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刑法 方法の錯誤と故意の個数 最三小判昭和53年7月28日 - 解答モード

概要
犯人が強盗の手段として人を殺害する意思のもとに銃弾を発射して殺害行為に出た結果、犯人の意図した者に対して右側胸部貫通銃創を負わせたほか、犯人の予期しなかった者に対しても腹部貫通銃創を負わせたときは、後者に対する関係でも強盗未遂罪が成立する。
判例
事案:いわゆる具体的事実の錯誤の事案において、認識した罪となるべき事実と現実に発生した事実とがどの程度一致していれば故意が認められるか問題となった。

判旨:「犯罪の故意があるとするには、罪となるべき事実の認識を必要とするものであるが、犯人が認識した罪となるべき事実と現実に発生した事実とが必ずしも具体的に一致することを要するものではなく、両者が法定の範囲内において一致することをもって足りるものと解すべきであるから、人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」
過去問・解説
全体の正答率 : 75%

(H20 司法 第7問 エ)
甲は、公務員乙がその法令上の職務Aを執行するに当たり、乙が執行している職務がそれとは別の法令上の乙の職務Bであると誤信して乙の顔面を手拳で殴る暴行を加えた。乙の執行する職務が職務Bでなく職務Aであると分かっていれば、甲は上記暴行には及ばなかったという事情があった場合でも、甲には公務執行妨害罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
甲は、職務Aを職務Bと誤信しているものの、いずれの事実も公務執行妨害罪の構成要件の範囲内である。
したがって、甲には公務執行妨害罪の故意が認められ、同罪が成立する。


全体の正答率 : 75%

(H22 司法 第6問 1)
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し、誤っているものを2個選びなさい。
甲が、Aを脅迫する意図でA宅に宛てて「お前の家に火をつけてやる。」と記載した手紙を郵送したところ、同手紙が誤ってA宅の隣のB宅に配達され、Bがこの手紙を読んで畏怖した。甲には、Bに対する脅迫罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
甲は、Aを脅迫する意図で、誤ってBを脅迫しているから、具体的事実の錯誤のうち、本来意図した者とは別の客体に対して侵害したという客体の錯誤があるといえる。
脅迫罪の構成要件上の客体は「人」であり、甲が認識していたAと現実に畏怖したBは「人」であるという点で、両者は構成要件の範囲内で一致する。
したがって、甲には、Bに対する脅迫罪が成立する。


全体の正答率 : 0%

(H22 司法 第6問 5)
甲は、Aが甲に射殺されることに同意したため、Aに対し、殺意をもってけん銃を発射したが、銃弾は、Aに当たらずにAの頭部をかすめ、Aの背後にいて甲がその存在を認識しておらず、甲に射殺されることに同意していなかったBに命中して同人を死亡させた。甲には、Aに対する同意殺人未遂罪とBに対する殺人既遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
同意殺人罪と殺人罪では、より軽い同意殺人罪の限度で重なり合いが認められる。
したがって、Aに対しては同意殺人罪の故意が認められ、実行行為に及んだものの結果発生に至らなかったことから、同意殺人未遂罪が成立する。
また、Bに対しては、客観的には殺人罪の実行行為をしているが、同意殺人罪の限度でしか故意が認められないため、同意殺人罪の既遂が成立する。
よって、甲には、Aに対する同意殺人未遂罪とBに対する同意殺人既遂罪が成立する。


全体の正答率 : 75%

(H23 共通 第18問 4)
甲は、パチンコ店の従業員乙が運搬していた同店の売上金の入ったかばんを強取するため、乙の後方から、乙の頭部を狙い、殺意をもってけん銃の弾丸を発射したところ、同弾丸は乙の肩を貫通した上、甲が認識していなかった通行人丙の腹部に命中し、乙と丙にそれぞれ傷害を負わせた。この場合、甲には、乙に対する強盗殺人未遂罪、丙に対する強盗殺人未遂罪がそれぞれ成立し、両罪は観念的競合となる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
甲は、かばんを強奪する目的で、「人」を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった「人」に対してその結果が発生した場合にも、強盗殺人罪の構成要件の範囲内といえ、その結果について強盗殺人罪の故意があるものといえる。そして、拳銃発射という実行行為を行ったものの結果が発生していないから、強盗殺人未遂罪が成立する。
また、乙に対する1発の拳銃発射という1個の行為によって、乙丙のそれぞれに傷害という2つの結果が発生しているから、観念的競合となる。
したがって、甲には、乙に対する強盗殺人未遂罪、丙に対する強盗殺人未遂罪がそれぞれ成立し、両罪は観念的競合となる。


