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刑法 傷害致死の因果関係 最二小判昭和25年3月31日

概要
被告人の行為が被害者の脳梅毒による脳の高度の病的変化という特殊の事情さえなかったならば致死の結果を生じなかったであろうと認められる場合でも、被告人が行為時の特殊事情と相まって致死の結果を生じたときはその行為と結果との間に因果関係を認めることができる。
判例
事案:被害者に暴行を加え負傷させ、本来その傷は通常10日ぐらいで治癒する軽いのものであったが、被害者が病気により脳の病変を患っていたためにその病変に起因して死亡したという事案において、被告人の行為と被害者の死亡との間に因果関係が認められるかが問題となった。

判旨:「被害者Vは予て脳梅毒にかかって居り脳に高度の病的変化があったので顔面に激しい外傷を受けたため脳の組織を一定度崩壊せしめその結果死亡するに至った…被告人の行為によって脳組織の崩壊を来したものであること従って被告人の行為と被害者の死亡との間に因果関係を認めることができるのであってかかる判断は毫も経験則に反するものではない。又被告人の行為が被害者の脳梅毒による脳の高度の病的変化という特殊の事情さえなかったならば致死の結果を生じなかったであろうと認められる場合で被告人が行為当時その特殊事情のあることを知らずまた予測もできなかったとしてもその行為がその特殊事情と相まって致死の結果を生ぜしめたときはその行為と結果との間に因果関係を認めることができるのである。」
過去問・解説
(H27 司法 第3問 オ)
甲の行為とVの死亡との間に因果関係が認められるか。
甲は、面識のないVが電車内で酔って絡んできたため、Vの顔面を拳で1回殴打したところ、もともとVは特殊な病気により脳の組織が脆弱となっており、その1回の殴打で脳の組織が崩壊し、その結果Vが死亡した。

(正答)

(解説)
判例(最判昭25.3.31)は、「被告人の行為が被害者の脳梅毒による脳の高度の病的変化という特殊の事情さえなかったらば致死の結果を生じなかったであろうと認められる場合で被告人が行為当時その特殊事情のあることを知らずまた予測もできなかったとしてもその行為がその特殊事情と相まって致死の結果を生ぜしめたときはその行為と結果との間に因果関係を認めることができる…。」としている。
したがって、Vは、特殊な病気により脳の組織が脆弱となっていたという特殊事情があったが、甲の殴打行為と相まって死亡結果をもたらしたといえ、甲の殴打行為とVの死亡との間に因果関係が認められる。

(R3 予備 第11問 ウ)
甲は、Vの顔面を1回足で蹴ったところ、特殊な病気により脆弱となっていたVの脳組織が崩壊してVが死亡したが、当該病気の存在について、一般人は認識することができず、甲も認識していなかった。この場合、甲の上記足蹴り行為とVの死亡との間に、因果関係はない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭25.3.31)は、「被告人の行為が被害者の脳梅毒による脳の高度の病的変化という特殊の事情さえなかったらば致死の結果を生じなかったであろうと認められる場合で被告人が行為当時その特殊事情のあることを知らずまた予測もできなかったとしてもその行為がその特殊事情と相まって致死の結果を生ぜしめたときはその行為と結果との間に因果関係を認めることができる…。」としている。
Vの病気の存在について、一般人は認識することができず、甲も認識していなかったが、甲の蹴った行為と相まって死亡結果をもたらしたといえ、甲の蹴った行為とVの死亡との間に因果関係が認められる。
総合メモ
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