運転免許証を携帯し、一定の場合にこれを提示すべき義務が法令上定められているとしても、自動車を運転する際に偽造にかかる運転免許証を携帯しているに止まる場合には、未だこれを他人の閲覧に供しその内容を認識しうる状態においたものというには足りず、偽造公文書行使罪にあたらないと解すべきである。」
過去問・解説
(H23 共通 第1問 5)
甲は、運転中に警察官に免許証の提示を求められたときに提示するつもりで、偽造された自動車運転免許証を携帯して自動車の運転を開始した。甲には偽造公文書行使罪は成立しない。
(H27 司法 第4問 2)
偽造公文書の内容、形式を口頭で他人に告知するだけでは、偽造公文書行使罪は成立しない。
(H27 司法 第4問 5)
自動車を運転する際、警察官から運転免許証の提示を求められれば提示するつもりで偽造した運転免許証を携帯した場合、偽造公文書行使罪が成立する。
免許証の偽造と偽造公文書行使罪 最二小決昭和52年4月25日
概要
判例
判旨:「被告人は、窃取したAの自動車運転免許証に自己の写真を貼り替えて、あたかも被告人が自動車運転免許証の交付を受けたAであるかのように作出して神奈川県公安委員会作成名義の自動車運転免許証1通を偽造したうえ、これを交通取締の警察官に提示したところ、警察官は、直ちに右免許証表示の有効期間が3ケ月余経過していることに気付いたが、右免許証が真正に作成されたものであって被告人が運転免許を受けたものであると誤信したまま、無免許運転の取調べに入ったというのであり、右事実によれば、本件偽造運転免許証は、表示の有効期間を3ケ月余経過した時点であっても、警察官をして自動車運転免許証自体は真正に作成されたものであって、被告人が自動車運転免許を受けたものであると誤信させるに足りる外観を具備していたことが明らかであるから、右提示行為をもって偽造公文書の行使にあたるとした原判断は正当である。」
過去問・解説
(H29 司法 第4問 1)
甲は、他人の自動車運転免許証に甲の写真を貼り付けた偽造自動車運転免許証を入手し、これを携帯して自動車を運転中に検問で停止を求められ、情を知らない警察官に同免許証を真正に成立したものとして提示した。提示した時には同免許証に表示されている有効期間が経過していたとしても、甲には偽造公文書行使罪が成立する。
(正答)〇
(解説)
判例(最決昭52.4.25)は、本肢と同種の事案において、「本件偽造運転免許証は、表示の有効期間を3ケ月余経過した時点であっても、警察官をして自動車運転免許証自体は真正に作成されたものであって、被告人が自動車運転免許を受けたものであると誤信させるに足りる外観を具備していたことが明らかであるから、右提示行為をもって偽造公文書の行使にあたる…。」として、法的に無効な文書であっても偽造公文書行使罪の客体になりうることを示している。
甲が免許証を提示した時には同免許証に表示されている有効期間が経過していたが、情を知らない警察官に同免許証を真正に成立したものとして提示しているから、甲には偽造公文書行使罪が成立する。
虚偽公文書作成罪と間接正犯 最一小判昭和27年12月25日
概要
②公務員に対し虚偽の申立を為し免状等に不実の記載をさせるだけで充足すると同時にその性質上不実記載された免状等の下付を受ける事実をも当然に包含するから、旅券の交付を受ける行為は、246条の詐欺罪ではなく、157条2項の罪だけが成立する。
判例
判旨:「刑法は、いわゆる無形偽造については公文書のみに限ってこれを処罰し、一般私文書の無形偽造を認めないばかりでなく、公文書の無形偽造についても同法156条の他に特に公務員に対し虚偽の申立を為し、権利義務に関する公正証書の原本又は免状、鑑札若しくは旅券に不実の記載を為さしめたときに限り同法157条の処罰規定を設け、しかも右156条の場合の刑よりも著しく軽く罰しているに過ぎない点から見ると公務員でない者が虚偽の公文書偽造の間接正犯であるときは同法157条の場合の外これを処罰しない趣旨と解するのを相当とする。
