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刑法 精神的幇助 東京高判平成2年2月21日
概要
被告人の行為が正犯の現実の強盗殺人の実行行為を幇助したといい得るには、従犯の目張り等の行為が、それ自体、正犯を精神的に力づけ、その強盗殺人の意図を維持ないし強化することに役立ったことを要する。
判例
事案:当初の殺害予定場所であった地下室に目張り等をしたという事案において、当該行為が幇助行為に当たるか問題となった。
判旨:「Aは、現実には、当初の計画どおり地下室で本件被害者を射殺することをせず、同人を車で連れ出して、地下室から遠く離れた場所を走行中の車内で実行に及んだのであるから、被告人の地下室における目張り等の行為がAの現実の強盗殺人の実行行為との関係では全く役に立たなかったことは、原判決も認めているとおりであるところ、このような場合、それにもかかわらず、被告人の地下室における目張り等の行為がAの現実の強盗殺人の実行行為を幇助したといい得るには、被告人の目張り等の行為が、それ自体、Aを精神的に力づけ、その強盗殺人の意図を維持ないし強化することに役立ったことを要すると解さなければならない。しかしながら、原審の証拠及び当審の事実取調べの結果上、Aが被告人に対し地下室の目張り等の行為を指示し、被告人がこれを承諾し、被告人の協力ぶりがAの意を強くさせたというような事実を認めるに足りる証拠はなく、また、被告人か、地下室の目張り等の行為をしたことを、自ら直接に、もしくはCらを介して、Aに報告したこと、又は、Aがその報告を受けて、あるいは自ら地下室に赴いて被告人が目張り等をしてくれたのを現認したこと、すなわち、そもそも被告人の目張り等の行為がAに認識された事実すらこれを認めるに足りる証拠もなく、したがって、被告人の目張り等の行為がそれ自体Aを精神的に力づけ、その強盗殺人の意図を維持ないし強化することに役立ったことを認めることはできないのである。」
判旨:「Aは、現実には、当初の計画どおり地下室で本件被害者を射殺することをせず、同人を車で連れ出して、地下室から遠く離れた場所を走行中の車内で実行に及んだのであるから、被告人の地下室における目張り等の行為がAの現実の強盗殺人の実行行為との関係では全く役に立たなかったことは、原判決も認めているとおりであるところ、このような場合、それにもかかわらず、被告人の地下室における目張り等の行為がAの現実の強盗殺人の実行行為を幇助したといい得るには、被告人の目張り等の行為が、それ自体、Aを精神的に力づけ、その強盗殺人の意図を維持ないし強化することに役立ったことを要すると解さなければならない。しかしながら、原審の証拠及び当審の事実取調べの結果上、Aが被告人に対し地下室の目張り等の行為を指示し、被告人がこれを承諾し、被告人の協力ぶりがAの意を強くさせたというような事実を認めるに足りる証拠はなく、また、被告人か、地下室の目張り等の行為をしたことを、自ら直接に、もしくはCらを介して、Aに報告したこと、又は、Aがその報告を受けて、あるいは自ら地下室に赴いて被告人が目張り等をしてくれたのを現認したこと、すなわち、そもそも被告人の目張り等の行為がAに認識された事実すらこれを認めるに足りる証拠もなく、したがって、被告人の目張り等の行為がそれ自体Aを精神的に力づけ、その強盗殺人の意図を維持ないし強化することに役立ったことを認めることはできないのである。」
過去問・解説
(H28 司法 第19問 5)
暴力団組員乙は、対立する暴力団組長Aを殺害することを決意し、誰にも犯行の決意を打ち明けることなく、小刀を持ってA方に向かったところ、乙の舎弟である甲は、乙の決意を察し、仮に乙がAから反撃されそうになった場合は、自分がAを殺害しようと考え、乙に何も告げることなく、拳銃を持ってA方付近に先回りして隠れていたが、乙は、玄関先に出てきたAを小刀で一突きして殺害した。甲には、乙の殺人罪の従犯が成立する。
暴力団組員乙は、対立する暴力団組長Aを殺害することを決意し、誰にも犯行の決意を打ち明けることなく、小刀を持ってA方に向かったところ、乙の舎弟である甲は、乙の決意を察し、仮に乙がAから反撃されそうになった場合は、自分がAを殺害しようと考え、乙に何も告げることなく、拳銃を持ってA方付近に先回りして隠れていたが、乙は、玄関先に出てきたAを小刀で一突きして殺害した。甲には、乙の殺人罪の従犯が成立する。
(正答)✕
(解説)
判例(東京高判平2.2.21)は、「被告人の地下室における目張り等の行為がAの現実の強盗殺人の実行行為との関係では全く役に立たなかったことは、原判決も認めているとおりであるところ、このような場合、それにもかかわらず、被告人の地下室における目張り等の行為がAの現実の強盗殺人の実行行為を幇助したといい得るには、被告人の目張り等の行為が、それ自体、Aを精神的に力づけ、その強盗殺人の意図を維持ないし強化することに役立ったことを要すると解さなければならない。」として、幇助犯の成立のためには、物理的又は心理的に正犯の犯行を容易にしたという関係が必要であることを示している。
甲は、乙に何も告げることなく、A方付近に先回りして犯行現場で隠れていたにすぎず、乙の犯行を容易にしたという関係にあるとはいえない。
したがって、甲には、乙の殺人罪の従犯が成立しない。
判例(東京高判平2.2.21)は、「被告人の地下室における目張り等の行為がAの現実の強盗殺人の実行行為との関係では全く役に立たなかったことは、原判決も認めているとおりであるところ、このような場合、それにもかかわらず、被告人の地下室における目張り等の行為がAの現実の強盗殺人の実行行為を幇助したといい得るには、被告人の目張り等の行為が、それ自体、Aを精神的に力づけ、その強盗殺人の意図を維持ないし強化することに役立ったことを要すると解さなければならない。」として、幇助犯の成立のためには、物理的又は心理的に正犯の犯行を容易にしたという関係が必要であることを示している。
甲は、乙に何も告げることなく、A方付近に先回りして犯行現場で隠れていたにすぎず、乙の犯行を容易にしたという関係にあるとはいえない。
したがって、甲には、乙の殺人罪の従犯が成立しない。