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刑法 責任能力の有無・程度の判断における考慮要素 最判昭和59年7月3日

概要
被告人が犯行当時精神分裂病に罹患していたからといって、そのことだけで直ちに被告人が心神喪失の状態にあったとされるものではなく、その責任能力の有無・程度は、被告人の犯行当時の病状、犯行前の生活状態、犯行の動機・態様等を総合して判定すべきである。
判例
事案:被告人が犯行当時精神分裂病に罹患していた事案において、責任能力の有無・程度の判断をするにあたって考慮すべき要素について問題となった。

判旨:「被告人の精神状態が刑法39条にいう心神喪失又は心神耗弱に該当するかどうかは法律判断であるから専ら裁判所の判断に委ねられているのであって、原判決が、所論精神鑑定書(鑑定人に対する証人尋問調書を含む。)の結論の部分に被告人が犯行当時心神喪失の情況にあった旨の記載があるのにその部分を採用せず、右鑑定書全体の記載内容とその余の精神鑑定の結果、並びに記録により認められる被告人の犯行当時の病状、犯行前の生活状態、犯行の動機・態様等を総合して、被告人が本件犯行当時精神分裂病の影響により心神耗弱の状態にあったと認定したのは、正当として是認することができる。」
過去問・解説
(H19 司法 第18問 4)
【事例】
自動車を運転していた際に交通事故を起こした甲について、精神鑑定の結果、事故当時、統合失調症に罹患し、心神耗弱の状態にあったとの鑑定意見が出されたが、裁判所は、「被告人が、統合失調症に罹患し、交通事故当時病的体験の出没があったとしても、その職業、社会生活における通常の適応が維持し得、病勢がいまだ被告人の人格、行動を圧倒し、対社会的適応を逸脱しないだけの統覚能力を保持し得る人格状態にあり、しかも、上記事故が被告人のハンドル操作の不適切を過失内容とし、事故自体がその病的体験と直接的あるいは不可避的因果関係があるとは認め難いなどの事情の下においては、被告人は心神喪失ないし心神耗弱の状態にはなく、当該事故に関する業務上過失致死傷罪についての責任能力がある」旨の判断を示した。
甲の精神鑑定を行った鑑定人(精神科医)は、甲は統合失調症に罹患し、本件事故当時心神耗弱の状態にあったとの鑑定意見を述べているが、精神科医の鑑定意見と異なるからといって、この裁判所の判断が誤りであるとはいえない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭59.7.3)は、「被告人の精神状態が…心神喪失又は心神耗弱に該当するかどうかは法律判断であるから専ら裁判所の判断に委ねられている…。」としている。
したがって、裁判所は精神鑑定書に拘束されず、これを採用しないこともできる。
よって、精神科医の鑑定意見と異なるからといって、この裁判所の判断が誤りであるとはいえない。

(H22 司法 第14問 1)
責任能力の有無・程度は、行為者の犯行当時の精神状態だけではなく、行為者の犯行前の生活状況、犯行の動機・態様等のほか、被害者やその遺族の処罰感情も含む諸事情を総合的に考慮して判断される。

(正答)

(解説)
判例(最判昭59.7.3)は、責任能力の有無・程度について、「被告人の犯行当時の病状、犯行前の生活状態、犯行の動機・態様等を総合して、被告人が本件犯行当時精神分裂病の影響により心神耗弱の状態にあったと認定したのは、正当として是認することができる。」として、行為者以外の被害者や遺族の処罰感情を判断要素としていない。
したがって、責任能力の有無・程度の判断において、被害者やその遺族の処罰感情も含む事情は考慮されない。

(H25 共通 第5問 4)
精神鑑定により心神喪失と鑑定された場合には、裁判所は、被告人の責任能力を認めることはできない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭59.7.3)は、「被告人の精神状態が…心神喪失又は心神耗弱に該当するかどうかは法律判断であるから専ら裁判所の判断に委ねられている…。」としている。
したがって、裁判所は精神鑑定書に拘束されず、これを採用しないこともできる。
よって、精神鑑定により心神喪失と鑑定された場合であっても、裁判所は、被告人の責任能力を認めることができる。

(H26 司法 第3問 イ)
心神喪失又は心神耗弱に該当するかどうかは法律判断であって、専ら裁判所の判断に委ねられており、犯行当時の病状、犯行前の生活状態、犯行の動機・態様等を総合して判断される。

(正答)

(解説)
判例(最判昭59.7.3)は、「被告人の精神状態が…心神喪失又は心神耗弱に該当するかどうかは法律判断であるから専ら裁判所の判断に委ねられている…。」とした上で、責任能力の有無・程度について、「被告人の犯行当時の病状、犯行前の生活状態、犯行の動機・態様等を総合して、被告人が本件犯行当時精神分裂病の影響により心神耗弱の状態にあったと認定したのは、正当として是認することができる。」としている。

(H27 司法 第11問 1)
ある人が同じ精神の障害の状態にありながら、ある行為については完全な責任能力が認められ、他の行為については完全な責任能力が認められないことがある。

(正答)

(解説)
判例(最判昭59.7.3)は、責任能力の有無・程度について、「被告人の犯行当時の病状、犯行前の生活状態、犯行の動機・態様等を総合して、被告人が本件犯行当時精神分裂病の影響により心神耗弱の状態にあったと認定したのは、正当として是認することができる。」としている。
したがって、責任能力の有無・程度は、事案ごとに判断されるものであり、同じ精神障害の状態にあっても、事案ごとに異なる結論になることがある。
よって、ある人が同じ精神の障害の状態にありながら、ある行為については完全な責任能力が認められ、他の行為については完全な責任能力が認められないことがある。

(H29 司法 第13問 4)
犯行当時、行為者に重度の精神疾患があれば、そのことだけで直ちに心神喪失の状態にあったと判断されることになる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭59.7.3)は、責任能力の有無・程度について、「被告人の犯行当時の病状、犯行前の生活状態、犯行の動機・態様等を総合して、被告人が本件犯行当時精神分裂病の影響により心神耗弱の状態にあったと認定したのは、正当として是認することができる。」としている。
したがって、行為者に重度の精神疾患があれば、そのことだけで直ちに心神喪失の状態にあったと判断されるわけではない。

(R4 共通 第8問 オ)
精神障害を有する同一人について、Aという罪に当たる行為については責任能力があるが、Bという罪に当たる別の行為については責任能力がないという事態は観念し得る。

(正答)

(解説)
判例(最判昭59.7.3)は、責任能力の有無・程度について、「被告人の犯行当時の病状、犯行前の生活状態、犯行の動機・態様等を総合して、被告人が本件犯行当時精神分裂病の影響により心神耗弱の状態にあったと認定したのは、正当として是認することができる。」としている。
したがって、責任能力の有無・程度は、事案ごとに判断されるものであり、精神障害を有する同一人についても、その判断は事案ごとに異なる結論になり得る。
よって、ある人が同じ精神の障害の状態にありながら、ある行為については完全な責任能力が認められ、他の行為については完全な責任能力が認められないという事態は観念し得る。
総合メモ
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