…原判決は『被告人は同係員を欺罔して旅券の下付を受けようとしたけれども、その後占領軍官憲の調査により右証明書2通の記載内容が虚偽であることを発見されたため竟に旅券騙取の目的を遂げなかったものである』と認定し、刑法246条1項、250条に該当する詐欺未遂である旨判示している。そして、刑法157条2項には、公務員に対し虚偽の申立を為し免状、鑑札又は旅券に不実の記載を為さしめたる者とあるに過ぎないけれども、免状、鑑札、旅券のような資格証明書は、当該名義人においてこれが下付を受けて所持しなければ効用のないものであるから、同条に規定する犯罪の構成要件は、公務員に対し虚偽の申立を為し免状等に不実の記載をさせるだけで充足すると同時にその性質上不実記載された免状等の下付を受ける事実をも当然に包含するものと解するを正当とする。
しかも、同条項の刑罰が1年以下の懲役又は300円以下の罰金に過ぎない点をも参酌すると免状、鑑札、旅券の下付を受ける行為のごときものは、刑法246条の詐欺罪に問擬すべきではなく、右刑法157条2項だけを適用すべきものと解するを相当とする。」
過去問・解説
(H21 司法 第9問 4)
公務員でない甲は、行使の目的で、虚偽の内容を記載した証明願を村役場の係員に提出し、情を知らない同係員をして村長名義の虚偽の証明書を作成させた。甲は、情を知らない同係員を利用して虚偽の公文書を作成しているので、甲には虚偽公文書作成罪の間接正犯が成立する。
(H22 司法 第15問 3)
甲は、内容虚偽の旅券申請書を作成して旅券の交付を申請し、旅券の交付を受けた。甲には、詐欺罪が成立するので、免状等不実記載罪は成立しない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭27.12.25)は、「刑法157条2項には、公務員に対し虚偽の申立を為し…旅券に不実の記載を為さしめたる者とあるに過ぎないけれども、…旅券のような資格証明書は、…同条に規定する犯罪の構成要件は、公務員に対し虚偽の申立を為し免状等に不実の記載をさせるだけで充足する…。…旅券の下付を受ける行為のごときものは、刑法246条の詐欺罪に問擬すべきではなく、右刑法157条2項だけを適用すべき…。」としている。
甲は、内容虚偽の旅券申請書を作成して旅券の交付を申請し、旅券の交付を受けているから、免状等不実記載罪が成立するが、別途詐欺罪は成立しない。
したがって、甲には免状等不実記載罪が成立する。
(H28 司法 第17問 3)
公務員ではない甲は、公証人乙に対して虚偽の申立てをし、事情を知らない乙をして、公文書である公正証書の原本に虚偽の記載をさせた。甲に虚偽公文書作成罪の間接正犯が成立する。
(H29 司法 第4問 2)
公務員でない甲は、情を知らない公務員に対し虚偽の申立てをして登記簿に不実の記載をさせ、その登記簿謄本の交付を受けた。甲には虚偽公文書作成罪の間接正犯が成立する。
(R5 司法 第15問 1)
公務員でない甲は、行使の目的で、情を知らない市役所の係員Aに虚偽の申立てをして、市長名義の虚偽の課税証明書を作成させた。この場合、甲に虚偽公文書作成罪は成立しない。
判断能力の欠如に乗じた文書偽造罪 大判明治44年9月14日
概要
判例
判旨:「人ノ文盲ナルニ乗シ証書ノ作成名義人ヲ欺罔シ之カ内容ヲ了知セシメスシテ其署名ノ下ニ捺印セシメ以テ証書ヲ作成シタルトキハ文書偽造罪ヲ構成シ証書騙取罪ヲ構成スルモノニ非ス」
過去問・解説
(H25 共通 第6問 3)
甲は、行使の目的で、高齢のため視力が衰え文字の判読が十分にできない乙に対し、公害反対の署名であると偽り、その旨誤信した乙に、甲を貸主、乙を借主とする100万円の借用証書の借主欄に署名押印させた。甲には私文書偽造罪が成立する。
受領書と私文書偽造罪 大判昭和2年3月26日
概要
判例
判旨:「金銭ノ授受完了ニ先チ作成シタル借用証書ヲ既ニ授受アリタルモノノ如ク詐リ之ヲ利用シテ不正ノ利得ヲ為サンカ為他人ヲシテ保証人トシテ其ノ証書ニ署名捺印シテ交付セシメタルトキハ証書騙取ニ依ル詐欺罪ヲ構成ス」
過去問・解説
(R4 共通 第13問 ア)
甲は、Aから金銭を借り入れるに際し、借入金を返済する意思も能力もないのに、知人Bに対し、「借入金は必ず自分で返済する。Bには迷惑をかけないので、保証人になってほしい。」とうそを言い、その旨Bを誤信させ、Aに差し入れる予定の甲を借主とする金銭消費貸借契約書を閲読させ、その保証人欄に署名押印させた。この場合、甲には、有印私文書偽造罪が成立する。
