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刑法 刑事未成年者を利用した間接正犯 最一小判昭和58年9月21日 - 解答モード
概要
判例
判旨:「被告人は、当時12歳の養女Aを連れて四国88ケ所札所等を巡礼中、日頃被告人の言動に逆らう素振りを見せる都度顔面にタバコの火を押しつけたりドライバーで顔をこすったりするなどの暴行を加えて自己の意のままに従わせていた同女Aに対し、本件各窃盗を命じてこれを行わせたというのであり、これによれば、被告人が、自己の日頃の言動に畏怖し意思を抑圧されている同女Aを利用して右各窃盗を行ったと認められるのであるから、たとえ所論のように同女が是非善悪の判断能力を有する者であったとしても、被告人については本件各窃盗の間接正犯が成立すると認めるべきである。」
過去問・解説
(H21 司法 第4問 1)
甲は、日ごろから暴行を加えて自己の意のままに従わせていた12歳の乙に対し、寺院のさい銭箱から現金を盗んでくるように指示したところ、乙は、是非善悪の判断能力を有していたものの、甲の日ごろの言動に畏怖してその意思が抑圧されていたため、甲の指示どおりに窃盗を行った。この場合、乙に是非善悪の判断能力があると認められる以上、甲には窃盗罪の共同正犯が成立する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭58.9.21)は、本肢と同種の事案において、「被告人が、自己の日頃の言動に畏怖し意思を抑圧されている同女を利用して右各窃盗を行ったと認められるのであるから、たとえ所論のように同女が是非善悪の判断能力を有する者であったとしても、被告人については本件各窃盗の間接正犯が成立すると認めるべきである。」としている。
12歳の乙は是非善悪の判断能力を有する者であるが、甲は乙に日ごろから暴行を加えて自己の意のままに従わせ、乙はその意思が抑圧されていたのであるから、乙を道具として甲による賽銭泥棒の指示通りに窃盗をさせたといえる。
したがって、甲には窃盗罪の間接正犯が成立する。
(H24 共通 第2問 ウ)
判例の立場に従って検討し、甲に窃盗罪の共同正犯が成立する場合には1を、教唆犯又は幇助犯が成立する場合には2を、間接正犯が成立する場合には3を選びなさい。
甲は、常日頃暴行を加えて自己の意のままに従わせていた実子の乙(13歳)に対し、Vが管理するさい銭箱から現金を盗んでくるように命じ、乙は、是非善悪の識別能力及び識別に従って行動を制御する能力を有していたが、甲の命令に従わなければまた暴力を振るわれると畏怖し、意思を抑圧された状態で、前記さい銭箱から現金を盗んだ。
(正答)3
(解説)
判例(最判昭58.9.21)は、本肢と同種の事案において、「被告人が、自己の日頃の言動に畏怖し意思を抑圧されている同女を利用して右各窃盗を行ったと認められるのであるから、たとえ所論のように同女が是非善悪の判断能力を有する者であったとしても、被告人については本件各窃盗の間接正犯が成立すると認めるべきである。」としている。
13歳の乙は是非善悪の判断能力を有する者であるが、甲は乙に常日頃暴行を加えて自己の意のままに従わせ、乙は甲の命令に従わなければまた暴力を振るわれると畏怖し、その意思が抑圧されていたのであるから、乙を道具として甲による賽銭泥棒の指示通りに窃盗をさせたといえる。
したがって、甲には窃盗罪の間接正犯が成立する。
(H25 共通 第17問 1)
甲は、生活費欲しさから強盗を計画し、12歳の長男乙に対し、Vから現金を強取するよう指示した。乙は、甲の指示に従い、Vに刃物を突き付けて現金を強取した。乙が是非善悪の判断能力を有していたか否か、甲の指示により意思を抑圧されていたか否かにかかわらず、甲には強盗罪の間接正犯が成立する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭58.9.21)は、「被告人が、自己の日頃の言動に畏怖し意思を抑圧されている同女を利用して右各窃盗を行ったと認められるのであるから、たとえ所論のように同女が是非善悪の判断能力を有する者であったとしても、被告人については本件各窃盗の間接正犯が成立すると認めるべきである。」としている。
乙は、甲の指示に従い、Vに刃物を突き付けて現金を強取しているが、意思を抑圧されていたか否かにかかわらず、強盗罪の間接正犯が成立するわけではない。
したがって、乙が是非善悪の判断能力を有していたか否か、甲の指示により意思を抑圧されていたか否かにかかわらず、甲には強盗罪の間接正犯が成立するとはいえない。
(R2 共通 第1問 4)
甲は、日頃から暴行を加えて自己の意のままに従わせて万引きをさせていた満12歳の実子Xに対し、これまでと同様に万引きを命じて実行させた。この場合、Xが是非善悪の判断能力を有する者であれば、甲に、窃盗罪の間接正犯は成立せず、Xとの間で同罪の共同正犯が成立する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭58.9.21)は、本肢と同種の事案において、「被告人が、自己の日頃の言動に畏怖し意思を抑圧されている同女を利用して右各窃盗を行ったと認められるのであるから、たとえ所論のように同女が是非善悪の判断能力を有する者であったとしても、被告人については本件各窃盗の間接正犯が成立すると認めるべきである。」としている。
甲は、Xに日頃から暴行を加えて自己の意のままに従わせこれまでと同様に万引きを命じて実行させているが、Xが是非善悪の判断能力を有する者であった場合でも、意思抑圧の存在が認められれば、甲に窃盗罪の間接正犯が成立する余地がある。
したがって、甲に、窃盗罪の間接正犯は成立しないとは限らない。