全体の正答率 : 75%

(H24 共通 第7問 2)
甲は、乙に対し、Aを殺害するよう唆したところ、乙は、その旨決意し、夜道で待ち伏せした上、歩いてきた男をAだと思って包丁で刺し殺したが、実際には、その男はBであった。甲には殺人既遂罪の教唆犯が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
甲は、乙にA対する殺人を教唆しているところ、乙はAと誤信してBを殺害している。
また、甲は、乙に対して「人」の殺害を教唆している以上、構成要件の重なりが認められ、殺人罪の故意が認められる。
したがって、甲には、Bに対する殺人既遂罪の教唆犯が成立する。


全体の正答率 : 75%

(H24 共通 第7問 4)
甲は、駐車場に駐車中のA所有の自動車を見て、Aに対する腹いせに傷つけてやろうと思って石を投げたが、狙いがそれて、その隣に駐車中のB所有の自動車に石が当たってフロントガラスが割れた。甲には器物損壊罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
甲は、Aの車に対する器物損壊の意思で投石し、Bの車に対する器物損壊の結果を生じさせている。
これらは、「他人の物」という器物損壊罪の構成要件の範囲内で重なり合いが認められる。
したがって、甲には器物損壊罪が成立する。


全体の正答率 : 75%

(H25 予備 第7問 5)
甲は、Aを殺害しようと考え、Aに向けてけん銃を発射し、弾丸をAに命中させ、Aを死亡させたが、同弾丸は、Aの身体を貫通し、甲が認識していなかったBにも命中し、Bも死亡した。甲にはA及びBに対する殺人罪の故意が認められる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
甲は、Aに対する殺人の意図のもと、拳銃発射という実行行為を行い、A及びBを殺害している。
また、AとBに対する殺人は、「人を殺した」という殺人罪の構成要件の範囲内で重なり合いが認められる。
したがって、甲にはA及びBに対する殺人罪の故意が認められる。


全体の正答率 : 66.6%

(H29 司法 第3問 ア)
甲は、乙を殺害する目的で、乙を含む複数の者の飲用に供されているペットボトル内のお茶に致死量の劇薬を投入した。その結果、そのお茶を飲用した複数の者全員が死亡した。この場合、甲には、前記お茶を飲用して死亡した者の数に応じた殺人罪の故意が認められる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
甲は、乙に対する殺人の意図で複数人が飲用するボトルに劇薬を投入し、乙だけでなく、そのお茶を飲用した複数の者を殺害しているから、「人を殺した」という殺人罪の構成要件の範囲内で重なり合いが認められる。
したがって、甲には、お茶を飲用して死亡した者の数に応じた殺人罪の故意が認められる。


全体の正答率 : 0%

(R1 司法 第11問 5)
甲は、乙を殺害しようと考え、乙の背部を狙って拳銃の弾丸を発射したところ、同弾丸が乙ではなく、乙の隣にいた丙の腹部に当たり、丙を死亡させた。この場合、甲には、乙に対する殺人未遂罪と丙に対する重過失致死罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
甲は、乙に対する殺人の意図で拳銃発射という実行行為を行い、丙に被弾し殺害しているから、「人を殺した」という殺人罪の構成要件の範囲内で重なり合いが認められ、丙に対するものについても殺人罪の故意が認められる。
したがって、甲には、乙に対する殺人未遂罪と丙に対する殺人罪が成立する。


全体の正答率 : 66.6%

(R4 司法 第1問 3)
甲は、殺意をもってAに向けて拳銃を発射したところ、その弾丸がAを貫通し、その背後にいて甲がその存在を認識していなかったBにも命中し、その結果、Aが死亡し、Bが重傷を負った。この場合、甲には、Aに対する殺人罪が成立するが、Bに対する殺人未遂罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.7.28)は、「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」として、構成要件が重なり合う範囲で犯罪の成立を認めている(法定的符号説)。
故意の内容を構成要件の範囲内で抽象化する以上、故意の個数は問題にならないこととなる。
甲は、Aに対する殺人の意図でBに重傷を負わせており、「人を殺した」という殺人罪の構成要件の範囲内で重なり合いが認められるから、Bに対しても殺人罪の故意が認められ、Bに対する殺人未遂罪が成立する。
したがって、甲には、Aに対する殺人罪のほかに、Bに対する殺人未遂罪も成立する。

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