(正答)✕
(解説)
判例(大判昭2.3.26)は、「金銭ノ授受完了ニ先チ作成シタル借用証書ヲ既ニ授受アリタルモノノ如ク詐リ之ヲ利用シテ不正ノ利得ヲ為サンカ為他人ヲシテ保証人トシテ其ノ証書ニ署名捺印シテ交付セシメタルトキハ証書騙取ニ依ル詐欺罪ヲ構成ス」として、署名者を欺罔して当該証書の記載事項の内容を真実であるものと誤信させた場合、有印私文書偽造罪は成立せず、詐欺罪が成立することを示している。
甲は、知人Bに対し、借金を返済する意思があるかのようにBを誤信させ、甲を借主とする金銭消費貸借契約書を閲読させ、その内容を認識させた上で保証人欄に署名押印させているから、偽造には当たらない。
したがって、甲には有印私文書偽造罪は成立しない。
架空人名義の文書と私文書偽造罪 最二小判昭和28年11月13日
概要
判例
判旨:「被告人が右の如く架空人名義を用いて保険申込書を作成した場合と実在人名義を冒用して保険申込書を偽造した場合とを比較して考えてみると当局のみならず一般人をして真正に作成された文書と誤信せしめる危険のある点において何等区別はないのであるから、本件のような場合には架空人名義を用いたとしても被告人の行為は私文書偽造罪を構成するものと解すべきである。」
過去問・解説
(H27 共通 第20問 イ)
【事例】
借金の返済に苦しんでいた甲とその内縁の妻乙は、A市が発行した乙を被保険者とする国民健康保険被保険者証の氏名を乙から実在しない丙に改変し、丙になりすまして消費者金融会社から借入れをして現金を手に入れることを相談した。甲と相談したとおり、乙は、上記国民健康保険被保険者証の被保険者氏名欄に乙とあるのを丙と書き換えた。そして、乙は、消費者金融会社の無人借入手続コーナーにおいて、借入申込書に丙の氏名を記載し、丙と刻した印鑑を押捺するなどして丙名義の借入申込書1通を完成させた上、同申込書及び氏名を丙に改変した上記国民健康保険被保険者証の内容を、同コーナーに設置された機械を使用し、同機械に接続されている同社本店の端末機に送信し、同社の貸付手続担当者に対し、丙であるかのように装って100万円の借入れを申し込んだ。同担当者は、当該申込みをした者が真実丙であり、かつ、貸付金は約定のとおりに返済されるものと誤信し、同社の貸付システムに従って丙名義の借入カードを上記コーナーに設置された機械から発券した。乙は、その場で同カードを入手し、同カードを現金自動入出機に挿入して同機から現金100万円を引き出した。その後、乙は、上記行為に及んだことを後悔し、自宅で、甲に一緒に自首をしようと持ち掛けた。甲は、これを聞いて激高し、乙を窒息死させようと考え、その首を絞めたところ、乙は首を絞められたことによるショックで心不全になり死亡した。甲は、乙の死亡から約30分後、死亡して横たわっている乙の指に時価20万円相当の乙の指輪がはめてあることに気が付き、同指輪を奪って逃走した。
【記述】
乙が丙名義の借入申込書を作成した行為については、丙が実在しなくても、一般人をして真正に作成された文書であると誤信させる危険があるから、甲と乙には有印私文書偽造罪が成立する。
(R2 共通 第6問 2)
甲は、架空請求により金銭をだまし取るために使おうと考え、実在しない「法務局民事訴訟管理センター」名義で、契約不履行による民事訴訟が提起されているので連絡をされたい旨記載されたはがきを印刷し、一般人をして実在する公務所が権限内で作成した公文書であると誤信させるに足りる程度の形式・外観を備えた文書を作成した。この場合、甲に有印公文書偽造罪が成立する。
(R4 共通 第13問 オ)
甲は、Aから金銭を借り入れるに際し、数日前にBが死亡したことを知りながら、Aに差し入れる予定の金銭消費貸借契約書の借受人欄に、Bの氏名を冒用して署名押印し、一般人をしてBが生存中に作成したと誤信させるおそれが十分に認められる文書を作成した。この場合、甲には、有印私文書偽造罪が成立する。
代理・代表名義と文書偽造罪 最二小決昭和45年9月4日
概要
判例
