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刑法 被害者の負傷と被告人の行為との因果関係 最一小判昭和25年11月9日

概要
傷害罪は、結果犯であって、その成立には、傷害の原因たる暴行についての意思があれば足り、特に傷害の意思の存在を必要としない。被告人が被害者に対して大声で「何をボヤボヤしているのだ」等と悪口を浴せ、矢庭に拳大の瓦の破片を投げつけ、なおも「殺すぞ」等と怒鳴りながら側にあった鍬を振りあげて追いかける気勢を示したので被害者がこれに驚いて難を避けようとして夢中で逃げ出し、走り続けるうち誤って鉄棒に躓いて転倒し、打撲傷を負った場合には、右傷害の結果は、被告人の暴行によって生じたものと解するのが相当である。
判例
事案:被害者が被告人の暴行行為から逃れる途中にけがをしたという事案において、傷害罪の成否が問題となった。

判旨:「傷害罪は結果犯であるから、その成立には傷害の原因たる暴行についての意思が存すれば足り、特に傷害の意思の存在を必要としないのである。されば、仮りに、所論のように被告人には被害者に傷害を加える目的をもたなかったとしても、傷害の原因たる判示の暴行についての意思が否定されえない限り、原判決には所論のような理由不備の違法は存しない。
 …被害者が打撲傷を負うた直接の原因が過って鉄棒に躓いて転倒したことであり、この転倒したことは被告人が大声で『何をボヤボヤしているのだ』等と悪口を浴せ矢庭に拳大の瓦の破片を同人の方に投げつけ、尚も『殺すぞ』等と怒鳴りながら側にあった鍬をふりあげて追かける気勢を示したので同人は之に驚いて難を避けようとして夢中で逃げ出し走り続ける中におこったことであることは判文に示すとおりであるから、所論のように被告人の追い掛けた行為と被害者の負傷との間には何等因果関係がないと解すべきではなく、被告人の判示暴行によって被害者の傷害を生じたものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H24 共通 第15問 2)
【事例】
甲と乙は、V経営の食料品店で買った弁当を食べたら食中毒になった旨の嘘を言って因縁を付けてVを脅迫するとともに、同人に軽度の暴行を加え、これらの暴行・脅迫により同人を畏怖させて、損害賠償金の名目で50万円を支払わせ、これを分配することを計画した。乙は、計画に従い、同店に行き、Vに対し、「この店の弁当を食べたら食中毒になった。店の営業を続けたければ50万円払え。払わないと、この店の弁当で食中毒になったと書いたビラをばらまくぞ。」と語気鋭く申し向けた上、Vの額を手の平成で軽くたたいた。Vは、これをよけようとした際、バランスを崩して転倒し、全治約1週間を要する後頭部打撲の怪我を負った。
Vは、乙が食中毒になったことは嘘であると気付いたが、乙の要求に応じないと、更に暴力を振るわれたり、店を中傷するビラをまかれるかもしれないと畏怖し、手持ちの現金30万円を乙に渡し、残りの20万円は翌日支払うことで乙を納得させた。
乙は、同店を出て、甲と会い、前記経緯を説明した上、Vから受け取った30万円のうち15万円を分け前として甲に渡した。
乙は、翌日、同店を訪れてVから残りの20万円を受け取ろうとしたが、通報を受けた警察官が同店近くにいたので、20万円の受取は断念した。
乙は、甲に事前に相談することなく、腹いせに、「V経営の食料品店で買った弁当を食べた客が食中毒になった。」という虚偽の事実が書かれたビラを多数の者に配った。
なお、甲は、乙がVに怪我を負わせることや前記ビラを配ることを予想していなかった。
Vに怪我を負わせたことについて、乙には、傷害罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭25.11.9)は、「被害者が打撲傷を負った直接の原因が過って鉄棒に躓いて転倒したことであり、この転倒したことは被告人が大声で『何をボヤボヤしているのだ』等と悪口を浴せ矢庭に拳大の瓦の破片を同人の方に投げつけ、尚も『殺すぞ』等と怒鳴りながら側にあった鍬をふりあげて追かける気勢を示したので同人は之に驚いて難を避けようとして夢中で逃げ出し走り続ける中におこったことであることは判文に示すとおりであるから…被告人の判示暴行によって被害者の傷害を生じたものと解する。」として、被害者が避けた際に負傷した場合にも、暴行と怪我の因果関係が認められることを示している。
Vは、乙の暴行をよけようとした際バランスを崩して転倒し、全治約1週間を要する後頭部打撲の怪我を負っているから、乙の暴行とVの怪我の因果関係が認められ、乙に傷害罪が成立する。
総合メモ
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