判旨:「他人の代表者または代理人として文書を作成する権限のない者が、他人を代表もしくは代理すべき資格、または、普通人をして他人を代表者もしくは代理するものと誤信させるに足りるような資格を表示して作成した文書は、その文書によって表示された意識内容にもとづく効果が、代表もしくは代理された本人に帰属する形式のものであるから、その名義人は、代表もしくは代理された本人であると解するのが相当である…。」
過去問・解説
(H21 司法 第9問 5)
Aの代理人でない甲は、行使の目的で、「A代理人甲」と署名し、その横に「甲」と刻した印鑑を押してA所有の不動産の売買契約書を作成した。同契約書については、Aが作成名義人であるので、甲には有印私文書偽造罪が成立する。
(H28 共通 第4問 ウ)
Yの代理人でないXは、Yに無断で、行使の目的をもって、金銭消費貸借契約書用紙に「Y代理人X」と記載し、その横に「X」と刻した印鑑を押すなどして、Yを債務者とする金銭消費貸借契約書を作成した。有印私文書偽造罪が成立するか。
名義人の承諾と私文書偽造罪 最二小決昭和56年4月8日
概要
判例
判旨:「交通事件原票中の供述書は、その文書の性質上、作成名義人以外の者がこれを作成することは法令上許されないものであって、右供述書他人の名義で作成した場合は、あらかじめその他人の承諾を得ていたとしても、私文書偽造罪が成立する…。」
過去問・解説
(H19 司法 第16問 オ)
甲は、交通違反の取締りを受けた際に乙の氏名を名乗ることについての乙の承諾がないのに、これがあると誤信して、交通違反を警察官に現認された際、乙の氏名を名乗り、交通反則切符の供述書に乙の名義で署名押印した。有印私文書偽造罪が成立するか。
(H23 共通 第1問 3)
甲は、警察官から道路交通法違反(無免許運転)の疑いで取調べを受けた際、交通事件原票中の供述書欄に、あらかじめ承諾を得ていた実兄乙の名義で署名指印した。甲には有印私文書偽造罪が成立する。
(H25 司法 第3問 オ)
甲は、交通違反の取締りを受けた際、警察官に対し、乙の氏名を名乗り、交通事件原票の供述書欄に乙名義で署名押印した。乙が名義使用につきあらかじめ甲に対して承諾していた場合、甲に有印私文書偽造罪(刑法第159条第1項)は成立しない。
(H28 共通 第4問 イ)
Xは、自動車運転免許の効力停止中に自動車を運転し、速度違反の取締りを受けた際、警察官に対し、あらかじめYから名義使用の承諾を受けていたことから、Yの氏名を名乗り、交通事件原票の供述者欄にY名義で署名押印した。有印私文書偽造罪が成立する。
(R5 司法 第15問 2)
甲は、無免許で自動車を運転中に取締りを受けた際、かねてより知人Aから氏名等の使用の許諾を受けていたことから、Aの氏名等を称し、行使の目的で、交通事件原票中の供述書欄末尾に「A」と署名した。この場合、甲に私文書偽造罪は成立しない。
通称と文書偽造罪 最三小決昭和56年12月22日
概要
判例
判旨:「被告人は、窃盗罪で服役中逃走し、遁刑中であることが発覚するのを恐れ、かねてから義弟と同一の氏名を使用して生活していたものであるところ、道路交通法違反(無免許運転)の罪を犯して警察官の取調を受けた際、右氏名を名乗り、義弟の生年月日及び本籍を告げ、右警察官が前記違反についての交通事件原票を作成するにあたりその旨記載させた上、その下欄の供述書に右氏名を使用して署名した、というのである。右の事実関係のもとにおいては、仮りに右氏名がたまたまある限られた範囲において被告人を指称するものとして通用していたとしても、被告人が右供述書の作成名義を偽り、他人の名義でこれを作成したことにかわりはなく、被告人の右所為について私文書偽造罪が成立するとした原判断は相当である…。」
郵便送達報告書と私文書偽造罪 最二小決平成16年11月30日
概要
判例
判旨:「被告人は、金員に窮し、支払督促制度を悪用して叔父の財産を不正に差し押さえ、強制執行することなどにより金員を得ようと考え、被告人が叔父に対して6000万円を超える立替金債権を有する旨内容虚偽の支払督促を申し立てた上、裁判所から債務者とされた叔父あてに発送される支払督促正本及び仮執行宣言付支払督促正本について、共犯者が叔父を装って郵便配達員から受け取ることで適式に送達されたように外形を整え、叔父に督促異議申立ての機会を与えることなく支払督促の効力を確定させようと企てた。そこで、共犯者において、2回にわたり、あらかじめ被告人から連絡を受けた日時ころに叔父方付近で待ち受け、支払督促正本等の送達に赴いた郵便配達員に対して、自ら叔父の氏名を名乗り出て受送達者本人であるように装い、郵便配達員の求めに応じて郵便送達報告書の受領者の押印又は署名欄に叔父の氏名を記載して郵便配達員に提出し、共犯者を受送達者本人であると誤信した郵便配達員から支払督促正本等を受け取った。なお、被告人は、当初から叔父あての支払督促正本等を何らかの用途に利用するつもりはなく速やかに廃棄する意図であり、現に共犯者から当日中に受け取った支払督促正本はすぐに廃棄している。
…郵便送達報告書の受領者の押印又は署名欄に他人である受送達者本人の氏名を冒書する行為は、同人名義の受領書を偽造したものとして、有印私文書偽造罪を構成すると解するのが相当であるから、被告人に対して有印私文書偽造、同行使罪の成立を認めた原判決は、正当として是認できる。
…郵便配達員から正規の受送達者を装って債務者あての支払督促正本等を受領することにより、送達が適式にされたものとして支払督促の効力を生じさせ、債務者から督促異議申立ての機会を奪ったまま支払督促の効力を確定させて、債務名義を取得して債務者の財産を差し押さえようとしたものであって、受領した支払督促正本等はそのまま廃棄する意図であった。このように、郵便配達員を欺いて交付を受けた支払督促正本等について、廃棄するだけで外に何らかの用途に利用、処分する意思がなかった場合には、支払督促正本等に対する不法領得の意思を認めることはできないというべきであり、このことは、郵便配達員からの受領行為を財産的利得を得るための手段の一つとして行ったときであっても異ならないと解するのが相当である。」
過去問・解説
(R2 共通 第6問 4)
甲は、乙宛ての支払督促正本等を配達しようとした郵便配達員に対し、乙本人を装い、郵便送達報告書の「受領者の押印又は署名」欄に乙の氏名を記載して提出し、支払督促正本等を受領した。この場合、甲に有印私文書偽造罪が成立する。
偽造公文書行使罪と行使の目的 大判明治45年4月9日
概要
判例
要旨:刑法第百六十一条第一項ハ偽造変造ノ文書ヲ行使シタル者ヲ罰スルノ旨趣ニシテ其偽造変造ノ行為カ犯罪行為タルト否トハ之ヲ問フノ要ナシ
(※原文を確認できないため、要旨のみを掲載)
過去問・解説
(H27 司法 第4問 1)
行使の目的なしに作成された偽造公文書は、偽造公文書行使罪の客体とならない。
偽造公文書行使罪の行使の内容 最一小決昭和42年3月30日
概要
判例
判旨:「被告人甲が、所論偽造にかかるa県立高等学校長A名義の乙の卒業証書を、同人と共謀のうえ、真正に成立したものとして、その父Bに提示した行為を、偽造公文書行使罪に当るものとした原審の判断は相当である。」
過去問・解説
(H25 共通 第6問 1)
甲は、A公立高校を中途退学した乙から「父親に見せて安心させたい。それ以外には使わないからA公立高校の卒業証書を作ってくれ。」と頼まれ、乙の父親に呈示させる目的で、A公立高校校長丙名義の卒業証書を丙に無断で作成した。甲には公文書偽造罪は成立しない。
(正答)✕
(解説)
判例(最決昭42.3.30)は、本肢と同種の事案において、「被告人甲が、所論偽造にかかるa県立高等学校長A名義の乙の卒業証書を、同人と共謀のうえ、真正に成立したものとして、その父Bに提示した行為を、偽造公文書行使罪に当るものとした原審の判断は相当である。」としている。
また、別の判例(最決昭29.4.15)は、「文書偽造罪における行使の目的は、必ずしも所論のごとくその本来の用法に従ってこれを真正なものとして使用することに限るものではなく、苟も真正な文書としてその効用に役立たせる目的があれば足りるものである。」としている。
甲は、乙の父親に見せて安心させることを目的として卒業証書を偽造しているが、これは、真正な文書としてその効用に役立たせる目的であるといえるから、行使の目的があるといえる。
したがって、甲に公文書偽造罪が成立する。
(H27 司法 第4問 4)
交際相手と結婚するために自己に生活能力があることを示そうとして、偽造した国家試験合格証書を当該相手に見せた場合、偽造公文書行使罪が成立する。
(正答)〇
(解説)
判例(最決昭42.3.30)は、「被告人甲が、所論偽造にかかるa県立高等学校長A名義の乙の卒業証書を、同人と共謀のうえ、真正に成立したものとして、その父Bに提示した行為を、偽造公文書行使罪に当るものとした原審の判断は相当である。」として、偽造した公文書を特定人に見せる行為についても行使に当たることを示している。
また、別の判例(最決昭29.4.15)は、「文書偽造罪における行使の目的は、必ずしも所論のごとくその本来の用法に従ってこれを真正なものとして使用することに限るものではなく、苟も真正な文書としてその効用に役立たせる目的があれば足りるものである。」としている。
交際相手と結婚するために自己に生活能力があることを示そうとする目的であっても、真正な文書としてその効用に役立たせる目的があるといえるから、行使の目的があるといえる。
したがって、公文書偽造罪が成立する。
(H30 共通 第4問 5)
県立高校を中途退学した甲は、父親乙に見せて安心させるだけの目的で、偽造された同高校校長A名義の甲の卒業証書を真正なものとして乙に提示した。甲は、同卒業証書を乙に見せただけであり、公文書に対する公共の信用を害するおそれがないから、甲には偽造有印公文書行使罪は成立しない。
(正答)✕
(解説)
判例(最決昭42.3.30)は、本肢と同種の事案において、「被告人甲が、所論偽造にかかるa県立高等学校長A名義の乙の卒業証書を、同人と共謀のうえ、真正に成立したものとして、その父Bに提示した行為を、偽造公文書行使罪に当るものとした原審の判断は相当である。」としている。
また、別の判例(最決昭29.4.15)は、「文書偽造罪における行使の目的は、必ずしも所論のごとくその本来の用法に従ってこれを真正なものとして使用することに限るものではなく、苟も真正な文書としてその効用に役立たせる目的があれば足りるものである。」としている。
甲は、父親乙に見せて安心させることを目的として卒業証書を偽造しているが、これは、真正な文書としてその効用に役立たせる目的であるといえるから、行使の目的があるといえる。
したがって、甲に公文書偽造罪が成立する。
(R4 共通 第13問 ウ)
県立高校を中途退学した甲は、母親Aに見せて安心させる目的で、偽造された同高校校長B名義の甲の卒業証書を真正なものとしてAに提示した。この場合、甲には、偽造有印公文書行使罪が成立する。
(正答)〇
(解説)
判例(最決昭42.3.30)は、本肢と同種の事案において、「被告人甲が、所論偽造にかかるa県立高等学校長A名義の乙の卒業証書を、同人と共謀のうえ、真正に成立したものとして、その父Bに提示した行為を、偽造公文書行使罪に当るものとした原審の判断は相当である。」としている。
また、別の判例(最決昭29.4.15)は、「文書偽造罪における行使の目的は、必ずしも所論のごとくその本来の用法に従ってこれを真正なものとして使用することに限るものではなく、苟も真正な文書としてその効用に役立たせる目的があれば足りるものである。」としている。
甲は、母親Aに見せて安心させることを目的として卒業証書を偽造しているが、これは、真正な文書としてその効用に役立たせる目的であるといえるから、行使の目的があるといえる。
したがって、甲に公文書偽造罪が成立する。
偽造私文書行使罪 最二小決平成15年12月18日
概要
判例
判旨:「被告人らが司法書士に対し上記依頼をするに際して偽造文書である上記金銭消費貸借契約証書を真正な文書として交付した行為は、同証書の内容、交付の目的とその相手方等にかんがみ、文書に対する公共の信用を害するおそれがあると認められるから、偽造文書の行使に当たると解するのが相当である。」
過去問・解説
(H19 司法 第19問 エ)
甲は、事務所として使用しているマンションの家主に対し、滞納している家賃を確実に返済できることを証明してその信用を得るための手立てとして、甲がC社に対して多額の債権を有していることを示すべく、自ら不正に作成した偽造有印私文書であり、貸主甲、借主C社とする両者名義の金銭消費貸借契約書を、真正な文書として司法書士Dに示し、同契約書に基づく公正証書の作成の代理嘱託を同人に依頼した。甲に偽造有印私文書行使罪が成立する。